舞葉 志姫

  • 性別:女:貧乳
  • 学年:2年
  • 所持武器:十字架のネックレス
  • 出身校:妃芽薗 評価点数100+200=300
  • 攻撃力:0 防御力:9 体力:14 精神力:3 FS「吸血衝動」:4
  • 固有技能:絆『聖靴フォーファルサフブーツ

特殊能力『グレーテストヴァンパイア』 発動率:89% 成功率:100%

『効果:味方完全蘇生:170
タイプ:カウンター
範囲+対象:自分自身 :0.75倍
時間:一瞬:1倍
消費制約:体力消費5:25
時間付属:死亡非解除 : 1.2倍
【カウンター】
 条件:敵に自分が殺される(後手または同時):0.4倍
 対象:自分自身:1.0倍
 待受範囲:同マス:1倍
 待受時間:2ターン:1.0倍
 待受回数:1回:1.0倍
 タイミング:後手:1.0倍
カウンター倍率
=カウンター条件×カウンター対象×待受範囲×待受時間×待受回数×タイミング
=0.4×1.0×1.0×1.0×1.0
=0.4

効果数値
=効果×対象(×フィールド補正)×時間(×時間付属)×非消費制約× カウンター倍率
=170×0.75×1(×1.2)× 0.4
=61.2

発動率(%)
=(100- 効果数値 の合計+消費制約)×(1+FS×0.1)+効果付属+調整
=(100- 61.2 + 25)×(1+4×0.1)
=89.32
=89』

<能力原理>

偉大なる夜の王である吸血鬼は、一度滅させれても、復活する

キャラクターの説明

『黒い長髪に黒目で、八重歯がチャームポイントの少女。
自称『吸血鬼』
その割には日光の下も普通に歩けるし、十字架のネックレスを首から提げているし、血をすっている所を誰も見たことがない。
一応、ニンニクは苦手らしい。
能力が発現している間は、髪と目が紅に染まる。

自分の手では、誰も殺さない。という約束をしたらしく、他人に攻撃されても基本的には無抵抗。
しかし、偉そうな所もあるが、基本的に面倒見がよい性格のため、他人に攻撃されることは少なく、
また、たまに攻撃されても誰かが助けてくれることが多い。』

