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『運命に抗いし者』:(直接投稿)

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
アニメ最萌トーナメント2013 決勝トーナメントQf2組 黒猫(五更瑠璃)vs鹿目まどか
に支援で投稿したSSです(Round96 148-151)。

黒猫vsまどかを(妄想で)表現してみようと思って黒猫が魔法少女になっています。
そのような独自設定がお気にならなければ、楽しんで頂ければ幸いです。
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「闇から生まれ出でしものたちよ。闇より昏き漆黒に還りなさい」

魔獣たちを拘束していた球形の力場から魔力を一斉に解き放ち
力場から溢れ出た漆黒の光が周囲を黒に染め上げる。

その黒き光が収まった後には、魔法の力場も魔獣も、
そもそも始めから何もなかったように跡形もなく消え去っていた。

ただ、鈍く光りを放つ立方体の結晶を除いては。

私はその結晶を拾い上げると、自らの瑠璃色のソウルジェムを翳した。
ソウルジェムに漂う濁りがグリーフシードに吸収され
わずかながら蒼い光が輝きをましたかのようだった。

……でも、穢れを完全に無くすにはとても足りないわね……

瑠璃色の宝石の中で、くすみ濁った部分はもはや半分以上に及んでいる。
もしもこのまま魔獣と戦い続ければ、遠くないうちに私のソウルジェムは
穢れで満たされてしまうことだろう。

そうなれば私は『円環の理』に導かれて、この世から消え去ることになる。
今までの多くの魔法少女がその運命を抗いようもなく享受してきたように。

ふっ、そんなことは覚悟の上で私は魔法少女になったのよ。
今さら後悔することなどなにもないわ。私は前払いで受け取った
奇跡の債務を只々払い続けていくだけよ。

例えその結果が自身の消滅だとしても。
それに見合うくらいの奇跡を願ったのだから。
自らの存在を賭すに足る大切な人を救うためだったのだから。

漆黒のドレスのような魔法少女の衣装を解除して元の学校の制服に戻った後
私は自らの願いの対象となった少女の事に思いを馳せていた。

……桐乃、あなたはどんな気持ちで戦い続けていたのかしらね

人見知りの上に、オタク趣味で人付き合いの苦手な私の初めての親友。
そして何も知らなかった頃の私を魔獣から救ってくれた命の恩人。

その彼女が魔獣との戦いの果てに全ての魔力を使い果たして
桃色のソウルジェムが濁りきり、『円環の理』に囚われかけたその時。

私は願ったのだ。彼女を救うことを。彼女を以前の生活に戻すことを。

願いは聞き届けられ、桐乃は魔法少女から普通の女の子になった。
魔法少女だったころの記憶も消え、何の憂いもなく日常生活を送っている。

そして文字通り桐乃と入れ替わって私は魔法少女になった。
私の命は桐乃に守ってもらえなければあのときに尽きていたのだから
私が命を賭して戦うことになっても後悔などあるわけもない。

それに、あなたがいなくなったら……先輩が悲しむでしょう?

私の先輩であり、桐乃の兄である京介。
桐乃同様、先輩も私にとってかけがえのない人。
桐乃のためにどんなに無様でも全力で駆けずりまわっていたあの人に
惹かれている自分に気がついたのはいつだっただろう。

淡い期待を抱いて先輩と同じ高校に進学までして。
想像以上に私の世話を焼くあの人に、自分に妹を重ねるなと
怒ったこともあるけれど。でもあの人は私が心配だと言ってくれた。
私のためにこれからもお節介をするのだと。

それからも後輩として、オタクサークル仲間として、妹の親友として。
一緒に行動するうちに私の想いは決定的になった。

でも……それは適わぬ想い。適ってはならない想い。
私が魔法少女であることも理由の一つではあるけれど。
何よりも桐乃の想いを傷つけてしまうだろうから。
先輩の心の奥底に潜む真実の気持ちとは違うものだろうから。

だから明日とも知れぬ身の私が思い描いた『理想の世界』に
大切な二人を至らせるために。そして私の気持ちを昇華するためにも。

私は先輩に告白し一度は恋人同士となった。
10日間という短いけれど恋人としての甘い一時を一緒に過ごして
幸せな思い出を沢山作った。それこそ私の一生分の。

そして、つい先日。先輩と一緒に花火大会に行ったあとで。
私は先輩に別れを切り出したのだ。

何も事情を話さずにいきなり別れを告げられた先輩の心情を
想像すると自責の念に押しつぶされそうだけれども。

でもこれできっとあの二人は互いの想いに正直に向き合えるはず。
私がいつか『円環の理』に導かれて消え去ってしまったとしても
二人の心に大きな負担をかけることもないだろう。

だからもはや現世に私がやり残したことはない。
そうなるようにずっと考えてきた『運命の記述』に従ってきたのだから。
でも、それでもあの人の事を考えると、途端にざわめきだす私の心は
なかなか落ち着いてくれはしなかった。

だから来世では……きっと一緒になりましょうね?

そんな気持ちを振り払うために、想い人と親友の幸せそうな笑顔を
もう一度頭に思い浮かべてから、私はその場を後にしようとした。

-でもあなたは本当にそれでいいのかな?

