新参陣営最終応援ボーナス:229点
無題11
==新参陣営総本部==
秋刀「押忍!自分はァーッ!漢の魂を持った同志をォーッ!奮い立たせるッスぅーーッ!!」
鶴崎「私…大好きな人の為なら、どんな障害だって取り除いてみせます…!」
五郎「バッターを魔球にのせてふん投げるぜ!これぞ男球だぁーっ!あ?女?あいつらはでけえ球くるくる回してたらいいよ」
埴井「あたしの蜂で、老害なんてイチコロだよ!でもあたし暑苦しいのとか駄目なんでー、応援とかはちょっとパスしていいですかぁー?」
和理「私は全力で寿司を握らせていただきますね!…女だからサポートは受けられないんですけどもー…」
大魂「…!
…噛み合わん…!
いやもう逆に噛み合ってるとさえ言える…!」
寅貝「もっと腕っぷしの強い男の子がいればいいんですけどねえ…ちょっと、困ったな」
==総本部前廊下==
扉の前で反復横跳びしている少年がいる。
名は左高速右。この場所を守る、ゲートキーパーである。
崇高なる目標に向け必死に往復していた為、左高が来客に気づくのには、少しの時間を要した。
左の速右「おいあんた」
右の左高「そこで止まりな」
右の速右「ここから先は新参陣営総本部」
左の左高「部外者の立ち入りは出来ないぜ」
????「…随分能率の悪い見張りだな、疲れないのか?」
左の左高「用が無いなら」
右の左高「さっさと引き返してくれるかい」
左の速右「反復横跳びに巻き込まれて」
右の速右「ミンチになっちまうぜ」
????「…向こうにある求人情報を見てきたんだが」
右の左高「ほー、成る程な」
左の速右「確かに只者では無さそうだ」
反復横跳びを止めた。息は切れていない。流石は忍術部、といったところか。
左高速右「よろしく頼むぜ。中入んな」
????「ああ、すまない」
握手を交わし、来客を見送る左高。
右の速右「アイツ…なんて握力だ」
左の左高「危うく砕かれるところだったぜ」
右の速右「もしかすると、もしかするかもな」
左の左高「きっと、アイツが今回の鍵になる」
==新参陣営総本部==
??「頼もうッ!!俺の名は蝦夷威もとじ!!この度、新参陣営に加えていただきたく参上つかまつった!
パワーには自信がある、上級生を引き千切るぐらいは出来るだろう!!」
大魂「…!!!」
寅貝「大魂くん…彼男だよね?男で合ってるよね…!?」
大魂「いや…希望崎において先入観でものを見るのは危険だ!もとじくんといったか。君は、おとk 鶴崎「す、好きですっ!!」
大根「」
鶴崎「素敵な粗チンなんですね…!一目惚れしちゃいました…。なんていうか、凄く可愛くって。
早漏なところも心くすぐられちゃうっていうか、やだ、私何言ってんだろ、あの、その」
大魂「…うむ、大丈夫なようだな。一途が股間に話しかけている」
寅貝「…ズボン越しにボロクソ言ってますけど」
大魂「彼女に言わせるなら肉体はちんこから分化したものなので、体格とか顔つきを見ればちんこまで把握出来るそうだぞ」
寅貝「可哀想なもとじくん…あ、やだひん剥かれてる」
大魂「うむ…粗チンだな…」
この後、もとじはみれんを見て大騒ぎする事になるのだが、それはまた別のお話。
誰かが書いたり、書かなかったりすることだろう…!
