新参陣営最終応援ボーナス:229点



『理解不能状態ラジオの全貌 ~Aちゃん(仮)とOさん(仮)の怨み~』



初期配置
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『変態とブロントさんは破壊力ばつ牛ン』
桃→ももじ【リーダー】
魅→ミスターK
蚊→かりあげ 
阿→あやまだ
『多数決は絶対に許さない!』
刃→刃葉破(ははは)
幼→ももじさんの幼女
稲→稲枝
大→大塚零(オツカレー)【リーダー】

1ターン目先手
かりあげ:D3移動
「今はまだ能力を使わなくていいタイミング。もし使ったら2Tの間にはははがももじより狙いやすい下側を突破する恐れがある。オツカレーの移動加速が恐いが2T目にミスターKが能力発動するため問題はない。勝利確定」
あやまだ:C3移動
ミスターK:D2移動
ももじ:B4移動
「敢えて嫌われ者の役を買って出てるんですよ」

1ターン目後手
オツカレー:D7移動 能力発動 1D100 → 100 成功
「ボンゴレッソとは違いますよ」
稲枝:D6移動
ははは:B3移動 ももじに能力発動 1D100 → 23 成功 1D100 → 76 成功 1D100 → 89 失敗
「『おは妖怪は男組がいい』って主張する理由が分からない」説得失敗
幼女:C5移動

1T目終了時
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☆……ももじ(はははの『お墨付き』付与)、ははは
備考……ははは、オツカレー能力休み

2ターン目先手
ももじ:移動せずはははに通常攻撃 1D100 → 7 命中 死亡 DP+1
「だからなんでそうなるのか理解不能状態。大体そう言うおは妖怪は男組行かないのかよ。見ろ、見事なカウンターで返した調子に乗ってるからこうやって痛い目に遭う」

ミスターK:D4 オツカレーに能力発動 1D100 → 74 SS朗読押し付け成功し戦線離脱。同マスにいた「かりあげ」に【オツカレーの怨み】付与
「470なら(オツカレーが)SSスレの>>45-46を朗読する」

かりあげ:その場で能力発動 1D100 → 34 成功
「……(書き込みできない)」
あやまだ:待機
「あへあへ」

2ターン目後手
幼女:B4 ももじに能力発動 1D100 → 40 成功
「ジュース飲んだ……絶対に許さないっ!」
稲枝:その場待機
「勝てそうにもないから安価で描く>>470」

2ターン目終了時
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☆……ももじ【お墨付き】、ももじさんの幼女
○……ミスターK、かりあげ【オツカレーの怨み】
備考……ももじ行動封印、幼女、ミスターK、かりあげ能力休み

3ターン目
休憩

4ターン目
ももじがゆっくりとC3へ移動
あやまだは不良界でも結構有名でケンカとかでもたいしてビビる事はまず無かったが生まれて初めてほんの少しビビったのでD3に移動

5ターン目
ももじがD3であやまだと同マスに。
「朗読しないと会議始まりませんよー」
あやまだは自らが追い詰められていることを知りながら
「俺は朗読なんかしない!絶対しないからな!」と叫びながらD4に移動

最終ターン
窮地に陥ったあやまだ。覚悟を決めて能力発動(朗読開始)1D100 → 21 成功っ!
「ひゃぁー、ちょっとだめです、いま電話中なのに……ひゃぁあー(裏声)」
これにより「ももじさんの幼女」「かりあげ」「ミスターK」「稲枝」が笑い死。DP+2
しかし精神力の高いももじは平然としており、能力を発動した。1D100 → 56 成功
「ぼくだったら死ぬなー」
録音したファイルを公開され、恥ずかしさのあまりあやまだは爆死。
これによりももじ一人勝ちでラジオ終了。TRUE END。


名前:ももじさんの幼女
性別:幼女(女性)
武器:ゲロ
FS名:パパ誰と話してるの~?
能力名:絶対に許さない!
効果:行動封印
対象:同マス全員 敵味方無差別
時間:1ターン
制約:男性のみ
FS2 発動率102% 成功率100%

発動原理
 キャーキャー言ったり、愛くるしさを振りまいたり、ゲロ吐いたりして、周囲の大人たちを惑わす。

キャラ説明
 夜な夜な虚空に向かって誰かと話している父親の奇行を目撃した少女。
 勝利を呼ぶ幸運の幼女と崇め奉られており、ちょくちょくラジオに参加したがる。


埴井葦菜と愉快な仲間たち③「埴井葦菜の消失」


「もし、あたしが消えちゃったらさ……逆に目立つんじゃない!?」

 さも名案を思いついたとでも言うような晴れ晴れとした表情で頭の悪いことを言い出す少女がいた。
 彼女の名は埴井葦菜。
 自分が他者よりも目立っていなければ嫉妬が爆発するという、極めて友達になりたくないタイプの魔人である。

