2ch黒猫スレまとめwiki

◆h5i0cgwQHI

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匿名ユーザー

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『我輩は父である』

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父猫視点のSSです。
温泉街-お泊りまでの間にあった話として。
いずれ本編で初遭遇エピソードはやるのでしょうが、
先行して妄想してみました。
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はっきり言おう。
私は落ち込んでいた。


「どうしたの?父さん……」
「あぁ、瑠璃か」
「なんだか最近、元気がないみたいだけど」
「いや、別にそんなことはないぞ、ハハハ」
「それならいいのだけど」


私の娘は本当によく出来た娘だ。
父親の贔屓目に見ても、周りの子とは比べ物にならない。

見た目ひとつとってみても。
顔や長い黒髪は母さん(世界一美しい)の若い頃に瓜二つだし、
可愛らしい泣きボクロは、大人になれば周囲の男を魅了するのだろう。

しかもそれだけではなく、忙しい私や母さんへの気遣い、妹達の世話。
家事全般を、文句一つ言わずに行いながら、学力だって決して低くない。


まぁ一つだけ難点を挙げるとするならば、


「珠希。あなたもいずれ闇の声が聞こえるようになるでしょうククク……」
「?」
「ルリ姉やめなよ~」


と、このように、たまに(いつも?)変な言動をすることだろう。
てか何だよ、闇の声って!?
聞こえねーよ!!!!!

……くっ……思わずクールな父親の仮面がはずれそうになってしまった。
私もまだまだだな。
い、いや本当に本心はクールなんだよ?


話が少しそれた。
で、そうだ。
私が落ち込んでいる話だったな。


瑠璃は、その言動からかもしれないが、人付き合いが苦手な娘だ。
中学では孤立していたし、高校でも孤立していると聞いていた。

今更言い訳にしかならないが、瑠璃が高校でうまくやっていることなど
……私は知らなかったのだ。


私がかわいい娘達をぼんやり見ていると、
真ん中の日向がこちらに近づいてきた。


「ねーお父さん、ルリ姉の転校ってやっぱやめらんない?」
「あぁ、もう手続きが済んでしまったからな」
「そっかぁ……今度はうまくやれんのかなぁルリ姉」


私の転職先が決まり、社宅に入ることが決まった際。
私は妻と話し合い、娘達の転校を決めたのだ。

珠希と日向は小学生だし、歩いて通えない距離は問題外。
話題は瑠璃のことだった。


『学校では孤立しているみたいだし、
 これを期に場所を変えてみるのもいいかもしれんな』
『そうね……少々強引でも、転校させましょうか』


『瑠璃、ちょっといいか』
『えぇ、どうしたの父さん』
『松戸の社宅に入ることになった話は、もうしたよな』
『そうね。ふふふ……父さんが頑張ったからよ』
『ふ、ふん。ほ、褒めても何も出んからなっ』
『ククク。はいはい、分かっているわ』
『それで、だ。一つ提案があるんだが』
『何?』
『……学校を転校してくれないか?』


……私は知らなかったのだ。
もちろん、言い訳にもならないのは分かっている。


「高坂くんとも別れちゃうしさぁ……ずっと楽しそうにしてたのに」
「……やはり、転校が原因なんだろうな」
「ルリ姉は言わないけど、それ以外に思いつかないんだよねぇ……」
「ふむ……」


その程度の事で別れを選ぶのか、とは大人目線の話なのであろう。
物理的な距離が離れるというのは、やはり大きな出来事だ。

私の知らないところで、人付き合いの苦手な瑠璃がやっと作った彼氏。
その仲を引き裂いてしまったのが、私なのだ。


「ルリ姉、夏休み最後の落ち込みようったらなかったよね」
「そうだな……もう部屋から出てこないんじゃないかと思ったぞ」
「あれが"ヒキコモリ"ってやつ?」
「……旅行に行ったのは正解だったかもしれんな」
「あぁ、失踪して帰ってきたと思ったら、ご飯モリモリ食べてたもんね」
「ま、吹っ切れてくれたのならそれでいいんだがな」


