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生徒会ss2




『安全院ゆらぎの安全★戦略1』【5点】


●浸食~2ヶ月後 廊下
2013年妃芽薗学園。日々激化する生徒会と番長グループの対立は夜間だけに留まらず平日昼間にも
および死人の発生は辛うじて避けていたが再起不能続出は日常茶飯事という有態を示していた。

今日も昼放課、その日常茶飯事が発生し、そして生徒会Gと番長グループに属す者同士の小競り合いの
一つに決着がつこうとしていた。

「次の一撃で仕留める!!!この拳にぶっかけて」
「く、まだ…」

倒れた番長G生徒に馬乗りになった生徒会側生徒―賭蝦夷ケフィア―は勝利を確信すると
頭蓋を割らんと己が拳を振り下ろす。対してカウンター能力発動させ、それに備えようとする番長側。

そしてそのターンは、
こつん、と可愛らしい音を立てて『ぱー-んち』が炸裂(?)したのみで終わった。
「え?」
「え!」

能力は未発動、必殺の一撃は「こつん」であった。
「「ええー」」

なんじゃこらーと叫ぶ二人に通りがかりの上級生が注意を呼び掛ける
「喧嘩するほどに仲が良いとはいいますが―貴方達。
廊下は公共の通りと同じですよ、あまり騒ぎすぎませんように。」

「はーい×2」
思わず素直に反省の声をあげる二人。さてそろそろ昼休みも終わる、午後の授業にでなくてはいけない
先ほどまで殺し合いのため、睨みあっていた二人は、また今度でよろしく。とお互いの教室に戻っていった。

不思議なことに、お互いあれ程滾らせていた殺意はどこかに消え去ってしまっていた。

==========================

番長Gメンバーの取締を行おうとした生徒会メンバーが彼女のクラスの前の廊下で乱闘騒ぎを起こし
その騒動を本人が無自覚に無効化してしまった…

以上が「安全院ゆらぎ」の能力保有発見の経緯である。
その能力根源は『平穏』と『安定』を願う精神の発露と思われ、学園内の猟奇殺人事件など
危険状態が長期に渡り続いたため「周囲を護る能力」として発動したと考えられる。

現在も彼女の能力は彼女の望まない「非日常的出来事」を本人の周囲から一切、シャットアウトし続けて
おり、殺傷衝動や事故の発生、魔人の特殊能力発動、学園に備わる高二フィールドも無効化している。
学園側が用意した『特殊環境』で発芽した魔人能力のケースとしては初の高二フィールド効果無効能力
であり極めてレアなケースであると言える。
 本人の精神状態も全くゆらぎがなく極めて安定。能力自覚後は、生徒会に対し、能力を有効利用し
彼女が定期的に開いている御茶会に精神に不安を抱える生徒・教員を招き、不安を取り除く
カウンセリング活動を行うことを提案、学園の風紀治安維持に協力する姿勢を見せている。

生徒会もその安全性を認め「緊急時の第一級安全区域」として彼女の居場所を指定しており、
今後の学園環境にどのような影響を与えるか経緯を見守る必要がある

(『妃芽薗学園能力Lファイル』より抜粋)


『安全院ゆらぎの安全★戦略2』【7点】


○浸食~3ヶ月後、御茶会にて
―と、彼女の能力は学園に認知され、学園側が政府筋に提出を行った報告書にもその旨、記載されている。

だが、現実は異なる。
現実は―
「安心していいですよ。バッチリだから!安全院さんのことは皆とってもとってもに理解しているだから!」
「―ありがとうございます。先生。そうですね。出来れば自分だけでなくお友達の分も拝見したいのですがよろしいですか」

その肝心の報告書を本人が平然と読んでいるという図様が見事に誤りを証明していた。

この報告書を嬉しそうに見せてくれた『先生』は、そのお願いに物凄い勢いで頷く。
本来信頼する相手にはまるで無条件で尽くすタイプなのだろう―ワンワン尾を振る見えない尻尾が見えるよう。
遠慮なく『お友達たちの内容』にも目を通す。

…なるほど私の能力に関して上にこの暫定報告がいっているなら当面『安全神話』は予定路線にそった形でいっておけば
問題はなさそうだ。このままいけば大部分学園関係者への『処置』は完了しそうだし。
…残りの課題は「未だ正体不明の殺人鬼」と「籠絡できていない校長」あとその後ろで何某手を引いている
と思われる怪しい人物の存在くらいか。ふむ。

ぱたりとファイルを閉じる。
コレ政府提出用のA級資料だ。普通なら持ち出しの上部外者閲覧など極刑に値するだろうに。先生も御気の毒なことだ。
しかし、まあアレ。問題は発生しない。
今の今、私に都合の悪いことは全て忘れていただいて御帰りいただければよいのだから。

=================================

安全院ゆらぎの『安全神話』は確かに安全性を極限まで高める効果がある。

彼女の「自分の都合の悪いことを世界から抹消する(現時点では5mが限界)」という魔人能力により
彼女の嫌う非日常的シチューエーションの排除が自動的に行われ、周囲の『安定性』が常に一定に保たれているからだ。