「確か、他人を消しちゃう感じの能力者がいたわよね……探してきなさい!」

 蜂使いの一族に生まれた葦菜は、自分の手足と同等に蜂たちを自在に動かせるのだ。
 もっとも蜂たちにも固有の意思は存在するので、命令を出すだけ出して拠点教室でアイスをしゃぶっているこの主人に、いつ反乱を起こすかも知れたものではないが。
 とにかく蜂たちは方々へ散って目当ての人物を捜索し、遂に見つけたのであった。

「ふんふん、あいつね……!」

 グラウンドに案内された葦菜の視線の先には、野球部のユニフォームを身に着けた少年がいた。
 彼の名は五郎丸卒塔婆。御覧の通りの野球魔人である。
 彼はピッチャーマウンドに立ち、相対するバッターを睨み付けている。

「くくく……お前に、真の魔球を見せてやる!」

 不気味に笑いながらワインドアップし――次の瞬間、剛腕からボールが放たれる!
 目を凝らして見てみると、真っ直ぐに突き進むボールから青白い閃光が漏れている。
 そして、踏み込んだ打者のバットがボールと激突した、その刹那――

 シュンッ――!

「おおおっ!」

 思わず感嘆する葦菜の目の前で、果たしてバッターはかき消えた。
 正確に言うならば、彼はボールに吸い込まれたのだ。
 これが、努力の野球魔人・五郎丸卒塔婆の必殺魔球『魔人球』である。

「あれを喰らえば、あたしも消えられるのね……! そうすれば、みんなあたしを必死で捜索するはず! そして劇的に野球ボールから姿を現すあたし――完璧ねっ!」

 チームメイトは皆五郎丸の能力は知っているから別に意外でもないし、そもそも葦菜を探しに来るほど皆ヒマじゃないだろうし、それに、何より……
 アシナガバチたちは作戦の不備をいくつも考えついていたが、誰も何も言わなかった。主人に対する優しさである。
 一方、自分の作戦を信じて疑わない葦菜は、攻撃チームからバットやヘルメット等の用具一式を奪い取り、打席に立った。

「さあ、あたしにもあの魔球を投げてみなさい!」

「ん? お前は確か、埴井葦菜と言ったか? 女子が一体なぜこの場に……」

 怪訝な目で葦菜を見る五郎丸に対し、葦菜は「ふふん」と不敵に笑うのだった。

「あんたがいつも『野球しようぜっ!』って煩いから、特別に来てやったのよ! ありがたく思いなさい!」

「別に女子に声をかけていたわけではなかったんだが……まあ、いい。俺の魔球が欲しいのなら、お望み通りくれてやる!」

 一転、ピッチャーとしての表情に戻った五郎丸は、葦菜に対し全力の一球を投げ込んでくる!
 家庭の都合で幼き頃より身体能力を磨いてきた葦菜にとって、例え時速160マイルの球も――時速256キロの球も、捉えることは難しくないっ!

「そこッ!」

 思い切り振りぬいたバットは、五郎丸の『魔人球』とぶつかり合い――

 バキィイ!!

 ――へし折れた。


「オーライ! ファーストっ!」

 五郎丸は眼前にぽてっと転がった打球を、滑らかな動きで一塁に送球する。
 塁審がアウトを告げ、五郎丸たち守備チームは攻守交代のためにベンチへ小走りで引き上げてゆく。
 その途中で、五郎丸はバッターボックスで立ちすくむ葦菜を目に留め、声をかけた。

「おう! 女子のくせに俺の魔球に当ててくるとは、なかなかやるじゃねえか! でも、俺の勝t――」

「ねえ、どうして消えないの!? 発生する擬音は『バキィイ』じゃなくて『シュンッ』でしょお!?」

 おおう、と五郎丸を思わず仰け反らせるほどの形相で葦菜は尋ねた。
 五郎丸は少し言葉の意味を探った後、当たり前だと言わんばかりの口調で告げる。

「ああ、『魔人球』のことか? あれは男にしか効かねえよ」

「な、なんですってゑ!?」

「男子は野球、女子はソフトってイメージがあんだよな。まあ、お前は結構イケてたけど――って、あれ? 消えた?」

 五郎丸がフォローの言葉を口にしたときには、既に葦菜はグラウンドを去っていた。


「あ……あたしの計画がぁぁぁぁぁ……しょ……しょう…め…めつめつめつ…」

 がっくりと項垂れる葦菜の元へ、一つの影が近づいてくる。
 その存在は、消え入りそうな声で葦菜に話しかけた。

「あの……消えたいんですか?」

 驚いて振り返った葦菜の眼前に、今にも消え去りそうな儚さを持つ少女がいた。
 少女の名は虚居まほろ。自分ごと周囲のもの全てを消し去ってしまう能力を持つ魔人である。
 普段は誰とも関わることなく一人きりでいる彼女だったが、今、消滅能力者を探していた蜂たちに連れられてここへやってきたのは、どういう心境の変化なのだろうか。

