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『ごこうけ・アップルパイの話』:56スレ目573

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zeppelin

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『ごこうけ、アップルパイの話』

アップルパイ食べたい
とある夏の日、漫画を読んでいたあたしはアップルパイを食べたいという欲求に襲われた
ルリ姉作ってくれないかな?とちょっと考える
でも最近甘いもの続いたし、無理か……

今日、食べたい
今、食べたい
材料を用意してしまえば、作ってくれるかな?
台所にある果物かごを見ると、りんごが五個ほど置いてある
ごそごそと他の材料も探してみると、アップルパイを作る材料は揃っているみたい
いや、……それでも作ってくれるとは限らないし
もっと確実にアップルパイを食べる方法を考えたい
…………そうだ!
私の灰色の頭脳に天才的なアイデアが閃いた

隣の部屋でタマちゃんとゲームをしていた桐乃さんに声をかける
「あの、桐乃さん。ルリ姉は夕方に帰ってくるから、その間に菓子でも焼いてみませんか?」
「菓子……?」
「うん、アップルパイ」
問い返してきた桐乃さんにあたしの欲求を伝える
「うーん、でも、あたし、アップルパイとか作ったこと無いよ?」
「黒いのが帰ってきてから、頼んだ方が良いんじゃないかな……?」
そんな風に桐乃さんは渋い返事を返してくるが
「そういうことじゃないよ。食べたいってルリ姉が言ったんだ」
「え?」
「だから日頃の感謝をこめて作ってあげたいって思うの」
「うまく作れなくてもいいの。大事なのは気持ちだよ!」
そうあたしたちが上手く作る必要は無い
桐乃さんの料理の腕は正直どうでもいい
作ろうとしたその熱意さえ見せればルリ姉が作り直してくれるだろう……
そうすればあたしは、アップルパイを食べることが出来る
フフフ……我ながら天才的なアイデアだね

その後、タマちゃんの「わたしもアップルパイたべたいです」という言葉に背を押され、あたしと桐乃さんは一緒にお菓子作りを始めた。
桐乃さんの作業は結構危なっかしいところがあって、前にルリ姉が作ったときと手順が全然違った気がしたけど
「「出来たーーー!!」」
無事にアップルパイは完成した
少し形がいびつだけど、出来立てのおいしそうな香りがあたしの食欲を刺激する
「うわぁ、おいしそうに出来ましたね」
食べるためのフォークを準備しながら、桐乃さんに話しかけると
なぜか、桐乃さんはアップルパイにラップをかけている
「え、なんでラップ……?」
「何でって言われても……、あいつらが帰ってくるのを待たないと駄目じゃん?」
「あ…」
し、しまった
ルリ姉のために作るって言ったんだから、今すぐには食べられない!
こんなことなら、最初っから、桐乃さんに食べたいから作ってといえば良かった

でも、桐乃さんはアップルパイにラップをかけると、隣の部屋に行き、アニメを見始めた
あたしのなかにある気持ちが浮かぶ
……うん、美味しそうに出来たけどさ
味見しないと、きちんと出来たかどうかわからないよね?
味見していないのをルリ姉に出すのも、どうかと思うし
つまみ食いを……じゃなくて味見をしてみようかな!
あたしは隣の部屋にバレないようにラップをめくると、ナイフでアップルパイを六分の一ほど切り取り、皿に移す
そしてフォークで食べやすいサイズをつまんで、口に運んだ。

「ただいま」
「おじゃましまーす」
京介と一緒に買い物に行って、自宅に帰ってきた私たちをまず出迎えたのは
床に落ちたアップルパイとそれを食べている夜の姿だった
夜は私たちの姿を確認すると、まるで「主の身を守るためなら、我が身は惜しくありません」と言っているかのように
「に、にゃあ…」
と食べながら苦しげに鳴いた
そして、ポテリと倒れた
「よ、夜……?あなた、どうしたの?」
夜に駆け寄り、夜の様子をうかがうと、まるで食中毒みたいな様子である
「猫って、リンゴとかは駄目だったかしら…?」
とりあえず夜に応急処置をして、安静にしておくことにする
まわりを見渡すと、テーブルの上に置いてあったアップルパイを夜が床に落として食べていたようだ
夜は行儀の良い猫だから、そんなことをした理由を疑問に思う

「あ、おかえりー」
「おかえりなさいませ、ねえさま」
桐乃と珠希が声をかけてくる
「そういや、さっき、ひなちゃんと一緒にアップルパイを作ったんだけど、猫ちゃんに食べられちゃった」
「そう、それは残念ね。仕方ないし、作り直しましょうか」
「ところで日向はどうしたの?」
いつもはお土産に期待して、真っ先に飛んで来る日向の姿が無いので聞いてみる
「なんか、ひなちゃんはおなか痛いから、寝るって言ってた」
「あの子がお腹壊すなんて、珍しいわね。アイスでも食べ過ぎたのかしら……?」
アップルパイはおやつとしては重いし、晩御飯は日向でも食べられるようなおかゆとか、軽いものにしましょうか
と晩御飯のレシピを考えながら、私はアップルパイ作りを始めた
ちなみに日向がアップルパイを食べることが出来たのは、翌朝のことである。

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