エピソード

        • 一番最初の記憶から、私は檻の中だった。
なんでも私達は生まれながらの魔人だったせいで親に捨てられたらしい。
本当のところは知らないが、隣の檻の中にいた子はそうだったらしいから、きっと私もそうなのだろう。
酷い親もいたものだ。顔も知らないので文句を言うこともできないというのが更に酷い。
もっとも、酷い人間というのなら私達を飼っている人間達もそう大差はない。
毎日実験や研究と称して私達の体を弄くりまわしているのだから。
育てるのを放棄して捨てるのと、飼い殺しにして好きなように弄ぶのはどちらがマシなのだろうか。
両方を経験している私だが、未だにこの問題の答えは出ていない。どちらも酷い。というのが現在の私の結論だ。
そもそもこの問題に答 えを出す必要なんてないだろう。
答えが出たところで、私がその両方の被害を受けた。という事実は変わらないのだから。
そんな下らない事を考えている間に、今日の検査が終わったらしい。
体中に取り付けられていたチューブやら機械やらが取り外されていくのを、私は夢うつつなままで見つめる。
麻酔か何かを使われているらしく、検査の時間はいつもこの気持ち悪い感覚を味わうことになる。
毎日行われる実験の中でも、この時間が一番嫌いだ。
体の自由は利かず、頭にもやがかかったようになるので思考も覚束ない。
何も出来ず、思考する権利さえ奪われ、ただ自分の無力さを、不幸な境遇を、突きつけられる。この時間が。
しかし、今日もその時間は終わった。これでやっと檻に帰れる。何もないけれど、苦痛も悲痛もない冷たい檻の中に。
今日は隣の檻の子と何を話そう。あの子は私の知らないことを 多く知っているから話すのは楽しい。
言葉を教えてくれたのも、外の世界の事を教えてくれたのも、思考することの大切さを教えてくれたのも彼女だ。
彼女は、私がこの施設の中で唯一私と会話してくれる人間だ。
私と同じ境遇の子なら他にもいるけれど、彼らと会話できたことはない。
檻が離れているから。というのが理由の一つだが、それ以上に、実験のせいで心が壊れてしまっていてまともに会話できない。
職員とか研究員とか呼ばれている人たちもダメだ。そもそも彼らは私達を人として見ていない。だから私も彼らを人としては見ない。
人でない人とはそもそも話すことなんて出来ないのだ。
……しかし、と今更ながらに思う。なんで私は彼女と話せるのだろう。
彼女との会話が、 職員達の実験にとって邪魔になることはあっても、利益になることなどないだろう。
普通なら、檻を話すなり見張りをつけるなりして私達が会話できないようにするはずだ。
今まで邪魔になっていないから黙殺している?そもそも気がついていない?
それとも、利益にはならないと思っているのは私だけで、なにか裏にあいつらにとって特になることがある?
分からない……折角彼女に思考することの大切さを教えて貰ったのに、その教えを生かせるだけの頭脳がない自分が恨めしい。
仕方ないので、今日は彼女にこのことを聞いてみよう。きっと、彼女なら私でも納得できる答えを思いつくはず。
そんな風に彼女との会話を楽しみにしながら檻の中で待っていたのたが、その日彼女が隣の檻に帰っ てくることはなかった。
彼女がどうなったのか正確なところはわからないが、この部屋の檻の子供達が時々入れ替わっていることを私は知っている。
彼女も、なんらかの理由でその入れ替わりの一人になったのだろう。
その理由は想像することもできなかったが、想像したくもなかったが、彼女と会うことは二度とない。
それだけは、考えずとも私にも理解できた。

―――――
――――
―――

「おめでとう。君はこの研究施設始まって以来、初の完成品だよ」
いつものように最悪の検査が終わった後。檻に帰してもらえると思っていた私は、白い部屋に連れてこられてそう言われた。
「素晴らしい、想定以上のスペックだよ。やはり素体が上質だっただけことはあるな」
他の職員と同じように、白い服を着た職員が興奮気味に私に語りかける。
私は彼らの区別がつかない。普通の人は、人間以外の動物だと見分けるのが難しいらしい。
彼らも人間ではないんだから、私からすれば見分けがつかないのは当然のことだ。
「長い年月をかけた成果がでてくれて、私もうれしいよ。君は我々の最高傑作だ」
私を褒めるような言葉を並べ立てる目の前の職員。
けれど、その目を見れば分かる 。彼が私を褒めているのではなく、自分の研究成果に酔っているだけだということが。
下らない。早くこの無駄な時間を終わらせてくれないだろうか
「さて、完成品である君には早速一つの仕事をしてもらいたい」
私の願いが通じたわけではないだろうが、唐突に目の前の男の雰囲気が変わる。
どうやらここからがやっと本題らしい。
「この研究施設の破壊を目論んでいる男がいるらしい。この研究施設の他にも、我々の組織の施設をいくつか破壊している危険人物だ。
 これが男の写真だ。君にはこの男の迎撃を頼みたい」
差し出された写真には、不鮮明ながら赤い髪の男の姿が写されていた。
不鮮明な写真からでは正確なことが分からないが、背は高めで中々引き締まった体をしている。いくつも施設を潰している。というの事実ならば、おそらく強い能力を持った魔人だろう。
「この男については、襲われた施設が全て壊滅してしまっているので詳しいことは分かっていない。
 一つだけ分かっていることは……不死身に近い再生能力を持っているらしい。ということだけだ」
……なるほど。敵の能力が不明なのに、私が実践投入される理由が分かった。
確かに、その情報しかないのなら私を送り込むのが一番適格だろう。目には目で対抗するのが一番王道なのだから。
「……頼んだぞ。君もやつと同様、不死身に近い体を持っているのだから。
 人工吸血鬼計画の完成品である君ならば、この男を殺することができると信じているよ」

