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『五更瑠璃の転校初日』

みんなが転校ネタを書いているのに乗っかってみました。
黒にゃんが楽しい学校生活を送れることを祈って投下します!

転校初日。
新しい制服に袖を通した私は、担任の先生と一緒に教室に向かっている。

胸は激しく脈打ち、握力は完全に抜け切っている。
両手で鞄を持つのがやっとの状態だ。


べ、別に緊張しているわけではないわ。
昨日の夜は夜更かしをしてしまったから、魔力が足りないだけよ。


私は気持ちを落ち着かせようと、昨日の桐乃との電話を思い出した。


『ふぁぁぁぁ、あんたまだ寝ないの?』
『そ、そそそそんなこと言っても……』
『ちょ、緊張しすぎ! もっと気楽にさぁ……っても無理か』
『な、何を言っているの!? 緊張、なん、て、し、してないわ』
『とにかく。 邪気眼さえ封印しとけば大丈夫だからさ』
『わ、分かっているわ。 人間風情と同等な振る舞いをするのは嫌だけれど』
『はいはい分かった分かった。 まーとにかく頑張りなよ』
『うん……』
『はぁ……これじゃどっちが年上なんだか』
『……うるさいわね。 呪うわよ』
『そのセリフ、学校では絶対に使っちゃダメだからね』


ふぅ……とにかく。
周りの人間共の感覚に合わせて言葉を選んであげればいいってことね。


これでもう、お、おち、おちおち落ち着いたわ。



ドサッ



あ、か、鞄が落ちてしまったわ。


「あらあら五更さん、大丈夫? 顔が真っ青だけれど……」
「だ、大丈夫……です」


くっ……この先生、心配そうにしながら、目の奥が笑っているわ。
というか、この地味眼鏡、どことなくベルフェゴールに雰囲気が似ているわね。



「じゃあ、ちょっとここで待っててね」



気付けば、もう教室の前まで来ていた。
先に入っていった先生は、私の紹介をするのかと思ったのだけど――
全然違う話を始めたわ。



「目玉焼きの焼き加減に文句をつけるような男は――」



どうやら男に振られたらしいわね。
……ふん、いい気味よ。



「……それから、今日は転校生を紹介します」
「そっちが後回しかよ!」



教室の引き戸がガラガラと開く。
私は緊張しながら教室の中に入っていった。



「それじゃあ自己紹介、いってみよ?」
「ご、五更瑠璃です。 よ、よろしく……」


私が実に無難な自己紹介(当初の自己紹介は瀬菜に却下されたわ)をすると、
教室からパチパチと拍手が上がった。

こ、こんな感じでいいのよね?

私は少しほっとして、新しい自分の席に座る。



キーンコーンカーンコーン



HRの時間が終わると、私の周りにはクラスの生徒が群がってきた。


「五更さんってどこから転校してきたの?」
「ち、千葉市よ」
「意外と近いんだね~! っていうか、綺麗な髪!」
「そんなこと……」
「前の学校では部活とかやってたの?」
「一応……ね。 げ、ゲーム研究会に所属していたわ」
「へぇ~! ゲームうまいんですか?」
「ま、まぁそれなりには……」
「お、けっこー自信ありげですね~」


な、何この質問攻め。
でも、まぁ。

桐乃や瀬菜の助言のおかげで、思っていたよりすんなり馴染めそうだわ。


……ん?

ふと視線を感じ、後ろを振り返る。
いかにも不良といった感じの女の子が、私を睨んでいる。
長く伸びた髪は、赤く染まっていた。

ど、どどどどうして?
わ、私何か気に触るような事を言ったかしら!?



◇ ◇ ◇



キーンコーンカーンコーン



終礼のチャイムが鳴り響く。
私の転校初日は、特に何事もなく終わった。

……かのように、思っていた。



ピロピロピロ……



携帯が鳴る。メールが届いたみたいね。

『送信者:高坂京介』

私の顔は少し熱くなる。
この女子高の制服は、可愛いことで有名だから――そのうち京介にも見せたいわ。


『転校初日、どうだった? うまくやれそうか?』


短いメールだったけれど、京介の心配そうな顔が目に浮かんで――
私の顔はだいぶ緩んでしまったらしい。


「あ、五更さん、彼氏からメール~?」
「ち、違うわよ。 彼は別に彼氏とかじゃ……」
「おぉ、でも男からのメールなんだ~」
「なになに? 『うまくやれそうか?』だって?」
「か、勝手に覗き込まないで頂戴」
「きゃー、五更さん顔真っ赤ー」


