-----後30分
夜も更け、もうすぐ新たな日を迎える頃、
私は高坂家2階、前世より約束されし
こ、ここ、恋、人であるき、ききき、きょ、きょきょうすす・・・・・先輩の部屋にいる。
理由?そうね教えてあげないこともないわ。
今日は「たまたま」先輩のお義父様とお義母様は旅行により家にはおらず、
あのビッチも「たまたま」スイーツ2号の家に泊まりに行っている。
「たまたま」その情報をビッチより入手した私は、
「たまたま」先輩の家へと遊びに来て、泊まることにした。
つまりこの高坂家に居るのは、先輩と私の二人だけ。
そうして今
昼間に下僕が蓄えた魔力をこの身に捧げる為の儀式に興じている。
夜は闇の眷属としての我が身の力が最も高まる時間。
ゆえに闇は我が身の力を最も発揮でき、魔力の受渡には最適な条件なのだ。
・・・・・・・だというのに下僕であるこの雄は光の下で宴を行おうとする。
曰く「黒猫のことを良く見たい」だそうだ。
闇の中ですら恥ずかしいのに、明かりなんて点けてしまったら、死んでしまうじゃない///////
-----後10分
「ふぁ、さすがに眠くなってきたな」
魔力吸収の儀式を無事終了し、いつもならば、
いつ誰が部屋に入って来るのかわからないので慌しく身なりを整えるところだが
(・・・鍵をつけてほしいと願うのは我侭であろうか)
儀式を終えたままの姿でベッドで寄添っていると不意に先輩は大きなあくびをする。
・・・回もしたのだから無理もないのかもしれない、
けれどまだ先輩に寝てもらうわけにはいかない。
「ま、まって」
この日の為に準備した儀式を水泡に帰するわけにはいかない焦りからか、
眠りに付こうとする先輩を咄嗟に呼び止めてしまった。
「?どうしたんだ黒猫」
な、なにか話をしないと。
とはいえ通学途中、デートの時など先輩とはなんの変哲もない話題をぽつりぽつりとするもの
(先輩は退屈していしないのか、気になったときもあったが、
その空間が心地よくて好きだと言ってくれた)
先輩の気を惹く話題をするとなると何を話せばいいのだろうか。
自分のこと?先輩のこと?難しく考える必要はない、いつも通りにすれば・・
「・・・せ、先輩はやっぱり、するときにめ、眼鏡があった方が、いいいのかしら?」
何を言っているの私!!
「!?と、突然何を言い出すんだ!しかも、やっぱりってなんだやっぱりって」
「ふふ、遠慮しなくていいのよ先輩、
『私は変態な雄です、夜魔の女王の眼鏡を掛けたお姿を拝見したいです』と懇願すれば考えなくはないわ」
「だから、俺はそんな趣味じゃないって、たまたま集めたものがそうだっただけだ」
「今度から先輩のことを「鬼畜変態シスコン眼鏡兄貴」と呼ぶことを検討したほうがいいようね」
「だーかーらー違うって・・・・・・・あーでも、言われると黒猫が眼鏡を掛けている姿ってのも見てみたいな、
一度でいいからさ見せてくれよ」
・・・//////ベルフェゴールの魔力がここまで強力なものだったなんて・・・・・・
今度バイト代で眼鏡を買いに行かなくてはならないかしら・・・・・
ち、違うのよ、別に先輩に喜んで欲しくてそんなことをしようと思っているわけでは、
ち、違うと言っているでしょ//
・・・・・この話はやめにしましょう。
他に話題にできそうなものはないかと部屋を見渡し、目に付いたのは、情事の跡。
「・・・おと、男の人は・・・・・ナカ・・・・に・・たいと聞くけれど、そ、その先輩も・・・・」
だから何を言っているの私!!こ、この私にこんな事を言わせるだんて、
きき、きっと誰かが<パペット>を使って操っているのね。