「私と一緒に……消えますか……? この世でも、あの世でもない……どこか、別のところへ……」

 ともかく、彼女がどんな経緯でその能力を手に入れたのかは不明だが、その風貌と能力は、非常にマッチしていた。
 否、マッチしすぎていた。
 先ほどまであれほど消えたい消えたいと(ニュアンスは異なるけれど)喚いていた葦菜も、虚居のあまりにも真に迫った雰囲気に、つい、

「あ……やっぱりいいです。ごめんなさい……」

 と、敬語でお断りしてしまうのだった。
 こうして、埴井葦菜の消失は、失敗に終わった。  <終>


『そう、そのまま飲み込んで。ウチのハリセン』



「なんでやねん!」

新参陣営総合本部に今日も朱音多々喜の声が響いた。
……が、いつもなら直後に続くであろう朱音の持つハリセンがたてる快音が、今日ばかりは轟かなかった。
なぜならば、今日、朱音のツッコミを受けたのは同じ新参陣営の諸語須川てけりであったからだ。
髪の毛(触手)を自在に動かす魔人である諸語須川は、自分の後頭部に襲い来るハリセンの風切音に驚き、思わずハリセンを髪で咥え込んだのだ。

「ちょっ!ウチのハリセン!」
「ごごごめんなさい!急に突っ込まれたから!」
「そんな締め付けんなや!ウチのハリセン全部咥え込まれてもーたやん!」
「あっ……やぁん!あんまり乱暴にしないで!」
「そんなんゆーならはよ離しぃや!自分で締め付けといて!」
「そんっ……なぁ……こと、言われてもっ!びっくりしちゃってて……」
「ええーいっ!こんなんでウチのツッコミを止められると思うなや!」
「な……何を、んっ!……する気?」
「アンタ丈夫やろ!ダイジョブや!ほなイクで!」
「もしかして……『ハリセン・BON!』ですかぁー!?」
「Yes!Yes!Yes!」
「コレ一応髪の毛なんですよー!?中はやめてー!」
「もう我慢できへん!……ええかげんに……せいっ!!!」
「きゃあああああ!」



無事にハリセンの拘束は解けたが、息を荒げて教室の床に突っ伏す2人。
諸語須川の頭がアフロヘアーになっているのは信頼と実績の伝統芸である。

と、そこに教室の扉をおずおずと開き新参陣営の面々が入ってきた。
いつもなら暑苦しいくらいに元気な新参メンバーのしおらしい様子に首をかしげた朱音は、能力発動による疲労もものともせず立ち上がった。

「なんや、元気がないで!そんなんじゃ古参共をギッタギタにできへんやろ!」

――しかし、そんな朱音の喝にも、いつもなら打てば響く新参メンバーが皆、落ち着かない様子で朱音と諸語須川のほうを窺っている。

梨咲みれんや稲荷山和理、夢追中は頬を染め、朱音の視線に気付くとあらぬ方向を見出し……
緑風は気恥ずかしそうに朱音と諸語須川をちらちらと見比べ……
巨堂斧震は体をまごつかせながら宇宙人でも召喚しそうな手の動きを披露し……いやこれはいつも通りだ。

「な、なんやねん」

周囲の態度に戸惑い、そう言った朱音へと1人の人物が近づき、肩を叩いて声をかけた。
鶴崎一途であった。

「さきほどはお楽しみでしたね」
「んな!?」

鶴崎の発言の意図を理解し、赤くなる朱音。
そんな動揺する朱音に対し、続けて審刃津志武那が声援を送った。

「俺は応援するぞ。多々喜嬢」
「ちょ!?」
「だが、やることをやるなら場所を選んだほうがいいな。ここは新参メンバーの共同空間だ」
「いやいやいやいや!?」

珍しく守りに入り、うろたえる朱音であったが――

「待って!」

背後から思わぬ味方が現れた。先程までへたり込んでいた諸語須川である。

「朱音は悪くないの!私があんなことしたから!朱音はただ我慢できなかっただけなの!」

伏兵であった。


「なんでやねん!」「あんっ!」


――その後、周囲から総ツッコミを受けてうろたえ続ける朱音という、非常に珍しい光景が見られたという。


埴井葦菜と愉快な仲間たち④「埴井葦菜の暴走」


「デスメタルライヴ……?」

 蜂使いの魔人・埴井葦菜が耳慣れない単語を口にしたのは、つい先日のことであった。
 彼女の正面には、目をキラキラさせて何かのチケットの束を手にした少女がいた。

「そうなの! アッシーナには、是非来て欲しいなって!」

 伝説の白いギターを下げ熱く語るのは、完奏現世術(フルソンブリンク)魔人・阿野次のもじである。
 黒髪蒼眼に小柄で細身と、多くの男性ファンを魅了して止まない容貌の美少女である。
 そのくせ歌っているのはデスくさい曲ばかりで、にも関わらず「そこがまたいい!」と男性ファンたちには大評判なのである。

