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生徒会SS6




【流血少女:最終ターン異聞~還り来たりなば~】



●回想
安全院ゆらぎは、自分のことを「安全院さん」と呼ばれると、いつも思い出す。

教師『安全院くんは、本当に優秀ですね。流石、安全院家のお嬢さんだ』

女生徒『まあ見て本当に素敵な方。一度お近づきになりたいわ。でも住む世界が違うわよね』

子供の時からそうだった。町に住んでいると、それはたくさんの人が行きかう。
彼らは他人からなんと呼ばれているのだろう。きっと名前を呼び合える心通わせれル友達がいるのだろう

自分はちがう。 

自分にはきっと、誰ひとりとしてあらわれないだろう。
『安全院家のお嬢様』としか学校にいる友だちも先生も自分をそうとしか見ていないのだから…
そんな人と真に気持ちがかよわせられるはずがない。

「ん、ゆらぎ。喰うかい?」「馬鹿だなホントお前のそういうとこ」
彼女に出会うまでずっとそう思っていた。

だから、安全院ゆらぎは「彼女」のことを想うといつも考える…
そう、いつも考える…
どうしたら、私、安全院ゆらぎは『彼女の、真野片菜の誇れる友達』でいられるかを…


●6ターン先手―A1―

その恐るべき乱入者は、まるで空を舞うように跳躍し、お茶会の真中に降り立った。
着地と同時にテーブルは踏みつぶされ、粉砕される。
そしてその場にいる誰よりも早く動き、そのまま茶会の主催者を無造作に手刀で突き刺した。

静寂が時を支配する。

「ならば私は『転校生』に殺されなければなりません。時間が、もう猶予がないのです」
起るべきして起った展開。
戦いの前、本人から説明という名の告白を受け、その意味も展開も 生徒会の皆も既に理解していた。
それでしか、安全神話の崩壊は止められないのだと。ただそれでも

「ああ安全院さ…」
理性と感情は別だ。メイド姿の少女は一歩踏み出し、そして

「時よ止まれー!ザ・淳ゲロス!!!!」

超人的体術で繰り出されたナイフをその身体に叩きつけられる。言葉の意味までは不明だが
その威力は凄まじく小柄な彼女を扉外まで吹き飛ばす威力を秘めていた、ナイフ一本でだ!
ユーロウに呼応し動こうとした全員の動きがここで再度、止まる。

これは…格が違う…これでは…全員の身に絶望が襲いかかる。

「フハハハ、そして時は―ん?」

―でも最後に一つだけ我がまま―

妙な気配に、桂の視線が彼女たちから外れる。
今度は死んだと思われていた安全院の手がすうと動き、ぴたりと止まって―また落ちたのだ。

それだけの動作だった。桂も怪訝に動作を見届けるとまた視線を元に戻そうとする
が、次の瞬間、
自らの中から奪われたものに気付き、驚愕に目を見張り、愕然とした声を上げる。

「…馬鹿な…ありえん! 識家でもない唯の人間風情が『奪った』というのか!
『転校生』から、しかも、この桂あJ素から!!」

片菜…
… 
受け取ってください…
最後に…
…そしてみんなを

そして彼女、安全院ゆらぎは『転校生』から奪ったあるモノをこの『世界』の外に放り投げる。
根拠など何一つなかった、だが彼女は判っていた。それが確かに彼女の手に届くことを

そう私たちは確かな糸でつながっているのだから

『受け取った』

声なきその返事を確信すると彼女は心の底から幸せそうに
目を閉じた。

●6ターン後手―A3―
「いっちゃダメー死んじゃう」
傷ついたユーロウの姿を一目見るなり、笹筒心路は隕石を受け重傷同然だと言うのに敵転校生の元に向かう。
笹筒は許さない。
彼女の大事なものを傷つけるモノを絶対に許さない。例え己が命を賭けようとも

「誰か誰か誰か誰か助けて。笹筒が笹筒が笹筒が――死んじゃう」

『了解した』

今度は声が返ってきた。
慌てて声の主をユーロウが探すといつの間にか刀を携えた女学生が一人、彼女の横に佇んでいた。

見慣れた妃芽薗の制服。
自分より少し年は上だろうか?
だけど一度も見たことのない人。ユーロウは戸惑いがちに声をかける

「貴方は?まさか貴方が―そうなの?貴方があの―」

返事はない。
ただ水平に突きだされた彼女の拳は固く固く結ばれていた。まるで何かを力強く握りしめるように

『契約』なくして『転校生』なし。

かつて最強の名をほしいがままにし、それが故に世界から放逐された少女、魔人・真野片菜。否、

転校生 真野片菜。

彼女は、この地より『召喚』を受け『契約』を手に再びこの学園に降り立つ。
「…ゆらぎ」
「?」
真近いユーロウでもギリギリ聞こえた言葉。
だが、言葉に反し、彼女の凛とした姿からは全く揺らぎというものは見当たらなかった。

