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『家庭派アイドルの11月29日』:(直接投稿)

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
良い肉の日に合わせた短編SSを書こうと考えていたところ
かねてから俺妹HDで不遇な家庭派ルートをなんとかしたいと
思っていたのと合わさってしまっていつものようにまとまりのない作品に……

そんないつも通りの拙い作品ですが少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

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今日は11月29日。世間一般的には別段祝日でもない平凡な日なんだけど
わたしからすれば1年のうちで家族の誕生日とクリスマスとお正月の
次くらいには大切な日だったりする。

なぜなら……それはおいしいお肉が沢山食べられるから!

そう、今日は「いいにく」の日として、いまだ世間の認知度は低くても
お肉屋さんがおいしいお肉を食べてもらおうと頑張って宣伝したり
イベントをしたり、普段よりもお肉が割安で売ってたりするんだよね。

まあルリ姉にあたりに言わせると。

『ふっ、まったく語呂合わせだけで自らの商品を売り込もうだなんて
  人間風情の商業主義というのはほとほと浅ましい限りね』

なんてひどい評価なんだけど。それでもルリ姉行きつけのスーパーや
お肉屋さんでも、この日はお肉が安いことにはかわりないから
私が覚えている限りでは、毎年今日という日がお肉主体の献立以外に
なった覚えはない。

それはベジタリアンもかくや、というくらいにお肉分の少ない
普段の我が五更家の食卓において、非常に重要な意味を持つことになる。
ましてや成長期を迎えて栄養を豊富に取らなければならない
このあたしにとっては!

なにせ普段から大切な時期に大切な要素を取らなかったばかりに
残念な結果になってしまった生きた事例を嫌というほどみているからね。
お母さんを見る限り、これは遺伝ということはないはずだから
ルリ姉の好む草系主体な食生活でなければまだまだ望みは大きく持てるはず。

だから今日という日はとても大切な日なんだよ。
それに栄養のことはさておいたとしても、やっぱりお肉の持つ
あのおいしいさは何物にも代えがたいしね。

ルリ姉の料理の腕は正直妹のあたしからみてもすごいとは思う。
特に最近は家庭派厨二アイドル、なんてよくわからないけれども
いつものちょっと電波なルリ姉の言動はそのままに、料理や裁縫なんて
家庭的な要素も売りにアイドル活動してるらしくて、以前よりも
料理の腕を磨いているくらいだしね。

とはいえ、野菜やお豆腐などでは、どれだけ技術の粋をつくしても
お肉のジューシーな味わいの前にはどうしても越えられない壁があると思う。
こればっかりはいくらルリ姉の腕を持ってしても覆し難い事実なのだ。

まあ、そんなわけで朝からあたしは一人気合いを入れて
今日の豪勢なディナーと呼ぶに相応しいだろう夕飯を楽しみにしていた。

ルリ姉は今日のアイドルのお仕事はオフだといってたし
最近はルリ姉が忙しいときにはあたしが結構頑張っている夕飯の準備も
今日は私に全部任せておきなさい、と太鼓判を押されている。

そんなこと言われたらもう、期待するなってほうが無理だよね?

いつもは友達と遊びながらゆっくり帰る学校からの帰り道も
急用があるからと一目散に家に戻ったくらい、あたしの逸る気持は
抑えようがなかった。


  *  *  *


「あらおかえりなさい、日向。今日は早かったのね?」
「え、うん、ただいま。……ルリ姉こそずいぶん早いね?」
「ええ、今日はご飯の準備に時間がかかるから急いで戻ってきたのよ」

いつものようにせわしなく台所を動き回っているルリ姉は、しかし
いつものように家でよく来ている中学時代のジャージ姿ではなかった。

「……で、ルリ姉、どうしてメイド服なの?」
「ああ、これは……その、後でSNS用の写真を撮るためよ」
「え?ってことは高坂君これから家にくるの?」
「ええ、せっかくの良い肉の日なんだからって、私が実際に家で
  料理をしている写真を撮ってSNSに載せよう、ってことになったの。
  それで、その……せっかくだから私がメイド服で料理する姿を
  撮りたいって先輩が言いだして……」