「今回は私が歌うんじゃなくて、ウッチーがメインで歌うんだけど……どうかな?」

 この目立つ同級生だけでも葦菜は警戒していたのだが、そこに“あの”ウッチーことウンコビッチ堀川が加わる……だと……
 葦菜はしばらく思案したのち、「うん、ありがとう。楽しみにしてる!」と返事した。
 「やったあ!」と笑顔を満開にする阿野次は、よもや葦菜が斯様に黒い狙いのもとで了承したとは露程も思わなかっただろう。

「(ふふふ……目立ってる二人を一息に始末するチャンスだわ……!)」

 主人のあまりの下種さにドン引きするアシナガバチたちを連れ、ライヴ当日、葦菜は会場たる体育館を訪れた。
 そこにはすでに多くの聴衆が――ほとんど男だが――詰めかけており、葦菜はむさ苦しさに顔をしかめながら会場の中ごろへと進んだ。
 それからしばらく待たされたのち、いよいよライヴの主役にして男子諸君のお目当て、そして葦菜の標的たる二人がステージ上に姿を現した。

「みんなー! 今日は来てくれてありがとう! めいっぱい楽しんでいってね!」

 デスメタルとはあまりにそぐわぬ阿野次の明るいMCに対し「ウオオー」「ヒャッハー」と半狂乱で答えるオーディエンス。
 葦菜はむかむかを抑えながら、不敵に微笑む。
 さあ、一体何を見せてくれるというのかしら……?

「じゃあ、本日の一曲目! ウッチー、お願いっ!」

 マイクをウンコビッチ堀川に手渡し、自分はステージの中央から少しよける。
 と、その位置へ堀川が歩み出てくる。堀川がメインボーカルで、阿野次は演奏に徹するようだった。
 地味な見た目とは裏腹の性癖を持つスカトロ魔人・ウンコビッチ堀川が、口を開く。

「では、聴いてください。 『SCATOLO』っ!」

 遂に演奏が開始された!
 素人の葦菜から見ても、メンバーのテクは――特に阿野次のテクは凄まじく、これを見て失禁・射精する観客も少なくないほどであった。
 奏でられる重低音の渦の中で、ウンコビッチ堀川の叫び声が響く!

 ♪ 私はビッチのスカトロジスト 昨日下痢糞食したぜ 明日はコロ糞食ってやれ I am a scatologist straight out of toilet!

「ひょおおおおおおおおおおお!!」「ほっちゃーん! ほ、ほーっ、ホアアーッ!! ホアーッ!!」「のもっちゃああああああああん!!」

 がなるウンコビッチ堀川! 掻き鳴らす阿野次のもじ!
 フィーバーするオーディエンス! 唖然とする埴井葦菜!
 周囲で思い思いのパフォーマンスを始める聴衆の中には、葦菜の見知った顔もいくつかあった。


♪ 私に父さん母さんいねえ それは私が脱糞したから 私にゃ友達恋人いねえ それは私が脱糞したから

「うおらああああああああ! テンション上がってきたぜええええええええ!」

 目を血走らせ辺りの者に誰彼構わず殴りかかるのは、喧嘩魔人・浦優輝である。
 怒りのままに殴り倒すことこそが彼のアイデンティティ。
 溜まったストレスを発散するかのように、調子に乗った者どもを蹴散らしてゆくのだ。

「ギャッフーン! 気になるよぉー!」

 どこかで聞いた様なフレーズを口ずさみながら浦と相対するのは、ボクサー魔人・ロッキー池田である。
 優秀なボクサーとして将来を嘱望されながらも魔人化によって居場所を追われた彼は、今度のハルマゲドンに活路を見出したのだ。
 頭上のゾウさんジョウロの中の粘液をたゆたせながら殴り合う彼は、どこか嬉しそうでもあった。

 ♪ ひり出せ ひり出せ 糞をひり出せ ひり出せ ひり出せ 頭にひり出せ

「うおおおおおおお! ココロに響くああああああああああ!」

 カラダ全体で思い切り壁やら床やらにダイブしているのは、ドM魔人・伊丹護である。
 幼少期の凄絶な経験からマゾに目覚めた彼は、その歪んだ信仰心をもって自傷行為を繰り返している。
 彼の持つ感覚共有能力により周りの者たちも次々と血を噴出しながら倒れていくが、彼にとってそれは幸せなことなのであった。