『帝王』『神人』そして現れた『超級』
かくて戦いは三つ巴の態をなし、最終局面に突入する。

                      (To Be Continued)



『安全院ゆらぎは揺らがない』


 様々な鳴き声の小鳥たちが囀る、ここは私の愛しい楽園。
 色とりどりの花々が咲き乱れる、ここは私の美しい花園。
 たとえ火の雨が降ろうとも。
 たとえ血の雨が降ろうとも。
 そこは無粋な別世界。
 ここは優雅な別世界。
 楽しげな妖精たちの笑い声燥ぐ、小さな世界。
 清らかな天使たちの話し声響く、聖なる世界。
 不安も心配も何もない、全き理想の箱庭世界。
 不信も絶望も何もない、全き理想の無菌世界。 

 ざわり。
 ざわり。
 不穏な影が、足元に絡み付く。
 不吉な陰から生まれ絡み付く。
 人の形をした影が、テーブルの下から足にまとわりつく。
 両手を広げた影が、白いクロスを掻き分けまとわりつく。

 下がりなさい、心弱きもの。
 お眠りなさい、心安らかに。 

 決して触れさせはしない。
 決して、侵させはしない。

 たとえこの身が果てようとも。
 たとえこの身が滅びようとも。

 ここは私の愛しい庭園。歌う小鳥は只静かに羽を休めて。
 ここは私の美しい花園。咲く花々は舞い散る事を知らず。 

 全ての悪意は、私が防ぐ。
 全ての吾子は、私が守る。

 あぁ、そうか。
 この暖かい気持ちが。
 この愛おしい程の優しさが。
 抱きしめて包み込みたい、この想いが。
 大切な者たちを守りたい、この溢れ出る心が。

 無償に捧ぐ母の愛。
 全てが還る魂の故郷。

 背中に死が差し迫る。
 悪意という名の刃を抜いて。

 ──────楽しいお茶会は、もうおしまい。
 ──────さようなら、私の大切な小鳥たち。
 ──────見送ることしかできないけれど。
 ──────籠から飛び立ち羽ばたいて。

 お気に入りのティーカップを置いて。
 清潔な純白のナプキンで口を拭って。
 最後に一度、うっすらと微笑んで。
 身震いもなく、身じろぎもなく。
 私は静かに瞳を閉じた。


                         <了>


『こちら妃芽薗学園保健室心療内科相談所』



悠木悠(以下、悠)「TVの前の皆さん、こんにちは。悩める思春期の少女たち、その
          悩みの解決のお手伝いをさせて頂く番組、『こちら妃芽薗学園
          保健室心療内科相談所』です」
悠「なお、プライバシー保護の為、相談者の声と姿は特殊処理してお伝えして参ります。
  プライバシー保護担当のモザイクさん、よろしくお願いします」
モザイク「…………(こくり)」
悠「(……あんな子、うちの学園に居ましたかね? そもそも、いったい何者?)」
悠「えー、司会進行を務めさせて頂くのは私、妃芽薗学園勤務カウンセラーの悠木悠。
  そして…………」
一八七二三(以下、八)「アシスタントの妃芽薗学園二年、一八七二三と申します。
            ふつつか者ではございますが、どうぞ宜しくお願い致します」
悠「…………………………」
八「…………………………」
悠「おかしいだろォォォ!! なんでカウンセリングする側に狂人がいるんだよ!!
  完全に逆じゃねーか!!」
八「まぁ…………そんなに褒められますと照れてしまいますわ、先生」
悠「いやいや、褒めてないから! サイコパスだからね、君は!」
八「未熟者ではございますが、立派なサイコパスになれるよう、ご指導宜しくお願い
  致しますね」
悠「(駄目だ…………全く話を聞かない……)え、えー、それでは気を取り直しまして、
  早速始めていきましょうか」
八「はい、最初の方、ご登場お願い致します」