そのフィールド内では、窓ガラスを突き破って飛び込む予定のボールがあっても直前ではじかれ窓ガラスはヒビひとつつかない
有毒ガスや悪臭を注ぎ込もうとしても効果範囲に辿り着く頃には、焼き芋の匂いにスリ変っている(何故、焼き芋の匂いかは本人にも不明)

ただ魔人能力に関しては”完璧に封じ込める”ほどの力はなく、能力無効化率は5割を下回るため
(魔人能力は認識勝負、たゆたって当然とも安全院は考えている)
その低確率を完璧レベルまで仕上げるまで別に『仕込み』と『作業』を行っている。

その作業とは彼女の能力が『絶対安全』だという誤認情報の刷り込みであり―
その仕込みの場は、疑いもなく、今開いている『午後の陽だまり優雅な御茶会』であった。


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『この悪鬼蠢く百合の園に無二の安全地帯の存在がある!』

そういきなり力説され、信じる人はいるだろうか?まあ、ほぼ、いないだろう。では質問の仕方を変えよう

「この悪鬼蠢く百合の園に無二の安全地帯があったらいいなと思わない?」

そりゃそうだ。いいに決まっている。その当たり前の肯定を「盲信」まで着き進ませることができるのが
彼女の能力活用その1である。

彼女のフィールドに入った者はまず「警戒しなくていいですよ」と笑顔を向ける彼女の存在に
『安全院に対する警戒心』を綺麗に削ぎ落される。
ついでその人間が安全院に関する情報をもっていればやはり都合の悪い情報に関して削除される。
警戒心を持つこともマイナス情報も”安全院にとって都合の悪い”ことだからだ。

結果、後、残るのは、
生徒会が推奨する「緊急時の第一級安全区域」や皆が「絶賛する」安心の御茶会という風評。
身も心も警戒心を解き、心から御茶会の主催者を信頼する自分。

そして、人は、その黄金体験を通して

ヨーロピアンの荘厳な教会を訪れた田舎人が聖なる空気の中、神の存在と託言を確信するがごとく
師匠や教祖が放つ適当な言葉に、愚直な弟子どもが、勝手に”宇宙の真理”とぱわわと確信するがごとく

ここに今、絶対安全な空間が間違いなく存在する!と

『勘違い』する。
うん勘違い、錯覚。少年十字軍の託言とか荒野で籠り中で悪魔の勧誘を受けた聖者のエピソードとかそういうののアレ
そしてその勘違いで人は『安全神話』を打ち破れなくなるのだ。

最初から信じ込まされているからこそ使う能力は当たり前のように無効化されるし、全員思いこんでしまえば
『部外者が存在しない閉鎖された』妃芽薗学園ではそのロジックを暴けるものがいなくなる。

原因と結果がそもそも逆なのだ。
一粒の真実、歪んだ解釈、積み重ねた嘘。詐称的合意の結果による能力無効の茶番劇。

『安全神話』

気付いたときにはもう遅い。
これが今回最大の問題児、安心院ゆらぎの能力無効化の仕組みである。


「―さて、それではそろそろ『安全戦略』はじめましょうか」

illusio~n~!!!

本人曰く「些細な」その能力は現在のところ彼女の保身維持に焦点を合わせ使われている。

………今はまだ、そのために、だが。
                        ([安全院ゆらぎの安全★戦略] 終)



無題3【7点】


「いっくぜェ!」
待ってましたの気合と同時に稲妻の全身から放たれた電撃が
廊下の向こう、モザイクの群れに突き刺さる!
眩い閃光、轟く雷鳴。確かな手応えにニヤリと笑って稲妻が言い放つ。

「どうよ、痺れたろ?」

だが収まり行く閃光と雷鳴の中「しwびwれwたwろw」「稲妻みてモザイク余裕でした」
嘲笑と共にモザイクの群が分裂する!
しかし電撃の残滓を反映して激しく蠢くためその実態は捕らえ難い。
「私に人間の感情は分かりません。稲妻マスターの能力の成果も確認できません」
機械はこんな時でも冷静に客観的事実を告げる。
ゴクソツの言葉のとおりチラツキのおさまったモザイク越しに見える動きに電撃の影響は確認できない。
正確に言えば影響が無いということも確認できない。

敵の能力による影響をモザイクの曖昧さによって認識できなくする。
認識できない事象は事実上存在しないと同義である。
モザイク越しにでも確認できる程の影響を与えなければ無効化する。
これこそがモザイクの魔人能力「モザイクをかける」の恐るべき効果だった。

しかし稲妻の電撃は今のが全力。打つ手を失くし呆然と立ち尽くすその横を、
「あーもう先輩。そんなとこに一人で突っ立ってると良い的じゃないですか。
 根元さん魑魅子ちゃんうつるちゃんミラちゃん!お願い!」
「「「「了解!」」」」
呆然と立ち尽くすその横を幾つもの人影が駆け抜ける!

