2ch黒猫スレまとめwiki

◆LZMIcrC9aKqC

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匿名ユーザー

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       リードなんていらない

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       『聖ペトロ十字』



「これ、ください。」

売り子さんに五百円を差し出す
呆然としている黒猫にロザリオを渡してやった

「・・・・・・な、なんのつもりよ。」
「いや、小銭たくさんになっちまうと、邪魔だろ?」

まぁ、半分だけ本当なのだが
こいつは滅多にプレゼントなんてさせてくれないからな
いい機会だと思ったんだよ。完売記念に。値段も手頃だしな
黒猫も納得したのか、素直に受け取ってくれた

「あはは、せっかくですから、つけてあげたらどうです?」

まて売り子!余計な事言うな!
拒否されたら泣くだろ!俺が!!

「・・・お、お願いしようかしら。」
「・・・・・・え?」

黒猫さん、今なんて

「せっかくだし、その・・・
 せ、先輩が嫌なら無理にとは言わないけれど。」
「い、いや、そんな事ないぞ?」
「それなら・・・お願い。」

黒猫は俺にペンダントを渡し、正面から向き合う
ペンダントの金具ってのはどうしてこう、小さいんだ?
俺は震える指先を必死に制御し、ヒキワと板ダルマを分離する

「それじゃ、いくぞ?」
「・・・ええ。」

俺を見上げた体勢のまま眼を瞑る黒猫
チェーンの両端を持ち、黒猫の白い首筋と長い黒髪の間に手を入れる

「・・・・・・あ。」
「わ、ワリ。」
「いえ・・・続けて頂戴。」

首筋に触れられてビクっとする黒猫
同時に俺の心臓も跳ね上がる
いかんいかん。落ち着け、俺
神経を指先に集中しようとするが、これがかなり難しい

だってよ?この距離だぜ?
こっちを見上げて黒猫が眼を瞑ってるんだぜ?
肌が白いな~とか、睫毛長いな~とか、唇ちっちゃいな~とか、解ってくれよ
身長差のせいか、白猫モードの胸元が気になるのも仕方ない事だった
首の後ろで金具をカチャカチャしてるがはまらない
いい加減に焦ってるところで気付いてしまった

首の後ろに両手をまわして見詰め合った状態から眼を閉じる・・・
あれ?この体勢ってヤバくね?
途端に鼓動が速くなる
えっと、あれだ!こんな時は素数を数えるんだ!

1,3,5,7,9,11・・・・・・

ちっがーう!これは素数じゃねぇ、奇数だ!
・・・奇数?・・・きすう?・・・キス、う

っがー!
すでに心拍数がレッドゾーンに突入しているせいか、思考回路まで暴走してやがる!
このままオーバーヒートを待つしかなかった俺の耳にカチリと金具の音がする
黒猫にも聞こえたのだろう。ゆっくりと眼を開ける
そのまま見詰め合う俺達
なぜだろう・・・さっきまでの緊張が嘘みたいな、穏やかな空気

「・・・へへっ。」
「・・・ふふっ。」

胸元に揺れる逆十字に触れて嬉しそうな黒猫
なんか照れくさくってポリポリと頭を掻いた

と、なにやらカリカリ、カリカリ、とおかしな音が聞こえてきた
周囲を見渡すとそこには
眼をキラキラさせてこっちを見ているギャラリーと
眼をギラギラさせてペンを走らせるギャラリーがいっぱいいた

ぎゃー!またやっちまったのか俺は!
次のコミケでネタにされるんだろうな、と溜め息をつきながら
まぁSM本よりマシだよな、と開き直る俺
慣れって怖いよな


後で分かったんだが、このサークル『EBS』の御鏡ってヤツは桐乃の知り合いだったらしい
同じ歳で、モデルで、デザイナーで、性格までよさげなオタク!?
クソッ、なんかイラつく
       ・
       ・
       ・
駅前のカラオケボックスにいる
打ち上げ・・・というわけではなく、本日の精算のためだ
俺と沙織が金勘定をしている一方
黒猫と桐乃は、EBSで入手したシルバーアクセを見せっこしていた

「りんこりんとお揃いのペンダントなんだよ!?
 世界に一つしかないんだって!超凄くない?」
「・・・・・・た、確かに・・・・・・無駄に凝っているわね。
 才能のあるキモオタって、おそろしいわ・・・・・・」

首に付けたロザリオを触って、機嫌のいい黒猫
そんな様子が、何故か俺は面白くない

「はん、俺としちゃー、鼻につく野郎だったけどな。
 爽やかなやつかと思いきや、とんでもねーキモオタだったしよ。」

意表を衝かれたような表情で目を大きくし、固まる黒猫
・・・あーみっともねぇ。最低だな、俺
でもよ、ムカツクもんはムカツクんだよ。例えそれが妬みだとしてもな
嫌な空気が流れる
金縛りが解けた黒猫が言った

「ねえ先輩。このロザリオの価値ってどの位だと思う?」
「あ?500円じゃねえの?あー・・・出来がいいらしいからな、1000円くらいでもいいかもな。」
「・・・やれやれ。貴方には真の価値が解っていないようね。」
「どういう事だよ?」
「500円だったのは買う前までの話。私の手の中にある物とは違うわ。」
「中古だと価値が下がるとでもいうのかよ。」

小さく頭を振って溜め息をつく黒猫

「金額というのは、取引や他の何かと比較する時、共通の価値観で考える時に使うのよ。
 私にこれを手放す気が無い以上、値段なんて付けられるものではないわ。」
「なんだよ。価値無しって事かよ。」
「・・・いいえ先輩。私はね、目の前に例え100万積まれたとしても、誰にも譲る気は無いわ。」
「まぁお前が好きそうなデザインだしな。」
「・・・あのね先輩。“何を”貰ったかよりも大切な事があるわ。
 “誰から”貰ったか、よ。」

黒猫が何を言いたいのか
やっと気付くような俺は、やっぱ鈍すぎるんだろうな

「だからこれは、誰にも譲らない。
 そこに込められた“想い”は、私だけのものなのだから。」
「あー、えっと、うん。悪かったよ。なんかイラついててさ。」

素直に頭を下げる
やっと表情を柔らかくした黒猫が言った

「・・・ねえ先輩。犬を飼う時、例えそれがとても賢く、躾が出来ていたとしても
 繋いでいなければ散歩する事さえ望めはしない。周囲を不安にさせてしまうから。
 だけどね、猫は違うのよ。」

それは解り難い愛情の事だろうか
それとも孤高であっても温もりを知っている事か

「・・・先輩。あなたはいつか、知らなければならないわ。
  “猫に首輪を付けた” その意味を。」





 

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