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エピローグ:40スレ目839(長編)

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匿名ユーザー

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8巻で見えたエピローグの形を行って見ました。
こう言う収まり方が一番しっくりくるな~と。普通過ぎますが。
黒猫の出番少なすぎますが。

―エピローグ―

「よし」
俺は靴紐をキツク締め立ち上がった。今の決意を現す様に。
「きっちり決めてきなよ」
その姿を後ろで見守っていた桐乃が声を掛けてくる。
「おう!任せとけ!」
ぐっと拳に力を込めて、その声に俺は全力で応えてやったよ。だってのに…
「待たせ過ぎて振られたりして」
「なっ!!」
ちょっ!!この野郎!!兄がなけなしの勇気を振り絞って戦場に向かおうと言うのに、何て妹だ!!
「なっさけな~フヒヒヒヒッ」
そんな俺のうろたえ様を見て愉快そうに笑う桐乃。
てかお前、何でエロゲやってるときみたいな笑い声になってんだよ。何?これって実はエロゲのイベントなの?
チクショーお前のせいで急に不安になって来たぞ!!
「大体だな、誰のせいでこんなこんなんなってると思ってんだよ!!」
俺は万感の思いで言ってやったよ。嘗て己の犯した過ちに身悶えるがいい。へっ!ザマーミロってんだ。
「あんた。そしてあたし。あとアイツ。」
「ぬぐっ!!」
万感の思いは易々と打ち砕かれた。実に的確な指摘である。
くっ!!そうかもしれないけどさ…そうかもしれないけどさ…何かこう…なぁ?
そんな哀れみを請うような情けない視線を送る俺。何か言って。
「ウザッ、とっとと行ってこいっての」
そんな俺に、しっしっと手を振る桐乃。まるで野良犬を追っ払うかのようである。
ん?手を振る?振る?………ぐおぉぉぉぉ!!何て縁起の悪いことをしやがるんだこいつは!!
「振るな!その手を振るな!!不安になるだろうがよぉぉぉぉぉ!!」
「ウザッ、ホントウザイ。」

まぁ俺と桐乃の関係は相変わらずこんな感じだ。
顔を会わせれば憎まれ口を叩いたり、文句を言い合っている。
あの日、桐乃の人生相談から、再び始まった俺たちの兄妹関係。
二人の口から紡がれる言葉が、早々変わる訳は無い。表面上はな。
「はいはい、おにいちゃん~ガンバって~w」
「何だそのしゃべり方。お兄ちゃんではない。兄様と呼べ。」
「兄様…頑張って!!」
…………
『キモッ!!』
二人の声が見事にハモる。うん。少し変わったかもな。


そんな感じでさ、今はその言葉の奥に有るものが分かる。トゲトゲしかった声は消え去り、暖かな心が伝わる。
俺がアイツの事を好きだと言う気持ちを、心から祝福してくれる。
何のわだかまりも無く、こやって軽口叩いて送り出してくれる。
もし、桐乃に恋人が出来たなら…桐乃が連れて来るんだから、そいつはきっと、とんでも無くすごい奴だろう。
それでも、その事を、俺も心から祝福してやれる。そいつは保障するぜ?
『お前』が目指した『理想の世界』ってのはさ、そう言う事なんだろう?
まぁ、兄として親父の分まで一発殴らせて貰うがよ。
ソンくらいは許してくれよ。

妹に恋人が出来るのが嫌で嫌で仕方ない、兄に恋人が出来るのが嫌で嫌で仕方ない。
だから恋人は作らない。作れない。
麻奈美が目先の目標、なんて事を言っていたが、俺たちにとっては確かにな。
お互いが、お互いの事を自分の事のように喜べる。
ヤバイ時には手を取って助け合える。
間違いを侵せば、それを正してやれる。

