新参陣営最終応援ボーナス:229点



『世紀末救世主伝説の幕開けか!?学内にてモヒカンザコ複数名、突如の爆散!』

その事件はすっかり夏らしい陽気となった6月初旬の昼下がり、新校舎の裏側にある黄色い触手が咲き誇る花壇の前で起こった。
記者はそのとき校舎屋上にて親友と談笑をしていたのだが、下のほうで何やら男女の揉め合う声が聞こえてきたため、屋上の手すりから下を見下ろしたところ、その場面を目撃することとなった。
事件の現場に居たのは学園の女生徒1名と、それを囲むようにしてモヒカンザコ達が5名。
女生徒とモヒカンザコ達の間で、何やら罵声を浴びせあっている様子であった。
女生徒が何を言っていたかは分からないが、モヒカンザコ達は大方「ヒャッハー!水を寄こせー!」とでも言っていたものと思われる。
同じ学び舎に通うものの危機かと、屋上から飛び降りて女生徒を助けようとした記者であったが、手すりを乗り越えるより早く“それ”は起こった。
女生徒が何やら力を込める身振りをするや、なんと周囲のモヒカンザコ達の頭部がスイカ割りのスイカもかくやと爆発四散したのである。
眼前の光景に驚き、屋上の手すりの上で固まる記者をよそに、女生徒は悠々とモヒカンザコ達の死体の上を歩いてその場を立ち去った。
それは正に、核の炎に包まれた世紀末の荒野を闊歩する救世主のごとき光景であったと言えよう。

今回の脅威の出来事を引き起こしたのが女生徒の魔人能力によるものなのか、はたまた別の技術体系に立脚したものなのかは現状不明である。
もしもこれが女生徒の魔人能力であるとすれば、彼女は恐らく第一級の強能力者であると言えよう。

先日から希望崎学園内は新参・古参の対立によって極度の緊張状態が続いている。
今のところ両陣営の均衡は保たれているが、もしもどちらかの陣営に強力な能力を有した魔人が加われば、事態は急展開を迎えるだろう。
今回の事件の中心に居た女生徒は、もしかするとこの希望崎学園内対立構造を破壊する救世主となるかもしれない。

文責:希望崎学園報道部1年 夢追中

無題

?「うおおおおおおおおおおおおおおおお」
緑風「……何だコイツ……」

 俺の名前は緑風佐座。自分で言うのもなんだが、どこにでもいるごく普通の学生である。
 現在、校舎のど真ん中で何故か通行止めを食らっている。ものすごい勢いで左右に飛び跳ねている。
 さすが戦闘破壊学園ダンゲロス。交通整理すら人外レベルだ。

?「はあああああああああああああああ!」
緑「……なあ、何やってんのお前?」
左高「反復横跳びをしているであります! あ、自分の名前は左高 速右であります!
 ここから先はハルマゲドンの危険性があるため、僭越ながら身を以て通行止めをしているのであります!」
緑「ああ、そうっすか・・・」

 見たところ上級生には見えないが……つまりそういうことなのだろうか。認めたくねえー。

緑「なんで反復横跳び?」
左「いつの日にか反復横跳びによって分身の術を会得するためであります!
  まだまだ未熟者の身なれど、きっといつかやって見せるのであります! まあ見てなwという奴であります!」
緑「・・・・・・。好きなテニスプレイヤーは?」
左「菊丸英二さんであります!」
緑「好きな十刃は?」
左「第七十刃、ゾマリ・ルルーさんであります! あ、ただし解放後の姿はノーカンであります!」
緑「……そうか、お前のことはよく分かった」
 正直言ってかなりやる気が殺がれていくこと山の如しなのだが。まあ第一印象を良くしておくことに越したことはない。
緑「まあ、ともかく一年の緑風だ。今回の戦いではよろしく頼――」
左「うおおおおおおお! この横風! ブレる視界! マジタマんないのであります! 反復横跳ビーズハイなのであります!」
緑「聞けよ」
?「……そこの者よ。ここでハルマゲドンが行われると聞いてきたのだが」
 突如現れた痩身銀髪の男。おお、また随分とイケメンだなコイツ。言っちゃ悪いが、婦女子受けしそうだ。
緑「え? ああ。いつの間に来てたんだ? 実は俺たちもソレ関連で集まってきたのさ。……アンタは?」

行方橋ダビデ「行方橋ダビデ。得意技は質量を伴った分身」
左「Σ(゚Д゚|||)」

無題2(稲荷山vs大魂)

『魂を握る料理』

桜の季節、大きな希望を胸に新入生達が希望崎学園へやってきてから2ヶ月。
皆、新しい学園生活には慣れただろうか。
希望崎学園は音に聞こえた魔人達の巣窟。
環境に適応し、刺激的な日々を謳歌する者にはさながら桃源郷だが、
なにせあちらを向けばモヒカンザコ。こちらを向けばビッチと触手。
周囲に溶け込めない者はなかなか気の休まらない日々を送っているのではないだろうか。
今回は、そんな魂を疲弊させた者達に最高と思われる癒しのひとときを与えてくれる人物を紹介したい。

