― 負け戦 ―
注1)あくまでも『if』の話です。原作とは乖離しています。
注2)書いていて、思ったよりも切ない話になってしまいました。
そういうのが苦手な人は、ご遠慮ください。
「よう、久しぶりだな」
あなたはいつものように私たちに挨拶をした。
私たち三姉妹も、いつものようにあなたを迎える。
「今日は一人だけなの?」
「ああ、桐乃はちょっと仕事が忙しいらしくてな」
玄関から上がりながら「ハイ、お土産」と言って、私にケーキをあずけてきた。
「ありがとう、すぐにお茶を入れるわ」
そう言って私はキッチンへと向かう。
「おにぃちゃん、またいろいろお話しましょ。」
珠希はそう言って、あなたの手をとってリビングへと向かった。
今日、私はある決心をしていた。
あなたの様子をうかがいながら、折を見て話そうと思う。
私は紅茶をティーポットに入れて、お湯を注ぐ。
リビングからあなたたちの楽しそうな話し声が聞こえてくる。
なぜか私の心がチクリと痛んだ……
きっと、これは私の「嫉妬心」。
いつのころからだったかしら……
あなたが他の女の人と話していると、胸が痛い。
こんなことを感じても、どうしようもないのに……
「お待たせ」
そう言ってリビングに入り、お茶をテーブルに並べえていく。
「おう、ありがとう」
そう言ってあなたはカップを手に取ると、口元に持っていく。
そんなあなたを見ていて、なぜか昔のことが思い出された……
初めてあなたにあったとき、あなたは私のことなど相手にしていなかった。
――いいえ、違うわね。あなたは私を『女性』として見てはいなかった。
もちろん、私もあなたを『男性』というより『お兄さん』という目で見ていたわ。
そのころは、別にそれで良かった。
それ以上のことなど、望んではいなかった。
その後、時々あなたと会って、話をするようになった。
私はそれだけで十分だった。
あなたと馬鹿騒ぎをしたり、たまには真剣な話をしたり、
そんな日々がとても楽しくて、それ以上のことなど無いと思っていた。
でも、しばらくしたある日、私は気付いてしまったの。
私の心の中にある、別の気持ちに……
そんな私の心の変化は、最初は小さなもので、
だからあまり気にも留めなかったわ。
でもね、あなたと会うたびに、その「気持ち」は変化していった。
その「気持ち」はだんだんと大きくなっていき、
あなたが私の心を占有していくのがわかったわ。
それでも、私はその「気持ち」を必死で隠そうとした。
――いいえ、隠すのではなく、「否定」しようとしていたわ。
だって、それは叶わぬこと。
いくらあなたが私の心の中で大きな場所を占めていったとしても、
あなたの心の中では、きっと私は小さな存在でしかないのだから。
あくまでも……
あなたは私の「お兄さん」という振る舞いしか、してくれなかったから。
でもね、そろそろ、限界かもしれない。
もうこれ以上、自分に嘘をつけないわ。
まるで袋小路に迷い込んでしまったよう。
こんな毎日は、苦しくて苦しくて……
だから、私は素直になろうと思ったの。
私の気持ちをあなたに伝えてみる。
そうすることで、あなたと私の関係は壊れてしまうかもしれない。
それはとても怖いことだけれど、
それでも、今の状態よりも「マシ」な気がした。
それくらい、私は切羽詰っていたわ。
そして今、リビングには私とあなたの二人だけ。
珠希があなたにクッキーを作ってあげるということで、
その準備をするため、珠希たちはキッチンで作業をしている。
「どうしたんだ? 何か悩み事でもあるのか?」
あなたは優しく私に問いかけてきた。
どうやら、あなたには私の想いが少しバレているみたい。
「え、ええ、そうね。ちょっとだけ……」
私は歯切れ悪く答えるしかなかった。
初めてあなたに会ってから、もう5年が過ぎていたのね。
あなたはこうしてときどき家に遊びに来てくれるけれど、
それは私に会いに来てくれているわけじゃない。
そんなことは、とっくにわかっている。
あきらかに、負け戦なのはわかっているわ。
でも―― 今だけ私の我儘をきいてほしい。
別にあなたを横取りするつもりなんかない。
ただ、あなたに、私の気持ちを伝えたい。
あなたに私の気持ちを伝えたら、その後はまた『妹』に戻るから。
だから……
私は自分の素直な気持ちをぶつけることにした……
「こ、高坂くん。ちょっと聞いてほしいことがあるんだ……」