「ぬええええいいいいい! 一筆入魂んんんんんんん!」

 奇声を上げながら筆を振るっているのは、生徒会書記の書道魔人・道之せんとうである。
 彼は床に巨大な半紙を広げ、武器たる大筆と小筆の二刀流で一心不乱に書をしたためていた。
 参戦当初は寝不足に不機嫌とコンディションも最悪であったが、響き渡る歌声からインスピレーションを得たのか、今は嬉々とした表情であった。

 ♪ スカトロ スカトロせよ スカトロ スカトロせよ (BURI! BURI! BURI! BURI!) 脳みそを茶に染めてやれ!

「で、でたああああああああああ!」「ウンコビッチさんのアナルギターだあああああああああああああ!」

 曲もとうとうサビの部分に突入し、会場のボルテージも最高潮に達する!
 異様な盛り上がりを見せる空間にドン引きしつつ、蜂達は飼い主たる少女・葦菜に帰還を申し出ようとした。
 しかし、気付いてしまった。この女もまた、雰囲気に呑まれつつあることに――!

「こんなに目立っちゃって、なんなの!? てかなんであたしを呼んだの!? バカにしてんの!?」

 葦菜は怒りをぶちまけながら、過去類をみないほどに濁った眼でステージ上を睨みつける。
 その先にいる阿野次は葦菜の視線に気づき、ふっ、と笑った。
 まさしく決定打――!

「うきゃああああああああああああ! こんなライヴ、ぶっ壊してやるううううううううううううう!」

 えええー!? と仰天する蜂達には目もくれず、葦菜はずんずんと突き進んでいく。
 そして最前列へと辿り着くと、乗り越え防止のために張られたロープもなんのその、ステージに上がり込む!
 曲の停止こそなかったが、ステージ上にて、葦菜と阿野次の視線が交差する。

「おおおおおい! テメェなにカチコミしくさっとんじゃあああ!?」「俺たちののもっちゃんから離れろおおおおおお!」

「るっさいわね、邪魔よ! 去ね!」

「ギャース!」

 葦菜の暴挙に憤ったファン達も上がり込もうとするが、葦菜は蜂達を指揮し一人たりとも近づけさせない。

「やいやい、あんた、頼まれたから来てやったのに、どういうことよ!?
 『私こんだけ目立ってるんですぅ~。あなたとは違うんですぅ~』とでも言いたいの!?」

 葦菜が不平不満を爆発させている間も曲は進み、クライマックスに差し掛かっていた。

 ♪ スカトロ スカトロせよ スカトロ スカトロせよ S CA TO LOOOOOOOO!

 ウンコビッチ堀川の渾身の叫びも徐々にフェードアウトし、一曲目が終了した。
 はあはあ、と肩で息をつきながら、立ち位置を堀川と入れ替わった阿野次は、マイクを持って語り出す。


「聴いてくれてありがとー! 『SCATOLO』でしたっ!」

 その後も他愛ない話でMCを続けながら、オーディエンスに笑顔をふりまく阿野次。
 つい先程まで激昂していた彼らも、一転メロメロになっている。
 葦菜はこの機を逃すまいと、研き抜かれた真剣の如き鋭い眼光を見せる。

「もう十分でしょ? さあ、ここであんたを始まt――」

「次の曲は、こちら! アッシーナに歌っていただいちゃいまーすっ!」

「「 !? 」」

 葦菜も、蜂達も、オーディエンスも皆一様に衝撃を受けた。
 葦菜の言葉を遮って放たれたのは、それほどまでにインパクトのある発言だった。

「あ、あんたねえ!?」

「最初に言ったじゃん、『アッシーナには、是非来て欲しい』って。あれ、『ライヴに出て欲しい』って意味だったんだけど……?」

 ぐっ……、と葦菜は息を呑む。
 あたしより目立ってるやつからの提案なんて、心情的には蹴ってしまいたい気分である。
 だが、しかし――

「ふんっ……! いいわ、やってやろうじゃないの!」

 葦菜は了承した。
 殴り込みをかけた者がライヴに加わるという、ある意味お約束的な展開に、一時は冷めかけたオーディエンスの興奮も再燃する!
 阿野次は破顔し、葦菜の分のスペースを開ける。

「やったあ! 曲はこんな感じで、いけるかな!?」

「あたしを誰だと思ってんの? こんなもん、オチャノコサイサイよっ!」

 歌詞カードに一瞥をくれただけで、葦菜はそれを投げ捨てた。
 大丈夫かなあ、と心配する蜂達を下がらせ、葦菜は黒い笑みを浮かべる。

「(ふふふのふ……ここであたしが歌えば、あんたたちなんかより、よっぽど目立てるわ! 最後に笑うのは、このあたしよ!)」

 あたしって腹黒! と変な自画自賛をしつつ、所定の位置につく葦菜。
 呼吸を整え、臨戦態勢に入る――!