その人物とは稲荷山和理(1年)
江戸時代より続く老舗「いなり」の跡取り娘であり、希代の寿司職人である。
「いなり」といえば、学生にはとても暖簾をくぐることのできない名店であり、
あそこで寿司を食べてみたいと考えたことはあっても、実行に移した者はほとんどいないであろう。

多くの者は、そんな高嶺の花を紹介してどうするのか、そう思うかもしれない。
しかし、普段ならばとにかく、今だけは大いに紹介する意義がある。
なんと稲荷山は最近、学内の調理室にて寿司を握る練習を行っているのだ。
つまり、放課後に調理室を訪れれば、今だけは気軽に彼女の握る寿司を食べることができる。
記者も実際に調理室にて稲荷山の握る寿司を食べたが、それは芸術と呼ぶにふさわしい一品であった。
興味を持った者は是非とも一度、この機会を逃さず調理室に足を向けることをお勧めする。
日常の疲れなど消し飛ぶほどの感動を味わえることは間違いない。
そこで味わう寿司の向こう側に、天国を垣間見ることだろう。

ところで、稲荷山はなぜ自分の店ではなく、学内で寿司を握っているのか。
その疑問を本人にぶつけてみたところ、近く行われるであろう決闘、覇竜魔牙曇に向けてのトレーニングであるとの答えを返された。
稲荷山は覇竜魔牙曇にて勝利を収めた陣営に自身の握る寿司を振舞う計画を立てており、
普段と環境の違う、学内でも最高の寿司を握れるようにと訓練をしているのだそうだ。

「今握っている寿司にはまだ最高の魂がこもっていません」
寿司を食べ、その素晴らしい味と腕前に感動した記者であるが、そんな寿司を握りながら、それでも稲荷山は満足出来ていない様子。
曰く、寿司を握るときに最も重要な要素が足りないのだとか。

寿司を握るのに重要なものとは何か。
記者が思うに、やはり経験であろうか。
寿司を握りなれている板場と高校の調理室では当然感覚が違う。
ここでは稲荷山本来のポテンシャルが発揮できない、そう言っているのではないだろうか。
深読みするならば「もしもこの寿司が気に入ったのならば私の店に来ると良い。もっと美味しい寿司を出してあげよう」そういった意味の発言とも受け取れる。

稲荷山は寿司の腕前だけでなく、商売のほうもなかなかに上手であるかもしれない。

文責:希望崎学園報道部1年 夢追中



――コン、コン

扉をノックする音が、放課後の希望崎学園報道部室に響いた。
西日が差し込み、オレンジ色に染まった部室の中、新聞作成をしていた少女が手を止め、パイプ椅子から立ち上がり客人を出迎える。
「はーい。どちら様でしょうか」
少女が声を掛けながら扉を開けると、廊下には1人の男子生徒と……大根が立っていた。

「えっ」


『魂の宿る場所』

どうやら報道部を訪れた男子生徒と大根は、それぞれ少女が書いた校内新聞を見て、稲荷山の寿司に興味を持ってここにきたらしい。
男子生徒は記事を書いた少女から稲荷山に自分を紹介してもらい、寿司を腹いっぱい食べたい、と、
大根は、自分の作るブリ大根と稲荷山の寿司と、どちらの方が美味いかを確かめに、と、それぞれの来訪理由を述べた。
それを聴いた少女は、それならば一緒に調理室に行き、稲荷山も交えて食事をしようと、3人連れ立って調理室へと向かうことになった。

「いやー、それにしても大根さんが喋るなんて流石は希望崎学園ですね」
どこか嬉しそうに語る少女に対し、男子生徒は苦笑しながら自分もこの学園の非常識さには散々驚いていると語る。
放課後の校舎内で高校生の男女が二人、お互いに笑い合いながら歩いている。青春の1ページとして飾りたいような光景である。
その横を大根が歩いていなければ。

そんな一部を除いてほほえましい空間を作り出していた一行だが、男子生徒の発言で少女の足が止まった。
「いやー、特に驚いた奴って言えば、昨日なんか頭からちんこを生やしているやつがいてさー」
男子生徒のちんこ発言に頬を染め、「あぅ……う、うん……」と顔を廊下のタイルに向ける少女。
その様子にちょっときゅんとしつつ、男子生徒は慌てて「あ、悪い!シモネタ苦手だった!?」と言葉を続ける。
表面上は紳士を装う男子生徒であったが、そこは男としての性、頭の中では煩悩が渦巻いていた。
(ヤッベー!超純情!超かわいい!俺、マジでラッキー!この機会になんとかフラグを立てて……)
しかし、密かにテンションの上がる男子生徒の意に反し、少女は大根のほうへ話を振り出した。

「そういえば大根さんは大根と思えないくらい大きいですよね。どうしてそんなに大きくなったんですか?」
「そりゃあ俺には魂が篭っているからな!他のやつらとは一味も二味も違うぜ!」
「へー、やっぱり魂ですかー」
「もちろん俺のブリ大根にもしっかり魂は篭っているぜ!期待してな!」
「楽しみにしてます!」