―――――
――――
―――

『人工吸血鬼計画』というのが、私達の飼い主であるこの施設の職員が従事している計画らしい。
その名の通り、人工で吸血鬼を作り出すための計画で、私はそのためのモルモットだ。
なんて単純で分かりやすい名前だろう。もっと気のきいた名前は思いつかなかったのだろうか、考えた人のセンスを疑いたくなる。
名前に対する文句はこの位いにするとして、この計画の重要な点は、吸血鬼が人工である点らしい。
天然の吸血鬼は、数こそ少ないものの存在する。その多くは、魔人能力によって人間が変化したものだ。
しかし多くの場合、中二病の発露たる魔人能力では細かい設定に拘ってしまい、生物として不要な要素、吸血鬼に多くある弱点まで再現してしまう。
そこで、人工で吸血鬼を 作り出すことで、細かい要素に拘らない――弱点などの不要な要素は消去した、完全な吸血鬼を作り出す計画らしい。
これは、隣の檻にいた彼女の推測も混じった話なので絶対ではないが、賢明だった彼女の考察だ。大まかには間違っていないだろう。
そして―――私が、その計画の完成品第一号らしい。
再生能力、身体能力、そして戦闘能力が私は飛びぬけて高い。他の実験動物(なかま)達と比べることでそれは知っている。
しかし、数日に一度、特殊な機械で調整を行わないと……よく分からないが内部で何かが暴走して私は死んでしまう。
能力の副作用で、再生能力が高くなりすぎているのが原因で、現在の職員たちの技術ではどうしようもないらしい。
これでは、本来なら完成品とはとて も呼べない、欠陥製品だ。調整を少し怠るだけで私の体内で激痛が起こり、身動きもとれなくなるほどだ。
だが、奴らにとっては逆に都合がよかったらしい。
これで、私は奴らから逃げることは出来ない。逃げたとしても待っているのは確実な死だけ。私には彼らの命令に従うしか、生き残る術がない。
だから私は奴らに従っている。死ぬくらいなら死ぬほどの屈辱に耐えるほうがいい。
どんな時でも命を諦めてはいけない。彼女にもそう教わったから。私は自分から命を諦める選択をうる訳には行かない。