「聴きなさい! 『暴言でしょでしょ?』っ!」


 後日、ライヴの盛り上がりを思い出しながら、阿野次のもじはにやついていた。

「うふふ、アッシーナを呼んだのは正解だったなあ……あんなに予想通りに動いてくれるなんて♪」

 真の腹黒は、きっと彼女に違いない。
 埴井葦菜の暴走によって、ライヴは大成功を収めたのだから――  <終>


埴井葦菜と愉快な仲間たち⑤「埴井葦菜の動揺」


「げっ……!」

 その日も陣営拠点へと赴いた葦菜は、一人の少年と邂逅した。

「(“げっ……!”って?)こんにちは、埴井さん」

「こ、こんちは……えーっと、一(にのまえ)……だっけ?」

「合ってるよ。覚えてくれてありがとう!」

 少年の名は一 一(にのまえ はじめ)。何の因果か神に愛された、ToLoveる魔人である。
 今、拠点たる廃教室には葦菜と一しかいなかった。
 一の特異体質の噂を聞いたことがある葦菜は、些か緊張した様子で後ずさる。

「え……なんで距離をとろうとするの!? ほぼ初対面なのに酷くない!?」

「う、うるさいっ! 知ってるのよ、あんた、女の子にえっちなことする魔人なんでしょ!?」

 うろたえる一に対し、ずびし、と指を突き立て失礼なことをぬかす葦菜。
 一は弁解しようと、慌てて近づくが……

「誤解だって! いや、あながち間違ってはないけど、でも語弊が、」

「ちょっと、こっち来ないでよ! 一体なにが起こるか――きゃあっ!」

 焦って逃げようとした葦菜は机にぶつかり、諸共倒れてしまいそうに――!

「あ、あぶないっ!」

 庇わんとして、一は咄嗟に葦菜に覆い被さった。
 そのまま二人は倒れ込み――


ドシャアァン!!


「痛たた……ねえ、ちょっと、大丈夫?」

 机の角に打ちつけた腰をさすりながら、自分を庇おうとしてくれた一に少し躊躇いがちに話しかける葦菜。
 だが、右に左にキョロキョロと視線を彷徨わせても、肝心の一の姿が見えない。
 どうしたものかと首を傾げかけたところで、己の下半身に違和感を覚えた。恐る恐る視線を下げてみると――

「もごもご……(いてて……)」

「~~~~~~!!」

 教室の床にへたり込んだ葦菜のスラリと伸びた両腿の間から、一の首から下がにょきっと生えていた。
 一の顔は葦菜のスカートの中で――ええい、説明するのもまだるっこしい。
 端的に言い現わせば、ToLoveる名物・顔面騎乗であった。


「なっ……! なっ……!」

 顔を真っ赤にしてわちゃわちゃと両手で空を掻きながら、二の句を継げない葦菜。
 これが一の能力 『ToLOVEるメイカー』である。
 超常的な偶然により産み出されるえっちなハプニングから逃れられる女子など存在しない。

「もご、もごごご……!!(もしや、これは――とんだToLOVEる!!)」

「いやああああああああああああ!!」

 勢いよく立ちあがり、葦菜は一を蹴り飛ばした。
 一は吹っ飛んで壁にぶち当たったが、日常的にこのような反撃にあっているためだろうか、割と無事なようだった。
 そんな一に対し、葦菜は顔中をひどく紅潮させつつ喚く。

「あ、あ、あんた、よくもやってくれたわね!」

「ぐう……なに言ってんだよ、君が勝手に転びそうだったのを助けようとして――」

「うるさいわよこのド変態! このあたしを辱めた罪は重いわよ!」

 言いながら、持っていたキャリーケースの扉の留め金をはずす。
 すると、中からアシナガバチ達がわらわらと飛び出してきて――

「あんたたち! そいつを蜂の巣にしてしまいなさい!」

 葦菜の命令を合図に、一斉に一に襲い掛かる!
 如何にタフな肉体を誇る彼でも、比類なき激痛をもたらすアシナガバチの集団に攻撃されてはひとたまりもないやもしれぬ。
 自衛のために今一度能力を使おうと決心した刹那――突然、蜂達の動きが止まった。

「ちょっ……何してんのよ! 止まってないで早くそいつを殺して――」

「いけません!」

 激昂する葦菜の言葉を、透明感のある大きな声が遮った。
 声のする方に視線を向けた葦菜と一が見たのは、透きとおった躰と、首元に括られた縄。
 そう、この幽霊然とした美少女こそ、一年生陣営が誇るメイン盾その2・梨咲みれんである。