(どうしよう……話に切り込むタイミングが無ぇ……)
盛り上がる少女と大根を横目で見つつ、しかし声を掛けられずにいた男子生徒であったが……

「しっかし俺ってそんなに立派に見えるか?」
「はい!私、こんなに長くて太くて逞しい大根(ひと)を見たのは初めてです!」

「ちょっとまてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

少女の言葉に全霊で突っ込みを入れてしまった。
その声に目をまるくして、男子生徒のほうを見る少女。

「え!?どうしました!?」
「いやどうしたじゃねーよ!今の何だよ!さっきの恥じらいは何だったんだよ!」
「えっ……と、私、何か変なこと言いました?」
「自覚無しかよ!タチ悪いなオイ!?」

頭を抱える男子生徒を見て首を傾げつつ、少女は大根との会話を再開した。

「おお!その中に自慢のブリ大根が入っているのですか?」
「おうよ!匂いだけでも今嗅いでみるか?」

少女と大根の声をどこか遠くに聞きながら、男子生徒はため息をついた。
(やっぱ希望崎学園でまともな女の子と出会おうなんて、甘い幻想だったな……)

「わぁ!凄く良い香り!まるで脳髄を痺れさせるような……こんなものを頬張ったら、ほっぺたと一緒に理性まで蕩けてしまいそう……」


男子生徒は、廊下の窓を開け、夕暮れのグラウンドに向けて絶叫した。


「俺の純情返せぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」


その声には確かに魂が宿り、希望崎学園中に木霊した。





大根と寿司職人が料理対決してる。
以上、状況説明終了。

大魂「とろっとろにとろけたブリ大根食わせるぞワレェ!」
稲荷山 和理「食材がコックに抗うなあああ!」

大根がふわふわと宙に浮き、その伸びた葉(つた?)で少女にブリ大根を食わせようとし、
少女はなんか天地魔闘の構えみたいなのをしながら、それを切り刻んでいる。
それに唖然としている俺の隣では、何やら記者然とした女子が一心にメモを取っていた。鉄の板に。ダイヤモンドのペンで。
ポーネグリフでも作るつもりなのだろうかコイツは。

夢追中「魔人大根VS魔人寿司職人……これは素晴らしい記事になりそうです!」
俺「……あえて聞くけど、止める気とかあったりする?」
夢「え、なんでですか? ……ところで記事につける四コマ漫画の案なんですけど、『人参でも魔人』とかどうでしょう」
俺「即否定したあげくに速攻で話題ふっ飛ばしたよコイツ!?」
夢「あ、大魂君の蔓に稲荷山ちゃんが捕まった! ……いいなあ、私も魔人大根の蔓に絡まれて死ぬとかマジ本望」
俺「……何お前、大根好きなの?」
夢「私はただの特殊能力フェチですよ! 勘違いしないでくれませんか! 名誉棄損ですよ!」
 マジギレされた。あれ、俺そんなに怒られること言った?

大魂「忌まわしき料理人め……我がブリ大根の派閥に堕ちるがよい」
稲荷「くっ……おのれ、たかが食材ごときが……!」

 蔓の先に載ったブリ大根(熱々)が、稲荷の口元に近づいて行く!


夢「ああっ! 稲荷山ちゃんが、太くて熱くておっきなものを無理やり口に加えさせられそうになってる!」
俺「その表現やめてくんない!?」

 熱気と圧力に耐えかね、少女の口が押し開けられた、その瞬間!

稲荷「――跋魂潰蒐掌!」
大魂「ぐっ!?」

 稲荷山をとらえていた蔓がズタズタに切り裂かれ、奇妙な霊体となって少女の右手に丸く収束する。
 ――それは彼女の持つ異能。暗殺拳であると同時に至高の料理法。
 敵の魂を握り混んで初めて作ることのできる《究極の寿司》。
 そして今回。一部とはいえ大魂なる魔人の魂を握り込んで作られたものは――!

稲荷「出来た! これが私の《究極の寿司》!」

 少女が誇らしげに掲げたもの。それは――

稲荷「――の、サシミのツマ」
俺「そりゃあ大根だもんなあー!!!」

 味噌汁に入れると意外と美味しいらしいよ(豆知識)。

『左高速い!殺人反復横跳びに五郎丸仰天』


先日、我らが希望崎学園の左高速右(1年)が反復横跳びの高校記録を樹立した。
左高は忍術部に所属し、分身の術を極めようと、常日頃から反復横跳びの鍛錬を積んでいたため、その努力が実を結んだ形となる。
この快挙に対し、同じ忍術部の部員達からは惜しみない賞賛が送られているが、左高本人はいたって冷静。
「自分はまだまだ未熟者。喜ぶのは分身の術を体得してからであります」
淡々と自らの目標を語る左高だが、その目には確かな決意の光が宿っていた。

一方、今回のニュースに対して、意外な方面からのアクションがあった。
なんと、自他共に認める「野球少年」こと五郎丸卒塔婆(1年)から左高へ、一緒に野球をやらないかとラブコールが贈られたのだ。
記者はこの話を聞き、自らの足で五郎丸の元に赴き、詳しい話を聞いた。
「あの反復横跳びは素晴らしい!彼ならば今開発中の分身魔球も必ず捕球できる!彼と自分がバッテリーを組めば敵はいない!」
五郎丸は記者の質問に対し、興奮した様子でこのように語った。
しかし、この誘いに左高はあまり乗り気でない模様。
「自分は忍術部を愛しています。他の部活に移籍するなどと考えたこともないであります」
話を聞いた左高は終始困惑気味であった。