「あの男(バカ)未知の魔人能力に対して何の備えも無く正面から挑むなんて、
 うちの部下なら粛清ものだな。
 ま、今の希望崎にはろくな魔人が残っていないという裏は取れたかな?」
いつの間にか戦場に現れていた鬼遊-峰-蛇姫が密かに何やら書き記す。

その向こう七宮達が駆け行く先、
何の前触れも無く男が一人渡り廊下に現れ
何の脈絡すら無く男はあまりに惨い死を向かえる。
その突然すぎる惨劇に八重刃は思わず目を
(ダンゲロス流血少女上巻-Girls and Blood-6章より抜粋)



個人的衝撃事件を掟破りの決着前でのSS化
スタメン・増援で希望崎組がほぼ出てたのでこんな感じで。
1章は平和ボケした希望崎に湊乃照が出現し妃芽薗とは?って感じの引き。
2章は現在の妃芽薗の様子
3章は現状を生み出したきっかけ血の踊り場事件
4章は希望崎組が乗り込んできてドタバタ
5章は生徒会連合&番長連合が形成されつつ開戦へ
幕間でつぶら&まどかの存在を匂わせて
6章は1戦目前半、転校生出現で引いて
7章は1戦目終結
下巻Girls and Bleedingでは2.3戦目をやりつつ合間合間で
蓮柄兄妹や学園経営陣が描かれつつ生徒たちにとっては無情な感じでEND
って感じを想定。


『本日の妃芽薗トリビア』【3点】


妃芽薗3年 安全院ゆらぎの使う全無効フィールドの学園呼称は

―Afternoon

―Tea

―Field          略して ATフィールド。



☆番長グループ、鳥人間コンテストに出場するの巻【16点】

 (元ネタ:tp://www.youtube.com/watch?v=DVgGDQk-Ixw&feature=related)

 これは、ハルマゲドンが勃発するより、少しだけ前のお話――

「ここが会場ね……!」

 吹き抜ける風が肌をなぞってゆく。
 ここは妃芽薗学園が一年に一度開催している鳥人間コンテストの会場である。
 多くの女生徒がごった返すこの場所で、異様な空気を醸し出す集団――妃芽薗学園・番長グループである!

「メンテは終わった!?」

 小さな人影が、振り向きながら声をかける。ならず者どもを束ねる番長・八重刃こだちである。
 彼女の後方にてマシンの整備をしていたメンバーは、いい笑顔でそれに答える。
 金属加工技術に長けし魔人・衿串中と彼女の使役する蛇たちである。

「バッチリ! いつでもいけるよ!」「「シュー♪ シュー♪」」

「よし!」

 こだちは次に、設置されたテントの中へと入ってゆく。
 コンテストの花形とも言える、パイロットとオペレーターがそこにいた。

「うんこ! 桂! 準備はいい!?」

「ああ、問題ないぜ」

「こちらもだ」

 椅子の上に鎮座する、二つの人影(?)。
 かたや、今回のパイロット・うんこ。椅子に全身を預け、リラックスしているように見える。
 そしてその隣で足を汲んで座っているのが、桂あJ素。背後に亡霊のようなものを連れたオペレーターである。

「おっけー! それじゃ、行くわよ!」

 番長の号令に従って、少女たちは戦場へと歩き出した。
 ちなみにこだちは口だけで何もしない。


 コンテストは熾烈を極めた。
 次々と落水してゆくライバルたち。生徒会も出場していたが、なんか内輪もめしてる内に大したことない記録で落ちてしまった。
 そうこうしているうちに、番長グループの番が来た。うんこは「フゥーッ」と大きく息を吐き――

「ペラ回しますッ! いきまぁーす! さぁーん! にぃ! いぃち! ガオッ!!」

 ついに飛び立った――!
 空中に躍り出た鳥人間ならぬ鳥うんこを、応援席より、多数の番長グループメンバーが見つめていた。
 腕組みをしながら見つめる、SLGの鈴木三流(最強のトライデント)。

「おるで。うんこが」

 目を閉じ、友の無事を祈る、SLGの三上由香子(最強の新体操)。

「気を抜くな。気を抜かないでくれ・・・ 頼む・・・」

 そして、挑戦者に届けと声を張り上げる、隠れ識家の意識唯。

「うんこーー! 生徒会を倒せーーーー!!! その生徒会をーーー!」

 仲間たちの応援を背に受け、うんこの滑り出しは良好のようだった。

「直進するッ……!」

 チューブから水分を得ながら、うんこは足(?)を動かす。
 しかし、そんな彼女をいきなりのアクシデントが襲う!


「聞こえる!? 桂!? ……GPSの信号がない――!!」

「なんだとッ!?」

「クソッ……何も聞こえないッ! 無線がッ!!」

 マシンの不良――!
 オペレーションに徹していた桂の顔に浮かんだ焦りの色は、次々と他のメンバーに伝染してゆく……!