―――――
――――
―――

その男は夜の闇の中でも目立つ赤い髪をしていた。
だから遠目にもすぐに分かった。彼がターゲットだということが。
緊張からか、手に汗をかいている。そういえば戦闘実験もなんどもやらされたが実践はこれが初めてだ。
自分の能力が高いという自負はあったが、それも研究施設内での事……実際の自分の強さなど、分からない。
もしかしたらあの男は私など相手にならないほど強いかもしれない……今更ながら不安が掻き立てられる。
それでも、行くしかない。手に持った金属の塊を持ち直す。
大丈夫、使い方は教えられた。これを使えば、私の実力なら勝てるはず。
緊張をほぐすため最後にもう一度、大きく深呼吸する。
そして一気に前に躍り出て、手の中の拳銃――対間人用に改造 された特殊大口径マグナム、TM180カスタムを乱射する。
10発全弾を撃ちつくす。流石にすべて当たることは無かったが、6発が命中――そのうち1発は頭を吹き飛ばし、脳髄を辺りに飛び散らせた。
……体中から汗が吹き出る、体が重い、呼吸が速くなり息が切れる。さっきまでの緊張が、さらに重く深くなり圧し掛かってくる。
不死身に近い再生能力を持つという話だったが……流石に脳を吹き飛ばせば死んだのか、動く気配がない。
それでも警戒は解かないで死体を見つめ続ける……そうだ、銃弾を補充しないと。全弾撃ってしまったのだ。これでは使えない。
そう思い出し、ノロノロと弾丸を取り出す。確か、弾丸の取り替え方は……
――ガキンッ
必死に記憶を辿って弾丸の換え方を思い出そうとしたが、その努力は徒労に終わった。
思い出す前に、銃は何かに吹き飛ばされ、壊れてしまったから。
「……いやいや、対魔人用拳銃を持っているとは予想外でしたね。
 誰かが狙っていることは分かっていたので警戒はしていたのですが、まさかいきなり撃たれるとは」
言って男は立ち上がる。吹き飛ばしたはずの脳髄は全て消えていた。血の一滴さえも、地面には残っていない。
「しかし、これで武器は封じました……もっとも、俺の能力については多少知っているはず。これで終わり、ということは無いでしょう?」
そう言いながらも、無造作に近づいてくる。警戒はしているが、私を脅威とは思っていないことが分かる行動だった。
そ れに対して私は――相手が近づいてくるのを待たずに、一息に距離を詰めた。
服の下に隠していたナイフを抜き放ち、男に切りかかる。
考えてした行動ではなかった。得体の知れない男に対する恐怖と、初の実戦ゆえの緊張。それらからしてしまった突発的で直線的な行動だった。
そして、それは戦闘経験の豊富な男に対しては隙でしかなかった。
――ガキンッ
再び金属のぶつかり合うような音がして、あっさりと左手の掌でナイフが受け止められる。
なぜ掌にぶつかって金属音が?緊張している筈の頭で、何故か冷静にそんな疑問が頭に浮かんでくるのと右の掌が向けられるのがほぼ同時だった。
――ドスッ
掌から、赤い何かが飛んでくるのが見えた。頭を狙われた一撃目は反射でなんとか 避けたが、ナイフを握る右手を狙った一撃は避けられなかった。
おびただしい量の血が流れ、ナイフが遠くに転がっていく。
三撃目――が来る前には、なんとか距離をとる。相手も深追いはしてこなかった。
「……へー、高速再生。なるほど、あいつらの研究はそこまで進んだのか」
打ち抜かれた右手が再生していくのを、男がじっくりと観察する。その声色は、真面目に感心しているようだった。
その態度は明らかに私を舐めている……そのことに大して、しかし腹が立つことは無かった。
事実としてそれだけの力量差がある。それは今の僅かな接触で分かった。
おそらく身体能力は私が上。しかし、能力と経験の差で、その程度の有利はあっさりと覆される。
何より、私は今の接触が全て だが、相手はまだ実力をいくらでも隠している……そんな相手に勝てるわけが無い。
できることなら逃げ出したい……しかし、研究所以外に逃げられる場所なんてないし、この男を倒さずに研究所に逃げ帰れば処分されるだろう。
だから逃げることはできない。負けると分かっている勝負に挑むしかない。
私は、必死に目の前の男を睨む。それだけが私にできる最後の抵抗だから。
「……さて、俺が言うのもおかしい話だが、再生能力者の相手は厄介だね。
 けど大抵の場合は、再生限界があるはず……君の再生限界を確かめさせてもらうよ」
男のその言葉に反応するように、体中の血液が沸騰したように熱くなり始める。
「小手調べだ。体内からの攻撃にも耐えられるかな?」
男が小さく手 を上げるのと同時に、私の体中から真っ赤な刃が伸びてきて頭を、喉を、胸を、腕を、腹を、足を、貫いた。