この話が今後どのように展開するかは神と、当人同士しか知り得ぬことであるが、どのようなフィールドであろうと、左高ならば輝かしい活躍を我々に魅せてくれるであろう。
そう、それが例え覇竜魔牙曇という戦場であろうとも。

文責:希望崎学園報道部1年 夢追中



SS「彼女のできない男の特徴シリーズ」


/1

「はァ……」
秋刀魚広は、現在苦悩している。
今、彼には恋焦がれる相手がいた。
その相手の名は、寅貝きつね。友達屋と呼ばれるほど友人が多い、中性的な顔立ちが特徴的な人だ。
彼女の周りは常に男女問わず人だかりができており、秋刀とは大違い。
否、別に彼の周りに人が居ない訳ではない。
A「団長ォ、どうしやした!?最近元気がないですぜ!?」
B「ヒャッハー!そんなときこそ“応援”しましょうぜ!」
C「他者を応援することを通し己を応援する。それが“応援”ッーーー!」
ABC「「「フレーッ、フレーッ、団長オオオォォォォ!!!」」」
と、まぁ、彼の周りに居る人種など、大体こんな感じの奴らばかりである。男臭いこと極まりない。
「……ウス。すまんな、オドレら」
ABC「「「アザーッス!!!」」」
普段ならば、彼らの気遣いは有難い。しかし今現在において欲しいのは、こういった泥臭い応援ではない。
今彼が欲しいのは、恋する彼女からの黄色い声援―――
しかし。実のところ、恋する彼女どころか彼には女友達の一人、否、応援団外での同性の友人すら居ないのだった。
(相談しようにも、恋愛相談できる輩なんぞいやしねェからのう……)
応援団という組織はなんというか、女っ気がなくて、男臭くて、世間一般からは隔絶された空間なのである。
応援団内部での結束は固いが、それはあくまで内部のもの。いざ外界に出てみれば、彼は唯の無口な男であった。

もてない特徴1「異性・同性問わず交流がない、孤立してる男性」


/2

「……おィ、オドレら。カッコいい男とはどんなモンだと思う?」
問うは悩める応援団長、秋刀魚広。高校一年にして応援団団長を務める、寡黙で強面の巨漢である。
今、彼には恋焦がれる相手がいた。同じく一年、寅貝きつね、その人である。
もてるためには、かっこよくなること。では、かっこいい男とは何か。
自問自答しても答えは出ない。故に彼は、己の部下に聞くのであった。
A「ウス!自分は団長のような!不言実行を貫く男にあこがれております!」
(単に口下手なだけじゃけェのう……)
B「ヒャッハー!自分は団長のような!己を犠牲にして他者を応援する精神がかっこいいと思っておりますぜ!」
(自分に自身がないから他人を応援するだけなんだがのう……)
C「オス!自分はその体格と、それに似合わぬ他者を殴らぬというそのギャップに付いて行こうと思いましたァァァァ!」
(単に腕力には自信がないだけじゃァ)
ABC「「「フレーッ、フレーッ、団長オオオォォォォ!!!」」」
「……ウス。すまんな、オドレら」
ABC「「「アザーッス!!!」」」
(ダメじゃぁのォ、ワシは。なんと言われても、自分自身に全く自信が持てんけんのォ……)

もてない特徴2「自己否定的な思考」


/3

応援団部室、その中央にまるで仁王の如く居座る彼こそ、知る人ぞ知る応援団部部長、秋刀魚広である。
恋の病を患っている彼は、眉間に皺を寄せ何かを考えている様子だった。
思考の内容は、至極単純。もてるファッションについてである。
「なァ……オドレら、普段着はどんなモン着とるんじゃァ?」
考えても始まらぬ。とりあえず、意を決して手近な連中に聞いてみることとする。
A「ウス!自分は家ではジャージで過ごしております!」
B「ヒャッハー!自分は肩パットにレザーのジャケットで過ごしておりますぜ!」
C「オス!自分は常にこの長ラン、応援の魂を常に忘れず生活しておりますゥゥゥゥ!」
……当然のように参考になるものはなかった。
溜息をつく秋刀。そんな彼の様子を知ってか否か、団員Aが質問を投げかける。
A「団長!団長は普段どのようなものを着ておられるんですか!」
「……オドレには関係ねェ話じゃァ」
A「ひ、ひぃッ!?スイヤセンしたッッーーー!!」
その形相は、さながら悪鬼羅刹。質問者であるAは少しチビりながら謝罪を口にする。関係ないはずのBとCもちょっと青ざめている。
ちなみに本人はそんな脅すようなつもりはなく、ちょっとした軽口程度の気持ちだったりするのだが……その強面の前では軽口も脅迫と化す。
(流石に、おフクロが買ってきた漢字Tシャツとは言えんけんのォ……)
ちなみに文字は「竜馬」「忍者」「腹斬」の三種類であった。多分外人向け。

もてない特徴3「服装に無頓着」


/4

夏の応援団部部室、咽返るような熱気と臭気の元、中央に居座る人物。彼の名は秋刀魚広、応援団部部長である。
(……暑い)
野郎所帯の熱気の中。さらにこの部室の温度を上げている理由がある。
秋刀、団員A、B、Cは、現在、コタツの中にいた。
否、コタツだけではない。コタツの上では鍋がグツグツ煮えているし、横にはガスストーブまで配置されている。
彼らは唯でさえ暑苦しい改造長ランの上にさらに半纏を纏い、あまつさえ湯たんぽまで抱えていた。
―――そう。彼らは、我慢大会の真っ最中だったのである!