無題12
名前:あやまだ(アッシーナ)
性別:両精(両性)
武器:エロス
FS名:嬌声
能力名:羞恥プレイ
効果:精神攻撃による即死
対象:半径3マス全員 敵味方無差別
時間:一瞬(単発効果)
制約:自分死亡
:最終ターンにしか使えない 0.65
:行動提出の際、一番最後の行動でなくてはいけない 1.00
:同マスに自分を含む味方三人の場合のみ発動可能 1.00
FS0 発動率54% 成功率0%
発動原理
あらゆる性技を弄ぶ彼は、自分の恥部をさらけ出すことによって周囲の人間を狂死(笑い死)にさせることができる。
その羞恥プレイに荷担した仲間二人も死ぬ事がある。
他人からの嘲笑(レイプ)経験は絶無なので、処女の如く恥ずかしがって死ぬ。
キャラ説明
ダンゲロス三大変態の内の一人(あやまだ・かがみ・たびびと)。
普段は健全(エロス)な性交好青年(触手レイパー)。
しかしそれは世を忍ぶ仮の姿。
「あやまだ」は偽名で、本当の姿は美少女の「アッシーナ」。
それはあやまだの妄想ではなく、肖像画が稲枝によって描かれており、存在が証明されている
本人に「これはあなたですか?」と訊くと、喜んで頷いたため確認が取れた。
アッシーナについて『埴井葦菜の憂鬱』を初めとしたノベル化・ドラマCD化・アニメ化・フィギュア化・テキストサイト化・コミック化・ドラマ化・映画化がされた。
電話中のお色気シーン、「ひゃぁー、ちょっとだめです、いま電話中なのに……ひゃぁあー(裏声)」や
別れ際の挨拶、「じゃあね、アッシーナ」などは、一時、社会的ブームメントとなった。
現在は実現不可と思われていた「本人」による続編のサウンド・ノベル化が始まっており、前篇・中篇・後篇と分けて公開されている予定。
だが、本人は乗り気でないし、男の方のあやまだ(アッシーナ)には興味がない者がほとんど。(なんと、前篇の見物客は推定2名)
この芸術的作品が完成することはないと思われている――ひとりの男を除いては。
名前:稲枝(いなえ)
性別:無性
武器:Photoshop と SAI
FS名:画力
能力名:ヘブンズドアー
効果:自分の応援イラストが常に10点になる
対象:ルール
時間:永続
制約
:他人の応援SSが0点になる
:応援SSの得点が0点になる
FS20 GK判断 発動率100% 成功率100%
能力原理
頭をパソコンの画面に溶け込ませ、脳内で描いた心象を一瞬で移すことができる。
そのイラストはまさに魔人的で、見る者を圧倒する。10点満点で評価されても不思議と思えない。
しかしその素晴らしさが災いし、他の仲間のイラストやSSがかすんでしまう。
キャラ説明
右手にはPhotoshop……左手にはSAI……その名も稲枝。
常人の二倍の速度で絵を描き、常人の一億万倍の巧さで描くが、これ以上を求めた際に魔人化した。
第八次ダンゲロス・ハルマゲドンでイラスト点・20点を貰った事があるため、以前から魔人だったのではと疑われている。
名前:刃葉破(ははは)
性別:男性
武器:たまにブラックアウトするPC
FS名:説得力
能力名:偽神の書(ゴドーワード)
効果①:対象の行動提出の移動を点対称に変える
効果②:意味のないバステ「お墨付き」付与
対象:周囲1マス1体
時間:2ターン
制約:能力成功時にサイコロをもう一度振り、8の倍数の場合は効果①が発動しない。
補足:シークレット
FS8 発動率88% 成功率88%
能力説明
対象の移動 D4→C3 を D4→E5 に変更する。
効果が発動した(移動した)瞬間にシークレット解除。
8の倍数は12個ある。二回目の成功率は100-12……つまり88%
能力原理
言葉・文章が「相手の望んでいるもの」のように感じさせる能力。
相手が批判を求めている時は「~~の方がいい」「~~には反対」
相手が同意を求めている時は「~~の方がいい」「~~に賛成」と聞こえる。
所詮コミュニケーションは完全に伝わらない、と諦観しているから、どんな相手にも、彼の言葉は理解されないし、誤解も出来ない。
キャラ説明
自分の名が読みにくい(変換しにくい)ことから、はははと平仮名で名乗る青年。
しかし、早口言葉にもある「はははははは、はははははがはがれた(母は刃葉破、刃葉破は歯が剥れた)」など、逆に読みにくくなる時もある。
そのためか、作戦会議でも発言が理解されにくく、少数派となる事が多い。
笑い方は「ははははははは(ハハハハハハ)」。ヤケクソになった時は「ヒャッハハハー!」。
