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無題:25スレ目571(中編)

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匿名ユーザー

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夏コミ当日

私はまた一人、会場で同人誌を売っていた
先輩は受験生だから夏休みの大事な時期を
こんなことに使わせるわけにもいかない
だから今回は誘わなかった、けれど…

一人で売り場に座って、ほとんど売れない本を前にするのはただ退屈だった
「この本の良さは普通の人間にはわからないわ」
そう割り切れば良かった、だがやはり話し相手が欲しい、主に先輩が。
誘わず、それでいないから寂しがるなんて自分勝手過ぎる考えだと思う
だけど、逢えない時間をここまで苦に思うというのは
やはり私はあの人が好き、そういう事なのだろう
だからこそ…逢いたい、そう思っていたら

「マスケラじゃねえか」

いつもの声が聞こえた…多分私が、今一番聞きたかった男の声
そこには先輩がいた
何故先輩がいるのかわからなかった
自分で考えようとしたが実際、そんな事はどうでも良かった
誘わなかったのに逢えた、
こう言ってはなんだが、運命すら感じた
私は声をかけようとしたが、先輩がその場で呼んだ人間を見て、私は黙ってしまった。
どこかあの妹に似ている格好、コミケには到底似つかわしくない。

「…あの女は誰なのかしら?」

誰にも聞こえないくらい小さい声で言っった、
今は先輩から直接聞くのが怖くてまともに質問できなかった
先輩と隣にいる女は私に気付かず話しを続けている。
いつものように私に優しく話しかけて欲しかった
けれど今、先輩の目にはきっと…あの女しか映っていない

私は…いったい…いつ選択を誤ったのだろうか…
ゲームならばロードし直せば
違う選択肢を選んで今の悪夢のような光景を無くす事ができるだろう
だがこれは現実、ゲームじゃない
多分今、ちょっと緊張が解ければ私は泣く
それ程までにその光景はショックだった。

少し時間が経ち、
「今のお兄さん、とってもオタクっぽかったです」
「…キモかった?」
「はい、とっても」

この女はなんて事を言うのだろうか
凄まじい殺意が沸いた
自分以外の人間のために殺意が沸くのは初めてだった
私はきっと、先輩に心の底から惚れている
だからこそ目の前の光景を直視したくなかった
先輩のような優しい人なら私でなくとも言い寄る女の1人2人いてもおかしくない
でも信じたくない、ひたすら目の前の悪夢から逃げ出したい
「でも…そんなお兄さんも…」

言わせてはいけない、これを言わせてしまったら
私はきっと今まで通りに先輩に接することができなくなる

「私のサークルの前でイチャイチャしないでくれるかしら?」

やっと出せた声だった、正直、なんであんな台詞だったのかわからない
けれど先輩の隣にいる、憎き女の言葉を遮ることはできた

「え…?…く、黒猫!?」
先輩は素っ頓狂な声をあげた
ずっと前にいたのにいたのに今頃私に気づいたと言うのは少しショックだった。

その後先輩を問い詰めた
受験生が何故こんなところに…と、まず私は聞いた
先輩は割とできてて余裕があったと言った
「…じゃあ私は…何故…」
「おーい、黒猫?」
「…なんでもないわ!」
自分でもびっくりするくらいの声が出た
次に隣にいる女のことを聞いた
その女は桐乃(あの女)の友人らしい
先輩に、その女は彼女かと聞いた
嘘でも良いから否定して欲しかった
だけど…先輩は否定しなかった
泣きそうになった、受験生だからと誘わなかったこと
それが…その選択を誤った事だけが
グッドエンド一直線だったはずの私の道を、バッドエンドにした
適当な言葉が思い浮かばずに私は虚勢を張って言った
「リア充爆発しろ」


ガバッ
私は布団から起き出した
時刻は午前3時
悪夢だと信じたかった光景は確かに悪夢だった
嬉しいはずだ、だったのに何故か…何故か…涙が零れた
嬉しいから出たわけじゃない、自分でもわかる
緊張が解けたからか、もしくは先輩が
私ではなくあの女を選んだのがそこまで嫌だったからか
「…私って、案外嫉妬深かったのね」
妹達を起こさぬようにただただ啜り泣いた

その日は朝まで起きていた
夢の続きを見るのが怖かったから


「私と付き合ってください」
夕方、私は先輩に思いを告げた
顔が熱くなり、心臓の鼓動が大きくなっているのが自分でもわかる
あの悪夢を現実にしないために
何より私が先輩を愛してしまったから

先輩は固まったまま動かない
ダメだったのだろうか、もう遅かったのだろうか
そんな不安ばかりが思い浮かぶ
勇気を出して聞いてみた
「せ、先輩は今…つ…付き合ってる人は…います…か?
私じゃ……ダメですか?」
震えた声で言う、もっとはっきり言えれば良かったかも知れないけれど
臆病な私にはこれが限界だった
だけど先輩は答えてくれた
「い…いや、彼女はいない…てか、すげぇ嬉しい」
「じゃ、じゃあ先輩は…私を…」
「ああ、俺と…付き合おう、黒猫…いや、瑠璃」

それはゲームのグッドエンドに行くような展開で
私は先輩の目の前で泣いてしまった
先輩はオロオロしながら
「そのくらいで泣くようなことか?」と聞いてきた
「その…くらい…って、そんな…簡単に…言わない…で…頂戴」
そのくらいと言われたのには少しムッとした
それはあの現実味のある悪夢を見たあとでは泣くほどのことだったから

そして先輩は私の恋人になった

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