ちなみに、昨日交わされた会話?は以下のような感じ。
A「今日も暑いですね、団長……」
B「ヒャッハーぁ……茹るぜェ……もうダメですぜ……」
C「団長、自分、アイス買いに行ってもよかとですかァ……」
しかし、魚刀は返事を返さなかった。正直暑すぎて、この暑苦しい団員たちに返事をする気力もなかったのである。
……しかし、何を勘違いしたか。
A「だ、団長……!こんな暑さの中ですら、微動だにせず……!なんという根性、男の中の男!」
B「ヒャッハー!俺らが間違ってやしたぜ!これは俺らも団長に負けてはいられねェですぜ!」
C「そういえば、こういう時にされる応援団独自の修行方法があるというゥゥゥ……!」
ABC「「「応援団夏季名物・火炎地獄我慢大会……!」」」

我慢大会とは……我慢大会というと日本の旧時代的な根性論を想像する人も多いだろうが、
        ルーツを辿れば中国拳法独自の修行法にたどり着くのはもはや常識である。
        なお、中国拳法家である我氏が、自慢げにこの修行法を他者に教えたこと
        が我慢の語源となっていると言われており、自と我が同じ意味を持つこと
        から我慢という言葉は自慢という言葉と紙一重であるという意味がこめら
        れていることも特筆すべきであろう。
                              (民明書房 自慢と我慢)
(え、ワシャぁそんなんやりたくないんじゃがァ……)
しかし、そんな魚刀の意思とは裏腹に、ヒートアップした三人は止まらない。
ABC「「「団長、自分らに我慢大会で喝入れたってくだせェ!!」」」
「……………しゃあねェのう」
ABC「「「アザーッス!!!」」」
結局、言いたいことも言えず我慢してしまう秋刀であった。

そうして、今この現状がある。
A「な、鍋が出来上がりやしたぜ……団長ォ……」
Aの顔面は赤を通り越して、蒼白になってきている。そろそろ危ないかもしれない。
B「ヒャッハー……ケンシロウが……世紀末救世主が……」
Bは幻覚でも見えるのか、うわごとのように何かを呟いている。そのうち爆発四散しそうだ。
C「ハハハ……ハハハ……ハハ……」
CはCでなんかさっきから笑い続けている。正直怖い。
他の団員がこのザマ、しかし誰一人として収拾をつけようとはしない。魚刀もこの空しい強がりを続ける他ないのであった。
A「こんなときでも……団長は黙して語らず……スゲーっす……」
(今更止めようなんて言えんけんのぅ……)
喉を焼くちゃんこを口にしながら、心の中で泣く秋刀であった。

もてない特徴4「口下手。本心を口にしない、できない」


/5

応援団団長、秋刀魚広。しかし今、彼は応援団部室にはいなかった。
彼は片想いの相手である寅貝きつねに対し、友達代を払うために一人下駄箱にいた。
彼の名誉のために言っておくと、決してこの友達代を払う行為は彼が率先して始めたものではない。
ただ“そうあるのが当然”だと、不思議と認識してしまうのだ。それが寅貝の魔人能力の一端だと、彼は未だ知らずにいた。
彼は己の小遣いの中から毎月8割(額は少ないが所持金からの割合としては多い部類に入る)を彼女に差し出す。
直接渡す勇気はない。だから、下駄箱にこっそりと忍ばせておくのだ。
(そうじゃったのう……あれは入学して早々のころじゃったっけ)
思い返す。たった一度、寅貝きつねに声をかけられた、あの時のこと。
「秋刀くん。君、魔人なんだよね?メルアド教えてよ」
男性とも、女性とも聞き取れる中性的な声で、彼女は話しかけてきた。
これまでその巨躯と威圧感から、秋刀に声をかけてきた女性など皆無だった。しかし彼女は物怖じするどころか、アドレスまで聞こうとする。
さらに特筆すべきは、彼女の持つ存在感だった。そのガタイの良さから無駄に目立つ秋刀すら霞む、話題の中心にいる者が纏う、独特の空気。
見る人がみればコミュ力オーラとでも呼ぶそれに、秋刀は圧倒され、飲まれた。
「あ、あァ……エェぞ」
気付けば彼は、携帯の電話番号とメールアドレスを書いたメモを、彼女に手渡していた。