人ならざる身とはいえ完全に力を取り戻せてはいない私の魔力では抗うことが出来ない。
そう決して「ナカ」に出されると比べ物にならないくらい気持ちいいとか、
先輩が本当にしたいのだったら、考えなくもないだなんて、
そんなことを考えているわけではないわ、これは誰かが私を操り、
先輩の不埒な欲望を引き出そうとしているだけ。
「・・・・確かに「したいって」気持ちはあるけど、俺はまだ「絶対にするつもり」はねぇよ」
てっきりさっきのように慌てふためく姿を見ることになると思ったのだけれど、
ドジでヘタレで変態で鈍感な先輩ではなく、
眼の光、表情、雰囲気は妹を助ける時の「あの」先輩だった。
「お義父様に怒られるから?」
先輩のお義父様は警察官で厳格な方であるから人一倍厳しいだろう。
・・・・・・それが理由なのだとしたら少し残念な・・
「茶化すなよ、その、、だな、俺は「ちゃんと」したいんだ、
高校を卒業して大学に行って就職して黒猫の事「責任」持てるようになってからにするって決めてるんだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「って黒猫?」
・・どうしてこの人は気付いて欲しい時に全く気付くそぶりも見せないどうしようもない鈍感へたれだというのに、
ここまで恥ずかしいことが言えるのだろうか・・・
言えない、自分の事を大切に想ってくれている事が嬉しくて、
油断をすると初めて手を繋いだ時のようになっているだなんて///
-----後1分
「な、なぁ黒猫、そろそろ寝てもいいか?さ、さっきから変な質問ばかり・・・
明日も時間あるからそれじゃだめか?」
時計の長針と短針が12時を差そうとしている、
ふっ、時間稼ぎは成功ね、私の力を持ってすればこれくらい造作もないこと
・・・・どんな話をしたのかですって?べべべべ別にそんなこと関係ないでしょう/////
そんなことよりも
-----後10秒
小さく深呼吸をし儀式へと臨む準備をする。
-----ふっと起き上がりベッドから離れる
「ん?黒、猫?」
-----訝しむ「先輩」
「どうかしたのか?」
-----鼓動が早くなっていく
「そんな格好で風邪引くぞ」
-----鼓動が耳に響く
「・・・黒猫?」
-----顔が熱を帯びる
「どこか調子が悪いのか?」
-----寒さではない足の震え
「聞こえてるだろ?」
-----今すぐ逃げ出そうか?
「黒猫ってば」
-----いや
「黒猫さーん」
-----決めたのだ逃げ出さないと
「どうしたんだ、る・・」
-----0
------カチ
-------魔道具が発動する
『おおお、お誕生日、おめ、でとう、きょ、きょ、きょきょきょきょきょ・・・京介』
今この瞬間が闇の中でよかった、明かりなんてものがついていたならば、
制御することの出来ない煉獄の炎がこの身を溶かしていることだろう。
・・・・・いや、あまり大差はないのかもしれない。
「なな、なんだ、どこから声が?く、黒猫?そ、それに今、俺のこと、って、え、あっ!誕・・・生日!?誰の!?」
突然のことに慌てふためく京介、
努めて冷静に何度も練習を重ね予め準備しておいたセリフを口にする。
「そ、そそそそそその、きょ、今日は、せんぱ・・・キョウスケの、
た、誕生日だと聞いたから、お、お祝いに/////」
努めて冷静に何度も練習を重ね予め準備しておいたセリフを口にした後、
ベッドの傍に巧妙に隠しておいた「モノ」を取り出す。
「そそそういや確かに今日俺の誕生日だった、さっきのはこれから聴こえたのか?時計?もしかして黒猫」
声が上擦っている彼も今の私のように赤くなっているのだろうか?
