新参陣営最終応援ボーナス:229点



無題10

名前:大塚零(オツカレー)
性別:男性
武器:身ひとつ
FS名:GK経験
能力名:凄まじい行動力
効果:移動2アップ
対象:自分自身
時間:1ターン(効果遅延)
制約:なし
FS10 発動率120% 成功率100%

能力原理
「カレーは一晩寝かした方が上手い」の文献通り、足を休めると爆発的に動きが速くなる。

キャラ説明
『オツカレー』
 架空の英雄。
 数々の逸話が、同時期に、世界各地で残っている。共通していることは、「シンザン」から産まれと、凄まじい行動力を持っていること。(「シンザン」とは親なのか土地なのか身分なのかは結論が出ていない)
 例えば、出生の際に子宮からではなく右脇から生まれたて、七歩歩いて右手で天を指し、左手で地をさして「天上天下唯我独尊」と告げたと言われ、
 例えば、47000の兵を率いて数多の国を占領して「オツカレー帝国」を築き、
 例えば、伝説的迷宮である「エッシャーの滝」を踏破し、「遥かなるガダス」を見学したとも伝えられる。
 寓話による伝説と言われていたが、それらの史料が同時代なことや、実際にその影響があることも認められている。
 「お疲れ様」は、かつての人々が彼に対して最大の敬意を払っていた証明とする民俗学者もいるが、現在、少数派である。
 ――最近では、オツカレーの末裔と自称する「大塚零」が現れ、数々の異業を成している。
『大塚零』
 伝説的英雄であるオツカレーの直系の子孫(自称)。
 彼もまた凄まじい行動力・実行力を持ち、「新参」ながらメインGKという快挙を成し遂げた。
 彼が英雄の生まれ変わりだと信じる者は、敬意を込めて「オツカレー様」と呼ぶ。



名前:かりあげ
性別:男性
武器:灰色の脳細胞
FS名:PC貼り付き時間
能力名:B4からB2に移動したときに敵のアタッカーが隣接1マスに居る場合は作戦スレ>>425の6ターン目「相手が引き籠った場合」の作戦②が結果的に使えてDP差1で逆転が発生するので残り2ターンは精神攻撃で内ゲバすると勝てます。しかしこの時、前ターンに向こうが狙い撃ちコンボをしているのが前提になっています。もししていない場合は作戦③が使えますが、この時に転校生がE4→D4→C4→C3の移動をしていた場合は途中のZocに影響を受けていないのでここまで、そうならないようにするために精神攻撃を前進させていると結局作戦①の結果となって負けるので、ここは消極的な賭けとしてなにも行動しないほうがいいと思います。←ダメだった。
効果:思考時間30分延長
対象:ルール
時間:一瞬(単発)
制約:能力効果発動は陣営掲示板に書き込みできない
FS20 発動率67% 成功率100%

発動原理
 かりあげの理解不能な発言に慣れたメンバーは、理解力が発達し、コミュニケーション能力が高まる。
 そのため、彼が抜ければ超知能集団の塊と化し、思考時間が短いと思わなくなる。

キャラ説明
 一見して理解不能な作戦を提案し(二見しても理解不能)、周囲の味方に困惑を与える。
 1キャラをB3に動かすかB4に動かすかで、思考開始前後の30分以上揉めさせた話は『霧咲きりり・過千あずれ移動事件』はあまりにも有名(通称:ももじさんブーメラン)。
 最近はテキストMAPを使い始めため、少しはマシになった。
「オレはテキストMAPに感謝している。テキストMAPがなければ勝手に『修正案です』と言って提出していたから…」
 ブロンティストとして活躍するもSSは酷評を受ける。一級ブロンティストであるオツカレーの琴線に触れて、絶対に許さないとまで言われた。



名前:刃葉破(ははは)
性別:男性
武器:たまにブラックアウトするPC
FS名:説得力
能力名:偽神の書(ゴドーワード)
効果①:対象の行動提出の移動を点対称に変える
効果②:意味のないバステ「お墨付き」付与
対象:周囲1マス1体
時間:2ターン
制約:能力成功時にサイコロをもう一度振り、8の倍数の場合は効果①が発動しない。
補足:シークレット
FS8 発動率88% 成功率88%

能力説明
 対象の移動 D4→C3 を D4→E5 に変更する。
 効果が発動した(移動した)瞬間にシークレット解除。
 8の倍数は12個ある。二回目の成功率は100-12……つまり88%

能力原理
 言葉・文章が「相手の望んでいるもの」のように感じさせる能力。
 相手が批判を求めている時は「~~の方がいい」「~~には反対」
 相手が同意を求めている時は「~~の方がいい」「~~に賛成」と聞こえる。
 所詮コミュニケーションは完全に伝わらない、と諦観しているから、どんな相手にも、彼の言葉は理解されないし、誤解も出来ない。

キャラ説明
 自分の名が読みにくい(変換しにくい)ことから、はははと平仮名で名乗る青年。
 しかし、早口言葉にもある「はははははは、はははははがはがれた(母は刃葉破、刃葉破は歯が剥れた)」など、逆に読みにくくなる時もある。
 そのためか、作戦会議でも発言が理解されにくく、少数派となる事が多い。
 笑い方は「ははははははは(ハハハハハハ)」。ヤケクソになった時は「ヒャッハハハー!」。
 本名は刃・葉破。「ヤバい!ヒャッハーッ!」と、爆発するように読むのが正式。
 他人との話が通じにくくなって「もっと聡明叡智だったらっ!」と思った瞬間に魔人化した。
 しかし、分かりやすくても受けいられないときもある。
 一説では「ブロント語」「みさくら語」「ルー大柴語」「プログラミング言語」「東北弁」で喋っているように聞こえる。