「不良、やな」

 落ち込むうんこの様子を、腕組みをしながら物陰から見つめる彩ヶ崎玖三子。

「気を抜いたんだ……鳥人間コンテストは一瞬の気の緩みが破滅を招くんだ……」

 祈るように友の復活を願う小野寺塩素。

「うんこーーー! お前はひとりじゃないぞーーー! 俺たちがついてる、最強番長グループがーーー!」

 感極まり、激励の雄叫びをあげるゲストの白金七光(元男)。

「クソォ……! 対岸は見える――だが、これはダメなんだろうッ――!」

 うんこの顔にも、焦りや怯えなど、様々な感情が入り混じりつつあった。
 それも当然だろう。いまや彼女は、空中に一人投げ出された、哀れな一つのうんこでしかないのだから。

「……GPSが切れたら、俺は運転もできないのかよッ……!」

「もう半分くらい体力(4くらい)使ってる……! 帰ってこれるのか、これでッ!?」

「悪いね、ヘボパイロットで――」

 うんこの孤独な闘いは、桂たち番長グループの面々にも精神的な負荷を与え続けていた。
 彼女への声援も、届かなければ意味がない――絶望しかけたメンバーの元へ、無線からうんこの一言が聞こえた。

「――エンジンだけは、一流のところ見せてやるぜッ!!」

 孤独な戦いを続けるうんこは、まだ諦めていなかった――!

「クソォ! フルパワーだぜッ! 信じらんねえ!」

 ボロボロになりながら、自分たちメカニックの力を信じて戦っている!
 それなのに、自分たちが先に諦めてどうする!

「「 がんばれ、うんこォー!! 」」

 お前は、一人じゃない。
 番長グループ全員の想いが響きわたる。
 そして、その想いが通じたのか――戦況は、好転した!

「――やっと戻った!」

 うんこが、激しい戦いを耐え抜いたのだ!
 「うわっ、だいぶ流されてるな……」と言いつつも、笑顔を見せる余裕も戻っている。
 番長のメンバーも、ほっと胸を撫で下ろす。中には涙目になっている者も。

「俺の人生は、晴れときどき大荒れ――いいねッ! いい人生だよッ!!」

 明るく言葉を発するうんこに、次第に士気を取り戻してゆく皆。
 うんこ自身も十分回復できたのか、再び表情を引き締め、前方を見据える。

「――風をッ……風を拾うんだッ……!」

 しかして、戦いは厳しさを増してゆく。

「押されてるッ……! わかってるッ……! ハアッ、ハアッ、わかってるけどッ……!!」

 そして遂に、“限界”が訪れてしまった――!

「ッ……ああああああああああああああああああああああああッ!!」

 声援を送る番長グループの耳に、うんこの悲痛な叫びがこだまする。
 何事かと身構える面々に、最悪の情報がもたらされた。

「アッ……左脚がッ! 攣ってるッ――!!」

 戦慄する番長グループ。
 体力も最早底を尽きかけている、この状況で、左脚が――!?
 うんこの左脚がどこかなどという無粋なツッコミをする者もなく、みな沈痛な面持ちでいた。


「片脚だけで回すのはッ……! 右もッ! 限界に近いッ!!
 ――あああああああああああああああああああああああああッ!!」

 繰り返される絶叫は、祈りをささげる番長グループの精神をガリガリと削ってゆく。
 うんこは苦痛に顔を歪ませながらも必死に戦いを続けている……!

「アアッ……! 左脚が、攣ってるッ……!
 あああああああああああああああしがああああああああああああああああああッ!!
 ああああッ! あああああああッ! 動けえええええええええええええええええええええッ!!」

 うんこはとっくに限界を迎えていた。その叫びは、とっくに番長グループの心をへし折っていった。
 Φは蛇たちと肩を寄せて震えており、桂は無力な自分への怒りから座っていたパイプイス(借り物)を粉々に破壊していた。
 唯一、こだちだけは気丈に振る舞っていたが、彼女も番長とはいえ小学女子。いつ心が限界に達するとも分からなかった。

 崩壊しかけた番長グループ――だが、その状況にあって、“ヤツ”だけは、この期に及んで、まだ諦めていなかった!!

「妃芽薗学園だろッ……! 番長グループだろッ……!! ああッ、痛いッ! ああああああッ!
 ――回れッ! 回らんかああああああああああああああああああッ!!」

 戦い続けるうんこの叫びが響く。
 だが、番長たちは悟っていた。彼女の限界ももう目と鼻の先に在るということを。

「ねえッ! 桂ッ、今何キロ――」ヒュウウウン ドボォン!!

 うんこの問いに返答がされる間もなく、着水した。
 戦いの終結を見届けた番長の面々は、我先にと彼女の元へと駆けつける。
 そして酸素を吸入するうんこの傍へと走り寄り、口々に労いの言葉をかける。

「うんこ! よくやったぞ、うんこ!」「さすがは我らがパイロットだ!」「お疲れ様ですっ!」「「 シャーッ! 」」

 また、モザイクに隠されるミス・メテオストーム(アメリカのスパイ)。

「Perfect。」

 言葉を返すこともままならぬ程に憔悴したうんこは、チームメイトやスタッフによってされるがままの状態であった。
 ややあって、実況と解説が結果を告げる。

『通産飛んだキロ数はですね、35キロです』

『え~、すごい!』

 それは、ブッチギリで一位の記録であった。
 讃えあう番長グループの中で、ただ一人、うんこは満足できていなかった。

「クソーッ!! ……まだまだ飛びたかったッ……!」

 うんこは、密かにリベンジを誓った。
 幸い自分を含めたメンバーは皆2年(小学生と稲川除く)。
 もっと鍛錬を積んで、また来年、この場所へ――!


