2ch黒猫スレまとめwiki

クリスマス:14スレ目818,821,826,830(中編)

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kuroneko_2ch

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だれでも歓迎! 編集
「おう、待たせたな」
「この聖夜に五分の遅刻よ……下僕の癖に遅れてくるなんて、いい度胸ね」
「す、すまん。その……」
「言わなくていいわ、どうせまたあの女に振り回されて遅れたのでしょう……でなければ、こういう時に先輩が遅れて来るなんてないでしょうし」
「……正解だが、まるで見ていたかのような発言にちょっとびびった」
「フフフ……この地は全て私の魔眼の下にあるのよ? その程度は容易い事」
 まさに出掛けにちょっとした喧嘩をやらかしていたのだが、それにしても……うーむ……俺や桐乃の行動ってよほど読まれやすいんだろうな。
いや……それだけ、こいつが俺たちのことを理解してくれてるって事かもしれない。

「まぁ、とりあえず行こうぜ」
「ええ、立派にエスコートをつとめて頂戴……どこへ連れて行ってくれるのかしら?」
「ん、任せろ……ええと……」
 ごそごそとポケットを探り、用意していたメモを探りだして広げ…… ……!

  「……のうぇっっ!?」

「んなっ……! 貴方……何という物を公の場で広げているのっ!」
 嘘っ! 俺ちゃんと下調べして地図とか書いてたのにっ! 迅雷のごとき素早さでもって「それ」を丸め、ポケットに押し込む……が……。
はみ出してるっ! ぐわふぇっ!

「み……みちゃ……見ました……?」
「……あ……貴方、どれだけ業が深いの……」
「ちっ、違うっ! これは俺のだけれどそうじゃないっ!」
 なっ……なんでこんな物が俺のポケットに……というか何故なんの疑問も持たずに広げたんだ俺! 明らかにサイズが違うだろ!
感触とかも! メモの走り書きがA3サイズになってる時点で気付けっ!

「……どうせ、あの女の仕業なのでしょう」
 黒猫がため息をつきながらそう呟く。う、まぁ……どう考えてもそうだよなぁ……前にもやらかしてくれやがったけど、あいつ俺に
何の恨みがあるんだよ!
「う……、す、すまん。その……」
「気にしていないわ、そんなものさっさと仕舞って行きましょう」
 俺は気にするんだが……こういうときの心遣いって、麻奈実やお袋のもそうだが……かえって辛いな……。
「あ、ああ……ったく……あいつ、いったい何の恨みがあってこんな事を……」
「……『恨み』……?」
「ん、そうでもなきゃこんな真似しねーだろ」
「……はぁ……何処までも愚鈍な存在なのね……先輩の首の上に載っているソレは、裁きの羽根よりも軽いのかしら?」
 何言ってるかやっぱ分からんぞ……しかし弱った……。
「ま、まぁいいじゃないか……しかしどーすっかな、予定はともかく地図やチケットは痛い」
「あまりの鈍さに泣けてくるわ……やはり、相応の躾が必要な様ね……まずはその変態的に偏向した性衝動から
矯正していくべきかしら?」

 なんか地雷踏んだっ!? 何故っ! さっき理解ある女な発言してたのにっ……!
……やっぱピンナップの眼鏡巨乳秘書モノが駄目だったっ!? フォ、フォローっ!

 こんな時はっ……選・択・肢・召還! カモーン……そして君に決めたっ! 

「ふっ……お前の方が、こんなモノよりもずっと魅力的だぜ?」
「…………」

「……」
「……」

 …………あっ……アレー? おっ、おっかしーな……桐乃に借りたエロゲだと、褒めればたいていうまくいってたのにっ!
「一度、はっきり言った方が良いのかしら……いい事? 先輩、私は貴方の性的嗜好については既に知っているし、
思春期の男性の……そ、その……生理についても……あの女よりは理解しているつもりよ。それは勿論、抵抗が無いと
言えば嘘になるけれど」

 ごはっ……! こっ……これはこれで凄く辛いっ、これなんて羞恥プレイっ!? 桐乃のカリビアンバレや麻奈実の 「お兄ちゃん」
も辛かったが……真面目に解析されて説明されるって……物凄くキツいっ!
「『資料』という口実で貴方のコレクションの一部をいただいて、ほぼリサーチ済みだし……」
 いつの間にっ! 誰がっ…… いや、聞くまでもないけどよ……犯人……っ!
「ノリノリで渡してくれたわ『これ3ヶ月くらい底にあったからバレないと思うよ?』って」
 殺してぇ……今俺はアイツを心底殺してぇ……っ!!
「そ、それに……私はまだ成長期だから、予定ではあの女よりも田村先輩や赤城さんに近づくはずよ……ただ、流石に……その