名前:ミスターK
性別:男性
武器:サブGKの権力
FS名:安価GET力
能力名:SS朗読する気はある。マジで。
効果①:永続戦線離脱
対象:全MAP1人
効果②:意味のないバステ「怨み」
対象:同マス
時間:一瞬(単発効果)
制約:精神-5
FS14 発動率102% 成功率100%

発動原理
 自らSS朗読を買って出て、長くて読みづらくて面白味のないSSを読む状況にする。
 しかし、そんな恥ずかしいことはしたくないので、読む役割を他人に移し替える。
 その結果、SSを読まされた相手は恥ずかしくて出ていく。
 SSを読む流れは止まらないので結果的に彼もSSを読むが、最初の苦しみに比べればちょっと恥ずかしい程度(笑)
 対象はやり場のない怒りに襲われ、SSを書いた者を怨み、軽蔑する。

キャラ説明
 サブGK。
 自ら苦労を買って出る強者――を目指しているが、本当に苦しいことは別の人に押し付ける。
 「若い内の苦労は買ってでもやれ」「楽は苦の種、苦は楽の種」を座右の銘にしており、それを他人にも強要する。



名前:ももじ
性別:男
武器:幼女
FS名:強権
能力名:強制SS朗読
効果①:精神3ダメージ
効果②:精神攻撃による即死 能力休みなし
対象:全MAP味方全員
時間:5分くらい(実際はもっと長い)
制約:会議時間延長
:自分より発言力の低い相手にしか効かない
範囲補正:味方のみ対象
FS20 GK独断 発動率80% 成功率0%

発動原理
 ごり押しによって強制的に味方にSSを朗読させる。
 通常不可能と思われている「長くて読めないブロント語のSS」や「本人のSS」でさえも読ませることができる。
 面白いか面白くないかは関係なく、自分さえ楽しめればいい。
 実は隠れて録音している。

キャラ説明
 元・期待のルーキー。
 ジュースを飲んだときに娘から「絶対に許さない!」と言われて理不尽な思いをした瞬間に魔人として覚醒した。
 横暴を好み、他人の嫌がる事を喜んで行う。
 本気で嫌がっていても「それ、ダチョウ倶楽部の『押すな押すな』だよね?」「朗読しないと会議始まりませんよー」と言って強制させる。
 で、解放した後に「ぼくだったら死ぬなー」と言って絶望に圧し込み、自殺を促す。
 最近はマンチキャラを送ってGKを困らせたり、他人の恥部を強制的に公開させるなどをして楽しんでいる。


~~寅貝きつねの前進~~


それは梅雨の時期にはめずらしい、さっぱりと晴れた日のこと。
寅貝きつねは希望崎学園の新校舎屋上にて、非常に興味深い光景を見た。
その光景とは、寅貝と同じ新参陣営に属している夢追中が、親友の巨大な鷹と一緒にくつろいでいるところである。
普通の人間や魔人であれば「面白い光景だ」「珍しい光景だ」くらいの感想しか持たないであろうそれは、
しかし寅貝にとって実に意義深いものであった。

なぜならば、それは寅貝の能力を高めるヒントになるかもしれないものだからだ。

寅貝は自身の特殊能力『友達屋』により強力なコミュ力オーラを操ることができ、
その圧倒的なコミュ力によって、目視できない距離ですれ違っただけの人間とでも友達になれるという魔人である。
既に充分強力な能力ではあったが、寅貝はさらに上を目指していた。
すなわち、人間以外のあらゆる生命体と友達になりたいと望んでいるのだ。
今まさに目の前で繰り広げられている人と鷹とのコミュニケーションは、
自分の能力をワンステップ上に引き上げるきっかけになる――そう確信した寅貝は、
普段から浮かべている微笑を一層深め、2つの影の元へと歩みよった。

「やあこんにちは夢追さん。お友達と一緒のところをお邪魔するよ」
「あれ、寅貝ちゃん?こんにちはー。あ、このコは私の大親友のオウワシ。――あちらは寅貝きつねちゃん」

オウワシの羽に扇がれ涼んでいた夢追は、寅貝の挨拶を受けて居住まいを正すと、とりあえず初対面の2名の間を取り持った。
その後、気さくに話す寅貝によって初対面のギクシャクなどもなく、3名は日常の話などに花を咲かせた。

「へえ、それじゃあ夢追さんはオウワシさんのおかげで料理上手になったわけなんだ」
「そうだよー。いつもすっごい立派な獲物を持ってくるから、私も負けられないって気合入るから」
「なるほどね。そうすると……その獲物と料理が二人の間の“友情の証”なのかな?」
「あはは、そうかもしれないねー」
「いいなあ。ボクも夢追さんとオウワシさんの合作料理を食べてみたいよ」
「もちろんいいよ!――ね?――それじゃあいつがいいかな……」