持っていたリンゴよりも顔を真っ赤にして
ぷるぷる震えながらルリ姉は俯いてしまった。
まったく……こんな調子でよくアイドルなんてやってられるよねぇ。

「ち、違うのよ?だから私が好き好んでこんな恰好をしてるわけではなくて。
  ファンの要望の多かったものでもあるから応えないといけないし。
  それに……先輩が珍しく……わ、私に望んでくれたことだから……」
  
恥ずかしさを紛らわせたい一心なのか、それとも単なるノロケなのか。
こちらからなにを聞いたわけでもないのにルリ姉の言い訳は続いていた。

「先輩にはここのところずいぶんお世話になっているし
  受験生だっていうのにずっとマネージャーで拘束してしまって
  本当に申し訳なく思っているの。だからオフの日くらい先輩の希望を
  聞いてあげたいし、おいしいものでも食べてもらおうと思って……」

はいはい、もうせっかくのお肉を食べる前から
胸やけしそうなくらいにお腹いっぱいになりそうだよ。

「ま、まあいいんじゃない。ファンの人もルリ姉のそういう所を
  気に入ってもらっているんでしょ?まあそれはともかく
  なんか大変そうだからあたしもご飯の用意、手伝おうか?」
「え、あ、そうね。じゃあお言葉に甘えてこっちのジャガイモを
  むいておいてもらおうかしら。助かるわ、日向」

あたしの言葉にようやく我に返ったルリ姉は、料理の手を再開してくれた。
ふぅ、こんなところで変に時間を取らせるわけにもいかないしね。
出来るだけ早くおいしいお肉にありつくためならば
このあたしはいかなる労力をも厭わないんだから!

それにしても、あたしが隣にいるのもお構いなしに
珍しくルリ姉が鼻歌交じりに本当に楽しそうに料理をしているんだけど。
これは今日の料理は本当に気合いが入ったものになりそうだ。

あたしは知らずに浮かんでくる笑顔をルリ姉から隠しながら
その原因となっている人に心の底から感謝の言葉を送っていた。

本当……いろいろありがとうね、高坂君。


  *  *  *


その後高坂君がやってきたので、撮影とか何かと
お邪魔になってしまうだろうあたしは、おとなしく居間に戻って
たまちゃんのお絵描きに付き合っていた。

……まあ正直、後ろ髪惹かれるところはあるんだけど。
でも、好奇心に負けてその現場を覗こうものなら
ルリ姉の怒りと魔王の呪いが同時に降り注いじゃうしね。
普段ならその犠牲を払ってでも、と思わないでもないけど
今日はさすがにルリ姉の機嫌を損ねるわけにもいかない。

その後、顔を真っ赤にしながらも幸せそうな笑顔で
料理を運んできたルリ姉と、だらしないくらいゆるんだ顔を
している高坂君をみれば、一体何があったのか想像するに難くはない。
まあ、今日は藪蛇はつつかないけれどね。

いつものようにお父さんとお母さんは遅くなるということだったけど
いつもと違って高坂君を交えた夕ご飯は賑やかで楽しかった。

勿論、お肉はおいしかったしね!
なんでもルリ姉が今工夫しているレシピなんだとか。
基本生姜焼きなんだけど、リンゴと生姜のすりおろしが絡めてあって
独特の食感と甘辛い味わいがある、とても不思議な味がした。

辛いのが苦手なたまちゃんには、リンゴ増量の特別性だったみたい。
あたしも、たまちゃんも、そして高坂君も、一口ごとにおいしいおいしいと
繰り返していたので、ルリ姉は呆れながらもずっとニコニコしていた。

高坂君にとたくさん作ってあったので、高坂君は勿論のこと
あたしもお腹ぱんぱんになるまでお肉を堪能できた。
これで私の目標に向けて一歩前進だね!