「オッ……! オオオオオッ!!」

 ――だが、その願いが叶うことはなかった。
 遂に勃発したハルマゲドンによって、メンバーにも多大な犠牲が出たのだ。

「こだちッ……! ファイッ……! そして、うんこッ……!!」

 番長・八重刃こだちは、兄(?)の幻影が超凄惨に死んだ様を目の当たりにし発狂したところを、瓜二つの全裸の少女たち(生徒会長らしい)にアイデンティティを揺さぶられショック死した。
 衿串中は、こだちと共に超凄惨に死した男の姿を見て精神を大きく減じながらもなんとか持ちこたえた。
 だが、そんな彼女の隣でこだちが殺され、遂にその強靭なる精神も崩壊してしまった。それより後は、ただひたすら己の鎧を鍛え上げる冶金マシンと化していた。

 そして、うんこは――他の番長グループの者どもと共に先陣切って敵の元へと切りこんでいった彼女は、仲間内で殺し合う敵の姿を見て、発狂してしまった。
 生き残りはしたが、社会復帰の道は遠い。
 少なくとも、来年の鳥人間コンテストには、間に合わない――

「おのれッ……! おのれ、生徒会めッ!!」

 一人生き残った桂あJ素は、復讐を誓った。
 憎き生徒会の狗どもを、皆殺しにしてくれる――!!

 僅か、一週間の出来事であった。  <終>


歌琴みらいSSプロローグ【20点】


 結果として、ハルマゲドンの最中に行われたライブは失敗に終わった。対象としていた男子がほとんどいなかったというのも一因だが、何よりも生死がかかった勝負の最中に誰も聞くはずがないのだ。
 だが、この程度で彼女のこころは折れはしない。まだ次がある。今回の”デビュー”が失敗に終わったところで、そう痛くはない。


 小さい頃からの夢だったアイドル。例え歪なものだとしても、みらいに残された道はこれしかなかった。プライドも、魂も、身体も。すべて悪魔に売り払ったのだ。

 これも全て、あの女を――埴井葦菜を蹴落としてやるため。私の今までの人生を――生きた道を否定したあの女を必ずこの手でたたき落とす。
 そして、地の底の底の底まで堕ちてしまえばいい。堕ちたら二度と飛べないように、羽ばたくことも許さないために、残った翼さえもぎ取ってやる。





 それから数日間、彼女は今までにないほどハードスケジュールで動いていた。朝はラジオ、昼は深夜帯のバラエティ、夜は歌のレッスン。ファースト・シングルを売り出すために宣伝を決して欠かさなかった。
 その忙しさは、常人なら既に心身ともに壊れていてもおかしくないほどだ。だが、彼女がは魔人であり――それ以上に、執念が彼女の身体を動かしていた。
 忙しいということは、すべてが悪いことというわけではない。それは仕事が多いということでもあり、アイドルである彼女からすれば「立ち位置が変わった」ということに他ならない。
 あのプロデューサーの力であると推測するに難くない。

 ――あの老いぼれ、ただのエロジジイじゃなかったみたいね。

 プロデューサーである「初老の男」が、この業界内で尋常ではない影響力とコネクションを持っているということを、彼女は初めて実感した。
 これまで十年間、自分はなにをしていたのだろうか。真面目に努力していた今までより、よっぽど今のほうが夢に近づけているじゃない。ずっと遠回りをして、ひたすらばかみたいに真っすぐ走ってた私は何だったのか。


 ――アイドルになるって、こんな簡単なことだったんだ――


 忙しさで心身が壊れそうになりながらも、幾度も陰でほくそ笑んでいた。本当にあの女を超えることができると。そのために、あのジジイもあの男も最大限に利用してやる。

 ――否、利用できるものなら悪魔でさえ。



 そして、満を持して彼女のファースト・シングル『疾風賢者(カラミティダンス)』が発売された。

 彼女が尋ねたところ、妃芽薗にもプロデューサーの手が回っているらしく、ここ数日間に無断欠席していた件は、お咎めなしで通っているらしい。
 末恐ろしい男だ。この妃芽薗学園は、設立してから5年弱しか経ってない。そんな学園の一生徒であるみらいの処分を無効にできるほどあいつのコネクションは幅が広いということなのか。
 かつて「生徒会への根回しは済んだ」とも言っていたことを思い出す。やはり、妃芽薗とズブズブなのだろうか?
 ……尤も、実際は妃芽薗に限らず日本全国の女子校にコネクションを持っているのだが、それを知るのはずっと先の話だ。
 ともかく、どのような事情があってこの学園と繋がりを持ったのかはわからないが、アイドル活動に支障をきたすことはなくなったのだ。心配することは何一つとしてない。