夢追達と話をするうちに、寅貝は、自分の能力が新たなステージへと昇っていくのを感じていた。
これまで自分は多くの友人から友情の証として毎月の友達代を貰ってきた。
しかし、人間以外の犬や猫などから友情の証を貰ったことは無い。
犬や猫はお金を使うことが無いのだから、それは当然のことだと寅貝は認識していた。
だが、人間以外でも友情の証を渡しあうことができる、目の前の2名がそう教えてくれた。
人間には人間の、鷹には鷹の、様々な生命体には様々な生命体の“友情の証”がある。
そう寅貝は自分の認識を新たにした。

「それじゃあ寅貝ちゃん!今度から一ヶ月に1回、鍋パーティやるなんてどうかな?」
「鍋パーティか。いいね」
「毎月1回、オウワシが獲物を獲って、それを私が料理して、寅貝ちゃんにとびっきりの料理を振舞ってあげるよ!」
「それは楽しみだなあ」
「私とオウワシから寅貝ちゃんへの“友情の証”……なんてね?えへへ」

ところどころ白い雲が浮かぶ青空の下、穏やかな風が屋上にいる3名を優しく撫でる。
そんな梅雨晴れの今日この日、寅貝きつねは全宇宙の生命体と友達になる果てしない夢へ向けた、確かな前進の一歩を踏み出した。


『武論斗さんの恋愛相談』


武論斗「黄金の鉄の塊で出来ているナイトに恋愛相談だと?」
一一「はい、実は最近少し気になる子がいて……」
武論斗「相当の苦汗の選択だったろうよ 」
一一「人に話すか悩んだんですけど、武論斗さんなら経験豊富なんじゃないかと思って」
武論斗「それほどでもない」
一一「いえ、心強いです」
武論斗「俺を強いと感じてしまってるやつは本能的に長寿タイプ」
一一「それでですね、どうすれば気になる人に振り向いてもらえるのかな、って」
武論斗「おれは光属性のリアルモンク属性だから一目置かれる存在もてる秘訣はここにあるのかも(謙虚)」
一一「僕もナイトになればもてますか?」
武論斗「もてる為にナイトするのは馬鹿真のナイトは思わずナイトをしてしまってる真のナイトだからもててるのだという事実」
一一「す、すみません……じゃあ、思い切ってアタックしてみるとか?」
武論斗「どちかというと大反対だな女に無免疫の浅はかさは愚かしい」
一一「いや、一日10回はおっぱいダイブとかぱんつ目撃してますけど……」
武論斗「お前ハイスラでボコるわ・・」


●薬草

希望崎学園地下迷宮にて、大魂がひとり探検をしている。
自分が魂を込めて作り上げたブリ大根は迷宮に蠢くモンスター達も手懐けられるはず――
己の腕と魂と、そして共に戦った仲間達の想いが篭った料理の力を証明するための孤独な挑戦であった。
そんな熱い魂の漢、大魂の方へ駆けてくる人影がひとつ。
「助けてぇぇぇぇ!」
悲鳴を上げながら、服は破け、血濡れになりながら必死に走りくる希望崎学園生の姿をみとめた大魂は、
その漢気を遺憾なく発揮し、すぐに助けてやろうと、迫る学園生を迎えいれた。
「落ち着きな!何があったか俺に」
「よっしゃぁぁぁ!助かったぁぁぁ!」
大魂が台詞を言い切る前に、学園生は歓喜の雄たけびと共に大魂を掴みあげた。
「薬草ゲットォォォ!!!」
「とろっとろにとろけたブリ大根食わせるぞワレェ!」

※注 オチが分からない方は【ダンジョン&ダンゲロス】アイテム見本「薬草」を参照


●死亡フラグ

古参陣営をギッタギタにする作戦について高らかに謳い上げた朱音を前に、夢追はひとつうなずいた。
「なるほど!つまり古参対策は最早完璧であると!」
「あったりまえやん!ウチがあいつらの固くなった頭ぜーんぶド突き回したるわ!」
「頼もしいお言葉ですね!」
「ま、そもそもウチが新参陣営に居る時点でこっちの勝ちは最初から決まってるようなもんやけどな!」
「それじゃあ思い切って次の校内新聞に新参陣営の勝利宣言でもぶちあげますか?」
「おお!やったれやったれ!」
「じゃあ早速見出しを考えますか……そうだ!朱音ちゃんのキャラを前面に打ち出して……」
夢追は手に持ったメモ帳に書き付けた文面を朱音に披露した。
「『Vやねん!新参陣営』なんてどうでしょう!?」
「なにがVやねん!」スパァーン

※注 オチが分からない方は「Vやねん」でググってください。
「オチの解説すんなや!」スパァーン


●もしも夢追が7年前の剣道部に所属していたら

古くから幽霊をやっている梨咲は、希望崎学園の歴史に詳しい。
過去8度に渡って繰り広げられてきたハルマゲドンについて、報道部の夢追に語っている。
「……それでね、第三次といったらやっぱり一刀両さんは外せないね」
「ほうほう、どんな方だったんですか?」
「生徒会の凄腕女剣士にして女子剣道部部長。古風で純情な女の子で、ちょっと変わったところのある……そうそう、下着はいつも褌を愛用していたみたい」
「へぇ……女性なのに褌ですか」
人の特徴を話す際、ごく当たり前のように下着の話題が出る。これが希望崎学園である。
「いやー、是非ともお会いしてみたかったですねー」
「会ってどうするの?」
「女性で褌を愛用しているなんて珍しいじゃないですか。是非使用感とか色々聞いてみたいです」
「へ、へぇ」
「もし私がその当時の剣道部員だったら部活終わりにでも部室で褌の履き方とか心構えとか教わってみたかったなー」
(剣道部の部室で褌の履き方を教えたり教わったりしている女子高生……)
「やっぱり剣士としての矜持だったりするんでしょうかねー、それとも単純に履き心地がいいのかな?今度試してみようかな」
(夢追さんが7年前の剣道部員じゃなくて良かった……)
結論:夢追はいつの時代、どこにいても面倒ごとを引き起こす