  *  *  *


夕飯が終わってから、後片付けをかって出た高坂君をフォローするためと
たまにはルリ姉を心行くまでたまちゃんと遊ばせてあげたくて
あたしは一緒に台所で洗い物をしていた。

「ねぇ、高坂君。今日はありがとうね。おかげでルリ姉すごい
  張り切っちゃって、おいしいお肉を沢山食べられたよ」
「ああ、本当、おいしかったな、黒猫の料理。
  でも、張り切っていたのは何も俺のせいじゃないぜ?」
「え?だって高坂君が今日は良い肉の日だからって、
  料理する様子を撮影しようってきたんでしょう?」

一瞬、え?って顔をした高坂君だったけど
すぐに何かを納得したように軽く頷いていた。

「ああ、黒猫は日向ちゃんにはそういってたのか。
  ん~まあ黒猫には口止めされてたけど、いいよな。
  今日わざわざアイドル活動の休みを取ったのは黒猫の頼みだったんだよ」
「そ、そうなんだ?でもどうして?」
「ちなみに勿論俺がいったのは内緒にしておいてくれよ?
  それは、日向ちゃんや珠希ちゃん、それにご両親のために
  今日くらいは自分で料理を作ってあげたいから、っていってたよ」

「最近忙しくて日向ちゃんに夕飯任せっぱなしになってるから、って。
  黒猫、いつも仕事で夜遅くなってくるとどこかそわそわしだすんだぜ?
  理由を聞いてみると日向ちゃんがしっかりご飯を用意できたのか、とか
  珠希ちゃんは夕飯を残さず食べれたのか、って心配なんだって」

自分だってアイドルの仕事で大変だろうにそんなときまで
うちの心配をしているなんて。本当にルリ姉は筋金入りの心配性だ。

「だからいつも日向ちゃんが『良い肉の日』だって肉料理を
  期待しているこの日はくらいは私がご飯を作ってあげたいから
  休みが取れないかって相談してきたんだ。まあその辺はどうにか
  やりくりしたんだけど、代わりにご飯を作っているところを
  撮影してこいってことになったんだよ。
  ……まあメイド服は俺のリクエストなんだけどな」

せ、せっかく人が感動して聞いてたのに、台無しだよ、高坂君!!

「だから今日のご馳走は、俺なんかじゃなくて日向ちゃんたちのためなんだ。
  胸を張っていいと思うぜ?今注目の家庭派アイドル黒猫の魅力は
  日向ちゃんたちを想う気持ちこそが一番の原動力になっているんだからさ」
「うん……そうだね。ルリ姉はいつだってそうだったから」

そんなルリ姉がアイドルをはじめたときには
今度はあたしが家のことは頑張って支えていこうって思ってたのに。
まだまだルリ姉の足元にも及んでいないみたいだ。

「ああ、最近写真を取っていて俺も気がついたんだよ。
  黒猫が一番の笑顔を向けるのは家族に対しての時だってさ。
  だから厨二の持ち味は残しつつも家庭派アイドルなんて
  路線変更もしてみたんだ。結果は大当たりだったけどな?」

さすが高坂君、ルリ姉のことしっかり見ているんだなぁ。
でもそれってつまりは。

「でも高坂君にだってルリ姉は甘々な顔をみせてるでしょ?
  ってことは、高坂君はもうルリ姉の家族みたいなもんってことだよね?
  ねぇ、いつお婿にきてくれるのかな?お兄ちゃん?」
「うっ……ま、まあその辺はおいおい……と、な?
  でも、まあ。そうしていつでも黒猫のことを
  支えられようになれたらって思うよ」

時折見せるすごく優しい表情で高坂君は静かな決意を聞かせてくれた。

うん、そうなってくれれば本当に素敵だと思う。
それに、高坂君がいつでもルリ姉と一緒にいてくれるなら
きっとうちのご飯にもお肉も増えると思うしね?

まあさすがにまだそんな日はすぐにはやってこないと思うから。

「じゃあ来年の今日もスケジュール調整よろしくね!高坂君」
「ああ、来年の今頃は、黒猫はもっと大スターになっている予定だからな。
  でも黒猫が家族と過ごしたい大切な日は絶対なんとかするって誓うよ」

手始めに来年の『良い肉の日』くらいには
今度はあたしがみんなにお肉料理を作ってあげられるくらいになっておこう。
ルリ姉がせっかくの休みの日にはゆっくりしていられるようにね。

そのためにはこれからたくさんお肉料理も練習しないとね!
そしてきっとナイスバディも手に入れて見せるんだから!

高坂君と一緒にあたしは固く心に誓うのだった。

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