妊娠貧血
- 妊娠貧血とは
- 産婦人科日常診察上もっとも頻繁に遭遇する疾患の1つ
- 全循環血液量のヘモグロビン(Hb)量が正常以下に減少し、生体組織に十分な酸素供給が出来ない状態
- 妊娠中の貧血の大部分は鉄欠乏性貧血である
- 妊娠による血液性状の変化
- 妊娠9週頃から体液量、循環血液量が急増
- 妊娠28~30週頃に循環血液量は非妊娠時の1.5倍量になるのに対し、赤血球数は非妊娠時の20%増程度に留まる
- ⇒妊婦の血液は希釈され水血症状態になる
- その為、妊婦の末梢血Hb濃度は見かけでは低下傾向を示す
- 分娩に必要な鉄は胎児290mg、胎盤25mg、母体赤血球500mgの計800mg必要になる
- よって妊婦は鉄需要が増加し、繊細的な鉄欠乏状態になる
- 妊娠中の貧血診断
- ヘモグロビン(Hb)11.0g/dL
- ヘマトクリット(Ht)値33.0%未満
- と定義されている
- 妊娠初期(妊娠8週未満)は希釈が進行していない為、病的な貧血は末梢血Hb濃度によって診断することが可能
- 妊娠初期の鉄の情報を把握しておくことが重要
- 妊娠9週以降は赤血球の増加に対し、血漿量の増加が著しいので、血液は希釈された水血症の状態になる
- Hb濃度が9.0~11.0g/dL程度の貧血状態を示しても、平均赤血球容積(MCV)が正常であれば生理的な血液の希釈によるHb濃度の希釈と考えられる
- 同じHb濃度でもMCVが低値を示せば鉄欠乏性貧血と診断できる
- 薬物療法
- 鉄欠乏性貧血の治療の基本:鉄の補充
- 経口投与と経静脈投与の鉄剤2種類がある
- 市販の経口鉄材は、腸管からの吸収率のよい2価鉄イオンがよい
- ビタミンCとともに摂取すると吸収が改善される
- 経静脈投与の非経口鉄剤は3価の鉄がよい
- 経静脈投与の対象:胃腸障害があり内服治療が不可、吸収障害あり、経口投与では追いつかないetc
- 栄養管理
- 一般成人女性(月経のある女性)の鉄所要量:12mg/日
- 妊娠時および授乳期は付加量として+8mg/日
- 許容上限摂取量40mg/日
- 一般的に鉄の多い食品を摂取するように指導するが、野菜や穀物類に含まれる非ヘム鉄は吸収しにくいため、動物性食品(レバーや肉類、魚介類)に含まれるヘム鉄の方が吸収が良い。
- 非ヘム鉄を摂取する場合は、鉄吸収を促進するビタミンC、B6、葉酸、アミノ酸、加藤、グルタチオンなどの還元性物質と共に摂取することが望ましい。
最終更新:2011年03月16日 22:21