本名は刃・葉破。「ヤバい!ヒャッハーッ!」と、爆発するように読むのが正式。
他人との話が通じにくくなって「もっと聡明叡智だったらっ!」と思った瞬間に魔人化した。
しかし、分かりやすくても受けいられないときもある。
一説では「ブロント語」「みさくら語」「ルー大柴語」「プログラミング言語」「東北弁」で喋っているように聞こえる。
名前:ミスターK
性別:男性
武器:サブGKの権力
FS名:安価GET力
能力名:SS朗読する気はある。マジで。
効果①:永続戦線離脱
対象:全MAP1人
効果②:意味のないバステ「怨み」
対象:同マス
時間:一瞬(単発効果)
制約:精神-5
FS14 発動率102% 成功率100%
発動原理
自らSS朗読を買って出て、長くて読みづらくて面白味のないSSを読む状況にする。
しかし、そんな恥ずかしいことはしたくないので、読む役割を他人に移し替える。
その結果、SSを読まされた相手は恥ずかしくて出ていく。
SSを読む流れは止まらないので結果的に彼もSSを読むが、最初の苦しみに比べればちょっと恥ずかしい程度(笑)
対象はやり場のない怒りに襲われ、SSを書いた者を怨み、軽蔑する。
キャラ説明
サブGK。
自ら苦労を買って出る強者――を目指しているが、本当に苦しいことは別の人に押し付ける。
「若い内の苦労は買ってでもやれ」「楽は苦の種、苦は楽の種」を座右の銘にしており、それを他人にも強要する。
名前:ももじ
性別:男
武器:幼女
FS名:強権
能力名:強制SS朗読
効果①:精神3ダメージ
効果②:精神攻撃による即死 能力休みなし
対象:全MAP味方全員
時間:5分くらい(実際はもっと長い)
制約:会議時間延長
:自分より発言力の低い相手にしか効かない
範囲補正:味方のみ対象
FS20 GK独断 発動率80% 成功率0%
発動原理
ごり押しによって強制的に味方にSSを朗読させる。
通常不可能と思われている「長くて読めないブロント語のSS」や「本人のSS」でさえも読ませることができる。
面白いか面白くないかは関係なく、自分さえ楽しめればいい。
実は隠れて録音している。
キャラ説明
元・期待のルーキー。
ジュースを飲んだときに娘から「絶対に許さない!」と言われて理不尽な思いをした瞬間に魔人として覚醒した。
横暴を好み、他人の嫌がる事を喜んで行う。
本気で嫌がっていても「それ、ダチョウ倶楽部の『押すな押すな』だよね?」「朗読しないと会議始まりませんよー」と言って強制させる。
で、解放した後に「ぼくだったら死ぬなー」と言って絶望に圧し込み、自殺を促す。
最近はマンチキャラを送ってGKを困らせたり、他人の恥部を強制的に公開させるなどをして楽しんでいる。
1号生陣営視点開幕SS
夢追中の発刊した学園新聞が出回ったのは、事が起こった翌日。
曰く―――『山乃端一人、暗殺される!』
その、衝撃的な見出し。
現在一触即発の1号生と3号生の仲介をしていた彼女の暗殺は、イコール、大規模な抗争の発生を意味していた。
そうでなくとも皆に慕われる山乃端である。彼女の暗殺に怒りを燃やすものも多いのだ。
「ッ―――!決まってる!山乃端さんを暗殺したのは三号生の誰かだ!」
その一人、怒りに駆られた弐之宮晶が、根拠無き己の自説をぶちまける。
否、根拠こそ無いが状況証拠は十分といえた。なぜなら。
「この抗争、元より我々が望んだものでは無いからな」
審刃津志武那が首肯で応えた。彼の目にも、暗い怒りの炎が灯っている。
そう、元はと言えばこの抗争。1号生である夢岸徹が、伝統ある魔人学園希望ヶ崎の生徒会長を勤めていることを気に入らぬ3号生がしかけたものである。
故に下手人は3号生の誰か。そうに決まっている。そう1号生ならば誰もが思うであろう。
「許さん―――」「あぁ――――」
そう、この二人は。1号生の中でも特に“法”を重んじる、言うなれば過激派であった。
/
次の日より、二人は3号生を対象とした襲撃、尋問を始めた。
校舎の裏、孤立させた3号生を対象に、審刃津志武那が問う。
「“YES”“NO”で答えろ―――貴様は山乃端一人を殺した人物か」
武闘派魔人二人に凄まれた3号生は、しかし後輩相手への見栄だろうか、睨み返した首を縦に振った。
「YES―――ならば貴様の意思が真実か否か―――俺が、裁こう」
彼の手に持つ天秤が、怪しく揺らめく。審刃津志武那が、魔人能力『最後の審判』を発動する!