「『死ぬ』とか『殺す』とか、やめましょうよ!」

 彼女――梨咲みれんには、遠い昔にファッション自殺をした経験があるのだ。
 しかし今ではそれを悔やんでおり、死のうとする者や殺そうとする者を止めてまわっているのだ。
 勿論、このようなToLoveる空間に幽霊が紛れ込んだ場合、一体どんな展開になるのかは、聡明なる読者諸兄には予測済みであろうが――

「ふんっ……いいわ! 邪魔するってんなら、あんたを先に始末してあげる!」

 幽霊を相手に具体的にどうやれば始末できるのかなど葦菜は全く考えていなかったが、頭に血が上っていた彼女は残りの蜂達を構わず突撃させた。
 しかし、偶然にもこれが運命の分岐点であった。
 実は、梨咲みれんは生前に蜂の群に追い掛けられた経験があり、そのトラウマは自縛霊と化した今も変わらず彼女の心に巣くっていたのであった!

「ひイッ! 蜂はダメなんですっ!」

 先刻、一に襲いかかった蜂達を止められたのは、無我夢中であったためにそれが蜂だと気付かなかったからである。
 だが、向かってくる禍々しき蜂達と相対してしまった今では、まともに念動力を操ることはできなかった。
 蜂達を止めようと指先から放たれた不思議なエフェクトは、対象の横を素通りし、あろう事か葦菜の胸元に命中した。

「へっ――!?」

「(これは、トラブルの予感――!)」

 果たして葦菜の制服は下着ごと胸元を中心に弾け飛んだ。
 大きくもないが決して小さくもない、美しい二つの膨らみが露わになる。
 葦菜はあまりのショックにしばし呆然としていたが、己の格好に気付いた瞬間、火が出るどころかマグマが噴出するかの如く赤面した。

「○▲×◆□∀⊿§♂♀ξω∵∑!!」

 そして、理解不能な言語を叫びつつ、胸部を隠して拠点を飛び出して行ってしまった。
 後には、気の毒そうな表情を浮かべた梨咲と、晴れやかに微笑む一が残された。


 余談だが、この日より葦菜は一や梨咲に会うと、頬を朱に染め明らかに慌てふためいて走り去ってしまうようになった。
 周りの者たちは皆首を傾げ理由を訊くが、三人とも黙して語らず。
 この、埴井葦菜の動揺は、誰にも秘密の出来事なのである。   <終>


稲荷山和理の新たなる奥義



「参ったなぁ……」

緑風佐座は誰にともなく呟いたが、それはその場に居る全員の本音を代弁したものに他ならなかった。
家庭科室の隅っこで稲荷山和理はガタガタ震えながら縋るような目線をちらちら送って来るし、梨咲みれんはただおろおろと困惑していた。
夢追中は愛用のペンで頭を掻きつつ、この状況を静かに見守っていた。

膠着した空気を打破すべく、緑風は和理に声をかけた。

「なあ、もう一度よく考えてみろよ。確かに梨咲は幽霊だけど、別に見た目が腐ってるとか白目剥いてるとかじゃないんだからさ。
若干半透明だけど足もちゃんとあるし、首に縄付いてるけどよく見れば可愛いし……何もそんなにビビる事は無いだろ?」
「そ、そんな事言われても……私、小さい頃からお化けとか幽霊とかはホント駄目で……」
「うう……稲荷山さん、私もそこまで怖がられると流石にへこみます……」
「ひぃぃッ!」

みれんが何か喋る度にこれである。緑風は溜息をついた。

そもそもの発端は、夢追のインタビューを受けていた和理が作った赤出汁の匂いに釣られてみれんが家庭科室にやってきた事にある。
その際、みれんは迂闊にもドアをすり抜けてしまった。
幽霊がドアをすり抜けるという現象をバッチリ目撃してしまった和理が正体を無くして絶叫し、その声を聞きつけ何事かと教室に踏み込んだのが緑風であった。
和理とみれんは同じチームとして戦う予定である。いざという時に味方を恐れて動けなくなるようでは困るのだ。
緑風は何度も説得を試みたが、和理の幽霊嫌いは筋金入りであった。
一体どうしたものか……彼は頭を抱えた。

と、その時――教室のドアが静かに開いた。

「おはよう!」

挨拶の妖怪、おは妖怪である。彼(?)は爽やかな挨拶とともに颯爽と教室を横切り、そのまま後ろ側のドアを開けて去って行った。

「な、何だったんだ……」
「可愛いですよねー……」
「おいちょっと待て、今なんつった」

愛くるしい子猫でも眺めるような表情でおは妖怪を見送る和理に緑風がツッコんだ。

「えっ?可愛いと思いませんか?」
「いや可愛いけども!さんざん梨咲を怖がっといてなんでおは妖怪は平気なんだよ!名前に妖怪って入ってんだぞ!」
「そ、そんな事言われても……可愛いものは可愛いですし」
「やっぱり稲荷山さんは私の事が嫌いなんですね……ううう……」
「ひぃぃッ!」