だとしたら明かりがないことが恨めしくも思えてくる。
「妹たち以外に誕生日プレゼントなんて渡したことなんてないから、
その、気に入ってくれるか、わからない、けど、お誕生日おめでとう、京介」
渡したのは黒猫と白猫が真ん中にある時計の上に仲良さそうに寝そべっているもの。
「////////////////すっげぇ嬉しいって黒猫がプレゼントをしてくれたもの喜ばないわけがだろ、
さ、さしずめ、白猫が黒猫で、黒猫が俺かな、なんて、仲よさそうにしてるし」
-----ボン
アニメや漫画のような擬音を伴い顔が爆発してしまいそう。
確かに、そんな風に思いながら、京介も思ってくれたらいいな、なんて、考えてはいたけれど、
この人はどうして平然と恥ずかしいセリフを「さらり」と言うのか、
鈍感で変態でへたれなのにとても「ずるい」・・・そういうところがす、好きなわけだけど。
「絶対、ずっと、大切にするよ」
「その・・・喜んで貰えて、良かった」
恥ずかしさが込み上げ直視することができず俯いてしまう。
選ぶときは喜んで貰えるのか、
センスのなさに失望されないか、
嫌われたりしないか、不安だった。
何度やっても恥ずかしさで音声を録ることができなくて、
やっぱりプレゼントを別のものにしようか、
名前で呼んでも大丈夫だろうか、不安だった。
けれど
今この瞬間、京介の喜んでくれている姿を見ていると不安だった気持ちすら良いものだったと不思議に思える。逃げないでよかったと思える。
-------ただ、できることなら、勇気を出して呼んだのだから・・・・
「その・・・だな・・・・『瑠璃』・・ありがとうな」
-----はっと顔を上げる、今・・
「なま・・え」
「えっ?」
「いま、わたしの」
-----『あのとき』叶わなかった響きを確かに・・
「泣いて・・るのか瑠璃」
-----頬を雫がつたうのに気付く、これは・・
「はじめて呼んでくれた」
-----知らなかった悲しみの時だけではないのだと・・
「そう・・・だったな・・・・また瑠璃に先に言われた・・・遅くなってごめん」
-----本当に申し訳なさそうな彼を見ていると・・
「だめよ、誠意が感じられないわ」
-----つい、嘘を言ってしまう
「・・・・・・だったら」
-----ゆっくりと二人の距離が縮まり
「好きだぞ・・・・・瑠璃」
月明かりに照らされ、一糸纏わぬ姿で、黒と白の二匹の猫が見守る中、今までで一番幸せな
chu
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おまけ
「なぁ、くろ、、、る、瑠璃」
「ななな何、ききょう、京介」
名前を呼ぶ以上の恥ずかしい行為を既にしているのに、
遥かに簡単であろう「呼ぶ」事がどうしてこうも恥ずかしいのだろうか。
・・・・・違うわね「京介と呼ぶ」ことが恥ずかしいのではなくて「京介に呼ばれる」のが、くすぐったくて温かい。
「もしかして、今日泊まりに来たのって」
「・・・そうよ(/////)」
「俺、瑠璃に自分の誕生日教えていたっけ?そもそもタイミングがあまりにも・・・」
さすがの鈍感せんぱ・・・京介でも気付いたようね、約束を破ることになってしまうのだけど、
黙っているというのも気が引ける
「・・・本当は口止めされているのだけど、今回のことは桐乃の計らいなの」
「桐乃の?」
『はぁ?あんたたち、ボソ(セックス)までしてるのにまだ名前で呼び合っていないなんて、
付き合うのだって2度目でしょうに、どんだけよ・・・・そうだ!今度兄貴の誕生日だからさ、
その日お母さん達と私、家を空けてあげるから泊まりにくるなりしてなんとかしなさい、
いい?私がここまでしてあげるんだから、帰って来た時に変化がなかったら許さないからね』
「というわけなの」
「・・・ったくあいつは、余計なお世話だってーの」
悪態づいているとは思えないほど、京介は笑顔だった。
京介と再び付き合うことになったときも、「そっか、よかったじゃん」、と笑って祝福してくれた桐乃。
悪態づきながらも手を貸してくれる桐乃。
いつの日か私はあの子に頭が上がらなくなる日がくるのではないだろうか
・・・・あの時は夢にも考えなかったが、本当に誇れる親友を持ったものだ。
「あれ?でも桐乃の話だと、旅行は今日からだったんだろ?なんで昨日からになったんだ?」
・・・・・私だけでなく京介にまで<パペット>を使ったとでも言うの?
術者はよっぽど私に恥ずかしい思いをさせたいようね・・・いいわ、今日はその誘いに乗ってあげましょう
「その・・・・・誰よりも早く一番に京介をお祝いしたかったのよ////////」
「////////」