真実と偽りの概念を乗せた天秤が、傾く――――
一瞬の静寂。次の瞬間、名も分からぬ3号生は、静かに事切れていた。
審刃津志武那の能力『最後の審判』。相手に二者択一を迫り、外したものを殺すという論理能力。
彼の思う理不尽な裁きの具現であるその能力は、かつての伝説的生徒会長であるド正義卓也を彷彿とさせるものだった。
「ふん、こいつも外れか。まぁいいさ、ゴミが一人片付いた」
「そうだな。とりあえず足が付く前にここを離れるとしようか」
二人が動こうとした次の瞬間。ガタッ、物音……同時に駆け出す音。見られた、そして逃げられた!
「ちいっ、見られたか!」
気付くと同時に、弐之宮晶が駆ける。弐之宮はあっという間に逃げた人物に追いつき、絡め取るように相手の頭に触れた。
―――能力、発動。『THE JUDGE』。
「ギャアアアアアアア!?」
逃げた人物は苦痛に悶え苦しみ、のた打ち回る。まるで陸に揚げられた新鮮な魚のように跳ね、逃れようとし、口をパクパクさせる。
彼を襲うのは壮絶な痛み、苦しみ。
『THE JUDGE』――――対象の痛覚神経を直接刺激する能力。
永劫の苦しみを味わうであろうその能力は、まさに死よりも恐ろしいと形容されるに相応しい。
「ッチ、面倒かけさせやがって」
しかし、そんな悶え苦しむ三号生を目にし、なお嘲笑するかのような笑みすら浮かべ、弐之宮は告げる。
「まァ、あんな光景見ちまったんだ―――死ぬしかないよな?」
止めを刺そうと弐之宮が手を伸ばした、瞬間だった。
「それには及ばん、何をしとるんじゃワレ」
「3号生狩りとはいい度胸してるじゃねーか」
―――3号生!それも二人。しまった、時間をかけすぎたか……!
「どうやら……3号生、それも魔人のようだね?」
後ろから追いついた審刃津志武那が声をかける。助かった。
相手は二人、こちらも二人。状況は一見五分。
しかし1号生二人は直前に能力を発動したばかり―――集中力を要する魔人能力は、乱発することが非常に難しいのだ。
3号生二人が気付いているか否かはともかくとして、二人は今窮地に立たされているのだ。
「ワシの学友に、何しとんじゃワレら?」
「ふん、お前らが元はと言えば山乃端さんを殺したのが悪いんだろうが!」
「元はと言えば1年が生意気だったのが原因だろ!?生徒会長の座は代々3年のもんだ」
「合理的ではないな―――ふん」
言葉での、けん制の試合。じりじりと肌を焼く、緊張感。魔人同士の戦闘は、一瞬の刺し合いで決まるのだ。
(ちっ、状況は良くない、一端引くか?)
一瞬の逡巡。しかし、次の瞬間さらに状況は大きく変わる。
―――――ヒュー ドォン……
2対2、一触即発の雰囲気の、その中央に。突如、人が振ってきたのだ!
本日三度目の闖入者。それも、ド派手な。あっけに取られる全員の耳に、雷鳴のような大声が響く!
「ワシは希望ヶ崎学園長、江田島平八郎忠勝である!」
「話は聞かせてもらった。この勝負、この江田島平八郎忠勝が預かろう」
「希望崎に伝わる伝統の決闘法、覇竜魔牙曇(ハルマゲドン)によって見事決着を付けてみせいッッッ!!」
…………
言いたいことだけ言い残し、すたすたと歩き去る希望ヶ崎学園長、江田島平八郎忠勝。
しばしの沈黙。先に口を開いたのは弐之宮晶だった。
「―――興が削がれたぜ。ロートルども、首を洗って待っていろ」
「ワレこそ、3号生をなめとること、後悔させてやろう」
ここに、学園史上類を見ない、上級生と下級生の血で血を洗う仁義なき戦いが今、始まった―――!!