俺は桐乃の兄で、桐乃は俺の大切な妹で、何より大切な家族だ。
それはどれだけ時間が過ぎ去ろうが、どれだけ距離が離れようが、誰を好きになろうが、決して変わることは無い。
当たり前の事なのにな。当たり前の家族だったら、目先の目標にすらなり得なかった訳だ。ホント馬鹿だったよ。
だからさ、さっき再び始まった、なんて言ったが、そもそも一度たりとて終わってなんかいなかったんだよ。
そんな当たり前の事に気づかせてくれた皆には、どんだけ感謝してもし足りない。
特に、沙織、お前はさ。お前があのサークルを作らなければ、あの二次会で引き止めてくれなければ、
俺たちはあの時より、もっと酷い事になっていたかもしれない。アイツとは出会うことすらなかっただろう。
お前はいつものように、はにかみながら謙遜するんだろうけどよ。全部ホントの事だ。賭けても良いね。
俺も桐乃も良い友達を持ったもんだ。果報者だよ、身に余る光栄だぜ。
その想いには応えないとな。いや、俺が応えたいんだ。他の誰かのためじゃない。俺自身の為に。


「よし」
俺は最後の気合を入れなおす。
「んっ」
いつもの腕組みスタイルで、不遜に佇む桐乃。
無駄にえらそーなその姿についつい笑みがもれる。
手を振るな。さっきそう言ったからだろ?まったく、前はその姿にムカついてたのにな。

俺は景気付けに、思いっきりドアを開ける。暖かな陽光が俺達を包んだ。
その光景はきっと、あの絵の様だったろう。一枚目のな。
だからさ、二枚目に行かないとな。
あの絵に比べれば、俺達はまだ若いけど、構わないだろ?文句は言わせないぜ?
それはもう、俺の、俺達のやりたい事になったんだから。
俺は、そのため一歩を踏み出した。

「行って来る!!」

「行って来い!!」

満面の、そして満足げな笑顔を浮かべる桐乃。
まったく、まったくこいつときたら…

―俺の妹がこんなに可愛いわけがない―


『約束の地で待つ』

昨夜、俺はそれだけをメールしていた。それだけで十分だと思った。”愛の絆”(ソウルリンク)は切れちゃいない。そうだろ?
お前との始まりの場所。『妹の友達』でもない、『学校の後輩』でもない。『俺とお前』の始まりの場所。
随分待たせちまったからな。しっかりやり直させてくれ。
あの時、お前がくれた想いを無駄にしたくなかったからさ。

あの時の俺の答え。あの夏の日。無かった事になんかならないし、無かった事になんか出来ない。したくない。
全く、ひでー兄妹だよな。二人ともお前の事が好きなのに。
お前の気持ちを知っていたのに。
誠実で、真摯で切実な想いを。今となっちゃーどうでも良いエゴでお前を傷つけて。
ありがとうな。俺達を見捨てないでいてくれて。
お前と離れてからは、たまに顔を会わせられたら嬉しくて、苦しくて、それが日増しに募っていってさ。
どうにかなっちまうんじゃねーかと思ったよ。もしかしたら、もうどうにかなっちまってるのかもな。
呪い、とは良く言ったもんだ。
だからさ、もう一度始めようぜ。今度は強くてニューゲームだ!!難関なんてありゃしないさ!!


かくして、”約束の地”にその少女の姿はあった。
あの時と同じ、白いワンピースを着て。
俺達の思い出を大切にしていてくれた。はっきりとそれが分かって、すげー嬉しかったよ。
でもさ、まだ昼間だからって、3月にその格好はやめようぜ?まだ寒いからね?オーラが肉眼で目視できちゃってるもの。
遂に俺にも、闇の眷属の力が目覚めちまったのかと思ったぜ。
俺はオーラを迸らせ佇む美少女にの元へ駆ける。