???「実は私、クラスでいじめられているんです…………」
悠「(ふー、良かった。どうなるかと思いましたが、一応まともな相談ですね…………)
  えー、それは大変つらい事でしょうね。参考までに、いったいどんないじめを?」
???「あの…………靴の中にうんこを入れられたり、とか……」
悠「なんてひどい! 何かいじめられるようなきっかけの心当たりなどはありませんか?」
???「いえ、特には…………最初のホームルームの自己紹介で、『私は吸血鬼です。
    人間の皆さん、よろしく』と言ったくらいで……」
悠「はい、アウトー」
???「え、でも…………皆、恐れおののいて掴みはOKだと思ったのに……」
悠「それ、ただドン引きされちゃっただけですね。高校デビューはもっと大人しく、
  或いは人懐っこくしないといけませんよ」
???「じ、じゃあどうすれば…………?」
悠「まずは印象を変えることですね。簡単なところで言えば服装とか…………」
八「では、先生の趣味ということでゴスロリ服をお勧めしておきますね」
悠「なんでだよ!」
???「え、ええー……」
八「ありがとうございました。次の方、どうぞご登場下さいませ」

???「実は、クラスでいじめられているんです……」
悠「おや、またいじめの悩みが…………現代社会の闇でしょうか。それで、どのような
  いじめを?」
???「はい、顔面を靴の中に突っ込まれたり、『このクソ野郎!』と罵られたり……」
悠「はいストップ。どう見てもうんこです、本当にありがとうございました」
うん?「ええっ? なんでですか!」
悠「ストォォォップ! 出てくるんじゃあないッ! カメラ止めて! カメラ止めて!
  放送事故になっちゃう! モザイク仕事してェェェ!」

────────────しばらくそのままでお待ちください────────────


八「まことにお見苦しいところをお見せして、申し訳ございませんでした。洗浄済み
  ですので安心してご視聴をお楽しみ下さいませ」
悠「あの…………すっきりした顔しすぎじゃないですか?」
八「次の方、どうぞご登場下さいませ」

???「えっと、悩みというか、なかなかみんなに分かってもらえない事があって……」
悠「ああ、なるほど。周囲に理解してもらえないというのは立派な悩みですよ。それで、
  何を理解してもらえないのですか?」
???「はい! 大銀河超一郎さんは最強だと思うんです!」
悠「…………は?」
???「人知れずみんなを守ってくれる最強の魔人さんなんですけど、誰も信じてくれ
    なくて……」
八「まさかとは思いますが、その『大銀河超一郎』というのは貴女の想像上の存在に
  過ぎないのではないでしょうか。もしそうだとすれば、貴女自身が統合失調症で
  あることにほぼ間違いないと存じます。或いは、『大銀河超一郎』は実在して、
  しかし最強でも何でもない貴女の妄想という可能性も読み取れます。この場合も、
  貴女自身が統合失調症であることにほぼ間違いないということになります」
悠「お前が言うのかよ! そこは私の台詞だろォォォ!」
八「ありがとうございました。次の方、どうぞご登場下さいませ」

???「好きな相手がいるんです」
悠「やぁ、これは微笑ましい悩みですね……あぁ失礼、真剣な話ですね」
???「子どもがほしいくらい、好きなんです」
悠「そうですか……皆さんの年齢くらいだとまだ少し早いとは思いますが、考え自体は
  素晴らしいものですよ」
???「「でも、どっちが子どもを生むのかが難しくて……」」
悠「…………え?」
???「「そうだ! 交互に性転換して交互に妊娠すればいいんですよね!」」
悠「あの…………もう好きにしてください……」
八「ありがとうございました。次の方、どうぞご登場下さいませ」

???「生まれた時からずっと悩んでいる事があります。私に、自我はありません」
悠「自己矛盾しすぎだろォォォ!」

悠「(駄目だ…………どいつもこいつも手の施しようがない……)」
八「皆様、深刻な悩みを抱えてらっしゃるのですね…………心が痛みます」

八「それでは…………。最後の方、どうぞご登場下さいませ」

???「カウンセラーとしてやっていく自信がなくなりそうです……」
八「お疲れ様でございます」


八「当番組は今回で終了となります。長い間ご声援ありがとうございました。来週から
  この時間は、一八七二三と裸繰埜夜見咲らちかがお送りする『摘みごろ拉致りごろ』
  生放送でお届けいたします。それでは、ごきげんよう」


                                 <打ち切り>