無題13
私、梨咲みれんは憂鬱です。なぜなら…
すかっ「………」
すかっ「………」
すかっ「………」
「 …ねえ」「ん?」すかっ
「私を挟んでフライングディスク投げないで しかも頭」
「その貫通マジックのタネ教えてくれるか 俺が理解できたらね」
と、蝦夷威君が幽霊の私を認めてくれないことにあります。
さらに、
「 …何か?」「お前じゃなきゃダメなんだ!」「だからって無理よ!///」
女子トイレに入って来るし。
「きゃっ!?」「服には触れるしょや」「スカートを捲る必要はないじゃない!///」
パンツまで脱がそうとするし。
「ちょっ!?」「3本はおちんちんくるんだべ?」「私は処女よ!///」
髪の匂いを嗅いでくるし。
「ひゃっ!?」「感覚あんじゃん 吸うし」「とっ 録らないでぇ///」
水鉄砲で透けた姿をエロい目で見るし、ブラのホック外すし。
「キャアァ!?」「触れるじゃねぇか!」「揉まないでよ!///」
パイタッチダッシュをかますし。小学生かよ
「でも俺本物のおっぱい触ったことねェし!!!」
って、逃げながら逆ギレしてるし。もう、わけわかんない。
もはや幽霊検証ではなく、ただのセクハラ。
普段はフライングディスクの色々な軌道や技の研究に励んでいるだけなのに…
「はぁ… 蝦夷威君だけは死んでほしいな… マジで」
なんて言った直後、フライングディスクがUターンして、
キャッチした蝦夷威君の腕ごと首が飛んじゃった!!
( ;゚Д゚) ぷぎゃあぁ!!!
「ごめんなさぃ! 私が変な事言ったばっかりに!」
と、駆け寄ったそこには、私と同じ幽霊になった蝦夷威君がいた。
(これが蝦夷威君の能りょ…
「っぶねぇ! マジビビったし! これ九死に一生だべ!?」
「死んでるよぉ~(泣)」
『ユメとサ』
新参陣営総合本部では今日も作戦会議という名のお茶会が開かれていた。
広い教室の中、雑多に並べたパイプ椅子におもいおもい新参達は腰かけ、
――教室の隅で黙々と本を読む虚居まほろと、その対角線上の隅で忙しなく目線を動かしながらMPを吸い取りそうな手の動きを見せている巨堂斧震以外――
皆が皆談笑している。
そんな教室の中央付近では3人の男女、
己木樹来貴生と審刃津志武那、夢追中が今日も夢追の名前について語り合っている。
「ねえ!夢追さんって自分の名前を自分で考えたからには当然名前の由来があるんでしょ?」
「ええ、もちろんありますよ。お二方がよろしければお聞かせしましょうか?」
「ふむ、興味深い。聞かせてもらおうか」
「聞きたい!特に夢を追うって書くのになんでユメオイって読まないのかとか!」
二人の反応を見た夢追は椅子から立ち上がり、オホンとひとつ咳払いをして、自分の名前について語り始めた。
「まず、苗字の『夢追』ですが、漢字のほうはそのまま、私の夢を追いかける心を表しています。
そして読みがユメオイでなくユメサコなのは、こちらが追いかけるだけでは相手に逃げられてしまったときに困るからです。
つまりユメ・サ・コと分かれていて、コは『来い』という夢への呼びかけを表しています」
夢追が一気呵成に語りきった『夢追』の由来を聞き、ほー、とため息をもらす2人。
「なるほど。漢字と読みでのダブルミーニングというわけか」
「色々考えてるんだねー。でもさ、夢さ来い!って、なんか過疎化の進んだ村の村おこしで聞きそうな響きだね」
「あー……いえいえ、『サ』は助詞ではなく名詞です。『夢よ来い!サよ来い!』って意味ですよ」
「……サ?名詞と言われても聞き覚えがないが……?」
聞きなれない言葉に困惑する二人を見た夢追は、さもありなんと頷き、話を続けた。
「『サ』というのは田んぼの神様とも山の神様とも言われたりしますが……
まあ、要するに古くから日本にいる神様のようなものです。
収穫や豊穣の神格化、そこから派生して良い事・不思議な事全般の神格化とでもイメージしてください。
ほら、お二人も海の幸、山の幸なんて言うでしょう。あの『サチ』の『サ』ですよ。
『サ』が千も集まる……つまり『サ』が沢山ある状態、それが幸というわけです。
