黒猫 「あけましておめでとう、先輩」
京介 「おめでとさん。今年もよろしくな、黒猫。……んじゃ行くとするか」
☆
京介 「……あれ、今年も撮影やってるのか。――てことは」
あやせ 「あ、お兄さん。新年あけましておめでとうございます!」
京介 「やっぱりいたか、おめでとさん。今年も年明けから大変だな。毎年やってんの?」
あやせ 「お仕事的には毎年やってるみたいですね。私は去年と今年でまだ2回目ですけど」
京介 「ふ~ん。しかし正月から仕事じゃ遊びにも行けないな」
あやせ 「そんなことないですよ? もうすぐ終わりですし、終わったら桐乃と待ち合わせで初詣に行く約束なんです。
それはそうと、お兄さん。……今年はお姉さんと一緒じゃないんですね?」
京介 「別に毎年一緒ってワケでもないぞ?……っと、紹介してなかったな。こいつは俺の……えと」
黒猫 「黒……、……五更瑠璃です。……よろしく」
あやせ 「私、新垣あやせです。よろしくお願いします。……五更、さん? 以前どこかでお会いしました?」
黒猫 「……さぁ、覚えていないけれど」
京介 「あー……、こいつ桐乃の友達でもあるんだ。それでどっかで見たんじゃないか?」
あやせ 「桐乃の……? ……ああ、『あっち側』のですか。……思い出しました。一昨年の夏に一度会ってますよね。例の『なつこみ』とかの帰りで」
京介 「……良く覚えているな」
あやせ 「まぁ……あまり思い出したくは無い記憶ですけど」
黒猫 「…………昨日も一緒に行っていたわよ。“冬の祭典”のほうだけれど。あの女の舞い上がり様と言ったら無かったわ。ねぇ、先輩?」
あやせ 「……へー……そうなんですか。……だから年末は用事があるって言ってたんだ……」
くぃくぃ
黒猫 「……先輩、そろそろ」
京介 「あ、あぁ。仕事中に悪かったな。んじゃ俺たちは行くわ」
あやせ 「……はい。ではまた」
☆
京介 「あんまり気を悪くしないでくれな。多少偏見はあるけど、根はいいやつなんだ」
黒猫 「……別にそういうわけではないわ。先輩のお人好し加減を再認識しただけよ。それより……いかにも先輩好みの外見だったわね」
京介 「うぐっ……、な、何を根拠にそんなことを……黒猫さん?」
黒猫 「エロゲではいつも黒髪ロングの女の子から攻略しているそうね?」
京介 「くっそー桐乃のやつめ! 一体どこまで俺の尊厳を貶めれば気が済むんだ!?」
黒猫 「全く、雄というのは莫迦で単純な思考の生き物ね。外面だけでいとも簡単に“魅了”の枷に囚われてしまうのだから」
京介 「うぅ、……まぁ、俺の嗜好については否定はしない……が、ひとつだけ言っておくことがある」
黒猫 「……何かしら。“眼鏡っ娘属性”は外せないという話なら重々承知よ?」
京介 「違ぇよ! いや、違わないけど! ……もう俺にプライバシーとか微塵も無いんだな……。兎に角、ちょっと耳を貸してくれ」
黒猫 「……?」
京介 「……えっと、だな。………お前の髪だって長いし、本当の意味で漆黒で――俺が今まで見た中じゃ一番、……その、綺麗だ」
黒猫 「……っ。な……っ、何を言うのよ、いきなり……」
京介 「――つまり、そういうことだっての」
黒猫 「…………本当に莫迦ね。……でも、……それならさっきのことは、許してあげるわ」
☆
京介 「黒猫は何をお願いしたんだ?」
黒猫 「……っふ、“堕天聖”たるこの私が高高辺境の土地神如きに願うことなどあるわけがないでしょう」
京介 「ふむ。――まぁ家族の無病息災、ってあたりか」
黒猫 「……先輩はいつから“思念感応”の能力を使えるようになったのかしら」
京介 「まぁ、お前との付き合いもそろそろ長いからな」
黒猫 「フフッ、殊勝な心掛けだけれど、真の覚醒にはまだまだね。――あと二つ、お願いしたから」
京介 「ほぅ。その二つとは?」
黒猫 「……一つは、先輩の合格祈願よ。私としては、部長のように留年してくれても一向に構わないのだけれど……望みは薄そうなのでこっちにしたわ」
京介 「そいつは有難い選択だな。……まぁ、そんなに心配しなくても大丈夫だって」
黒猫 「……心配って何のことかしら」
京介 「受けるのは地元の大学だし、当分ここから離れるつもりは無ぇよ。学校で会えなくなっても、それ以外では自由に会えるだろ?」
黒猫 「それは……、そうなのでしょうけれど」
京介 「……そうだな、言い直そう。――俺は当分、『お前』から離れるつもりは無ぇよ」
黒猫 「……っ」
京介 「あー、こほん。……それで、もう一つのお願いって何だ?」
黒猫 「……それは……意味が無くなったわ」
京介 「ん?何で」
黒猫 「――だって、もう叶ってしまったもの」
