2ch黒猫スレまとめwiki

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匿名ユーザー

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>>594のSSの副産物
黒猫視点で書いてみた


 元旦の昼下がり。
 今日は先輩と初詣に行く約束になっている。

 いつもの“女王の正装”に、同じ柄の大判ストールを一枚羽織るといった格好で、待ち合わせ場所で佇む私。
 ……こういうときは晴着のほうがいいのでしょうけれど、生憎そんなもの持ち合わせてはいない。流石に自作も出来ないし……。
 大体、自作出来たとしてどうやって着るのよアレ。この土地の古人たちは何故にあんな機能性の欠片もない衣装を考えたのかしら。理解に苦しむわ。
 ――などど割とどうでもいい考察を巡らせていると、待ち人が白い息を吐きながらやってきた。

「あけましておめでとう、先輩」

 いつも通りの口調で新年の挨拶を告げる。少し頬が熱く感じるのは、きっとこの寒空のせいね。

「おめでとさん。今年もよろしくな、黒猫。……んじゃ行くとするか」

          ☆

 境内に差し掛かる頃、参拝客とは明らかに違う一団が視野に入る。レフ板があるところを見ると、どうやら何かの撮影のようだ。

「……あれ、今年も撮影やってるのか。――てことは」
「あ、お兄さん。新年あけましておめでとうございます!」

 振袖を着た、おそらくこの撮影のモデルであろう女が、こちらに駆け寄ってくる。すらりとしたその姿に、着物が良く似合っている。少し羨ま……忌々しい。
 そういえば“あの女”もマル顔のくせに読モなんてやっているけれど、同じモデルでも少し印象が違う。雰囲気は似ているのだけれど……髪色のせいだろうか。
 “あの女”の晴着姿を想像しても、何時もの如く『凄く可愛いけど全然似合わない』になるでしょうし。

「やっぱりいたか、おめでとさん。今年も年明けから大変だな。毎年やってんの?」
「お仕事的には毎年やってるみたいですね。私は去年と今年でまだ2回目ですけど」

 ……それにしても、どこかで見た気がする。単に“あの女”に似ているというだけでは無く……。“前世”で邂逅でもしていたかしら。

「ふ~ん。しかし正月から仕事じゃ遊びにも行けないな」
「そんなことないですよ? もうすぐ終わりですし、終わったら桐乃と待ち合わせで初詣に行く約束なんです。
 それはそうと、お兄さん。……今年はお姉さんと一緒じゃないんですね?」

 “お姉さん”……きっと田村先輩のことね。その存在を知っているということは、この女、先輩と結構親しい仲なのかも知れない。
 ふと隣を見上げると、先輩の顔、随分浮かれているようにも見える。……そういえば、この女の容姿って正に“先輩好み”そのものじゃない……。

「別に毎年一緒ってワケでもないぞ? ……っと、紹介してなかったな。こいつは俺の……えと」

 急に話を振られて、一瞬、思考が停止する。やや照れくさそうに口篭る先輩を見て――ちょっと安心した。
 相変わらず、こういうところは“へたれ”のままなのね。そういうところが…………なのだけれど。
 仕方がないわね。……じ、自己紹介は苦手だけれど……この女には弱みを見せてはいけない。そんな気がする。

「黒……、……五更瑠璃です。……よろしく」

 名乗った名前は、“仮の名前”のほうだった。何故だろう……、私の“黒き獣”としての直感が“真名”を名乗ることに警鐘を鳴らしたのだろうか――

「私、新垣あやせです。よろしくお願いします。……五更、さん? 以前どこかでお会いしました?」

 返された言葉は、先ほどの私の“既視感”を肯定するものだった。
 ……気のせいじゃなかったのかしら。――でも思い出せない。さっきから思い出そうと努力はしているのだけれど。
 大体、私は人の顔を覚えるのが得意ではないのよ。仕方ないでしょう、自慢じゃないけどぼっち暦長かったんだから。悪かったわね、呪うわよ?

「……さぁ、覚えていないけれど」

 とりあえず、正直に答えておこう……。

「あー……、こいつ桐乃の友達でもあるんだ。それでどっかで見たんじゃないか?」
「桐乃の……? ……ああ、『あっち側』のですか。……思い出しました。一昨年の夏に一度会ってますよね。例の『なつこみ』とかの帰りで」

 ぽん。あの時ね。“あの女”の秘密が知人バレしたときの相手……、あの“スイーツ2Pカラー”。晴着に合わせて髪形を変えているから分からなかったのよ。

「……良く覚えているな」
「まぁ……あまり思い出したくは無い記憶ですけど」

 ――――俗な言い方をするなら、かちん、と来た。

 ……言ってくれるわね、この人間風情が。私にとっては人生最高の思い出ランキングのトップを争うくらいの日のことだというのに。

 どうやらこの“2Pカラー”、あの時の様子からして“あの女”に随分入れ込んでいるようだし……、相応の報復で身の程を思い知らせてやる必要があるようね。
 クク……、“女王”たるこの私の逆鱗に触れたこと、後悔の念に苛まれるといいわ。

「……昨日も一緒に行っていたわよ。“冬の祭典”のほうだけれど。あの女の舞い上がり様と言ったら無かったわ。ねぇ、先輩?」
「……へー……そうなんですか。……だから年末は用事があるって言ってたんだ……」

 っう……ぐっ……?
 ……何、今の眼は……っ。
 ひ、瞳から光彩が消えていたわよ……っ?

 ――初対面の時の“あの女”の眼力にも相当な威圧感があったけれど、この女の眼は違う。威圧感、などという生易しいものじゃない。
 鼓動が早鐘を打つ。額に厭な汗が滲む。この手足の震えは寒さから来るものとは違う――

 ……こ、これがリアル“殺意の波動”というものなの……っ。

 ――ヤバい、この女は本気でヤバい。この場に居たら間違いなく殺される。っていうか、この女、絶対もう何人か殺っているわ……っ。

 くぃくぃ
「……先輩、そろそろ」

 “殺気女《メドゥサ》”を刺激しないよう、先輩に早急に此処から離れようという懇願の思念を飛ばす。
 あぅあぅ、せ、先輩っ、早く、早く――

「あ、あぁ。仕事中に悪かったな。んじゃ俺たちは行くわ」
「……はい。ではまた」

 はぁはぁはぁ。…………し、新年早々から寿命が縮んだわよ。
 あの“殺気女”……、お、覚えておきなさい……、今度会ったら――――全力で逃げてやるわ……っ。

 -END of KURONEKO SIDE-

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