2ch黒猫スレまとめwiki

◆mIO446hOp.

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匿名ユーザー

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「―――今朝、気が付いたらノート一冊文字と絵でうまっていたわ」

俺の彼女、黒猫は真っ黒なノートを俺に見せつけてくる。
そしてそのままニヤリと笑い、凱歌を揚げるように宣言しした。

「……っふ……どう?私のほうが、あなたのことを考えていたでしょう?」



得意げに脚を組む黒猫。
勝利の余韻に浸っているようだ。
だがな、黒猫よ。
勝ち誇るのは、まだ早いぜ。


「ふ、あめーよ」


驚くんじゃねーぞ。
俺はバッグから一冊の白いノートを取り出すと、黒猫に突きつけた。

「これを見ろ!」
「……なに、かしら」

俺は深く息を吸い込むと、極めて紳士的にこう言った。

「俺だって昨日の晩、舞い上がって眠れなくて、お前と付き合っていく上でどうしていけばいいか、
 シュミレートしてノートにまとめてたら一冊埋まっちまったんだぜ!」





「………え?」

黒猫は初めて外国人に話しかけられた日本人のような顔で聞き返してきた。
聞いて驚け、これはな――

「言うなれば、俺とお前の"未来の記述(フューチャー・レコード)"だな。
 俺たち二人を待ち受ける輝かしい未来を書いた予言書ってことだ。
 つまり俺の"願い"を掴み取る上で必要な"儀式"を段階的にアレした的な感じなもんだ。
 どうだ?俺だってぜんぜん負けてないし、
 どちらかといえば俺のこのノートのほうがお前のノートよりちょっぴり分厚いぜ」

言いながら、俺なに馬鹿なこと言ってるんだって脳みその冷静な部分が警告を発するのを感じる。
初彼女ゲットのテンパりに徹夜明けの異常なテンションが相乗効果になって、なんだがわけわからんことになってる。

「……ふっ……ど、どうだ?俺のほうがお前のことを考えていただろう?」

何言ってんだよ俺、こんなのドン引きだろ。
何を張り合ってんだよ、意味わかんねーよ。
キモすぎるだろ俺。
なんで一生の黒歴史にして墓まで持ってく予定だったモンを当事者に突きつけてんの俺。

「ど……どうだ?う、うれ、嬉しいか?」

もう誰か俺を殺してくれ。
どうしよう手が震えてきた。
黒猫は数度まばたきをし、うつむいてしまったよ。
そのまま数秒沈黙する。

「………」
「………」

そして俺がそろそろ真剣にどうやったら今すぐ死ねるかを考えようと思ったとき、
黒猫が顔を上げた。

「う、嬉しいわ」
「ええ!?」

マジで!?

「嬉しい……、本当よ。あなたがそこまで考えてくれてたなんて。
 本当に、嬉しいわ」

以外なことにストライクだった。
よかった、どうやら俺は生きていてもいいようだ。

いやー我ながらダメだろこれって思ったんだがな、案外受け入れてもらえるもんだな。
だってさー、付き合いはじめたばかりの彼氏がいきなり妄想ノート突きつけてきたらどうするよ?
ダメだろ?アウトだろ?女ならギリギリセーフでも、男ならアウトだろ?
たぶんあやせあたりだったら今頃もう殺されてたはず。
どうも黒猫は、人より感性が豪快にずれているらしい。

一途で健気で、めちゃくちゃ可愛くて、でも思いのほか重いし、めちゃくちゃめんどくさいが、
結構俺らって上手くやっていけるんじゃないかって、
俺はこのとき確信したね。



心の中で感動し、思わずガッツポーズをしかけた俺だが――

「ねえ、これ見てもいい?」
「……はひ?」
「ノート、見せて頂戴」

思いがけない一言。
これはマズい。
マズすぎる。

「…………マジで?」
「そのつもりで見せてくれたのでしょう?」
「え、えーと、もちろんダメじゃないんだがこれを見せるわけにはいかないので、撤収」

手を伸ばしてくる黒猫から逃げるように、俺は立ち上がって、ノートを真上に持ち上げた。
黒猫では手が届かない高さだ。
これだけは絶対見せられない。

「あら、なぜ見せてくれないのかしら。私が見ては都合が悪いとでも言うの?」

黒猫は意地悪くにやりと笑い(クソ、可愛いじゃねえか)、俺の腕をつかみながら手を伸ばす。
おい、ちょっとそんなにくっつくな!