あと幸いなんかも『サ』の祝い、で、サイワイというわけです。
……なんて言い切っちゃいましたけど、あくまで一説に過ぎないですが。
とにかく、夢とか、そういう素敵なこととかがいっぱい来てほしいという私の祈りが篭った苗字、それが『夢追』です」
「へー。サチとかサイワイとか語源なんて気にしたこと無かったなー」
「民俗学や宗教学……あるいは社会学かな?そういったことを学ぶのも面白そうだな」
「えへへ」
「じゃあさ、名前の『中』って書いてカナメって読むのはどんな理由?」
「はい、名前のほうは至極シンプルに、苗字が表すような凄い事の真ん中に自分が居たいという気持ちの現れです」
「漢字に『中』を選んだ理由もあるんだろう?カナメと言ったらこうやって、こう……こう書く『要』と書きそうなものだからな」
「『要』だと自分中心の不思議にしか出会えなそうじゃないですか。『中』なら自分と関係ない不思議でもその場にいれば上手く巻き込まれることに成功しそうかなーと」
「巻き込まれるのに成功って……夢追さんらしいね」
「あと夢という漢字には中の方が相性良さそうですし。夢を追うのに無我夢中!なんて」
「道に迷って五里霧中……と」
「茶化さないでくださいよぅ」
「ああ、すまんな。かなめ嬢」
「あはは」
今日も新参陣営は平和です。
埴井葦菜と愉快な仲間たち①「埴井葦菜の溜息」
「はあああ……」
私立希望崎学園が誇る憩いの場所・噴水広場にて、ベンチに腰掛け深い溜息をつく一人の少女。
彼女の名は埴井葦菜。蜂を操る魔人であり、今行われている覇竜魔牙曇(ハルマゲドン)に参戦している不届きな一年生である。
“ある人物”よりも目立ってやるために三年生との抗争に加担した彼女だったが、どうにも捗っていないようであった。
「なんか……あたし、キャラ薄くない?」
どんよりと濁った眼で問う葦菜に対し、否定の言葉を発しないパートナーたるアシナガバチ達。
いや、発しないと言うよりも、発せないのだ。
だって、その通りなんだもん。
「挨拶だけしてどっか行っちゃう妖怪とか! 動いて喋る大根とか! 頭が触手になってる子とか!」
葦菜が長く美しい髪を振り乱しながら叫んでいるのは、一年生陣営に所属する仲間の魔人達のことである。
「おはよう」の言葉を残してすれ違ってゆく挨拶の妖怪ことおは妖怪、多数の武勇伝を持ちブリ大根で魅了するナイスガイ・大魂、クトゥルフちっくな復讐少女・諸語須川てけり――
いずれも圧倒的な個性の強さを誇る者たちである。彼らと比較しては、さしもの葦菜も溜息をつかざるを得ない。
「もォー、みんなキャラ濃すぎっ!」
「誰がケインやねんっ!」パシィン!
突然のツッコミに、葦菜はしばし茫然自失していた。
やがて機械の如くぎこちなく首を回して振り返ると、そこには刃離戦(ハリセン)を片手にドヤ顔で仁王立ちする少女がいた。
葦菜と同じ一年生陣営に所属する関西系ツッコミ魔人・朱音多々喜である。
「……」
「誰がPerfectやねん!」パシィン!
「……はあああ」
「なんや、ノリ悪いなあ、ジブン。変なモンでも食うたか?」
ひと際大きな溜息をつく葦菜を訝しむ朱音は、ベンチの隣に腰掛け、心配そうに顔を覗きこんでくる。
思えば、最初の顔合わせの時もノリ良く絡んできたっけ……朱音の不思議な親しみやすさに、葦菜は呟く。
「あんたから見て、うちの陣営の連中、どう?」
「ツッコミ甲斐のあるヤツばっかおるで、ウチもォ引っ張りダコや!!」
「よね……はあああ……」
さらに落ち込んでしまう葦菜。
その様子を見て、ピキーン! と電球を光らせ朱音は理解した。
「(せや、このコ、自己紹介で目立つ云々言うとったな……なるほどなあ。ほんなら、ウチにお任せや!)」
にんまりと笑い、朱音は葦菜の肩に手を回し語りかける。
「せやけど、ウチな……アッシーナが一番や思うで」
「えっ……!?」
「ほんまやで。関西人は嘘は言わへん!」
驚く葦菜を、朱音は真剣な眼差しで見つめる。
そして、言葉を続ける。
「初めに会うた時から思っとった……コイツとなら天下が取れる、ってな!