家族と、団員以外とは通話もメールもしたこともない、秋刀の携帯電話。
以来、一度も鳴ったことのない彼女からの電話を、彼は待ち続けている。
思えば彼は、寅貝きつねの電話番号もメールアドレスも、否、名前以外の一切を知らなかった。
しかし、そんなことは彼にとっては些細なこと。
ただ、ただ。その日以来、秋刀は寅貝きつねのことが忘れられずにいる―――
「―――ダメじゃけェのう、こんな女々しいのは」
回想を切り上げ、彼女の下駄箱にいつものように金の入った封筒を放り込む。
「こんな思い、恥ずかしうて言えやせん――――」
誰にも打ち明けず、心に閉まっておこう。
毎月顔も見せずに金だけ置いていく様な情けない男の正体など、知られぬ方がいい。
彼はそう思い、帰宅の徒に着くのだった。

もてない特徴5「無駄にテレ屋、もしくは一途過ぎる」



そんな彼に、寅貝きつねから一本のメールが届くのは、もう少し先の話。

『秋刀魚広くん。今度の覇竜魔牙曇で、君の力を貸して欲しいんだ』


/6

秋刀魚広は、覚悟を決めていた。
希望ヶ崎学園一号生対三号生、覇竜魔牙曇。
命すら失う可能性の高い、その決闘への参加を。
A「団長……ホントに行くんですか」
心配そうな瞳で、団員が問いかける。
……一度戦地に赴けば、次の日会えるとも限らぬ。否、むしろ二度と会えぬ確率の方が高いとすら言える。
魔人同士の抗争とは、それほどまでに苛烈を極めるものなのだ。
しかし心配する団員をよそに、魚刀はその仏頂面を崩すことなく「あァ」とだけ返すのだった。
B「ヒャッハー、団長、せめて理由だけでも教えて下さいやせんか」
覇竜魔牙曇の参加は自由。むしろ一般生徒には関係のない世界ですらある。
魚刀たちのような、どこの陣営にも組していないアウトローには、本来縁のあるようなイベントではないはずなのだ。
しかし、彼は死地へ赴く。その理由。
「……惚れた女からの呼び出しじゃけん。断るわけにはいけんのう」
普段ならば己を語らぬ彼が、いつになく饒舌に口にする、恋の言葉。
「ワシの応援が力になるなら。ワシは応援しに行くしかないんじゃァ」
目には覚悟。声には力。
魚刀秋広という男の、一世一代の見せ場をそこと決め。

「他者を応援することを通し己を応援する。それが“応援”じゃあッ!」

改造長ランを羽織り、彼は飛び出す。
彼が思いを告げることはないだろう。彼は己に自信を持たず、故に他者を応援するのみ。
彼はあくまで日陰者。誰かの特別になることなど、できはしないのだ。
ただ、しかし。それでも彼は、その人のために何かをしたかったのだ。
そのきっかけを与えてくれた覇竜魔牙曇に、感謝すらしている。
後ろでは、彼を応援する団員の姿。
ABC「「「フレーッ、フレーッ、団長オオオォォォォ!!!」」」
内心、彼らに礼を言い。振り返ることすらせず、魚刀は思い人の待つ一号生本営へと向かうのであった。


B「ヒャッハー、ところで。団長の思い人って誰なんだァ」
A「え、気付いてないのか?どう考えても1年の寅貝きつねさんだろ。メルアドすら知らなかったらしいけど」
C「マジでェ!?俺でもメルアド知ってるよ」
A「俺も俺も。聞けば誰でも教えてくれるからな」
B「っていうか、寅貝さんってそもそも女じゃないよな」
C「あァ、両性。しかも同性愛者らしいよ。同じ性別になって言い寄るんだってさ」
B「ひゃっはー、だ、団長……団長って別にホモではないよな……」

ABC「「「………・・・」」」
ABC「「「ふ、ふれー、ふれー、団長ぉ……」」」
団員三人の声は、なんだか空しく響くのであった――――


もてない特徴6「女性に幻想持ちすぎ」

(終)


無題3(浦vs武論斗さん)


「アァン。おいコラ、てめえどこ見て歩いてんだァ?」

 くすんだ茶髪の癖っ毛を振り乱して、破壊学園ダンゲロス一年の浦優輝は、今日も廊下でぶつかった相手にガンを飛ばしていた。
 だが、学園のほとんどの学生に恐れられるはずの彼の眼光は、同じ程度に剣呑な視線で返された。

「どこも何も歩くときに前以外見るはずがないという真実 お前後ろ見ながら歩けるんですか? お? ほら見ろ見事なカウンターで返した」
「訳の分かんねえこと言ってんじゃねえよ、このクソノッポ」

 目の覚めるような銀髪に、褐色の肌。耳は細長く尖っている。俺はこの学ランには収まらぬであろうとでも言いたげな屈強な身体。
 人外が多いこの学園ではある意味稀有な、分かりやすい『亜人』の姿。
 その名、武論斗……もとい、武論斗さんという。仏頂面を深める。このガン付けで北海道の数々の不良を殺してきた。

「おっとと貧弱ヒュムに嫉妬を受けてしまった感」
「んだと?」
「エルヴァーンのVITはえごいがSRTもえごい とっさの敵の攻撃も『ほう……』と受け流すしパンチングマシンで100とか出す」
「ハッ? パンチングマシンで100だあ? へっ、ここでその程度が自慢になると思ってんのかよ?」
「……あまり強いことヴァを遣うなよ弱く見えるんだが? 安易な挑発ややめるべき圧倒的な不良のほううするダークパワーの前にお前の命は長くない(予言)」