  『眼鏡をかけたまま顔に』……はちょっと……」

「すんませんでしたあああああああああっ」
 ここが屋内ならジャンピング回転土下座だよコラ! もういっそ殺してくれ!
「入ったら……しみるし痛いって言うし……」
 マジ勘弁してくれ…… というか、言ってるおまえが涙目じゃねえか! 桐乃といいオマエといい……耳年増にも程があるだろ。
そういや、ゲームで自キャラが脱がされかけたときもこんなだったな。あー、うわー、顔真っ赤だ! やべえ、抱きしめてえ!
ええいっ……っ!
「ど……どっか行こうかっ!」
「……顔が危険すぎるというか、発情しているようにしか……今すぐ帰りたくなってきたわ……」

 しっ……しまったぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああっっ!!
な……なんかテンパり過ぎだろう俺……これは流石に駄目だ……桐乃めっ……なんてことしてくれやがったんだ……orz

「ちょ、ちょっと……こんな場所で座り込まないで頂戴」
「お、おお……すまん……」
「はぁ……少し言葉が過ぎたわ、せっかくの逢瀬だもの……もっとゆっくりと段階を踏んで躾ける事にするわ」
 ……調教されるのは確定なのか。 
「だ、大丈夫だけど、桐乃の悪戯のことはもう勘弁してくれ><」
「やれやれ……ちょっとした事で挫けてしまうのは本当に兄妹でそっくりなのね……」
 ホントもう勘弁してください……。つうか桐乃がそんなタマかぁー?
「まぁ、天罰と思って忘れることね、もしくは躾のなっていないフェレットに噛まれたと思って……先輩が取ってきた、軽薄な行動の結果よ……
一昨年は田村先輩と……去年は実の妹と……どうしようもない雄ね」
「ひでー言われようだなおい」
 もうすっかり慣れたけどな、なんだかんだでこいつとの付き合いも……恋人同士になってからも、四ヶ月が過ぎたわけだし。
ただ、やっぱその、なかなか進展しないっつーか、健全な男子高校生としての色々な期待とかあるわけですよ、……そこんとこ
もうちょっと酌んで欲しかったぜ!

「ふふ……シスコンにしてマゾ属性の先輩には丁度いいでしょう?」
「否定しづらいが、そろそろそのネタでイジるのは勘弁してくれ」
「そう……御免なさい、私も興が乗りすぎたようね……」
 え、ノリだったのか今の……。
「……う、まあ……ほどほどで。……しかし弱ったな……今日は飛込みの予約無しじゃ、どの店も入れないだろうし……」
 せめて携帯に番号くらい入れとくんだった……あと、アプリの使い方も桐乃に習っときゃ良かったぜ。
途方にくれていると、黒猫が微笑みながら 「いい事を思いついた」 という風にこう切り出した。
「なら……私に任せてもらえないかしら?」
「え?」
「先輩の思っていたようなご期待に沿えるかどうか分からないけれど……普段の労をねぎらうに、やぶさかではないのよ?」


「こ……こっちのほ……ご本よんで……?」
「おう、いいぜ……うわ『かちかち山』だ、懐かしいな」
「もう……ちょっと、お兄ちゃんの邪魔をしては駄目よ……」
「姉さまー、私も手伝う!」
「……それじゃ、こっちのチンした鳥を運んで並べてね」
「はーい」

 ……俺は……今、こうして黒猫の家のコタツで……のんびりとくつろぎながら料理が出来るのを待っている。
膝の上には下の妹がちょこんと乗っていて絵本を読んでくれとせがんでくる。最初はちょっと人見知りなのかと思ったけど、そうでもなかったみたいだ。
「あ、こら。……ちゃんと踏み台を使わないと危ないわよ」
「だいじょうぶー」
 あー……なんか和むな……そういや俺も昔……こんな風に桐乃に絵本とか読んでやったことがあったような……なかったっけ? 
まあいいや、昔過ぎてよく思い出せない。
「けーき……あけていー?」
「まだ駄目だな」

 しかし、この妹どもは可愛いな……うちの茶トラとはえらい違いだぜ……というか、桐乃がこの子猫たちを見たら、めるるイベントの
時のように危険な状態になりかねん……幼児誘拐とかは勘弁だぜ……(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
「え~」
「はは、もうちょっと待てよ。瑠璃お姉ちゃんがすぐご飯持ってくるから」
 ここへ来る道すがら、あわてて買ってきたコンビニのケーキなんだけど、これだけはしゃいでくれるとなんとも嬉しくなるな。
一応、黒猫へのプレゼントも用意しておいたけれど……。

「はいー、おまたせでしたー」
「お、さんきゅ」
 上の方の妹……(翡翠でみどりと読むらしい)みどりちゃんがこれまたコンビニで買ってきたチキンを運んでくる。
周りにレタスやトマトを盛っただけで、ずいぶん美味しそうに見えるものだな。手伝ってやりたいが……下のほうの妹
(こっちは琥珀と書いて「こはる」と読むらしい)が膝を占拠していて、動けないのが辛いところ。

「ほら、こはる……お兄ちゃんの膝からおりなさい? こっちでしょ……」
 さっきの毒舌からは想像も付かない優しい声で妹を呼ぶ黒猫……なんかいいな、こういうの……普段見えないところだけに、新鮮に感じてしまう。
「はーい」
 丸っこいスプーンとフォークが並んだ小さな食器が置かれた席に移動する琥珀、ぽっかり空いた膝がちょっとだけ寂しい。