※注 一刀両断が分からない方は『戦闘破壊学園ダンゲロス』講談社BOXより絶賛発売中!
「販促かいっ!」スパァーン


『缶ケリと青春』


 青春の汗を散らす若者たちを、香川雨曇が冷たい校舎から見下ろしている。
 彼女は「古参」と呼ばれる類ではあったが、今回のダンゲロスを回避せんとしていた。
 彼女の机の上に、みっつのタッパー。米と鮭と海苔がわかれて詰め込まれている。そして、彼女の手にはまだ他人の温もりが残っている――。
「……さぁて、やりますかね」 
 彼女の能力は『Handshake Memory』。直訳すると――手鮭目盛(シュシャケモクセイ)。「丁度両手分の大きさの鮭を吊った浪人が一鮭という単位を作り出して役人に取り立てられた寓話」から命名されているのは疑いようがない。なぜコピー能力かは不明。
 制約は大変厳しいが、他人の能力をコピーする能力なため、重宝されている。
 「手鮭目盛」を使用するためには、おむすびを握らなくてはならない。彼女は腕まくりをして、よし、と気合を入れた。
 ――そこで大きな制約が立ちはだかる。
 彼女は、なんと、(傍点)乾いた手のままでおむすびを握り始めたのだ(傍点)!
 「友達と握手した後、手を洗わず鮭おにぎりを結ぶ」
 衛生的にも、米が手につかないようにするためにも、一度手を洗っておく必要があるのに――これが彼女の能力の恐ろしい制約である。
 だが人間と言う生き物は順応能力が素晴らしく、彼女の手に乗っているおむすびは紛れもなく黄金の三角を作り出していた。
 その瞬間、彼女は握手した相手の能力が使えるようになった!
 食べる必要などなく、彼女は一目散に、獲得した力を使用した。
「『ラージギール』」 
 それで、全ての関係が再構築された。

 ――すると、どうであろうか。古参と呼ばれる三号生らは、校舎からわらわらと溢れだし、みなグラウンドに集まり、少年の如く半袖半ズボンを着ているではないか。
 もちろん、元からその場で野球をしていた新参――一号生達も一緒である。驚くべきことに、彼らもまた少年の如くズボン吊りで短パンを、スカートを留めて走り回っている。
 これが、香川雨曇――もとい、阿頼耶識そらのラージギールである。
 香川がどんな人間を、学園を、世界を望んだかは分からないが、彼女はバスケットに詰めたおむすびをブルーシートの上で広げて幸せそうな笑みを見せている。

                魁ダンゲロス・終。

 ……では、なかった。
 童心に帰って仲直りしている彼らに、友情という点では一切の曇りがなかった。
 だがそれは偽りの友情であり、偽物の情報であった。
 だから、新参だった彼が、こんな事を言い出したとしても、不思議ではない。
「あ、こんなとこにカンカンがある! 缶ケリしよー!」
 この言葉に、古参だった者たちの眼が見開かれた。だが新参たちは気付かず、無邪気な笑みを浮かべて同意している。
 古参達は恐る恐る、誰ともなしに声のする方向を振り向くと、最悪の状況がそこにあった。
 ――B.J.アキカン!
 古参らにとっては「仲間」であったとしても、新参らにとっては「どこか親しみのあるゴミ」にしか過ぎないのだ。
 アキカンが間抜けで甲高い音を立てながら茂みに飛んでいく。
 この残酷な仕打ちを見た香川雨曇は、己の過ちに気付いた。
 彼女はギネス記録鉄火巻き鮭おにぎりを正眼に構え、その新参に叩きつけた――。
「『ラージギール』!」

 唯一、新参と古参の全面戦争を喰いとめるべく紛糾していた香川。
「新参の棺桶を31用意しておけ!」
 その眼には憤怒の炎が宿っていた。
 もはや、ハルマゲドンを止めようとするものは誰もいない。


『棺桶と青春』

古参陣営から送られた31の棺桶は、新参陣営に大きな衝撃を持って迎えられた。
目の前に連なり、まるでこちらを威嚇するかのような威容を誇る棺桶の山。
それらを見て、冷静でいられる新参などいようはずもなかった。
あるものは恐れ、
あるものは慄き、
またあるものは不適に笑い闘争心を燃やす。

あるものはこの小道具でどうやって笑いをとるかに頭を悩ませ、
あるものはかつて自分もこの中に入ったことがあったと過去を偲び、
あるものは寝心地はどうなのかと棺桶の中に入り、
あるものは棺桶を背に食事を始めることで自身の覚悟を周囲に見せつけ、
あるものは怒りが有頂天になり、
あるものはギターを手に歌を歌い、
あるものは教室の隅で本を読み、
あるものは反復横跳びをした。