堂々巡りである。もうこうなったら和理かみれんをAチームに移籍させるしかないか――そんな考えが緑風の頭をよぎった、その時。
それまで沈黙を守っていた夢追が口を開いた。


稲荷山さん、貴方は一流の寿司職人ですね?」
「えっ?はぁ、まあ一応は……」

突然の質問に戸惑いつつ和理が答える。夢追は中指でメガネをくいっ、と持ち上げた。

「では、梨咲さんをお客さんだと思って、お寿司を握ってあげれば良いんじゃないでしょうか?」
「はぁ?」

言葉の意味が解らず、緑風は頓狂な声をあげた。

「一流の職人ならば客を分け隔てたりはしない筈!すなわち、お客さんとして接する事で、稲荷山さんはみれんさんと普通に接する事が出来る筈です!」
「いや、そのりくつはおかしい」
「そ、その手があったかーッ!」
「えぇー……」

夢追の提案した無茶な作戦に掌を打つ和理を見て、緑風はなんだかもうどうでもいいような心地になった。
一方和理はおもむろにクーラーボックスを調理台に乗せ、中からいくらかのネタを取り出した。そして塩水で手を清め、刺身包丁を握る。
するとどうだろう、先程まで怯えていたのが嘘のように、みるみる自信に満ちた顔つきになっていくではないか。

「いらっしゃい!お客さん、何を握りましょうか?」
「あ、え、ええと……」

今の今まで自分に怯えていた人間が、突然にこやかに寿司の注文を聞いてくるギャップに戸惑いつつ、みれんはとりあえず席に着いた。
緑風は唖然とし、夢追は鉄製のメモ帳に忙しくペンを走らせている。

「それじゃあ、ハマチを」
「はいっ、ハマチ一丁!」

その注文を受けたと同時に、和理の手は恐るべき速度でネタを捌き、シャリを取り、サビを付け……気付いた時には、二貫のハマチがみれんの前に置かれていた。
その間、実に2秒弱。

「は、速い……!」
「あれが噂に聞く稲荷山さんの『舞い』……流麗かつ神速の握りはネタの新鮮さを極限まで保つ!
そして絶妙の力加減でシャリとネタを一体化させる!この2つを同時に行う事こそ神技と言われる所以なのです!」
「テンション高いな夢追」

緑風は突然バトル漫画の解説役のような台詞を言い始めた夢追に冷ややかな視線を送った。
一方みれんはまるで魔法のような手捌きで作り出された寿司を見て目を輝かせた。

「わぁ、美味しそう!お寿司なんていつ以来だろう……いただきまーす!」

満面の笑顔で寿司を口に運ぶみれん。それを咀嚼して瞬間――。

「な、なんだ!?梨咲の体が光始めた!」
「まさか……稲荷山さんの寿司を口にした者は天国を垣間見ると噂されていますが、幽霊であるみれんさんは『そちら』に引っ張られてしまうのでは!?
つまり……稲荷山さんの寿司を幽霊が食べると成仏してしまう!!!」
「な、なんだってー!!!」
「ああ、美味しい……美味しすぎてなんだかお花畑が見えてきました……」
「待て梨咲!まだゴールしちゃ駄目だ!」
「あ、あ、どうしよう、私のお寿司で梨咲さんが死んじゃう!」
「こんな時に余計なツッコミ要素増やさないで!」




その時、緑風の脳裏に電流走る。梨咲はファッション自殺した事を悔いてこの世に留まる幽霊である。
その能力も自殺を思い止まらせるものだ。ならばそれを利用すれば――。

「あー、なんか急に死にたくなってきたなぁー!自殺ってマジ憧れるよなぁー!」
「!!駄目だよ!そんな理由で死んだ日には『あの子ファッションで自殺したんだって』『何それ意味分かんない、頭おかしいんじゃないの?』とかって
クラスの皆からディスられた挙句、家族の肩身も狭くなっちゃうんだよ!自殺ダメ絶対!」
「おお、戻って来た!ナイスです緑風さん!」
「いやー、一時はどうなるかと思ったぜ」
「あ、次コハダお願いします」
「はいよっ」

もはや自分一人の手に負えぬと悟った緑風は、夢追に朱音を呼んできて貰うよう頼むのだった。
因みにこの後、和理の特技に『除霊』が加わった事は言うまでも無い。
最終更新:2011年06月18日 13:41