 放課後、みらいは友人や後輩だけでなく顔を知らない生徒からも持て囃されていた。ハルマゲドンでの”デビュー”は関係ないだろう。テレビを見ただけの者が大半なのだから。

「みらい、この間の新曲すっごいかっこよかったよ! CDも買っちゃったよ」
「みらいせんぱい、すごかったです! 感動しました!」
「サイン頂戴、サイン!」

 みらいのパフォーマンスに関して言えば淫靡なものではあることは間違いない。彼女の衣装も、その歌詞も。だが、この年頃の女子高生ならそれを「大人の魅力」と勘違いしてもおかしくはない。
 故に、結果だけ見ればみらいは男性だけでなく、女性、特に10代の者たちを虜にできたということになる。これは、みらいにとって嬉しい誤算だった。
 たくさんの生徒に囲まれているみらいは、その自尊心を刺激された。

「ありがとう。しばらく仕事続きで疲れてるからさ、もう、部屋に戻っていいかな」
「あー、ここんところずっと学校休んでたしね。ま、しかたないか。あとでもいろいろ聞かせてよ」

 うん、とだけ返事をしてその場を立ち去った。
 寮に戻る途中、歌琴みらいは幸福感に浸っていた。

 ――そうだ。あれが私が求めていたもの。これが……これが、アイドル「歌琴みらい」のあるべき姿だ。仕事に恵まれずに事務所を転々としていた私は、もういない。

 昔の自分と比較して――今の自分は正しいのだと、再認する。



 寮の部屋に戻ると、みらいの幼なじみでありルームメイトの写六こころが部屋で待っていた。扉を開けた途端に飛びついてきたのだが、みらいは倒れることなくその場で踏みとどまった。
「みらいちゃん、おかえり! ひっさしぶりだね!」
「あはは。朝にも会ったでしょ、こころ」
 これがやりたいが為に部屋にスタンバイしたのだろうか。まあ、気にするほどのことでもないけれど。
 しばらくの間こころと戯れていると、鞄の中の携帯電話が着信音を鳴り響かせた。どうやら、幸一からなにか連絡があるらしい。
「ちょっと待ってて」
「なぬー、それは例の彼氏さんでは……」
 冗談めいたことを言うこころを無視して、部屋の外で電話に出る。

「……何か用?」
「朗報だ。昨日のCD、デイリー1位だと。あの埴井葦菜を抑えて、な」

 その言葉を見たとき、彼女の中にある何かが救われたような気がした。今すぐにでも歓喜の情で飛び跳ねたくなったが、流石に憚られた。
「そう」
 感情の篭らない言葉で返事をする。
「ん? あまり嬉しそうじゃないみたいだけど、どうした」
「大事なのは累計。そうでしょ」
「まあな。とりあえず伝えたからな」
 「じゃあな」のひとこともなしに、ブツッと電話が切れた。

 部屋に入り、何があったのかと興味津々な目で見つめるこころを素通りして、ひどく懐かしいものに感じられるベッドに仰向けに倒れた。
「ひどいよみらいちゃん、無視するなんてー」
「ごめん、ちょっと疲れがたまっててね」
「無理はしちゃダメだよー。倒れたら元も子もないからね。それと……」
「わかってる。隠し事はしない、でしょ? まあ、こころに隠し事なんて無駄だけどね」
 みらいは自嘲気味に言った。

 写六こころの能力「写心撮映(マインドテイカー)」は、平たく言えば心を読み取る能力、つまりテレパシーだ。ただ、読み取れるものの幅は広く、記憶や無意識の感情さえも読み取ることができる。
しかも、本人の意志とは無関係に発現するため、大抵の者は彼女と接触するのを避けている。もっとも、本人によれば「ある程度なら情報の取捨選択は可能」らしいが。

 かつてプロデューサーと身体を重ねて帰ってきた日、こころは悲しそうな顔をしていた。それを見たみらいは、こころの能力を少しだけ恨めしく思った。
 だけど、彼女のおかげでみらいは助かっていると言っても過言ではない。売れてなかった頃のみらいを支えてきたのはこころなのだ。こころはかけがえのない相談相手であり……気の置けない唯一の理解者、なにより”親友”なのだ。

「えへへ。わかってるのならいいんだよ」
 こころは一点の曇のない笑顔を見せる。
 昔から、この無邪気な笑顔に何度救われたことだろう。こころには、感謝してもしきれない。
 みらいは睡魔で薄れ行く意識の中、そのようなことを思った。


歌琴みらいSS前編【20点】


 一週間後、CDの売上の結果が出た。結局ウィークリーの累計では埴井葦菜の曲に抜かれてしまい、二位に甘んずることとなった。もっとも、CDの売上自体はデビューしたての割にかなり売れた部類なのだが。
 それからのメディア展開は、トントン拍子で進んでいった。深夜バラエティに限らず、ゴールデンタイムや昼の某番組に出演などは当然ながら、ドラマや映画への出演も決まっている。
 売れっ子アイドルの道を爆走中のみらい。彼女はまさに人生の絶頂期にいた。