突然背後から掛けられた声に私は振り返った。
正確には声ではなく、脳裏に直接響いたテレパシーだけれども。

見れば予想通り、桃色を基調とした
魔法少女の衣装を身に纏った女の子が立っていた。

縄張りを意識せざるを得ない私たち魔法少女が
こうして顔を合わせることは、単なる偶然なわけはない。
しかもこの少女は考え事をしていたとはいえ
私に気配を察知されることなく背後に突然現れたのだ。

自然と緊張が走り、即座にソウルジェムに念を込め
もう一度魔法少女の衣装を装着すると私は油断なく身構えた。

-あわわ、そんなに警戒しないで。わたしはあなたと
  ちょっとだけお話したいなと思ってきただけなんだから。

桃色の少女は慌てたように両手を振って私に敵意がない事を示した。

「そう……ならその話とやらを聞かせてもらいましょうか」

不審な点はいくつもある。ずっとテレパシーで話していることや
まるで実体がないかのようにいまだに気配を感じさせない事も。
そもそも私の思考を読んだような物言いからして既に怪しいのだけれども。

でも不思議とその少女の纏う無邪気で柔らかで変に大人びているようで
その実頼り気のなさそうな雰囲気が私を素直な気持ちにさせていた。

それに、その胸元で輝く桃色のソウルジェムが
かっての親友のそれを思い起こさせたから、かしらね。

-ありがとう。じゃあ話をさせてもらうね。
  さっきもいったけど、あなたはこのまま
  本当に消え去ってしまうことになってもいいのかな?

「いいも悪いもないわ。それが魔法少女の奇跡の対価というものでしょう?」

-うん、そうだね。でもだからといって魔法少女が
  ただ自分の運命を受け入れるだけというのも違うんじゃないかな?

「それはせめて消え去るまでくらいは幸せを謳歌しろ、
  という有難いご忠告かしら?」

-そ、そんなつもりはないよ。ただ、わたしは希望を祈ったことで
  それ以外の全てを諦めて不幸になるのも違うんじゃないかなって思うよ。
  だってそれじゃあ希望を祈った事それ自体が間違いになってしまうから」
  
「なるほど、確かにそういうあなたは幸せそうに見えるわね。
  自分の運命を嘆いた事や願いを悔いたことはないというの?」

-ううん、そんなことはないよ。わたしだって大切な人たちに
  何も言わないでこの運命を選んでしまった事を申し訳ないと思ってるし
  辛いとも思っている。でもだからこそ。
  
  常に笑顔を浮かべていた少女の表情に一瞬影が差す。
でもそれはすぐに満面の笑みに取って代わられて。

-わたしたちはいつだって願いの先にある希望を信じていないと。
  だって……わたしたちはこの世に希望を振りまく魔法少女なんだから。

今の私には眩しいほどの笑顔で少女はそう告げた。
それがいつでも自信満々に。いつでも楽しそうに目標に向かって
邁進している私の親友の顔と重なった。

「ふっ、願いの先の希望……ね。
  確かに私たちは起こした奇跡の対価を払うだけでなく
  その結果の責任も負わないといけないのでしょうね」

先ほどまでの弱気になっていた自分が恥ずかしく思えてくる。
そして同時に先ほど考えた魔法少女のときの桐乃の気持ちにも察しがついた。

きっと桐乃ならば、どんなに不安で迷うことになっても。
その先にどんな運命が待ち受けようとも。
最後には自分のやりたいことに素直に進むのだろうから。

「勿論、私とてこのまま終わらせるつもりなどはないわ。
  私はあの人に誓ったのだもの。私の目指す理想のために
  どちらも諦めることなく私の全力を尽くすのだと。
  だから私はこれからも私の祈った希望が最も望ましい結果を
  もたらせるようにしていくつもりよ。それがたとえ」

私は一度言葉をきって、私の持てる限りの決意と熱意を込める。

「魔法少女の運命に、『円環の理』に抗う事になったとしてもね」

-うん、そうだね。あなたならそう言ってくれると思ってた。

なぜか私の言葉を聴いて嬉しそうに、満足そうに少女は笑った。

-わたしの話はこれで全部だよ。ごめんね時間をとらせちゃって

「いいえ、気にしないで頂戴。私にもなかなか楽しいおしゃべりだったわ。
  ねえ、もう一度あなたに会えるのかしらね?」

-うん、きっと。あ、でもそのときにはあなたと
  戦うことになっちゃうのかもしれないね?

先ほどまで常に湛えていた微笑みとは違って悪戯っぽく少女は笑う。
でもその方が今までの大人びた感じではなく、年相応に可愛い気もするわね。

「ふふっ、じゃあその時には私も全力で戦わせてもらうわね。
  精々再会を楽しみにしているわ」

私はそういうと今度こそ振り返ってその場を後にした。

名前も聞かなかったあの魔法少女は一体何者だったのか。

私の心の迷いが生み出した幻影だったのかもしれないし
ひょっとすると魔法少女の間で噂されている、魔法少女を常に
見守っているという、守護女神様とやらだったのかもしれない。

そうだとすれば、ちょっとだけ感謝してあげてもいいわね。
おかげで私が奥底に秘めていた想いを漸く形にする気持ちになれたもの。
早速部屋に戻ったら『運命の記述』に本当の私の願いを書き記しましょう。
私は今度こそ迷わずにその運命に従って進むのだから。

そう、『円環の理』の導きなどではない、私自身の運命を掴むために、ね。

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