―――――
――――
―――

もはや痛いという感覚さえなかった。体中が熱い。
誇張でも例えでもなく、体中がバラバラになる痛み。それでも私は死ぬことは出来なかった。
その激痛もすぐに引いた。足の、胴体の、腕の、胸の、顔の、感覚が戻ってくる。
視界一杯に赤が広がる。きっと前髪が視界を覆っているのだろう。大きな回復をするといつもそうだ。何故か髪が赤くなる。
全身から痛みが引いたのを確認すると、すぐさま立ち上がり、距離を詰める。
相手の能力は今の攻撃で大体理解できた……ならば、距離はどれだけとっても無意味。
距離を詰めて、相手の喉元に牙を突き立てる。
こちらがバラバラになっていたので油断したのか、先ほどまで隙など無かったはずの男の喉に容易に噛み付くことが出来た。
相 手が我に返り、身じろぎを始めたがもう遅い。男の能力が吸血鬼である私にとってもっともやりやすい能力である事はもう分かっていた。
血液操作能力。不死の理由は分からないが、掌から飛ばしていた赤い物体は彼の血液。私をバラバラにしたのも私の血液操作してのことだろう。
ならば、彼の能力の大本である血液を全て飲み干してしまえば、彼の能力は封じることが出来るはず。
吸血鬼の吸血は、ただ血を吸うだけではない。生命力ごと飲みこみ、相手の力を自分のものにすることもできる。
吸血鬼の不死性と高い身体能力の理由がこれだ。
私の吸血行為はこれが初めてだったが、生命力を吸われているのだ。普通の人間なら指先一つ動かすことが出来ないはず。
これで、私の勝ちだ!
――そう確信した私をあざ笑うように、男の全身から赤い刃が生えてきて私を貫いた。
「……危ないところでしたよ。体がまったく動かなくなったのには驚きました。
 能力まで、完全に封じられたら危なかったですね」
地に伏した私に男が告げる。体中を血の刃で地面に縫い付けられて動くことの出来なくなった私を見下ろしながら。
私は最後のチャンスを不意にしたようだ。これで最後の切り札も使ってしまった。もう男に隙が出来ることはないだろう。
あとは、私の再生限界が来るまで、この男に殺され続けるだけだろう。
それか、別の施設に売られるかもしれない。これでも成功例らしいから、きっと高く売れるだろう。
男の追撃に備えて目を閉じていた私だが、いつまで経っても予測した攻撃がこない。
流石に不自然に思い目を開けると、男は私を未だに見下ろしてい た……しかしその目には、後悔とも憂いとも付かない不思議な色が浮かんでいた。
「……どうして君は俺と戦うんだ?君もあの組織の被害者のはずだろう。
 そこまでの力があるんだ。あんな組織を裏切るのはたやすいことだろ?」
今までの余裕のある、しかしこちらに対して容赦の無い態度から一変。優しく、同情するように男は語りかけてきた。
それも余裕の態度ゆえかと思うと、無性に腹が立ってきた。
先ほどは、怒りも湧いてこなかった。しかし、こうして完全に追い詰められてしまうと、逆に怒りをあらわにすることが出来た。
「……なにも知らないのに分かったようなことを言うな」
怒りのままに口を開く。そういえば、言葉を発するのは彼女がいなくなって以来の気がする。
研 究施設には私以外、いや私も含めて人間がいなかったのだから、会話する相手がいない。よく考えれば当然のことか。
だが、今はそんなことに思いをはせている余裕は無い。
ただ、目の前の男に怒りの限りをぶつける。
「偉そうな口をきくな。お前に私のなにが分かる。
 親に捨てられたからって勝手に連れて行かれて、体中を弄繰り回されて、唯一の友達も奪っていって……
 そんなところからなんて、逃げたいに決まっているだろ!何を当たり前のことを聞いてくるんだあんたは!」
「なら、逃げればいいじゃないか」
「だから、それができないから困っているんだろ!
 私は欠陥品なんだ!あいつらに調整してもらわないと、能力の暴走で数日で死ぬ。あんな、最低の奴らがいないと生 きていけないんだ。
 ……ねぇ、あんた。いっそ殺してよ。あんな奴らに生かされるくらいなら、私は楽になりたいんだ……」
それは、唯一の友達との約束を破った瞬間だった。私を支えてくれた唯一の心の支えでもあった。
けど、胸のうちを吐き出したら、それがぽっきりと折れてしまった。もう、生きることを諦めたいと思ってしまった。
「……そうか。分かった」
男は、私の言葉を聞くと少し考えた後、掌から血の刃を生み出して、きっさきを私に向けてきた。
「それが君の望みだというなら、俺が叶えてあげますよ」