……んわっ……!
「……ど、どうかしたの? 先輩」
「いっ……いや……足が痺れた……」
 ずーっと乗せてたからな……重みがなくなって、急に来た……。
「吃驚させないで……すぐ治るわよ。親指を折っておくといいわ」
「あ、なんか聞いたことあるかも」
「ほら……翡翠も座って 『いただきます』 しましょ」
「はーい」

 うん、すげー素直な良い子達だ……この世には素直な妹というものも、存在していたんだな……ちっょと感動したぜ!
「ねえ、ねえさま」
「何?」
「おにいちゃんはねえさまのおとうさんなのですか?」
「……」
「……」
 ええと……これって、文脈的に……そうだよな……やっぱ。お母さんに対するお父さんとか、嫁に対する亭主だよな……?
どう答えてよいものか分からず黒猫の方を見ると、これまた返事に詰まったと見えて真っ赤になっていた。
うーむ、…… ……どう答えたら……ええい……!
「あのね……お兄ちゃんはね、お姉ちゃんの……」

「……2人とも、寝ちゃったか」
「そうね……お客が来るなんて珍しいから、はしゃぎ過ぎたのかも。……2人の相手をしてくれて、プレゼントまでくれて……ありがとう」
「お、おう……こっちこそ、ご馳走様」
 コンビニで買った、メルルのおもちゃ付きお菓子とかだけど……あんなに喜んでくれると思わなかったぜ。
さっきまではしゃいでいた2人の妹たちは 「これから 『本物のサンタさん』 が来るから、早く寝なさい」 と黒猫に言われ、二人ともすぐに布団に入り
ふすま一つ向こうの部屋ですやすやと寝息を立て始めた。……本当に素直だよな……

「前もって分かっていれば、もっとちゃんとしたものを作ったのだけれど……」
 そう言って謙遜している黒猫だが、コンビニのチキンにもちっょと手が加えられていて、おそらく自家製らしいハーブと胡椒で、
コンビニの品にありがちな臭みは全く感じなかった。手料理……という訳じゃないが、普段から家事をこなしていないと、できない手際の良さだ。

「いや、俺の方こそ急に来ることになっちゃって……予定とか、失敗しちゃってゴメンな?」
「心配しないで、元々そんなに期待してなかったから問題ないわ」
「……それはそれで凹むなオイ」
「他意はないのよ?」
 分かってるって、これでもだいぶんおまえの事を理解できてるつもりなんだからな。でなきゃ……あの時、ああいう事にはならなかったし。
「そうか、そりゃ良かった」
「それに、もっと嬉しいこともあったから……」
「……さっきのは、その……」
「勢いでも、その場の事でもいいのよ、私が嬉しかったのだから、水を注さないで頂戴」
「う、すまん」
「さっき、渡せなかったのだけれど……良かったら、使って頂戴……その……妹たちのもののついでに編んだのだけれど……」
 そう言って、黒猫がリボンで飾った手編みらしいマフラーを渡してくれた。黒を基調としたシンプルな色だけれど、立体的な編み方と模様で
そういうのに疎い俺でも、たいしたものだと分かる。何色か分けて使われている毛糸のトーンもすごく綺麗だ。

「……髪の毛とかは編みこんでいないから、安心して頂戴」
 んな心配してねえよ!?
「お……さ、サンキュ……早速使わせてもらうわ……っと、俺からも、コレ……」
 ポケットから……今度はちゃんと確かめてプレゼントを取り出す。
「……ありがとう……」
「前に、コミケでは、安いのしか買ってやれなかったから……その、今度はちゃんとしたのをと思って」
「…………まだまだ駄目ね……」
 あれ、また地雷っ!? っかしーなぁ……。
「気……気に入らなかった……?」
「……いいえ、これは凄く気に入ったわ……ねぇ、着けてくれるかしら」
 そう言って、黒猫が綺麗な黒髪をかき上げる……つーか! うなじやべえ! マジヤバイ!

「つっ……着けるぞ……」
「鼻息が怖いのだけれど……」
 紫の石の目が入った黒猫をモチーフにしたペンダントで、我ながらちょっと安直過ぎるかも……と思ったのだけれど、
気に入ってくれたなら何よりだ……出掛けにこの事で桐乃と相談して喧嘩になったのはまぁ、さておくとして……だな。
「ほい、出来たぞ」
「ありがとう……ねぇ……」
 震える手でペンダントを着け終える……その肩に置いていた俺の手を、黒猫がそっと取って引き寄せ……
「……瑠璃」
「先輩……」
「ん……」
「……んっ……」
「「……」」
 ……あれ? 今何か「 」がちょっと多く……ふすまの隙間が……

  「「「「!!!!」」」」

 …… ……
…………その後……色々あったけど……桐乃に締め出し食らって、門限過ぎて親父に〆られたけど……本当に、最高のクリスマスだったぜ……うん。

(おわり)

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