 しかし、セカンド・シングルのリリースする二日前、事件が起きた。それは、彼のコーチである、小内幸一が死亡したという知らせだ。殺された、という表現のほうが正しいだろう。
 死因は出血多量。頸動脈がえぐり取られていたほか、顔面と下腹部がアイスピックか錐のような先端が尖った細長いものでメッタ刺しに刺されているところから、おそらく恨みの深い者の犯行と思われる。
 故に、彼の関係者の中でみらいは容疑者リストから真っ先に外された。彼に対して特別深い恨みがあるわけでもない、と判断されたからだ。
 未だにみらいと幸一は恋人関係にあると誤解しているものが多く、その中でみらいに同情の言葉をかけるものは少なくなかった。

 この事件に関して――みらいは一つだけ心当たりがあった。心当たりと言うには、あまりに曖昧で不明瞭、不確実なもの。気のせいだ、と一蹴されて然るべき内容である。
 幸一が殺される前日――正確には彼が殺された日だ――に見ていた夢が、みらいが幸一を殺すという内容の夢だった。しかし、それは夢と言うにはあまりにリアルすぎた。
幸一に凶器のアイスピックを刺した時の手の感触。性器をグシャグシャに刺した時の幸一の悲痛な叫び。そして、頸動脈を引きちぎった時の血液の生暖かさ。
 どれも、夢にしては感触が生々しすぎた。まるで、みらいが実際に幸一を殺したかのように。
 幸一の葬式に出席したとき、何一つとして幸一に対する情が湧き出なかった。どうせなら、メッタ刺しにされたというその無様な顔面を見てみたかったが、許可が得られなかったのは残念としか言えない。

 セカンド・シングルに関しては、何も問題なく発売された。幸一はあくまで一コーチであり、それ以上の存在ではないため、それほど大々的にニュースに取り上げられることもなかった。
 だから、みらいのアイドルとしての名声に傷がつくはずがない。そう考えていた。


 セカンド・シングルのリリースから2週間。一向に埴井葦菜のシングルを抜かすことが出来ずに(無論、売り上げ自体はかなり奮ってはいるものの)みらいは焦っていた。
メディア露出は埴井葦菜より十分多いのになぜ売上では負けているのか、ということもあるが、理由はもうひとつある。
 幸一が死んだせいで、彼の能力を使うことが叶わなくなったからだ。ファースト・シングルが売れたのは幸一の能力のおかげであるのは事実。
 しかし、このセカンド・シングルに関しては、幸一が死亡した時点で彼の能力が解除されたため、彼の能力の影響下にはなかった。
つまり、このセカンド・シングルが売れたのは間違いなくみらいの実力なのだ。無論、そんなことをみらいが知る余地はないのだが。


 幸一の死からおよそ一ヶ月。事件のことが風化されて誰もが忘れたかけた頃に、サードシングルをリリースする予定になっていた。
 だが、悲劇は再び起きてしまった。悲劇と言うには被害者が少々相応しくないが――


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 今日も、あの男のもとにやってきた。私がアイドルとして活動できるのは間違いなくあの男のおかげだろう。その点だけは感謝している。しかし、もうこの負の連鎖は断ち切らねばならない。
 そう、誰かが断ち切らなければならないのだ。

 いつものように彼の部屋を四回ノックする。「入りなさい」という声ともにドアを開けた。
初老の男はそこで気味の悪い微笑を浮かべてベッドに腰掛けている。

「よく来たね。ま、座りなさい」

 彼は隣をバンバンと叩いた。そこへ、彼女は腰をかける。

「なかなか売れてるようだね」
「まだまだよ。あの女は、抜かせてない」

 初老の男はヒヒッと奇怪な笑い声を上げる。

「まあ、どちらにしろまだまだ頑張ってもらうよ」

 初老の男はそっと腰に手を回した。彼女はクスクスと笑いながら、初老の男に話しかける。

「ねえ、今日はちょっと変わったプレイがしてみたいんだけど」
「ほう。それはどんな」
「両方とも目隠しでするの。見えないと、逆にそそると思うから。ちょうど、そのための道具も持ってきてあるから」
「そうだな、たまにはいいかもしれないね」

 男の承諾がとれた。彼女はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

「じゃあ、ちょっと後ろ向いてて。いま、とり出すから」

 彼女の言葉に従って、後ろを向く初老の男。
 その隙を見て彼女はかばんから金槌を取り出し、初老の男の頭へと振り下ろす。

 初老の男は、二度と歌琴みらいの姿を見ることはなかった。

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 今度はサードシングルをリリースする一週間前の話だ。
 ”初老の男”であるプロデューサーが殺されていた。死因は脳内出血。頭蓋骨が陥没しており、鈍器によるものだと推定された。
また、体の各所に痣があったことからおそらく被害者を撲殺した後、体を数カ所強く殴打したものと思われる。




 まただ。また”あの夢”を見た。今度はプロデューサーだった。後ろから殴ったとき、
何が起こったかわからないというような顔をしていたけど、すぐに白目を向いて倒れたのは圧巻だった。
 たぶん、あの様子じゃ即死かな? それに、意外と頭蓋骨が硬かった。
 そのせいで、まだ殴った手が痛―――