それまでは、いつか倒れるんじゃないかとヒヤヒヤしていたのだ。
旅行先で何があったのかは知らんが、元気が戻ったようで、とりあえずは安心だ。


私は、今落ち込んでいる。
娘をあんな風にした原因は、やはり私だったに違いないのだ。

瑠璃は明後日から学校が始まる。
罪滅ぼしというワケではないが、明日は瑠璃のために時間を使おうと思う。


「ちなみに日向、瑠璃の彼氏ってどんな人だった?」
「そうだなぁ……雰囲気はお父さんに近いかな……」
「ほう、クールなイケメンってとこか」
「……」


なぜ黙る、日向。



* * *



今日は、瑠璃と千葉まで来ていた。
前の家に少々置き忘れたものがあったので、取りに行く用事があったのと。
娘のために時間を作ろうと思ったからだ。


「今日は何でも買ってやるぞ」
「……気持ち悪いわね」


何その辛口なコメント。
ひどくね?


「いったい何を企んでいるのかしら」
「なんだよ、いつものクールな父さんじゃないか」
「……」


おい、黙るな。


娘とのデート(ここはあえて『デート』という言葉を使う!)は、
とても楽しいものだった。

母さんが若い頃のことを少し思い出してしまったよ、ハハハ。

『はぁ、まったく……とんだヘタレね』
『ほっとけ』

あれ?
いやちょっと、もっとイイ感じの思い出があったハズなんだが……


「あとは……そうだなぁ、瑠璃、どっか行きたいところはあるか?」
「そうね、ヨドバシカメラに行ってもいいかしら」


娘の要望で、私は電器店へとやってきた。
買いたいものがあるのかと思ったのだが、別にそうでもないらしい。

ウィンドウショッピングをしていると、
瑠璃がふと足を止めた。

ペンタブレット……って、パソコンで絵を描くやつだよな?
よくは知らんが。


「……残り一個ですって?」


宿敵と遭遇したようなリアクションに、つい噴出してしまった。


「な、何を笑っているの?父さん」
「いや、なんでもないが―――それ、欲しいのか?」
「……少し、考える時間を頂戴」
「買ってやろうか?」


私を見て、目を大きく見開く瑠璃。
そんなに今の会話、おかしいか?


「いえ、いいわ。買ってもらう理由がないもの」
「別に遠慮することないぞ」
「でも―――」


こう、素直にプレゼントさせてくれない所とか、
ホント母さんにそっくりだよお前。


「男目線で一つ忠告しておいてやるがな」
「……うん」
「たまにはプレゼントさせてくれた方が、男は喜ぶぞ」
「!?」


瑠璃が雷に打たれたようなリアクションをしている。
……たぶん、元カレとデートしたときにもこうだったんだろうな。

母さんと同じ、プレゼント全断りってやつ。
ま、買ってくれて当然とか思ってるのよりは数段いい女だよ。


「まぁとにかく買ってやるから、ちょっと待ってろ」
「うん……」


私はペンタブレットを手に取ると、レジにならんだ。
瑠璃は喜んでくれているのだろうと思ったが……

何やら遠くの方を見ながら、考え事をしているようだった。



* * *



ヨドバシカメラを出たところで、後ろから声をかけられた。


「あんた、こんなところで何やってんの?」
「桐乃!?」


瑠璃は心底驚いたというような声を出していた。
まぁ、ここにいれば知り合いに合うこともあるだろう。

瑠璃に声をかけてきた子は、とても可愛い子だった。
同じくらいの歳の子だとは思うが、瑠璃より垢抜けいる。
いわゆるイマドキの子って感じで、とても瑠璃と気が合うようには見えないのだが。


「あら、こんなところで会うなんて奇遇ね」
「なによ、こっちに来てるんなら言ってくれればいいのに」
「そんなに私に会いたかったの?」
「ちっ……そ、そんなわけないでしょ!?」


すげー仲良しじゃん。

こんな友達が出来たのなら、やはり転校させたのは間違いだったな……。
今更だが、落ち込む。


「で、あんたこんなとこで何やってるわけ?」
「見て分からない?デートよ」
「は?」


瑠璃が私の腕に手を回す。
おおおおおなんか感動。



ドサっ



瑠璃の友達の後ろにいた男(彼氏?)が、紙袋を床に落とした。
顔が真っ青になり表情は完全に失われている。
足元がフラフラして、今にも倒れそうな状態だ。


「あ、あんたあたしの服落として」
「黒猫……」


瑠璃が私の腕から離れる。
あぁ、名残惜しい。

で、この男がなんなんだ?