思いだしてみい! 自己紹介の時、ウチは芸のラストを飾る重要なオチ担当に、他ならぬジブンを選んだんや。
ジブンのボケにウチがツッコむ! ジブンが主役でウチが引き立てたる! なあ、一緒に頂点目指そうや……!」
「朱音……!」
「タッキーでええよ……!」
キラキラとした青春のエフェクトが二人を包む。
葦菜は友達を渾名で呼ぶことへの羞恥に若干の躊躇いを見せるが、やがて、おずおずとその口を開く。
「た、タッk――」
「タッキー! 探したじゃない!」
背後から響いた声で、葦菜の勇気を振り絞った一言はかき消された。
声の主は、この戦いには何の関係もないモブ少女であった。
少女をキッと睨みつけようと振り返った葦菜の目に飛び込んできた光景は、さらに想像を絶するもの――!
「ちょっと、タッキー! 私とコンビ組んでくれるって言ってたでしょ! ネタ合わせしよっ!」
「おい朱音! うまいタコヤキの焼き方を教えてくれる話はどうなったんだ!?」
「多々喜ちゃん! この前貸してくれたお笑いのDVD、面白かったよお~!」
わらわらと押し寄せてくる、朱音の友人と思しき多数の生徒達。
当の朱音は「わはは、どないしょう」などと頭をポリポリ掻いている。
そんな状況で、葦菜の嫉妬が爆発した。
「主役のあたしを食ってんじゃねえええええええええええええええ!!」
「ナイスツッコミや! やっぱウチが見込んだ女やで!」
「うるせえええええええええええ! なにが引き立てるだああああ!? くたばれペテン野郎おおおおおおおおおおおおお!!」
葦菜の叫びが青空にこだまする。
とにもかくにも、こうして埴井葦菜の溜息は止んだのだった。
「そういや、なんであないにテンション低かったん?」
「べ、別になんででもいいでしょ?」
「ああ、なんや、生r――」
「言わせねえよ!?」 <終>
埴井葦菜と愉快な仲間たち②「埴井葦菜の退屈」
「皆さんは、この戦いが終わったらどうするんですか?」
ある昼下がりの一年生陣営・拠点にて。
報道部所属の魔人・夢迫中が目をキラキラさせて問いかけた。
拠点に集り退屈そうにしていた数人の男女が、きょとんとして見返す。
「終わったら、って、生き残ったら、ってコト?」
「そうです! 皆さんは自分の能力を活かしてどんなコトをするのでしょう、って!」
なるほど、と一同は得心がいった。
この夢迫中という少女は、魔人能力フェチとでも言うべき程に魔人能力の可能性を信じている。
戦闘における性能だけでなく、社会生活においての運用にも興味を持つのは当然と言えるだろう。
「私は、そうですね、実家の方を――能力に関係なくてすみませんけど」
些か申し訳なさそうに答えるのは、弐之宮財閥の若き頭首・弐之宮晶である。
中学二年生の時に頭首となった彼は、これまでも財閥を率いて邁進してきた。
いつまでも経営から離れてはいられないという真面目さは、完璧超人たる彼女らしいと言えた。
「僕は将来『公平な裁き』を与えられる職に就きたいからね、そのタメの勉強に励むよ」
高1にしてしっかりとした将来設計を口にするのは、裁き魔人・審刃津志武那である。
彼は過去の壮絶な経験から、公平な裁きを目指し裁判官や政治家等の職を志望しているのだ。
能力とは関係ないが、彼の成績ならきっと叶えられるだろう――夢迫はそう思った。
「私は、完成するであろう『究極の寿司』の研究を進め、量産化を目指したいと思います」
にこやかに断言するのは、寿司職人魔人・稲荷山和理である。
彼女が今回の戦いに参加した目的である『究極の寿司』は、他者の魂を以って完成される。
毎回魂を奪っていては問題もあろう――より易しく生産できるよう努めるのは、流石老舗寿司屋の跡取り娘と言えよう。
「あたしは福祉関係の仕事に就きたいなあ。弱きを助け、強きを挫くの!」
そう、うっとりと語るのは、勧善懲悪魔人・己木樹来貴生である。
彼女は普段は大人しいが、弱者を守るためならどんな敵にも薙刀を振るい立ち向かう熱血少女なのだ。
福祉の名の下に強者に鉄槌を下す彼女の成功を、誰もが祈っていた。