恐怖は誰の心にも忍び寄る。
古参の圧倒的脅威を具象化したかのごとき眼前の棺達は心弱き新参達を一飲みにした。
焦燥・恐怖・動揺……負の感情は皆に伝播し、新参陣営総本部の中は混乱の坩堝と化した。
最早新参陣営に古参へと戦いを挑むだけの気概を持ったものなど残ってはいない。

――否。

おお!あれを見よ!
純白のユニフォームを身にまとい、キャップの下に決意の光を煌かせ、手に持った白球を高々と掲げるあの男を!
五郎丸卒塔婆!彼の目には一片の曇りもない!彼の所作には一片の怯えもない!彼の声には一片の迷いもない!
曇りなき、怯えなき、迷いなき言葉が新参陣営総本部の闇を切り裂いた!

「そんなことより野球しようぜ!」

新参達の目は晴れた。
今やここには何かを恐れるものも慄くものも怯えるものも迷うものもいない。
五郎丸を中心にスクラムを組んだ新参達の心は一丸である。
彼らはグラウンドへと走り出す。
この素晴らしく青き日々を一時も無駄にはするまいと。
飛び散る汗よ!青春の輝きよ!
願わくは、この一時が彼の者達の未来を照らす、消して潰えぬ灯台とならんことを!










ギィー

「ふう、この寝心地もこれはこれで……って、あれ?みなさん?どこいっちゃったんですかーー!?」


●『恋の積尸気冥界波~僕は魚座に恋をした』


 作詞・作曲:阿野次のもじ
 うた:のもじ with 黄金十二宮まもり隊


(イントロ~とある小学生の休憩時間~)

「えーダッセーコイツ かに座だってよ 」
「ぷっカニ座かよ」
「う、かに座の、どこがわるいんだ かに座を差別するな 」
周囲で笑い声

「(ばーん)マテイ貴様ら、それ以上の狼藉はまかりならん!」

「チッ女子は口出すなよ お前ナンなんだよ 」
「私か、



      私は‥‥


 う お 座だ !! 」

(じゃかじゃん!じゃかじゃん!じゃかじゃんじゃんじゃん!!!)


 一つ積んでは君のため~ HA!
 二つ積んでは愛のため~ HA!

  恋の積尸気冥界波!!!!(どかーんと精神波による爆発音)


 勾当台で出あったその日から
 決して振り返らぬと決めた黄泉比良坂(BC:おとこざかー!)

 恋の片道、積尸気冥界波♪ 

 そんな貴方はガけぷっち、足首掴んでうごめくの (BC:トレボーサンクス!)
 この任務は君には向いてないのではないかね?
 おっとテレポートだ。 

 嗚呼、恋の石の中冥界波♪ (どかーんと周辺に2度目の爆発音)

 一つ詰んではネタのため~ HA!
 二つ詰んではキャラのため HA!

 放つ、恋の積尸気冥界波♪ 

 黄泉比良坂におちるがいいっ!!
 黄泉比良坂におちるがいいっ!!
 …
(以下、精神が削りきれるまで耳元でサビ繰り返し)


『“しかく”を探せ!』~真実はいつもひとつ!では、四角形の数は?~



問.
左の文に“しかく”はいくつあるか……□□その刺客は死角を突いた□□


とある部室入口にそんな貼紙がついている。
その貼紙の前で、希望崎学園新入生たちが顔を寄せ、何事かを話し合っていた。
「これって入部審査だよな?」
「さすがDDC……いきなり篩にかけてくるか……」
「これは発想力を試しているのかな?」
どうやら彼らはDDCへの入部希望者らしい。
ダンゲロス探偵倶楽部……通称DDC。
魔人達が集い、世にも奇妙な能力によって日々不可解な事件が頻発する希望崎学園。
その中で影に日向に暗躍する彼らの存在は、一部の好事家達からある種の羨望の眼差しをむけられているのだ。
「よし……それじゃあ開けるぞ」
「おじゃましまーす」
「うおっ!すげぇ!」
部室の扉を開け、中に入った新入生たちは周囲の様子を見て感嘆の声を漏らした。
天井にまで届く本棚にぎっしりと詰まった洋書。
茶色い革張りのソファ。
厳つい木のデスク。
デスクの上には地球儀が置かれ、万年筆や羽ペンが筆立てに刺さっている。
「すげぇなぁ……」
「かっけぇ」
「まさに探偵事務所」
もちろん彼らは中二力溢れる学生達であるから、現実の探偵事務所の内装のことなど気にはしない。
目を輝かせながら周囲を見てまわる新入生たちであったが、ふいにデスクの向こう側から声がかかった。
「いらっしゃい。入部希望者かな?」
先程まで入口に背を向けていた革張りの椅子がくるりとまわり、そこに座っていた人物は新入生達に声をかけながらデスクに肘を付いた。
背後の窓から光が差し込み、絶妙の逆光具合によってその人物の顔は新入生達からは窺えない。
「「「は、はい!入部希望です!」」」
「それは嬉しいね。近頃は人材不足で困っていてねぇ」
椅子に座った人物は筆立てから万年筆を取ると、指先でくるりとまわしてみせた。
「だが……誰でも気軽に入部を認めるわけにはいかない。先程も言ったように、我が部は『人材不足』なのだからね」
その言葉を聞き、新入生達の間に緊張が走る。
お互いに隣の人物と顔を見合わせ、居住まいを正した。
「我が部が欲しい人材は最低限、入口に書かれていた貼紙の問に答えられる人物だ。まさか貼紙を見逃したなんてことはないだろう?」
無言でうなずく新入生達を見て、椅子に座る人物はゆっくりと背もたれに体をあずけた。
「それでは君達の答えを聞こう。ひとりずつ答えたまえ」