―――――
――――
―――

「ご苦労様だったね。君のおかげで奴を殺すことができたよ」
職員が嬉しそうに私の報告を聞いた。報告と言っても、私が持ってきた彼の首を見せただけだが。
その顔は、本当に嬉しそうで、男に同情の視線を向けられた時よりも腹が立った。
「しかし……どうすればあれほどの再生能力を使用できたのか。
 今後の研究のためにも、できることなら彼に聞いてみたかったものだな」
「……そんなに聞きたいのなら、本人に聞いてみてくださいよ」
私は、職員の前で初めて言葉を発した。そのことに職員は少しだけ驚いたようだが、私の質問に答える。
「何を言っているんだ。彼はこの通り、死んでいるじゃないか。死人から話を聞くのは――ドスッ
職員の言葉はそこで止まった。喉を刃で 貫かれ、彼は二度と話すことはできなくなった。
「確かに死人に口は無いが、俺はまだ生きていましてね。貴方の質問にも答えられますよ。
 もっとも、貴方が質問できなくなりましたけどね」
首だけだった男の額から額から一本の刃が伸びて、職員を貫いたのだ。
そして、男の首から大量の血液が流れ出すと、みるみる内に体を形作り、男は復活した。
「……さて、君のおかげで簡単に内部に潜入できましたよ。礼をいいます。
 これで、この施設は楽に潰せる」
「いえ……救ってくれたあなたに対する、ささやかな恩返しですから。この程度、なんでもありませんよ」
――あの後、男は掌からの刃で私を突き刺すと……私の体内を、血液でぐるぐるとかき乱した。
「――!?一体何を!?」
その感覚は、明らかに攻撃とは違う、けれど何故か不快ではない感覚だった。
「言ったでしょう。君の願いを叶える、と。
 君を組織から逃がしてあげます」
「……っ、だからそれは私が欠陥品だから不可能だと」
「ええ、聞きました。だから――君を完成品にしてあげますよ」
男の言葉の意味が、一瞬分からなかった。
「……えっ?」
「普通に考えて、ここまで完璧な能力を持った君が、調整を繰り返さないといけない。というのはおかしい。
 ならば、君自身も言うように組織から逃げられないように、わざとそういう調整にしている。と考えたほうが自然 だ」
「でも、これは能力の副作用だから直せないって」
「……君は、大嫌いの組織の言うことなのに、こんな簡単な嘘はきちんと信じるんですね」
「嘘……?」
「ええ、嘘ですよ。こうして体内を探れば分かります。君の能力は完璧だ。
 けど、一部がわざと歪に歪んでいる……これでは、欠陥品にもなる。というものです」
男の言葉が、急速に脳に染み込んでいく。
「ですが、この程度の歪み、私なら治せますよ。これで、君は組織に頼る必要は無い。逃げることが出来る」
そう言って、私の方を見た男の顔は、とても優しくて温かかった。