目が合った。ほんの数メートルが待ち遠しい。なんで俺にはゼロシフトが搭載されてないんだろうね?
約束の地へと至った俺は、この世界の主に対して、極めて自然に、極平然と、且つ滑らかに声を掛ける。
「よ、よ、よ、よ、ようぅ。はぁ、はは、は早かったな。」
声が震えてる?寒いからだよ?
「あ、ああ、あなたがおそ、遅い、だけよ。」
ほらな?寒いだけだって?
なにせ、俺は目の前にいるこいつが好きで、こいつも俺の事を好きでいてくれた。いてくれている。
恋愛ごっこ、なんて自嘲していたあの夏も、お互いを想う気持ちに嘘なんて無かった。
だからさ、緊張なんて全然していない訳だ?な?
………

ゴメンナサイ。嘘です。緊張してます。もうそれは死にそうなぐらいに。
俺のチキンハートが山吹色に疾走する!!
今の俺達でこれなんだ。まだ、先輩後輩の間柄でしかなかった時に、こいつはよくぞやれたもんだよ。大好きだぜ。
だからこそ、カッコよく、ビシッっと決めてやりたかったんだけどさ、このザマだ。
はぁ、なんとも締まらないが、まぁそれが俺達らしいとも思っちまうのも、また事実なんだよな。
「ふ、ふん。い、1時間程度前に来たところで、は早いですって?莫迦にしないで頂戴」
真っ赤な顔で全身からオーラを迸らせながら、ぷいっと横を向く。いつ見ても可愛いと思う。
「す、すまん。こ、こんくらいだったら、お前より早く着いていると思ったんだけどな。」
「わ、私は…昨日から居たわ。」
………
重い!!重いよ!!やっぱりその愛が重い!!
だけどよ…その重さが心地良いって思っちまう俺も…相当なもんだと思うぜ?
「いや、流石にその…冗談、だよな?」
「………」
よくよく見れば、木の下に小型テントらしきものが畳まれている。
………ホントに居たのかよ。神よ、何故あなたは、かような愛の堕天聖をこの地に堕とされたもうたのですか?
くっ!!何て事だ!!俺の愛が足りないとでも言うのか!!イ~ヤそんな事はないね!!
だから俺はありったけの想いを言霊に乗せて伝えてやったのさ!!
「~~~~~~~~~~~」
…言葉が出ない。違うんだ。あんまりにも多くの感情があふれ出してきて、言葉になんかなる筈がなかった。
いや、だってしょうがないだろ?


―永遠にあなたの事が好きよ―
―きっと来世でも、好きになるわ―

その想いに応えるってのはさ、プロポーズするのと変わんないんだぜ?
あれ?って事は俺、もう一度こんなしんどい事しなきゃいけないの?まとめて一回じゃダメ?
止め処ない感情の嵐に吹きすさばれ、口をパクパク開閉しているだけの俺を、
目の前のこいつは、唇をキュッと閉じ、何も言わずに真っ直ぐに俺を見つめている。俺の事を信じて。
不安と絶望に苛まれ、怯えた瞳で俺を見上げていたあの時とは全く違う。
カッコいいよ!!サイッッッッッッコウに輝いてるぜ!!
ハッ!!だっせーな。ここまでして貰わなきゃ、言葉一つ届けられないのかよ!!
言葉に出さなくても伝わる想いはある。今だってそうだ。
でもさ、だからこそ言葉にして伝えたいんだよ!!
目の前で俺を信じてくれている、どうしようもなく純粋で、痛々しくて、捻くれてて、不器用で、弱くて…
でも、情けない事に、きっと一言が限界だぜ?
なぁ、たった一言にどれだけの想いを籠められるんだろうな?
離れ離れになったあの日から?後輩になったあの日から?出版社で戦友となったあの日から?初めて会ったあの日から?
届くよな?届けらるよな?届けるんだよ!!バカヤロー!!

「瑠璃!!俺と付き合ってくれ!!」


―はい!!―


続き?教えてやんねーよ。あの瞬間だけは、俺だけの物だからな!!

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