「ほら、見せて頂戴って。いいでしょう。」
「ダメだって、これだけは!」
「いいじゃない、見せて……あっ……」
「うぉっ!」

そのとき、爪先立ちの黒猫がバランスを崩して倒れそうになった。
俺はとっさに黒猫を受け止めるようにして、そのまま二人して――




バターン!




「いてて、大丈夫か黒猫」

折り重なるように倒れた俺たち。
幸い怪我もなさそうだが、黒猫は俺の胸に顔を埋めたまま、無言で固まっている。
俺は黒猫の肩に手をかけ、繰り返した。

「大丈夫か?怪我はないか?」
「あっ、だ、大丈夫よ。ありがとう」

よかった、やっぱり無事だった。
こんなことで怪我でもしてたら大変だ。
黒猫はゆっくりとぎこちなく頭を上げた。
目が合う。
彼女の真っ赤な顔と微かに潤んだ瞳が、俺の心に突き刺さる。
よく考えたら、俺たち抱き合ってない?
すごい体勢じゃない?
黒猫の身体から伝わる温もりで、俺も身体か金縛りにあったようになるのを感じた。





「ご、ごめんなさい。あ、あの……すぐに、どくから……」
「お、おう」

黒猫がそういって俺の身体から離れ、俺から視線を外した。
ほとんど一瞬の出来事だったはずなのに、彼女の身体が離れていくことが猛烈に名残惜しかった。

「……ごめんなさい。ちょっと調子に乗ってしまって」
「大丈夫だって。気にするなよ」
「だけど……えっ?」

黒猫が素っ頓狂な声を上げる。
なんだ?
黒猫が見ている方向に目を向けると――

「どうし……うぉ!」

そこにあるのは吹っ飛んでいた俺のノート。
ご丁寧に、最後のページが全開になって床に落ちていた。
そこには大きな文字でこう書かれていた。



―――黒猫と結婚して、桐乃たちにも祝福してもらって、一緒に幸せになる。



ぎゃー!なんだよこれなんでこうなるの!?
死ぬ、恥ずかしすぎて死ぬ!

「………こ、これって」
「こ、これはだな、その、深い意味があるわけではなく、
 遠い将来そうなればいいんじゃないかなって、
 いや、つまりそのままなんだけどでも――」

「……嬉しい」

つぶやくような声。
黒猫は赤面し、唇を微かに震えさせながら搾り出すように声を出していた。
ノートを拾うと、愛しむように両手で掴み、
そして、今まで見たなかで一番の笑顔を俺に見せてくれた。

「嬉しい。私も、私もそうなったらいいなって、思っていたから」
「く、黒猫!?」
「……だから、あなたの想いが、とても嬉しい」

あぁ、まさに女神の微笑みだ。
やばい、可愛い。
めちゃくちゃ可愛い。
もうとにかくもう一度抱きしめたい。
黒猫の瞳から目が離せない。
心臓が破裂しそうなほど早鐘を打っている。
少しずつ、近づいていく。

「黒猫、俺は――」
「ほ、他のページにはどんなことが……ひっ!」

雰囲気に耐えられなかったのか、黒猫はノートのページをめくって凍りついた。
一気に抱きつこうとしていた俺も、それを見て凍りついた。

「な、ななななな!!!」
「…………」

もう俺は声も出せなかった。
っていうか、言い訳すらもう無理だ。
黒猫は震えながら真っ青になって、再び真っ赤になっていた。

「あ、あああああなたは、な、なんてものをっ!!!
 わ、私に、め、めが、眼鏡をかけさせて、
 そのまま、か、顔に、か、かかか、かけ――」
「ごめんなさい!!!!!」

とりあえず俺は光の速さで土下座した。

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