 痛い? そういえば、なんで「痛い」なんて……

 ―――まさか。いや、そんなはずは……



 みらいは自分の机の引き出しが開いていることに気づいた。昨日、寝るときは閉めたはずだ。開けた覚えもない。
 恐る恐る引き出しを開けると、何か細長いものが布に厳重に包まれていた。その布をはがすと、先端がわずかに黒ずんでいる金槌が姿を表した。

 見覚えがある。いや、これは……夢のなかの「あれ」と同じ……

 みらいは戦慄した。現在の状況を把握することすら困難だったが、これは隠さなければならないということは理解できた。
 だから、みらいはその金槌を元の状態に戻した。見なかったことにして、引き出しの奥に閉まった。

 私じゃない。私の金槌じゃない。私はやってない。私は関係ない。私は何も知らない。私は……

 眼の前にある事象をひたすら否定することで、彼女は自信の精神を辛うじて保つことができた。


 放課後、みらいはプロデューサーの訃報を耳にした。案の定予感はしていたので、それほど驚きはしなかったが、
伝えられた死因はみらいの”夢”で見たそれと寸分違わず同じだった。

 その後、部屋に戻ったみらいは昔見たドラマの内容を思い出していた。
 詳しくは覚えていないが、SFサスペンスもので、犯人が特徴的だったのを覚えている。
 犯人は「心のなかのもう一人の自分」で、最後は分離した自分自身に殺されて完全に入れ替わる、というものだった。
 普通ならありえないが、魔人能力によって引き起こされているなら納得はできる。だが、そのような能力者に心当たりはない。
 では、本当に「心のなかのもう一人の自分」がやったのか?
 そんなはずがない。魔人にとって能力はアイデンティティで、それは同時に魔人の存在証明でもあるはずなのだ。それなのに、どうして魔人に「心のなかのもう一人の自分」ができるだろうか。


 そのようなことばかり考えていても埒があかない。みらいは洗面所へ向かった。とりあえず、顔を洗ってすっきりしよう。
 顔を洗い終えたあと、鏡を見上げると背後に何者かが立っていたのが見えた。
 みらいは振り返ったが、誰もいなかった。しかし、再び鏡を見ると間違いなく背後に誰かがいる。
 とても懐かしい気分がして、その服にも見覚えがある。そうだ。これは―――

「気がついた?」

 鏡の中だけの彼女がみらいに向かって話しかける。

「そう、あなたは昔の私。そして、本当の私」

 声が後ろから聞こえる。いないとわかっていても後ろを振り向いてしまう。しかし、今度は本当にそこにいた。

 そいつは、まぎれもなく歌琴みらいだった。

 それも……かつて売れてなかった頃の自分の衣装を着ていた。
「今はまだ無理だけどね、もうすぐ貴方と代わってあげられるよ。だから喜んでもいいんだよ」
 彼女が何を言っているのか、理解出来ない。
 代わる? 彼女が、私の代わりになるということ? 
 冗談じゃない。私は、自ら望んでこうなったのに。どうして今更戻らなきゃいけないの?
「ふふふ、今日はそれを言いに来ただけ。じゃあね」
 後ろに立っていた歌琴みらいは、颯爽と飛びさっていった。みらいは、逃げていく歌琴みらいを追いかける。
 問いたださなければ。目的は何か。何するつもりなのか。二人を殺したのはそっちの歌琴みらいなのか。

 けれども、一向に追いつかなかった。そのうち場所を見失ってしまい、結局どこへ行ったのかわからなくなった。
 突如、彼女は目眩がした。身体を大きく揺さぶられ、大きな力で押されたり引っ張られたりする奇妙な感覚。
 ―――気がつけば、彼女はベッドで横たわっていた。体中から吹き出ている汗が悪寒を誘う。隣でこころが心配そうな目をしながらみらいを見つめている。
 夢だったのだろうか。夢のはずがない。あれほどリアルな感覚が、夢のはずがない。しかし、あれを現実だと証明する方法がない。まるで胡蝶の夢だ。

「みらいちゃん、大丈夫?」
 こころは汗まみれになっているみらいの顔を拭き、覗き込んだ。
「ああ、ううん、大丈夫。ちょっと、変な夢をみただけ。それより、今何時?」
「え? えっと、もうすぐ八時だよ」
 どれくらい経ったのかは正確にはわからないが、少なくとも部屋を出たのが四時頃なので、およそ三時間弱は経過したということだろう。だとしたら、いつ部屋に運ばれたのだろうか。
 難しい顔をしながら考えていると、こころが口を挟んできた。
「そうだ、みらいちゃん夕食を食べてないでしょ? 購買でパンを買ってあるから、よかったら食べて!」
 思い出したように腹の音がなった。腹が減っては戦ができぬ、という言葉にあるとおり、食事は人が活動するのに必要な行動なのだ。
 せっかくなので、有り難く頂戴しておくことにした。