「答えは?」
「はい!“しかく”は4つです!」
「なるほど。根拠は?」
「文章に書かれている四角形の数が4つだからです!」

「答えは?」
「“しかく”は2つです!」
「根拠は?」
「しかくと発音する単語は2つだけだからです!両脇に書かれている四角形は『文』ではありません!」

「答えは?」
「“しかく”は6つだと思います」
「根拠は?」
「両脇に書かれている四角形の数と、文章中のしかくと発音する単語の数の合計です」
「なるほど……」



新入生達の答えを聞き終え、椅子に座る人物は何かを考えるようにあごに手を当てしばらく黙りこんだ。
そして考えがまとまったのか、固唾を呑んで見守る新入生達に再び声をかけた。
「残念だが、君達の入部を認めることはできない」
その言葉を聞き、新入生達は色めきたった。
「そんな!」
「お願いです!入部を認めてください!」
「ダメだと言うならせめて理由を話してください!」
デスクに駆け寄り、懇願を始めた眼前の人物達を眺めながら、椅子に座る人物は口を開いた。
「君達は入口の問を、発想力かなにかのテストとでも勘違いしたんじゃないかな?」
その言葉を聞き青ざめた新入生達は、どういうことかと身を乗り出した。

そのとき――

「答えは0だ」

部室の扉を開け、新たに現れた1人の魔人が言い放った。
腰まで届く三つ編みにかわいらしいリボンをつけたその魔人は、そのまま部室に入り、デスクの前で立ち止まった。
魔人、紫野縁(ゆかりの ゆかり)である。


『“しかく”を探せ!』~しかくの在り処~


椅子に座る人物は紫野の様子を一通り眺め終えた後、やや嬉しそうな声色で語りかけた。
「君は入口の貼紙を見て、これは何を試す問だと思ったかね?」
「発想力……と言うとでも?名探偵の目はごまかせない。あれは観察力の試験でしょう」
突如自分達の邪魔をされ、他の新入生達は当然面白くない。
紫野に掴みかからんばかりの勢いで詰め寄った。
「後からいきなりやってきてなんなんだお前は!」
「あんまり調子にのってんじゃねーぞ!」
「観察力を試すってどういうことだよ!」
新入生達の詰問にも慌てることなく、紫野は不敵に笑ってみせた。
「名探偵は遅れてやってくるものでしょう?」
その言葉でさらにヒートアップしそうになる新入生達を止めたのは椅子に座る人物の声であった。
「素晴らしい。最後にやってきた君。君の入部を許可しよう」
椅子に座る人物は驚く新入生達を見やり、紫野に対して答えの説明をするよう促した。
それをうけて、紫野は簡単なことですよ、と前置きをしてから語りだした。
「問題文を冷静に読めばいいだけです。『左の文に“しかく”はいくつあるか』……左に文はありません」
紫野の言葉を聞いてぽかんと大口を開ける新入生達。
そんな彼らを見て、紫野はさらに言葉を続けた。
「名探偵に発想力は必要だ。だが、その前に観察力がなければ話にならないんじゃないかな」
椅子に座る人物は紫野の言葉に拍手を送りながら言葉を継いだ。
「まったくもってその通り。君は確かに我が部に入る“資格”を持ってきてくれたようだね。――そして君達は……」
椅子に座る人物から顔を向けられた新入生達は、うなだれながらすごすごと引き上げていった。






二人だけになった部室で、椅子に座る人物が紫野に話しかけた。

「それでは改めて、君の名前を伺おうか」
「私の名前は紫野縁、古き良き怪盗怪人との対決を夢見る新参者です」
「ほほう、面白いことを言うね」

椅子から立ち上がったその人物は、デスクを迂回すると紫野の前に立ち、右手を差し出して歓迎の言葉を述べた。





「歓迎しよう。ようこそ!我が『なぞなぞ愛好会』へ!」
「来る場所を間違えたようだ」


『タッキー・ザ・ツッコミング・かっとビング』


「うちぁ、朱音多々喜(あかねたたき)や。かるぅく、タッキー☆、って呼ンでなー。ま、あいさつ代わりに――」

 朱音多々喜――タッキーは、自慰犯(ジーパン)に差した巨大破離戦(ハリセン)と抜くと、寸分の隙も、狂いもなく、周囲に居る苦羅守命屠(クラスメイト)にツッコミを放った。