-END-
京介 「おめでとさん。今年もよろしくな、黒猫。……んじゃ行くとするか」
☆
京介 「……あれ、今年も撮影やってるのか。――てことは」
あやせ 「あ、お兄さん。新年あけましておめでとうございます!」
京介 「やっぱりいたか、おめでとさん。今年も年明けから大変だな。毎年やってんの?」
あやせ 「お仕事的には毎年やってるみたいですね。私は去年と今年でまだ2回目ですけど」
京介 「ふ~ん。しかし正月から仕事じゃ遊びにも行けないな」
あやせ 「そんなことないですよ? もうすぐ終わりですし、終わったら桐乃と待ち合わせで初詣に行く約束なんです。
それはそうと、お兄さん。……今年はお姉さんと一緒じゃないんですね?」
京介 「別に毎年一緒ってワケでもないぞ?……っと、紹介してなかったな。こいつは俺の……えと」
黒猫 「黒……、……五更瑠璃です。……よろしく」
あやせ 「私、新垣あやせです。よろしくお願いします。……五更、さん? 以前どこかでお会いしました?」
黒猫 「……さぁ、覚えていないけれど」
京介 「あー……、こいつ桐乃の友達でもあるんだ。それでどっかで見たんじゃないか?」
あやせ 「桐乃の……? ……ああ、『あっち側』のですか。……思い出しました。一昨年の夏に一度会ってますよね。例の『なつこみ』とかの帰りで」
京介 「……良く覚えているな」
あやせ 「まぁ……あまり思い出したくは無い記憶ですけど」
黒猫 「…………昨日も一緒に行っていたわよ。“冬の祭典”のほうだけれど。あの女の舞い上がり様と言ったら無かったわ。ねぇ、先輩?」
あやせ 「……へー……そうなんですか。……だから年末は用事があるって言ってたんだ……」
くぃくぃ
黒猫 「……先輩、そろそろ」
京介 「あ、あぁ。仕事中に悪かったな。んじゃ俺たちは行くわ」
あやせ 「……はい。ではまた」
☆
京介 「あんまり気を悪くしないでくれな。多少偏見はあるけど、根はいいやつなんだ」
黒猫 「……別にそういうわけではないわ。先輩のお人好し加減を再認識しただけよ。それより……いかにも先輩好みの外見だったわね」
京介 「うぐっ……、な、何を根拠にそんなことを……黒猫さん?」
黒猫 「エロゲではいつも黒髪ロングの女の子から攻略しているそうね?」
京介 「くっそー桐乃のやつめ! 一体どこまで俺の尊厳を貶めれば気が済むんだ!?」
黒猫 「全く、雄というのは莫迦で単純な思考の生き物ね。外面だけでいとも簡単に“魅了”の枷に囚われてしまうのだから」
京介 「うぅ、……まぁ、俺の嗜好については否定はしない……が、ひとつだけ言っておくことがある」
黒猫 「……何かしら。“眼鏡っ娘属性”は外せないという話なら重々承知よ?」
京介 「違ぇよ! いや、違わないけど! ……もう俺にプライバシーとか微塵も無いんだな……。兎に角、ちょっと耳を貸してくれ」
黒猫 「……?」
京介 「……えっと、だな。………お前の髪だって長いし、本当の意味で漆黒で――俺が今まで見た中じゃ一番、……その、綺麗だ」
黒猫 「……っ。な……っ、何を言うのよ、いきなり……」
京介 「――つまり、そういうことだっての」
黒猫 「…………本当に莫迦ね。……でも、……それならさっきのことは、許してあげるわ」
☆
京介 「黒猫は何をお願いしたんだ?」
黒猫 「……っふ、“堕天聖”たるこの私が高高辺境の土地神如きに願うことなどあるわけがないでしょう」
京介 「ふむ。――まぁ家族の無病息災、ってあたりか」
黒猫 「……先輩はいつから“思念感応”の能力を使えるようになったのかしら」
京介 「まぁ、お前との付き合いもそろそろ長いからな」
黒猫 「フフッ、殊勝な心掛けだけれど、真の覚醒にはまだまだね。――あと二つ、お願いしたから」
京介 「ほぅ。その二つとは?」
黒猫 「……一つは、先輩の合格祈願よ。私としては、部長のように留年してくれても一向に構わないのだけれど……望みは薄そうなのでこっちにしたわ」
京介 「そいつは有難い選択だな。……まぁ、そんなに心配しなくても大丈夫だって」
黒猫 「……心配って何のことかしら」
京介 「受けるのは地元の大学だし、当分ここから離れるつもりは無ぇよ。学校で会えなくなっても、それ以外では自由に会えるだろ?」
黒猫 「それは……、そうなのでしょうけれど」
京介 「……そうだな、言い直そう。――俺は当分、『お前』から離れるつもりは無ぇよ」
黒猫 「……っ」
京介 「あー、こほん。……それで、もう一つのお願いって何だ?」
黒猫 「……それは……意味が無くなったわ」
京介 「ん?何で」
黒猫 「――だって、もう叶ってしまったもの」
-END-