将来の固まっている四人の回答を余さずメモした夢迫は、その場にいる“もう一人”に水を向けた。
「埴井さんは、どうなさるおつもりでしょうか?」
「っ!」
必死に気配を隠していたつもりだったが、どうやら夢迫のアンテナを誤魔化すことはできなかったようだ。
最後に残ったのは、蜂を操る嫉妬魔人・埴井葦菜。
彼女にも将来のビジョンは確かに存在した――ただし、それはとても言い難かったが。
「あたしは……今まで通り、修行の日々に戻る……かな」
「修行? 蜂使いのですか?」
能力に結び付いた将来を口にする葦菜に対し、明らかに嬉しそうな反応を見せる夢迫。
そのままのテンションで、微妙な表情の葦菜へ質問を続ける。
「蜂使いの鍛錬を積み、それでどうするんですか?」
「……よ」
「え、ごめんなさい、もっと大きな声で――」
「こ、殺し屋……よ」
短いながらも衝撃的な返答が教室に響き渡る。
さっきまで俄然前のめりだった夢迫を含め、全員が口をつぐんだ。
水を打ったように静まり返った教室で、葦菜は語り続ける。
「あたしんち……蜂を操る技術を学んで、それで人を殺すんだ……」
「それは、決定……なんですか?」
「例外もいるけど、まあ、大体は」
普通、魔人であれば、他者の生死など無頓着な者が多いものである。
事実、弐之宮や稲荷山などは、積極的に他者に加害する意思を持っている。
そんな彼らも葦菜には同情の眼差しを向けていた――それは、彼女が人殺しを厭っていたからだ。
そう、埴井葦菜は、埴井家のしきたりに従って殺しの技術を学んできただけであり、本当はそんなことしたいわけではなかったのだ。
一年生陣営でもトップクラスの攻撃力も、日々の鍛錬により身についてしまっただけ……望んで手に入れたものではない。
彼女は殺し屋へのレールが敷かれた人生を殊更恨んでいるわけでもなかったが、こんな風に、他人の希望に満ちた未来予想図を見せ付けられると――
「何よ、何よ……よってたかって将来の夢なんか語っちゃってさ…! あてつけ!? あたしへの嫌がらせのつもりなの!?」
まあ、大いに嫉妬してしまうのだ。
葦菜の中で、深緑の焔がメラメラと燃え上がる。
その光景を頭ではなく心で理解した夢迫は、慌てて弁解を試みるが――
「お、落ち着いてください埴井さん! 私達は別にそんなつもりじゃ――」
「うるさいうるさいうるさいっ! あんたたちにそのつもりはなくても、あたしは妬ましく思ったわ! あーあーあーあー妬ましいっ! このままじゃ妬ま死しちゃいそうよ!」
勝手なことを喚きながら、葦菜は濁りきった目でチームメイトたちを一瞥する。
そして、にたりと嗤いながら、机の上のキャリーケースを持ち上げ、その扉の留め金に手をかける。
「そうよ……あたしが死んじゃうくらいなら、みんなが死ねば――」
「「 !? 」」
さっきまで人殺しを嫌がっていた少女はどこへ行ったのか、今の葦菜は完全なる殺人鬼の顔をしていた。
スイッチが入った途端、可憐な少女から残虐なる殺人鬼へと転ず――腐っても魔人ということであろう。
嫉妬に狂いし蜂使いにより、留め金が勢いよくはずされ――
「でも、私は向いてると思うな、殺し屋♪」
――かけたが、その手をぎゅっと握り締め、優しく言葉をかける存在がいた。
きつね色の髪をおかっぱにしたその少女の名は、寅貝きつね。
旺盛なコミュ力を操る人類皆友達魔人である。
「葦菜ちゃん、綺麗だし、強いし、きっと大丈夫! うまくやっていけるはずだよ! “友達”の私のお墨付きっ!」
「え……ホント?」
寅貝の圧倒的コミュ力から形成されるコミュ力オーラが、葦菜の嫉妬心を解きほぐしてゆく。
溢れ出るコミュ力に包まれ、頬を染めて手を握り合う二人。
周囲の人間がホッとしながら微妙にアブない雰囲気を醸し出す二人をみている中で、やがて、葦菜は懐からお財布をとり出し――
「これ、今月の友達料……!」
英世を渡すのであった。
こうして、埴井葦菜の退屈はまぎれた。 ちゃんちゃん。 <終>
最終更新:2011年06月18日 13:40