2ch黒猫スレまとめwiki

◆iImnD8ZhUs

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先週の夜、黒猫から電話で買い物に誘われた。

受験生の俺ではあるが、日曜日の半日ぐらいならなんてことはない。

むしろ気分転換にいいくらいだよと快諾したよ。

その時、黒猫に桐乃も誘おうと言われたのだが、

桐乃は撮影があるとかで一緒にこれなかった。

その後、黒猫と桐乃は電話で何か話していたようだったが、何を話していたのやら。



そんな感じでバスに乗ってきた俺は待ち合わせの10分前に到着。

駅近くの広場には、花壇の前で戯れる親子連れとベンチに座っている少女が一人。

これだけ聞くと何もない普通の風景に感じるだろ。

しかしだな――

その少女がどえらい美人だったりする。

顔はよく見えないのだが、いかにもお嬢様って感じだ。

少女はうつむき加減で携帯に目を落としている。

胸元に大きなリボンがあしらわれた清楚な印象の制服。

長くて艶やかな黒髪を柔らかくまとめて左肩から前に垂らしている。

そして太陽の光さえも避けて通るような真っ白な肌。

まさに深窓の令嬢とは、この少女のための言葉なのではと思うくらいだ。

男子高校生諸君なら、わかるだろう。

もう広場の入り口に入った瞬間、俺は目を奪われたね。

いや、奪われたどころじゃない。

目が離せないで硬直していたら――

少女はふと顔をあげてこちらを見つめてきた。

ちょっと気まずくなり、恥ずかしくて顔を背けたいのだが、

どうしても目を離せない。

そうこうしているうちに、少女はだんだんと近づいてくる。

俺は内心あせった。

――だがな、近くにきた少女を見て、俺はさらに驚いたよ。

「早かったわね」

「く、黒猫か?」

「私のこと、もう忘れてしまったの?」

ちょっと拗ねているような問いに、

「いや、そうじゃなくてだな。その、なんだ……」

もう言葉がうまく出てこない。

そんな俺を見て、黒猫は「クククッ……」と悪戯っぽく笑った。



「ペンタブレットの換えのペンを買いたいの」

そう言って黒猫は俺の隣を歩いていく。

出会いから面食らった俺は、隣を一緒に歩いていても、ろくに話ができなかったよ。

だってさ、前に黒猫と二人で歩いているときもあまり会話はなかったけど、

今はなんだか妙に照れくさくって、何を話せばいいのか分からないのだ。

この感じ、前にもあったような気がするが、それがいつだったのか思い出せない。

――っていうかさ、照れくさすぎて頭が沸騰しそうなんだよ。



ほとんど会話もないまま、買い物は終了。

ペンを買うときに「買ってあげようか?」と言ったのだが、

丁重に断られてしまった。

なんとなく既視感に囚われながら、少しだけウインドウショッピングをして

その後二人で喫茶店に入った。

いや、いつもならファーストフード店に入るところなんだけど、

なんだかこの格好の黒猫を連れては入りにくかったんだ。

二人で紅茶をすすりながら、黒猫の学校での話とか俺の受験の話をしているうちに、

あっという間に夕方になって、もう帰る時間になっていた。



駅に向かって二人で歩く。

周りの人がこっちを、いや黒猫を見ているのがわかる。

一緒に歩いている俺は平静を装ってはいるが、

実際、心は終始ドキドキしている。

会ってからずっと頭に血が上りっぱなしでクラクラしてきた。

ちょっとこれ、反則じゃないか。

何が反則なのかと問われても、困るんだけど……

あまりの照れくささに、俺は質問することで凌ごうとした。

「黒猫、ところで、今日俺を呼んだのは、なにか用事があったんじゃねーの?」

まさか、ペンを買うためだけってことはないだろ?

そう思って問いかけたのだが、黒猫は前を向いたまま言った。

「2つの用事があったのだけれど、両方とも済んだわ」

心当たりのない俺は、

「用事って? 俺、何かしたっけ?」

そんな風に訝しげに考えていた。

すると黒猫は急に振り返り、少し頬を赤らめながら上目遣いで言った。

「あなたに会いたかったから……じゃあダメかしら?」

「なっ? あ、あの……」

予想外の答えに言葉に詰まる。

ちょ、ちょっと待ってくれ。

もうなんだか恥ずかしくって、まともに黒猫の顔を見ていられない。

つい、黒猫から目をそらして頭を掻いて誤魔化していると、

黒猫はその様子を別の意味に捉えたらしい。

泣きそうな顔で俯きながら、

「――迷惑だったかしら」などと言っている。

なんか俺の頭の中でブチッと切れた。

「そ、そんなことは無い! 俺も会えてうれしいぜ!」

ついつい大きな声で言ってしまった。

目を大きく見張り、驚く黒猫。

そして、目にうっすらと涙を浮かべながら、

でも嬉しそうに頬を緩めて黒猫は言った。

「あなたに最近の学校での話を聞いてほしかった」

「あなたに新しい制服姿を見てほしかった」

俺は今度はちゃんと黒猫を見据えて言った。

「黒猫、とても似合っているよ」



その後の黒猫は上機嫌で、

「あなたは私が何を着ても似合っているしか言わないのね」とか、

「妹たちと同じことを言うのね」とか、

「やっぱりあなたはお嬢様がツボなのね」とか言って、

ククク……と悪戯っぽく笑っていた。



とうとう俺たちは改札口の前まで来てしまった。

黒猫はここから電車に乗って家に帰る。

俺はバスなので、ここでお別れだ。

「それではまた近いうちに会いましょう」

そう言って改札の中へ向かう黒猫。

なんだか居たたまれなくなって、俺は黒猫の後姿に声をかけた。

「ちょっと待って」

「さっき2つの用事と言っていたけれど、一つは会いたかったからと言っていた」

「それじゃあ、もうひとつは?」

黒猫は上半身だけ振り向きながら

「――呪いの上書きよ」

そう言って改札の中へ消えていった。



――まいったね

俺は駅からバスに乗って帰る途中、今日のことを思い返していた。

もう、終始黒猫にやられっぱなしだ。

なんだか今でも夢を見ていたんじゃないかって気がする。

呪いの上書き? 

とんでもない――

それどころか、俺の心は再インストールって感じだったよ。

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