「なんでいつも喧嘩しとんねんっ!」パシィン。
「なんで分裂しとんねんっ!」パシィン。
「なんで妖怪がおんねんっ!」パシィン。
「幽霊もいんのかいなっ!」パシィン。
「……怨念はおらんのかいっ!」パシィン。
「ムサ苦しいわっ!」パシィン。
「ヤリマンがっ!」パシィン。
「こんなデカイ筆、邪魔やっ!」パシィン。
「イチイチえろぃことすんなっ!」パシィン。
「なんでカルボナーラが得意やねんっ!」パシィン。
「なんで魔人なのにパンチんぐマソンで100止まりなんやっ!」パシィン。
「顔怖いわっ!」パシィン。
「これ、サインしてくれんかいな!」パシィン。←『恋の積尸気冥界波~僕は魚座に恋をした』と油性ペン。
「なんで『同マス敵全員』で『移動後使用不可』やねんっ!」パシィン。
「なんで……なんで嬉しそうにしとんねんっ!」パシィン。
「おのれはぴえらさんをリスペクトしとんのかいっ!」パシィン。

 タッキーの盛大な吊虎魅(つっこみ)が終わると、キビキビとした動きで座った。
「これくらいで許したる」と宣言した後、小さな声で「なんかみんな硬いわ……」と不思議そうに漏らした。
 しばしの空白の後、教師が次の生徒への自己紹介を促すと、彼女は凛と目を輝かせて起立した。
「東中出身、埴井葦菜。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者など、とにかく目立ってそうな奴を探してきなさい! 覆面をつけた怪しいのとか!」
「お前が一番目立っとるわっ!」パシィン。


埴井葦菜プロローグSS「埴井葦菜の憂鬱」


「東中出身、埴井葦菜。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者など、とにかく目立ってそうな奴を探してきなさい! 覆面をつけた怪しいのとか!」

「お前が一番目立っとるわっ!」パシィン。

 席につき、後頭部に感じる破離戦(ハリセン)の快闊な痛みにほくそ笑みながら、埴井葦菜は思っていた。
 ――ああ、あたし、目立ってる……!

「ふふ……ふふふふ……いいじゃない、掴みはバッチリじゃない!? この調子であたしの存在を世に知らしめてあげるわ……!」

 ハァ……と溜め息を漏らしたのは、彼女の相棒たるアシナガバチ達である。
 彼女達は皆一様に考えていた。
 “どうしてこうなった”――


 事の発端は、思えば数日前に遡ろうか。
 その日、葦菜は部活に行くクラスメートと別れ家路に就こうとしていた。

「じゃあね、アッシーナ! また明日~!」

「うん、また明日ー!」

 噴水広場を一人でとぼとぼ歩きながら、ふと自分自身について考える。
 蜂使いの一族・埴井家に生まれ、15年間休むことなくその技術を磨いてきた。
 七人の後継者候補の一人として、特に手塩にかけて育てられた。友だちと遊ぶことも、素敵な恋に落ちることもなく……
 その人生に不満はない。ただ最近になって、ひとつ、“思うこと”ができたというだけ――

「――いやあああああ! 来ないでくださいいいいいい!」

 黙考を切裂くように突如として響き渡った甲高い声は、間違いなく、彼女の懸案事項そのものだった。
 声の主の名は、埴井ホーネット。葦菜と同じ埴井家後継者候補の一人にして、当代きっての“問題児”であった。
 葦菜は、何者かに怯え、こちらへと走ってくるホーネットを見つめながら、歯をぎりりと軋ませた。

「……ホーネットっ……!」

 葦菜の綺麗な緑色の目が僅かに濁り、頭の中をとあるエピソードが駆け抜ける。
 二人は元々、年も近いためか、それなりに親しい間柄であった。
 そんな二人の関係が、主に葦菜にとって決定的に変質してしまったのは、つい最近のことである。

 その日、二人は数日おきの習慣となっている深夜の長電話を楽しんでいた。
 葦菜は一族本家での日々や修行の愚痴を、ホーネットは養蜂についてのあれこれやミツバチ達との蜜月を、それぞれ語っていたものだった。
 しかしながらここのところ、その会話のラインナップに、全く異常(アブノーマル)なものが追加されつつあったのである……

『最近は男手が増えたおかげで、作業が楽になって助かってます♪』

「お……オトコ!? あんた、お、オトコなんかできたの!?」

『まあ、男って言っても触手なんですけどね!』

「ハァ!?」

 ホーネットが一時の気の迷いで男性と交際していたことについては、二人の間では既に黒歴史として封印指定されていた。
 それゆえに、彼女に新しい恋人ができたかもしれない――自分にはいないのに!――と知って、葦菜は大いに驚き嫉妬した。
 だが、そんな葦菜に開示されたのは、それを遥かに超える衝撃――触手!

『あててて……ああ、すいません、さっきまで触手さんたちが離してくれなくて――』

『蜂さんの細やかな刺激もいいんですけど、触手さんの太くてでっかいノもまた絶品で――』

『でもでも、乱暴ってわけじゃないんですよ? さっきも椋鳥の型で丁寧に愛してくれて――』

『ひゃああ! ちょっと、だめですっ、いま電話中なのに……ああああああああんっ――』

 それからというもの、ホーネットは経営や蜂姦のことと同じくらい熱心に触手についての話をした。
 触手を雇うだけなら……まあ、百歩譲って理解してやらなくもないけど、でも、えっち、って――
 ていうか、触手とシックスナインて! い、一体どんな構図なのよ!?
 ……なんてこと、もちろん訊けるはずもなく、葦菜のモヤモヤは募るばかりであった。