 貧弱、という言葉に浦の苛立ちはたやすく振り切れた。
 殊更、薄い眉を片方釣り上げて挑発し返す。彼はフラストレーションが溜まっていた。次の瞬間には、このデクの棒みたいな男をブチ殺すことを決めていた。
 殺す、とは言わない。なぜならそれを思った瞬間、彼は相手を壊し潰してしまっているからだ。
 ずどん、という音を立てて、肉食獣のように伸び上がった浦の拳が武論斗さんの胸を打ちぬく。

「――おいィっ!」

 武論斗さんの巨体が容易く浮く。壁に打ち付けられ、校舎が揺れた。派手な一撃――だが、倒れない。
 口から血を吐きながらも、それを平然と拭って、浦に近づく。
 黄金の鉄の塊でも殴ったような感触に、浦が唇を釣り上げる。

「ハッ! 本気じゃねぇとはいえ、よく耐えたなァ! いいぜえ、お前、強ぇじゃねえか!」
「俺の強さが分かってしまう奴は本能的に長寿タイプ!」 

 クロスカウンター。
 武論斗さんの拳が浦の脳天を揺らし、浦の拳が武論斗さんの顎を打ち上げる。
 ドガァンと、まるでライフルの弾でも当たったかのような衝撃音が大気を震わせる。
 だが――次の瞬間、両者は全く同じタイミングで笑みを浮かべた。

「オイオイオイオィふざけんなよ! 人のことノせといて一撃二撃で落ちんなや!」
「――九発で良い!」


 苛立つ怒りに喧嘩して、狂った獣と揶揄される。
 愚直な生き方否定され、メイン盾は笑いに包まれた。
 しかし見ろ!あれを見ろ!
 あれが浦優輝だ! 武論斗だ!
 その屑!その馬鹿!他にはいない!

無題4

声が聞こえる。

風の噂で、一年生と三年生がハルマゲドンで戦うと言うのを聞いた。
その時、私は、なんて今年の新入生はふてぶてしいのだろう、と憤ったものだ。
憤りを燃料に、こうして最後の文章を書いているが、それもいつまで保つものか。
私は三年生の身である。名は――いや、もはや意味は為さない。
なぜなら『奴』に嗅ぎつけられてしまった。

声が聞こえる。

一体何が悪かったというのか。
三年生とはいえ、ハルマゲドン参加者ですらない、所詮モブの身で、新入生全員を闇討ちしようと思ったことか。
自慢ではないが、私は弱い魔人ではない。少なくとも自分ではそう思っていたし、周囲も私を認めていた。
私だけが保有する特異な能力は、新参殺し(シンジンブレイカー)と呼ばれ、持て囃されたほどなのだ。

一体何が悪かったというのか。
私が驕り高ぶり、闇討ちを決意したことなのか。
新参VS古参などという噂を聞いてしまったからなのか。
それとも、『奴』がこの世に存在したことなのか

『てけり、り……』

声が聞こえる。
声が、コエガコエガコエガコエガガガガガdコエコエコエコエあああああああ
わたわわたた私は いや いやだだっだ死にたくなあさだがあうぇしにたいなたすけてやだだだあだああ

ああ、窓に! 窓n(ここで日記は途切れている)

決めろ! キラメキジャッジ~THE SUPER JUDGING THE KIRAMEKI~第5ジャッジ 運命のダンゲロス本戦始まる!の巻



アオリ文:キメてやる! 青春のジャッジ


≪オレこと弐之宮晶は語尾に ですの とつけるのをやめた…
そしてついに俺たちの夢の一歩となる開戦の笛がなった。≫


ピィーッ! ワーワー

バタン!

弐之宮 晶「え!? 何だ!? GKが倒れたぞ!?」

行方橋ダビデ「晶…GKは…」

晶「ダメだ…死んでる」

ダビデ「そんな! 試合は始まったばかりなのに!」

晶「ん? 何かダイイングメッセージを残している…
これは殺人事件だ…!! この『ε』の文字に手掛かりがあるはずだ!」

寅貝きつね「よく考えるコン あきら君!」
【あきらの相棒寅貝きつね:とってもおしゃべりで人気者】

ウンコビッチ堀川「これは えらいこったス~~~っ アタス怖くて便が漏れそうダスよ~~~っ」

晶「ウンコビッチ 心配するな 犯人はオレが必ず見つけてやる!」

ウンコビッチ「晶君…私 ずっと前から晶君のことが…」

晶「(も…萌え…!!)」

おは妖怪「おはよう!」

晶「お…おばけが出た!!」

浦優輝「チクショー ダンゲロスなんてくだらねぇ遊びやってられっか!」

ドカッ

晶「グアアーー! いきなりなにすんだ浦!」

浦「やめてやる! ダンゲロスなんてやめてやるぜ!
誰も俺のことなんてわかってくれねぇんだ!」

ゴゴゴゴゴ…

晶「(な 何てことだ… 浦がグレやがった こんな時に…!!
これじゃ試合にならない! クソッ やるしかないのか…
仲間だけには使いたくなかったあの技を!)」

ミョミョミョミョミョ…

浦「 !!  な 何だ!?」

ブシュウ ブシュウ

浦「グ…グワアアーーー!! 何かが…何かが俺をしめつける! これは一体…!」

晶「俺の能力は相手の痛覚を意のままに操ることができる『THE JUDGE』
浦…悪いがおとなしくしてもらうぜ!」


アオリ文:これが晶の能力!!
バトルが始まる…!!

