2ch黒猫スレまとめwiki

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hiesuke

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  あの日の帰り道

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『黄昏』


『使い物になりません。』
『あなたには使いこなせていないようですね。』
『二次創作小説だということを差し引いてもひどい出来です。』

五月蝿いわね。私は自分の書きたい物語を書きたいように書いただけよ

『読みづらくなるだけの設定ですね。』
『もっと先にやるべきことがあるのでは?』
『続いて細かい部分ですが……』

またあの永遠とも思える時間が続くのね…

気付いてしまった。これは夢なのだ
夢の世界ですら儘ならない。まったく、我ながら不器用にも程があるものね
そして私は不覚にも涙するのだろう

バンッ!!

『人様の妹泣かせてんじゃねえよテメエ!他に言いようないのかよ!?』

世界の全てが私を否定するなか、唯一人私の盾となった仮初の兄
……やれやれ。度を超えたシスコンは偽りの妹にまで発動するようだ。だけど…

 ―――怒ってくれて、有り難う―――

見上げると兄さんと目が合う
妙に気持ちが通じ合っているような不思議な感覚
気恥ずかしいような、気まずいような、この意識は……


『マジで尊敬する!大好きだぜ!ホントすげーって!』

…この莫迦。何を言い出すの?

『大好きだぜ!ホント』

どこを抽出しているのよ。止めて頂戴。恥ずかしい

『大好きだぜ』
『大好きだぜ!』
『…大好きだぜ!!』

わ、私は…私は……


…タタン…カタタン…カタタン…


薄っすらと目を開ける。どうやら目覚めたようだ
フッ…人の夢は儚いとはよく言ったものね
冷静に状況を把握する

編集部からの帰りの電車内。夕刻。シートに掛けたまま寝てしまったらしい
違和感があった。視界が傾いでいる
そして頬に感じる温もり

そうか。私は兄さんの肩に凭れているのね
理解した瞬間、顔が紅潮するのが解った。だが動けなかった
なぜなら兄さんもまた、私に凭れて寝ていたのだから

皆に見られている。乗客全てが見ている気がする
恥ずかしくて目を瞑った。
……まだ寝てるフリをしよう


私達はどのように見えるだろうか
友人?兄妹?それとも……
何を莫迦な事を。疲れているのね。無理もないわ
この私が人前で涙する程に追い込まれたのだから

…見られてしまったわね
もう何年も、家族にさえ涙なんて見せていないというのに
でも兄さんは誰にも言わないだろう。私が泣いたなんて
そして誰にも言えないだろう。自分も泣いたなんて

私達だけの秘密
そう考えるのなら悪い気はしない
たとえ仮初の兄妹であったとしても偶に兄に甘えるくらい赦されるのではないだろうか

…よく眠っているわね。兄さんも疲れているのかしら?
ならば私に出来る事は…
妹である私には、互いに支え合い夢の世界に身を委ねる事…くらいかしらね

小さく、静かに深呼吸すると少し落ち着いた
もう暫く…このまま…


…タタン…カタタン…カタタン…


「ん…んぁ…うう~ん…」

兄さんが目を覚ましたようだ
私は一瞬で姿勢を正し、冷静さを装った

「…よく眠っていたわね。」
「悪い。すっかり寝ちまったようだ。」
「……構わないわ。」

今が夕刻で助かった
沈む太陽が全てを朱く染めてくれる
未だボーっとしている兄さんの横顔を見ながら想う

嫌な事は沢山あった
でも嫌じゃない事も…あった
そして私はそんな時間が嫌いではないようだ
ポツリ、ポツリと会話をしながら温かくなる心を自覚する

目覚めれば夢の世界は終わりを告げる
けれど諦めなければ夢は終わらない
諦めるわけにはいかない
熊谷龍之介にもあの女にも一泡吹かせてやるまでは

『せいぜい頑張らせていただきます』

そう言ってはみたものの、勝算がある訳ではない
もしも可能性があるとすればそれは…
どう伝えればいいか迷い、視線を逸らせたまま訊いた

「あの……また、もしも、編集部に持ち込みに行くようなことがあったら……一緒に行く?」
「……言っておくが、俺は何の役にも立たないぜ?」
「知ってるわ、そんなこと。」

辛くて泣いてしまいそうなときでも……
支えてくれる人がいれば耐えられるって、分かった。
必要なのは兄さんの手ではなく、存在

「分かった。今後ともよろしくな。」
「……うん。」

ホッと胸を撫で下ろす
そう……そうね
仲間がいれば
貴方がいれば


 ――私はまだまだ頑張れるのよ――

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