「……なんなのよ」

 電話を切ってしばらくの間呆けたようにしていた葦菜が、うわ言のように呟く。
 周囲で舞っていた蜂達が不思議そうに首を傾げる中で、本家で立ち聞きした会話を思い出す。

『ホーネットのやつ、触手を雇いだしたそうだ』

『戦闘の相棒たる蜂とまぐわうだけでもけしからんと言うのに、またあの娘は……』

 えとせとら、えとせとら……最近の一族会議の議題に、ホーネットの名は必ず挙がっていた。
 長老たちをはじめとする皆がホーネットを蔑視していたが、葦菜は彼女に別の感情を抱いていた。
 それは、嫉妬。

「なんでっ! 真面目に修行してるあたしより! 奔放に遊んでるだけのホーネットの方が目立ってるのよー!」

 まあまあ、と宥める蜂達の努力もむなしく、嫉妬の炎はメラメラとその勢いを増してゆく。

「従姉妹で! お友達で! 仲良しのホーネットを! こんな風に思うのはイケナイって! 分かってるわよ!
 でも! 止めらんないのよ! ううううう、なんであたしじゃなくてホーネットなのよおおぉぉぉぉ!!」

 蜂達は、気の毒そうに主人を見つめていた。


「あたしって、嫌な子……でも、仕方ないじゃない……」

 自分の中の醜い感情を意識するたび葦菜は自己嫌悪に陥るが、どうにもならないようだった。
 地に落としていた視線を、再びホーネットの方へと向ける。
 そこには、逃げ惑う少女と追いすがる少女達。

「ゴッ、ゴシュジンサマアアァァァァァアアァ!!」

「ジョ、ジョシコウセエエエェェッェェェエェ!!」

 ホーネットの後方より迫るは、全裸に首輪の少女と、涎を垂らして眼を血走らせた少女。
 この異様な鬼ごっこを目撃した周りの生徒達は、思い思いの言葉をもらす。

「そっちの変態はドM魔人・牛午奴隷美、あっちの変態はJK教の教祖・慈衛恵だな」

「どちらもかなりハイレベルの変態だが、そんな二人に求められているあの女の子は誰だ?」

「ああ、一年の埴井か」

 ぴくっ、と葦菜の眉が微動する。
 えっ……ホーネットのやつ、一族内にとどまらず、学校でも目立ってるの……?

「一年の埴井……聞いたことあるな。確か変態が丘で風紀委員相手に大立ち回りを演じたとか」

「そのあとは、あの伝説のカレーパーティのリベンジで媚薬カレーを作りやがったらしいぜ」

「私は変態が丘でぱんつの反乱の平定に一役買ったって聞いたわ」

 いつの間にか増えたギャラリーが、ホーネットの話題で盛り上がっている。
 従姉妹の名が何度も飛び交っているうちに、元は翡翠のように澄んでいた葦菜の瞳もどんどん濁ってゆき、今や魔女化寸前であった。
 集団にふらふらと近づいて行った葦菜は、ぼそぼそと問いかける。

「ね、ねえ……あの子、そんなに目立つ存在なの……?」

「ん? ああ、そうだね。ここのところ、よく名前を聞くかな」

 ――いらっ

「外見も可愛いし、あと、ぱ、ぱんつ穿いてないしね!」

 ――いらいらっ

「ところで、ホーネットたんに微妙に似てる君は誰だい?」

 ――ぷっちーん!


「……ああああああああああああああああああああ!!」

「「 !? 」」

 突然奇声を上げる葦菜。引く観衆達。
 その声で葦菜に気付いたホーネットは、進路をやや修正し、葦菜の元へと駆け寄ってくる。

「あ……葦菜さん! 丁度いいところに――」

「にゃあああああああああああああああ!!」

 ――どんっ

「えっ――」

 喜色満面で近づいてきたホーネットを、しかして葦菜は無情にも突き飛ばした。
 ホーネットは後ろへすってんころりんと転がってゆく。制服のスカートがめくれ、剥き出しの秘所が露わになる。
 野次馬達がゴクリと生唾を飲む中で、猛り狂う二人の変態がホーネットに飛び掛かる!

「ブッヒイィィィイイィ!!」

「ハァハァハァハァハァ!!」

「きゃああああああああ!!」

 くんずほぐれず姦しく騒ぎ出す三人娘には目もくれず、葦菜はその場を立ち去った。


「はぁ、はぁ……ここが……」

 肩をいからせ大股でずんずんと校舎を突き進んだ葦菜が辿り着いたのは、一年生の間でまことしやかに噂されていた、秘密の場所――

「ここが、老害狩り同盟の本部ね……」

 横柄な態度をとる古参どもを討伐せんと目論む一年生達が集いし部屋……葦菜は決意に満ちた表情で、扉に手をかける。
 葦菜がここを訪れたのは、ホーネットに勝るため。
 絶対に自分の方が目立ってやるんだから――! 燃え盛る嫉妬の炎は、自己嫌悪すらも焼きつくし灰燼に帰してしまった。

 緑色の目をした怪物を止めることなど、最早誰にもできやしない。

「ふん! 今に見てなさい! でかい面してる古参どもを討ちとって、あたしの方が目立ってやるんだから!」

 こうして、埴井葦菜は参戦した。   <終>


※ ホーネットについては、『ダンゲロス・アブノーマル』や『学園魔法陣Aのダンゲロス』を参照!
最終更新:2011年06月18日 13:40