焦土原 伊代(しづはら いよ)

  • 性別:女
  • 胸:普通
  • 学年:2年
  • 所持武器:侵食する心象世界
  • 出身校:妃芽薗 
  • 固有技能:猟奇殺人
  • 攻撃力:1 防御力:1 体力:11 精神力:0 FS「彼方ヲ思フ心」:12

特殊能力『カーネイジ・ハート』 発動率:100% 成功率:精神 評価点数:300


効果:1ダメージ
タイプ:フィールド
対象:MAP全体全員
時間:3ターン
時間付属:死亡非解除
非消費制約1:敵味方無差別
非消費制約2:スタメンだと使用不可
非消費制約3:精神攻撃
消費制約:自分永続行動不能

無還元制約:伊代の兄がいる場合発動不可

<補足>
ダメージは自分には発生しない。
[ダメージの発生タイミングは焦土原 伊代の行動終了時(行動が能力休み等で記載されない場合は自軍ターンの終了直前)]

<能力原理>

モノクロの風景、崩壊し続ける。
黒くドロドロしたタールのようなものが世界を覆い、足場は崩れ、無が広がる。

伊代の内心世界が世界を侵食する。
心弱き者は彼女の心に触れただけで飲まれ、傷を負う。

キャラクターの説明

藍色のかかった長い黒髪をたなびかせる、長身の少女―――否、女性。
眉目秀麗、成績万能、おまけに陸上選手として華々しい成績を持つ文武両道の才色兼備。
着飾ることも無く、常に質素な身形。しかしそれすらも魅力に変えるプロポーションの持ち主。

しかし、彼女はどこか虚ろな目をしている……全てに気付いた、あの日から。

言動こそ少し古臭いものの、一見人当たりの良い女性だ。男女問わず彼女のファンは多い。
しかし実のところ、彼女にとっては有象無象の生物全てが等価に無価値だった。
―――極論。彼女は夏のアスファルトの上で死に掛けている油蝉にすら優しいのだ。
たった一つの例外を除き、この世の全て(当然、全てには己も含む)に価値を見出せなくなった彼女。
せめて表面上だけでも人間らしくあろうとする様が、そうさせるのかもしれない。

では、有象無象でないたった一つの存在とは―――
彼女の見る世界、モノクロの風景映る彩色のモノはただ一つ、己の兄のみ。

伊代にとって兄は、太陽だった。
しかし太陽が己を照らしてはくれぬ存在だと知ったとき、世界は闇に包まれた。
煌々と輝く兄を眩しく思い、伸ばした手は焼け焦げて届かない。
しかし焦がれる思いは世界全てを燃やしつくし、彼女の風景は灰のまま。
世界は、等価に無価値になった。

彼女にとっては、全てがどうでもいいのだ。
今回のハルマゲドンで命を落とそうと、生き延びようと。

エピソード

物心ついたときには、私は既に兄に恋をしていた。
はっきり言ってしまえば、兄は優しいだけの凡夫である。しかしそれでも私にとって、兄は唯一にして無二の恋の対象だったのだ。

無論、兄妹である。血縁者に対する恋愛は、本来許されるものではない。
ただ告白したところで、兄は私に振り向いてくれることはないだろう。
だから私は、兄に見て欲しいという一心で、あらゆる努力をした――――

そうして努力を重ねるうち、私という存在は洗練されていった。
気付けば学力も、身体能力も、身長すら兄を追い抜き、私という存在は完成された。

小学校のとき、テストで100点を取ったら父母よりも先に兄に見せた。
兄は褒めてくれた。私は次も、その次もテストで100点を取って見せた。
……中学に上がるころには、兄は私と勉強の話をするのを嫌がるようになった。

運動会のリレーで一位になったとき、兄は褒めてくれた。
嬉しかったので、私は陸上部に入部した。
必死に練習し、全国大会で優勝したが、兄は見に来てくれなかった。

なんだってそうだった。褒められて、嬉しくなって、がんばって。
全部手に入れて、でも何故か一番欲しいものだけ、この手をすり抜けていく。

―――思えば、可愛くない妹であったろう。
私はたった一つすら彼に頼ることなく、全てにおいて後ろから抜き去って見せた。
そんな存在の、どこに可愛さを見出せようか。
しかしそれに気付いたときには時既に遅し。
気付けば私は完璧な存在として、周りから羨望の眼差しで見られる存在となっていた。
己を形作るのは己のみに非ず。今更不完全な少女に戻ることなど、私のセカイが許さなかったのだ。

……そうしてある日、私は兄に彼女ができたという話を知る。
卒倒しそうになった。自らのアイデンティティが根底から崩れる音が聞こえる。
調べてみれば、なんと言うことはない。平凡な見た目の、少し頭の悪い女。
そのとき悟った。私の、愚かしさを――――
記憶すら曖昧だが、おそらく私が魔人に覚醒したのはこの瞬間であろう。

しかし。悲しいことに、私は強かった。強かったのだ。
狂気に任せて暴れるほど、壊れることができなかった。
兄を逆恨みできるほど、幼くはなかった。
全てを投げ出せるほど、無責任ではなかった。
―――しかし、しかし。この事実を受け止め、消化できるほど、この思いは弱くはなかった。

……そう。このとき、私は本当の意味で、完成-オワッテ-しまったのだ。

そうして私は、兄から逃げるようにこの広い女学園に転入した。
逃げても逃げても、手に入らない太陽は私を恋焦がし続ける。
それを知りながら、なお私は逃げずにはいられなかったのだ。

緩やかに崩れ続けるモノクロの世界の中で、崩壊に身を任せたまま私は生きている。
きっと兄は平凡に生き、適当な相手と結婚し、そこそこに幸せな家庭を築いて死ぬのだろう。
では、私はどうだ。
単純だ。既に終わっているのだから、生きていても死んでいても同じことである。
このハルマゲドンで死んでも、生き残っても何も変わらないのだ――――

でも。たった一つ、気になること――――
「私が死んだら―――兄はどんな顔をするのかな?」



最終更新:2011年08月18日 01:50