第5話おわり
→7月号は、浦の恐るべき能力が明らかに!?そして真犯人と妖怪と恋の行方は……必見!

行方橋ダビデのダンゲロス・覇竜魔牙曇(ハルマゲドン)

プロローグ編

ある日の昼下がり、1人の男が希望崎学園校庭の真ん中で周囲をモヒカンザコの集団に取り囲まれて佇んでいた。
白馬の鬣のような艶のある銀髪を後頭で束ねた細身の少年、彼の名は行方橋タビデ。
つい先日、自らの鍛え抜いたクンフーを試すべく、闘いの匂いに惹かれてこの暗雲渦巻く希望崎学園を訪れた戦闘狂魔人の1人である。

彼の周囲を取り囲むモーターバイクに跨ったモヒカンザコの一団は各々に持ち寄った武器を弄びながら、目前の優男にニヤついた視線を飛ばしている。

「君達、まさかとは思うがこれから『ヒャッハー!通行料をよこせぇッー!』なんてベタベタな台詞を言うつもりかい?」
彼らの典型的なモヒカンザコイズム溢れる姿を冷めた瞳で見渡しながらダビデが尋ねた。
「ヒャッハー!そのまさかだァ!察しが良くて助かるぜェーッ!」
右眼の周りに星形の刺青を入れた量産モヒカンザコの1人がチェーンを振り回しながら甲高い声を上げた。
「はぁ……希望崎学園、噂には聞いてたけど酷い所だ……まあ長旅で体もなまってた所だし、慣らしには丁度いいかもね」
ダビデはそう呟くと、おもむろに姿勢を低くして拳術の構えを取る。
それを見てモヒカンザコ達は下品な笑い声を上げた。
「ヒャハハハハーッ!なんだァ?てめえまさかこの数相手に刃向かうつもりかよォ?ヒャッハー!こいつァとんだ命知らずだぜェ!」
「そのまさかだよ。君達程度の群れるしか能の無いようなザコなら、この人数でも僕1人で充分だろう。いや、2人かな……」
「なんだとォ?わけわかんねぇ事ほざきやがって!殺っちまえェ!」
「ヒャッハァァァァァアーッ!」
いきり立ったモヒカンザコの群れが堰を切った土砂の様にダビデに襲いかかる!
しかし次の瞬間……
「たわばっ!」
「ちにゃ!」
「ひでぶ!」
「グワーッ!」
「アイエエエ!」
地面に崩れ落ちるモヒカンザコ達!
一瞬の交錯の中、ダビデは飛び掛かるモヒカンザコの隙間を縫うように彼らの攻撃をかわし、すれ違い様に手刀の一撃を叩き込んだのだ!
「……な、なんだァこいつゥ!?」
「見せてあげよう、魔人拳法奥義・残影淅踊身!」
唖然とした表情のモヒカンザコ達の目の前に更に信じられない光景が広がった。
「はぁぁぁぁ……」
タビデの姿が揺らめく闘気に包まれ蜃気楼の様に霞んだかと思うと、蜃気楼に映った影が徐々に立体感を持ちはじめ、やがて彼の姿と寸分違わない分身が闘気の霞の中から現れたのだ!
「どうした?かかって来ないのか?」
「どうした?かかって来ないのか?」
2人のダビデは全く同じ声と素振りでモヒカンザコを挑発する。
「ち、チクショウ!舐めやがってヒャッハー!」
再びモヒカンザコ達の怒涛の攻撃が2つの影を襲う!
「勢也!」
「噴覇!」
しかし戦力の差は歴然である。
五分も経たずに校庭には失神したモヒカンザコの山が築かれた。
「な……なんて野郎だ……ヒャッハー……」
悪夢のような状況を目の当たりにして立ち尽くす刺青のモヒカンザコ。
「そこの奴はこいつらを連れて元の巣に帰れ。安心しろ、誰も殺しちゃいないさ。何しろこれから同級生になる訳だからね」
残像が煙のように消え去ると同時に、ダビデが刺青モヒカンに向き直って言った。
「ど、同級生だと?ま、まさかテメエ……」
「ああ、今日から君達と同じ希望崎学園一号生に転入する行方橋タビデだ。自己紹介が遅れたね」
モヒカンザコの表情に驚愕の表情が浮かぶ。
「転入だとォ?テメエ正気かヒャッハー!?これからこの学園で何が始まるか知ってんのかヒャッハー!?」
ダビデは涼しい顔でそれに答える。
「知ってるとも。僕はその為にここに来たのさ」

「おいィ?明るいお昼から何うrさく騒いじゃってるわけ?俺の寿命がストレスでマッハなんだが」
いつからそこにいたのか、モヒカンザコの背後から話に割り込んで来たのは、白銀の鎧を纏った背の高い褐色肌の男だった。

というかメイン盾だった。


つづく
最終更新:2011年06月18日 13:39