2ch黒猫スレまとめwiki

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匿名ユーザー

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       『おるすばん』



 久しぶりに遊びに来た。

 ピンポーン……ピンポーン……

「どちらさまですか?」
「こんにちは。京介だけど、珠希ちゃんかな?」
「はい」
「よかったら開けて欲しいんだけど……」
「……おにぃちゃんごめんなさい。
 ひとりでおるすばんするときは、かぞくいがいは開けちゃだめって姉さまが……」

 黒猫のいう事を守ってるのか。珠希ちゃんはいい子だなあ……

「うーん、それじゃあさ、俺も一緒にお留守番するよ。
 お煎餅持ってきたんだ。これ食べながら姉さまの帰りを待たないか?」
「……ごめんなさい」

 大好きな姉さまの言い付けを破れなんて言えない。
 泣きそうな珠希ちゃんにこれ以上お願いするのは酷だろう。
 うーん、どうしたものか……そだ。
 俺は携帯を取り出した。

「もしもし、黒猫か?」
『こんにちは、先輩。何か用かしら?』
「悪い、ちょっと電話代わるわ」

 ドアのポストから珠希ちゃんに携帯を渡す。

「珠希ちゃん、姉さまに聞いてみてくれ」

 向こう側で『はい……はい……』と声がする。
 やがてカチリと音がして、ドアが開かれた。

「おにぃちゃん、いらっしゃいませ」
       ・
       ・
       ・
 居間に通された俺は珠希ちゃんにお土産を渡す。

「はい、これ。皆で食べよう」
「おにぃちゃん、ありがとう」

 聞いたか? ニッコリ笑ってありがとうだぜ?
 こんなに可愛い妹が実在するのかよ。珠希ちゃんマジ天使。

「おちゃいれてきますね」
「あ、手伝うよ?」
「おにぃちゃんはお客さんなので座っててください」
「……分った。それじゃお任せしてもいいかな?」
「はい」

 素直に待つ事にした。
 折角珠希ちゃんがやる気になってるんだ。危険が無い限り邪魔しちゃいけねえよな。

 おぼつかない手付きだが零す事も無く、二人分のお茶を淹れてくれた。

「……うん。美味い」
「えへへー」

 一仕事終えて満足気な珠希ちゃん。
 きっと普段から黒猫の仕事をよく見ているのだろう。ええ子や。

 それからお友達の事や、日向ちゃんの悪戯がバレた話をしていると黒猫が帰ってきた。

「ただいま」
「おかえりなさーい」
「お帰りー。お邪魔してるよ」
「いらっしゃい先輩。遅くなって御免なさい」
「いやいや、構わないぜ。珠希ちゃんとお喋りしてたしな」

 きちんとお留守番できていた事、言い付け通り家族以外は入れなかった事、
 お客さんのおもてなしもできていた事等を話した。

「……そう。頑張ったのね、珠希。
 そうだわ。私にもお茶を淹れてもらえないかしら?」
「はいー」

 妹を静かに見守る黒猫の眼差し。
 けっこう好きなんだよね、俺。温かくってさ。

「……うん。美味しいわ。上手に出来たわね」

 褒められてテレテレな珠希ちゃん。
 何この可愛い生き物。連れて帰ってもいいですか?
 あまりにも可愛いのでちょっと悪戯してみたくなった。
 被っていたニット帽をグイッと下げて顔を隠し、膝に乗ってた珠希ちゃんを後ろから羽交い絞めにする。

「ふはははは! 俺は京介ではない。京介に変装した泥棒だったのだー!」
「な、なんですって!? 全然気が付かなかったわ!」

 ノリノリだな黒猫さん。

「人質を返して欲しくば俺の要求に応えるのだー!」
「くっ……なんて卑劣な!」
「もしも要求に応えられないというなら……こうだ!」

 珠希ちゃんの両脇を支えて頭上に掲げる。所謂たかいたかいってヤツだ。

「未だ嘗て経験した事が無いような超高度の恐怖、存分に味わうがいい!」
「わー、たかいですー」

 楽しそうだな、珠希ちゃん。

「なんて事を! 可哀そうに、脅えているじゃないの!」

 ノリノリだ。

「解ったわ……要求は何かしら?」
「ふっふっふ……この煎餅に合うようなお茶の御代りを今すぐ持ってくるのだー!」
「御代りですって!? 待って頂戴、直ぐには無理よ……まだお湯が沸いていないのだから」
「ほほう。俺の言う事が聞けないのか。ならば人質は……こうしてくれるわー!」

 たかいたかいの体勢のままくるくると回る。
 きゃっきゃとはしゃぐ珠希ちゃん。

「やめて頂戴! 珠希にはデススパイラルは耐えられない!」
     ・
     ・
     ・
 一度台所に引っ込んだ黒猫は新しくお茶を淹れてくれた。
 珠希ちゃんを降ろしてお茶を一口。

「ふう……今日の所はこの位で勘弁してやろう。さらばだ!」

 くるりと後ろを向いてニット帽を脱ぎ去る。

「……今、泥棒が来ていたようだが皆無事か!?」
「姉さまのおちゃがとてもおいしいので、どろぼうさんはにげていきました」
「プッ」
「フフッ」
「「「あはははは!」」」

「まったく。いきなり何を始めるのかと思えば……」
「まあいいじゃねえか、楽しかったんだから。な? 珠希ちゃん」
「はいー」

 皆で大笑いしていると日向ちゃんが帰ってきた。

「ただいまー。あれ? 高坂くん来てたんだ」

 ささっとアイコンタクトをする俺と黒猫。
 素早く日向ちゃんの背後から羽交い絞めにする。

「ふはははは! 俺は京介ではない。京介に変装した泥棒だったのだー!」
「な、なんですって!? 全然気が付かなかったわ!」

 ノリノリな黒猫さん。

「人質を返して欲しくば俺の要求に応えるのだー!」
「くっ……なんて卑劣な!」
「もしも要求に応えられないというなら……こう、だ……こう……」

「…………」
「…………」
「なあ、日向ちゃん」
「な、なにかな?」
「……重いな」

「乙女になんてこと言うんだーー!!」

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