クラスメイトにからかわれる。
恥ずかしいけれど――こういうのも、悪くはないわね。

「五更さん、良かったらこのあと――」

隣の子が口を開いた時だった。


「 お い 転 校 生 ! ち ょ っ と ツ ラ か し な 」


後ろから大声で呼ばれた。
振り返ると……

朝、私を睨んでいた赤髪の不良だった。


「ちょっと、近くのゲーセンまで一緒に来てもらおうか」


ど……どうしよう。
ふと周りを見ると、今まで私の周りにいたクラスメイトは一歩引いている。
これは、助けを求められそうにないわ……。


不良はツカツカと歩み寄り、私の腕を掴む。


「痛っ」
「さっさとしな」


ど、どうしよう……
誰か、誰かに助けを……


私は震える手で、京介のメールに一言だけ返信した。


『たすけて』



◇ ◇ ◇



学校の近くのゲームセンターに着く。
あ、ここは……

ここはかつて、私が『松戸ブラックキャット』の名でゲーム大会に参加した場所。

私はほんの少しだけ、今の危機的状況を忘れ気を緩める。


「ちょっとそこで待ってな」
「は……はい……」


急に話しかけられ、すぐさま現実に引き戻される。
赤髪の不良は、何やら数人に電話をかけているようだ。


「こっちはもう連れて来たぜ。 早くしな」


な……仲間を呼んでいるのかしら。
ど、どうしよう。
隙を見て逃げた方がいいかしら。

で、でも……下手に抵抗してもっと酷いことをされたら……


……仲間って、男の人もいるのかしら?
もしかしたら……

こんなことなら、無理矢理にでも京介とあの時……
私、どうなってしまうのかしら……



不安が押し寄せ、胸が苦しくなる。
体が震える。
泣きたいのに、なぜだろう、涙は出ない。



――――待つこと十数分。


三人の女の子が私達の前に現れた。

三人とも長い髪を下ろしているが、髪の色が違った。
金髪の女、青髪の女、茶髪の女。
全員、別の学校の制服を着ている。


「お待たせ。 ……この子があの?」
「そうだ」


口を開いた金髪の女に、赤髪が答える。


「本当に本物なのかよー」
「もう、それを今から確かめるんじゃん」


青髪と茶髪はよく分からない会話をしている。
ひとまず、男はいないようだけれど――

今から、私は何をされてしまうのだろうか。


と、赤髪の女が私に話しかけてきた。


「あんた、『シスカリプス』はできるよな?」
「え、えぇ……」
「自信は?」
「それなりに」
「……くくく」


なんだろう。
シスカリが何だと言うの?


「これから、あたしらと一戦ずつ勝負しな」
「!?」
「生意気な転校生ちゃんは、ゲームが得意なんだってなぁ」
「……」
「……全員に勝ったら、解放してやるよ」


……ふふ。
そういうこと。

この不良は、よっぽどゲームに自信がある、ということね。
それで私が学校で『ゲームが得意』と言ったのに反応して、
こうしてケンカを売ってきているというわけね。


……いいわ。

人間風情がどこまでやれるのか……試してあげる。
くくく……



「じゃ、アタシから行かせて!」


茶髪の女が前に出る。
ふん、順番に料理してあげるわ。


「松戸ブラウンキャット、行きます!!」


!?
んなっ!?



◇ ◇ ◇



「ブラウンキャットが……瞬殺……」


ふん。
息巻いていた割にはたいしたことないわね。

この程度で私に勝とうなんて、十万年早いわ。


「頑張って練習すれば、一回くらいは勝てるんじゃないかしら……来世で」
「くっ……」


悔しがる茶髪。
と、彼女を押しのけて前に出てきたのは青髪だった。


「ブラウンキャットは4人の中でも最弱……
 同じように行くとは思わないことね」
「あらそう。 まるで不出来な悪役のセリフね」
「ふん。 そんなこと言ってられるのも今のうちよ」


青髪は高らかに宣言する。


「松戸ブルーキャット、行きます!!」


!?
またそのネーミングっ!?



◇ ◇ ◇



結局。
4人ともたいした違いはなかったわ。

最後の赤髪……『松戸レッドキャット』は、多少反応が良かったけれど。
それでも壁を越えることはなかったわね。


「もうおしまい? なんならもう一巡してあげてもいいけれど」
「くっ……」


悔しそうにしている赤髪。
と、最初に負けた茶髪が近づいてきた。


「あ……あの、あなたはやっぱり……」


と、茶髪が何かを言いかけた時だった。



「 黒 猫 ! ! 」


振り返るとそこには――


「京介!?」
「ハァ、ハァ、ハァ……ぶ、無事か?」
「えぇ……ど、どうしたの?」
「どうしたのじゃねーよ! 何があったんだ!?」


そ、そういえば……
京介に『たすけて』ってメールを送っていたんだったわ。
すっかり忘れていた。


「し、心配してくれたの?」
「当たり前だ!」
「どうしてここが?」
「……お前のクラスメイトに聞いた。 不良に、拉致られたって……」
「そう……」


必死に走り回ってくれたのね……
うれしい。

私の顔が熱くなっているそばで、京介が赤髪をキッと睨む。


「俺の黒猫に何をした!!!」
「……黒……猫?」


赤髪はハッと目を見開くと、他の三人に目配せをする。


「やっぱり……や、やっぱりそうだったんだ……」


バッ

赤髪と他の三人は、すばやく動いた。
突然の事に私と京介は体を硬くする。

彼女達は揃って私の前に来ると――


――そのまま土下座をした。


「失礼しましたっ! 松戸ブラックキャット様!!!」



◇ ◇ ◇



その後、話を聞いてみると。
どうやら人間風情が、私の神プレイに魅せられてチームを結成していたらしい。


「『松戸カラフルキャッツ』と言いますっ!!!」


まったくもってセンスのないネーミングだわ。

あの赤髪は、私の容姿と“ゲームが得意”というところから、
私を松戸ブラックキャットだと疑ってカマをかけてきた、ということだった。

迷惑な雌だわ。



でも、そうね……


「黒猫、その……その制服、か、可愛いな……」
「ば、莫迦なこと言ってないで、行くわよ」


少しだけいいことがあったから、許してあげてもいいわ。



『黒猫氏、転校先はどうでしたかな』
「そうね……おかげさまで、今までより少しはうまくやれるかもしれないわ」
『おや、お友達ができたので?』
「友達と言うか……下僕?」
『ハハハ、まぁなんであれ、うまくやれそうで安心しましたぞ!』



ふふ、そうね。
なんとなく、楽しい学校生活が始まりそうな気がする。

私の予知能力は、そう告げていた。



おわり

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