注1)あくまでも『if』の話です。原作とは乖離しています。
注2)書いていて、思ったよりも切ない話になってしまいました。
そういうのが苦手な人は、ご遠慮ください。
「よう、久しぶりだな」
あなたはいつものように私たちに挨拶をした。
私たち三姉妹も、いつものようにあなたを迎える。
「今日は一人だけなの?」
「ああ、桐乃はちょっと仕事が忙しいらしくてな」
玄関から上がりながら「ハイ、お土産」と言って、私にケーキをあずけてきた。
「ありがとう、すぐにお茶を入れるわ」
そう言って私はキッチンへと向かう。
「おにぃちゃん、またいろいろお話しましょ。」
珠希はそう言って、あなたの手をとってリビングへと向かった。
今日、私はある決心をしていた。
あなたの様子をうかがいながら、折を見て話そうと思う。
私は紅茶をティーポットに入れて、お湯を注ぐ。
リビングからあなたたちの楽しそうな話し声が聞こえてくる。
なぜか私の心がチクリと痛んだ……
きっと、これは私の「嫉妬心」。
いつのころからだったかしら……
あなたが他の女の人と話していると、胸が痛い。
こんなことを感じても、どうしようもないのに……
「お待たせ」
そう言ってリビングに入り、お茶をテーブルに並べえていく。
「おう、ありがとう」
そう言ってあなたはカップを手に取ると、口元に持っていく。
そんなあなたを見ていて、なぜか昔のことが思い出された……
初めてあなたにあったとき、あなたは私のことなど相手にしていなかった。
――いいえ、違うわね。あなたは私を『女性』として見てはいなかった。
もちろん、私もあなたを『男性』というより『お兄さん』という目で見ていたわ。
そのころは、別にそれで良かった。
それ以上のことなど、望んではいなかった。
その後、時々あなたと会って、話をするようになった。
私はそれだけで十分だった。
あなたと馬鹿騒ぎをしたり、たまには真剣な話をしたり、
そんな日々がとても楽しくて、それ以上のことなど無いと思っていた。
でも、しばらくしたある日、私は気付いてしまったの。
私の心の中にある、別の気持ちに……
そんな私の心の変化は、最初は小さなもので、
だからあまり気にも留めなかったわ。
でもね、あなたと会うたびに、その「気持ち」は変化していった。
その「気持ち」はだんだんと大きくなっていき、
あなたが私の心を占有していくのがわかったわ。
それでも、私はその「気持ち」を必死で隠そうとした。
――いいえ、隠すのではなく、「否定」しようとしていたわ。
だって、それは叶わぬこと。
いくらあなたが私の心の中で大きな場所を占めていったとしても、
あなたの心の中では、きっと私は小さな存在でしかないのだから。
あくまでも……
あなたは私の「お兄さん」という振る舞いしか、してくれなかったから。
でもね、そろそろ、限界かもしれない。
もうこれ以上、自分に嘘をつけないわ。
まるで袋小路に迷い込んでしまったよう。
こんな毎日は、苦しくて苦しくて……
だから、私は素直になろうと思ったの。
私の気持ちをあなたに伝えてみる。
そうすることで、あなたと私の関係は壊れてしまうかもしれない。
それはとても怖いことだけれど、
それでも、今の状態よりも「マシ」な気がした。
それくらい、私は切羽詰っていたわ。
そして今、リビングには私とあなたの二人だけ。
珠希があなたにクッキーを作ってあげるということで、
その準備をするため、珠希たちはキッチンで作業をしている。
「どうしたんだ? 何か悩み事でもあるのか?」
あなたは優しく私に問いかけてきた。
どうやら、あなたには私の想いが少しバレているみたい。
「え、ええ、そうね。ちょっとだけ……」
私は歯切れ悪く答えるしかなかった。
初めてあなたに会ってから、もう5年が過ぎていたのね。
あなたはこうしてときどき家に遊びに来てくれるけれど、
それは私に会いに来てくれているわけじゃない。
そんなことは、とっくにわかっている。
あきらかに、負け戦なのはわかっているわ。
でも―― 今だけ私の我儘をきいてほしい。
別にあなたを横取りするつもりなんかない。
ただ、あなたに、私の気持ちを伝えたい。
あなたに私の気持ちを伝えたら、その後はまた『妹』に戻るから。
だから……
私は自分の素直な気持ちをぶつけることにした……
「こ、高坂くん。ちょっと聞いてほしいことがあるんだ……」