「京介、ご、ごめんなさい!そ、そんな動揺するとは」
「俺のこと、嫌いになったのか?」
「そうじゃないの、えっと……」


瑠璃がオロオロしている。
桐乃と呼ばれていた女の子が俺を睨む。

怖っ!この子怖っ!!!


「なんだよその袋……」
「こ、これはその、あ、新しいペンタブレットで……」
「この男に買ってもらったのか?」
「えぇっと、そうなのだけど……」
「そうか……」


男はついに尻餅をついた。
桐乃さん(もう怖いから「さん」付けで呼ぶことにした)が男に駆け寄る。


「バカ、あんた今はヘタレてる場合じゃないでしょ!?」


桐乃さんが彼氏君を立ち上がらせる。
なんか情けない感じの男だなぁ。


立ち上がった男は、モジモジしている瑠璃の前まで歩み寄ると、言った。


「この男は……彼氏か?」
「……違うわ」


瑠璃は首を横に振る。
男は少し安心したような感じで、息を吐き出した。


「こ、これから言うのが、勝手な言い分だってのは分かってる」
「……」
「他人が言ってたら、なんて男だって思うセリフを言うよ」
「……うん」


男は体を震わせながら、言い放った。


「他の男なんて見ないでくれ。俺だけを……見ててくれ」


……な、なんだコイツ。え?どういうこと?

瑠璃は顔を真っ赤にしている。


「俺はもうフラれて、お前の彼氏じゃねーけど……でも嫌なんだよ」


元カレって……こいつか?


「俺はお前が、他の男を見てるのなんて耐えられねぇんだ、頼む!」


男が土下座をする。
なんて無様な……。

それに、元カレと言っても、この男はまだ瑠璃のことが好きらしい。
そして、あの落ち込みようを見るに瑠璃もまだこの男が好きなんだろう。


「ふふふ。そう。それがあなたの想いなのね……」
「……ああ」
「まったく、ひどい男だわ」
「何とでも言ってくれ」


決して評価できるという意味ではないが。
断じて違うのだが。

彼の真剣さはとても伝わってきた。
彼が瑠璃の事を好きだと言うのは、痛いほど伝わってきた。


「その、誤解させてしまったのは悪いのだけど……」
「……」


瑠璃は顔を真っ赤にし、モジモジしながら二人に言った。


「父なの」
「え?」
「は?」


「だから、この人は私の父さんなの……」



* * *



「ごめんなさい……」


瑠璃が京介くんと桐乃ちゃんに頭を下げる。

瑠璃が誤解を解いたあと、ファミレスで4人で食事をしたのだ。
話してみると、こんな子達が瑠璃の友達だったのかと、少し嬉しくなった。

余談だが、二人からは『若い』って連呼されたぜ。
調子に乗って『じゃあまだ父さんもハッスルできるな』と言ったら
『母さんに報告しておくわ』と言われたので土下座した。

娘に土下座をしたのは、私の人生でこれが3度目だ。


「ちょっとからかうつもりで腕を組んでみたのだけど」
「あんたねぇ……」
「……」


京介くんはまだ少し魂を抜かれたようになっているな。
ハハハ、日向よ、こんな男のどこが私に似ていると言うのかね?

まぁでも、話してみると悪い子ではないかな。
少しシスコン気味なところはあるが。


でも、この様子だと、やはりなんで別れたのか分からんな。
転校程度で別れたとは思いづらいし。
しかも、瑠璃から別れを切り出した様子。

……ふむ。
分からんが、少しだけ背中を押しといてやるか。

転校のせいではないのだろうが。

京介くんと瑠璃を見ていると、なんとなく―――



「二人とも、よかったら今度の週末、うちに泊まりに来ないか?」



―――なんとなく、昔の自分を思い出したのだ。



おわり

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