―――――
――――
―――

「君を助けて本当に正解でしたよ。おかげで、簡単に施設を壊滅できた」
全てが終わった後、男は改めて私にお礼を言った。
「他の施設についての情報も大量に手に入った。これで、この組織を完全に潰すことができそうだ」
男は心から感謝しているよう言った。お礼を言われるのには慣れていないので、なんだか恥ずかしくなって、私は目をそらした。
「……それで、君はこれからどうしますか?
 他の、実験材料にされていた子達と一緒に、保護してもらいますか?」
施設を壊滅させた際、私以外に実験材料にされていた子達は全員が保護された。
これから、彼の信頼できる人の下に送られて、保護されるらしい。
「私は……保護はいいです。折角外の世界にでられてので、彼女の…… 友達の教えてくれた世界を見てみたいんです」
少し迷ったけれど、そう答えることにした。私は、彼女の教えてくれた世界をもっと知りたい。それが一番素直な願いだったから。
「そうですか」
「はい。まず手始めに、学校というものにも行ってみたいのですが……どうすれば通えますか?」
彼女が教えてくれたものの中で一番興味深かったもの。それが学校だ。
同年代の子達を一緒に学んだり、運動したり、遊んだりできるところらしい。それが本当なら、とても楽しい所だろう。
「学校ですか……乗りかかった船です。俺が入学の面倒をみてあげますよ」
「えっ、そんな。これ以上迷惑をかけるのは忍びないです」
「いえ、いいんです。俺がやりたいんですからやらせてください。
 そ れに、学校に通うためには保護者が必要ですよ。私以外に、保護者候補がいますか?」
「それは……いませんけど」
「でしたら、俺に任せてください……ところで今更ですが、君の名前を聞いていませんでしたね。
 なんという名前なんですか?」
「名前、ですか……ありません」
私の答えを聞いて、男は驚いたような顔をした。
「確か、ぶいなんとか……と職員達からは呼ばれていましたが、覚えていません」
「そうですか……では、保護者としての最初の仕事として、君に名前をあげますよ」
男は、何故かとても嬉しそうな顔をすると私に名前をくれた。
「舞葉 志姫。これが今日から君の名前です。忘れないでくださいね」

○「人工吸血鬼計画」
不老不死不滅。の完全な、人間の上位種を作り出すための計画。
第一段階として、兵器としての吸血鬼を作り出す研究が行われていた。
魔人に覚醒したが、能力が目覚めきる前の子供。が一番向いていることが長年の研究から分かった。
そのため、実験材料とするために捨てられた魔人の子供を集めたり、親を殺して能力に目覚める前の子供を浚ったりもした。
現在は、一人の男の手によって全ての施設が崩壊。
主要な研究者も皆殺しにされ、資料もほとんど残っていない。
実験材料となっていた子供達は多く存在しているらしいが、どこかに匿われており、この計画は完全に消失した。といっても過言ではない。

○舞葉 士郎
赤い髪に赤い瞳をした男。
恐ろしく強い能力を持っていたが、過去は妻と一人娘と仲むつまじく平和に暮らしていた。
だがある日、仕事から帰ってくると妻子が殺されており、彼は復讐鬼へと成り果てた。
関係のありそうな組織とその施設を片っ端から潰して周り、裏の世界ではそこそこの有名人となっている。
余談だが、娘は志姫。という名前だったらしい。
能力:ブラッディ・ブラッド
血液使いの魔人としてのハイエンド。
血液の操作・精製・硬化ができる。硬化の強度は、大体鋼鉄程度。
その強さの理由は、能力の使用法である。
皮膚一枚の下の血液を効果させることで大抵の攻撃を無効にしたり、高速で硬化した血の塊を撃ちだして攻撃したりできる。
能力を応用して擬似的な再生能力を使うことも出来る。再生と言っても実際は血で補強をしているだけで、本当に回復しているわけではない。
しかし、腕を切られても、中の血を硬化させて、あたかもくっついているように見せたり、指の中の血を操ることで動かすことが出来る。
また、心臓を貫かれても、心臓の役割はただの血液のポンプ普通に全身に血液を行き渡らせることが出来るので 死ぬことは無い。
脳も電気信号をやり取りすることができる以外はただの細胞の集まりなので、吹き飛ばされてもオートで血液がその役割を引き継ぐようにプログラムされている。
その他の内臓器官も、血液細胞が大体をするので、能力を完全に無効化するか、血の一滴までの存在まで消し去らない限り死ぬことは無い。
また、彼が操ることが出来るのはあくまでも彼自身の血液だけである。
相手に切りつけたり、血弾を撃ち込んだりした際に、相手の体内に血液を潜り込ませ、それを操って心臓を内部から貫いたりして即死させたりすることもある。
もし、彼が自分以外の人間の血を操ることが出来るとしたら……それは、文字通り血を分けた存在だけだろう。



最終更新:2011年08月17日 09:33