2ch黒猫スレまとめwiki

◆LZMIcrC9aKqC

最終更新:

hiesuke

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だれでも歓迎! 編集
       先輩と、別れた

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       『着心』



トゥルルルル…トゥルルルル…トゥルルルル……

携帯が鳴っている

トゥルルルル…トゥルルルル…トゥルルルル……

何度も、何度も、鳴り続けている

見なくても解る
先輩だろう

一緒に花火大会に行った
そして帰り道で“運命の記述”を見せて――別れた

きっと怒っているでしょうね
それとも厭きれたかしら

どちらでもいいわ。嫌われた事に変わりないもの

友達になって
後輩になって
そして、恋人になった

毎日のデート
家族との交流
お祭。花火
短かったけれど、充実した日々
思い出と共に涙が溢れてくる

先輩の声が聴きたい
しかしそれは叶わない
全てを私が打ち壊したのだから

私は布団の中で耳を塞ぎ、携帯が鳴り止むのを待った

トゥルルルル…トゥルルルル…トゥルルルル……

鳴り続ける携帯に私の覚悟が揺らぐ
最後に一言謝るくらいなら…
自分への言い訳ね。解っているわ。ただの未練だという事くらい

罵声も非難も浴びる覚悟を決めて携帯に手を伸ばす

ピッ

「……もしもし、先輩、」

ごめんなさい。と続けようとして遮られた

『もしもし!黒猫か?ハァ…よかった……ありがとうな。』

え?どうしてお礼なんて

『電話に出てくれて、ありがとう。』
「…!わ、悪いのは私なのだから、有り難うなんて言われても困ってしまうわ。」
『そっか、ごめんな。』

先に謝られてしまった
先輩は何も悪くないというのに

『……………』
「……………」

暫く無言が続いた

『あのさ、さっきのアレって…“先輩と、別れる。”って、マジなのか?』
「……ええ。本当よ。」
『そっか…そうだよな。お前があんな冗談言うワケないもんな。』

ハハハ、と乾いた笑い

『最初に会った時…あのオフ会の時さ。
 どえらい美人だと思った。ちっとばかりマイナスオーラを纏ってたけどな。
 桐乃の友達は俺の友達になって、後輩になった。
 部活の仲間になって、そして告白された。』

私は黙って先輩の言葉を聞いていた

『正直さ、それまではよく解らなかったんだ。
 ただ一緒にいて楽しいとか気が合うとか、くすぐったいような感じ、とか。
 それがさ、告白されて解ったんだ。
 俺も黒猫の事が好きだったんだって。我ながら鈍すぎるよな。』

…そうね。時々妙に鋭いけれど

『今更ながら自分の気持ちを知ったんだ。でもそれでもいいと思う。
 人を好きになるのに理由なんていらないんだ。
 気が付かないだけで、いつの間にかそうなっているものだから。でも…』

一度言葉を切る先輩

『嫌いになるのには理由があるんだと思う。
“運命の記述”が俺とのこれからを記したものだとしたら
 そこに記された慟哭の絵や俺との別れはそんな未来が予想できる何かがあったはずなんだ。
 ……なぁ黒猫。“永遠に好き”と言ってくれたあの時から、もう心は変わっちまったのかな。』
「それは違うわ。」

即答した

「私は先輩が好きよ。今でも、今までも、そしてこれからも…
 それは永遠に変わらないわ。」
『そっか…』

ハァ~と安堵の溜め息

『それじゃ教えてくれないか?』
「え?」
『別れることにしたその訳を。』
「……転校するの。お父さんの仕事の関係で。」
『え?どこに?』
「……松戸。」
『わりと近いじゃねぇか。』
「そうでもないわ。引越しもするし、今迄の様に頻繁に会う事はできなくなるでしょうね。」
『それでも、世界レベルで考えれば松戸なんてうちの庭みたいなもんだぜ。』
「ふふっ。 そうかもしれないわね。」

一瞬、空気が和んだところで先輩が言った

『それで、本当の理由は何なんだ?』

絶句した。

「…本当もなにも、この理由は嘘ではないわ。」
『嘘ではない。嘘ではない。…ああ、“嘘ではない”のだろうさ。
 でも転校は理由のうちの一つに過ぎないんじゃないか?
 本当はもっと大きな…別の理由があるんだろ?』

答えられなかった

『桐乃の事、か?』
「……違うわ。」
『そっか。そうだよな。』
「違うと言っているでしょう。」
『偽彼氏の事とかさ、俺また暴走しちまって。
 そん時桐乃に言った言葉が今の俺に返ってきてるんだ。
 妹の彼氏に反対しておいて自分は彼女つくるとか、桐乃の機嫌が悪くなるのも当然だ。
 そしてお前は桐乃の親友だ。彼女で居続けるのは辛かったのかもしれん。』

微妙にずれている。でも向き合おうとはしているのかもしれない

『全ては俺の我侭だ。このままではお前も…桐乃も傷つけちまうかもしれない。
 それでも俺はお前を手放したくないんだ。
 その為に俺にできる事はなんだってやる。今はどうすればいいかは…まだ解らねぇけど
 一緒に考えればきっと何かがあるはずなんだ。
 だから、身勝手は承知の上で頼む。』

そして言葉は心に至る

『悲しい時は二人で泣きたい。壁があるなら二人で超えたい。
 その代わり、全てが終わった時…二人で一緒に笑っていたい。
 もう独りになるのも、独りにするのも嫌なんだ。
 お願いだ瑠璃。もう一度、俺と付きあってくれ。』

――“瑠璃”――

名前で呼ばれた
ただ、それだけの事なのに
心も身体も満たされていく

「……まったく。本当、莫迦ね。私は。」

涙が頬を濡らしている
どんなに努力をしても一人では限界があるって知ったはずなのに
それなのに自ら独りになろうだなんて愚の骨頂だ
私も決めなければ
共に歩む覚悟を

「…解ったわ、先輩。私の考え。私の感じた事。
 そして私が目指した“願い”。全部話すわ。」

そうね…先ずは私と同じ喜びを共感してもらいましょう



「………“京介”、あのね――」



やっと、貴方と、繋がった


             愛Phone

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