東北地震における水道の影響-放射線関係

 今回の地震における水道への影響について情報収集をしようと考えました。市町村、都道府県単位で、時系列に情報をメモしていく方針です。

放射線のリスクについて


このページの情報はあくまでも私見の範囲を出ません。参考にしていただくにしろ、責任とかはとれません。そのつもりで。



東京都金町浄水場にて210ベクレル程度の線量のヨウ素131が検出されたとの報道についての見解


なんで東京都で検出されたのか?


  • 金町の水源は江戸川。左岸側に被災地があり、空気中に拡散していたり、広域的に降ったりした放射性物質が、降雨により一気に流下してきたものと推測される。
  • ドイツ人の人が公開しているシミュレーションではたしかに首都圏にも排出物がかかってますね。納得。
    • つーか、こういう情報が先に提示されれば予測もできたんだが。
    • 政府が「問題ない、風評被害を広めるな」とまで言ってしまったため、下部の行政組織が「念のため」の体勢をとることも難しくなったのは観察していて感じる。
  • 東京都はリスク把握能力が高いので状況にいち早く気づいた、というのが本当のところ。
    • その後、23日~24日にかけて他地域の計測結果も出てきている模様。
    • こんなのを計測できる水道局はほとんどないので、計測機器の調達や計測方法等で相当の混乱があったと思われる。
  • 逆に言えば、東京都以外も利根川等被災地周辺から集まった水を使っているエリアは同じリスクがある。流域の形からして、下流ほどリスクが高い。
    • もちろん被災地に近いエリアはいわずもがな。
    • 利根川の下流が江戸川です。
  • ヨウ素の半減期は8日程なのでこちらについてはそれほど長期間高い数値が続くわけではないと予想。
  • 要するに、福島原発事故がこれ以上モロモロ放出しなければ、降雨の影響が終わった段階で短期間で収束するでしょう、ということ。
  • 現時点では210が最大値かどうかもわからないが、仮に原発が沈静化し、210が最大値なら、数日中には1/10くらいには落ちるんじゃないかなと予想。
    • 今後は、放射性物質の散布状況(風むき)と降雨に注意。しばらく晴れたあとに雨が降るとまた数値が上がる可能性がある。取水から供給までのタイムラグもあるが。
    • 雨が降ってから自分の家に届くまでどれくらいタイムラグがあるかとの問い合わせなので、ものすごく粗い計算をしてみる。短い場合で、取水してから凝集沈殿で8時間、高度処理で2時間、配水池で8時間、あとは浄水場からの距離(km)/0.5時間程度といったところ。場所によって大きく変わるが、18時間~3日というところかな...

ヨウ素131の基準の300ベクレル(Bq)って?


  • 現時点で生きているヨウ素131の指針値は300Bq/kg(原子力安全保安委員会)。
    • 余力があったらどういうふうにこの数字が決まったのかも解説します。
    • ちなみに、これは、水道水質基準ではありません。
    • 今、報道などで「基準」と言われているのは、原子力安全委員会が定めた飲食物制限に関する指標値で、要するに非常時対応です。
平成21年8月5日 厚労省通達より抜粋
 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)及び原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号。以下「原災法」という。)に基づき、放射性物質漏洩事故発生時には、厚生労働省を含む関係省庁、関係地方公共団体及び原子力事業者等により応急対策が実施されることとなり、各関係者による対応体制が整備されています。飲料水を含む飲食物の摂取制限に関しては、国の防災基本計画に基づき、関係地方公共団体の原子力防災担当部局が中心となって緊急時環境放射線モニタリング(以下「緊急時モニタリング」という。)が実施され、その結果の評価に基づき、原子力災害対策本部が摂取制限を指示し、関係地方公共団体により摂取制限が実施されることとされており、具体的な内容については、地域防災計画等において定められています。
    • 水道の基準が変更されたとかいう話が発信されていますが、このように、基準が変更されたわけではなく、水道としての放射性ヨウ素の規制なんぞは必要なかったということ。基準が設定されるためには「検出されるリスクのある物質であるかどうか」というチェックが入るのです。検出される可能性のない物質を基準に入れると検査が義務づけられるのでコストとかえらいことになりますゆえ。
    • ただし26日になって本気で「指標値」を緩和するつもりとの報道あり。科学的には余裕率の削減であるのでまあわからんでもないが、行政的には「泥縄」以下のひどい行為で、少なくとも「基準というものに対する信頼を失墜させる」以外になんの意味もない。もし撤回したとしても今更もう遅いですけどね...
  • WHOの基準(ガイドライン)は10Bq/Lと、幾分水質の基準らしく単位がLになってます。これは一生飲み続ける場合の数字です。そもそもガイドラインってのは絶対安全とかそういう主旨ではなく「決めるんだったらこのへんを目安にしていいですよ」という数字です。見たらわかるけど、1、10、100とか十倍刻み、いかにも目安、って感じです。

  • それ以下の数字でも子供は飲まないほうがいいというのは、科学的にみて冷静かつ的確な指示。
  • 普通に使う分には全く気にする必要ない。「口から体内に入ること」だけ、控えるに越したことはない、ということ。理由は後述。

  • ベクレルとシーベルトとは何が違うのか。ベクレルというのは放射線そのものの検出量。これが人体に当たってエネルギーに変化した量=すなわち何かの形で消費された量がシーベルト。
  • エネルギー量の積算値と放射線によるリスクが比例すると考えられている。よって、対人の基準はシーベルト、原因物質の基準はベクレルになっている。
  • ベクレルとシーベルトの換算計数は諸説あってどれがいいかちょっとわかんない(標準的な人体のモデルや放射線の組成等で計算して換算計数をつくるのです)。調査中。

なぜ、使うのはいいのに、飲まない方がよいのか


  • 外部被曝と内部被曝では意味が全く違うため。
  • 放射性物質とは放射線を出して壊れる原子のこと。放射能とは放射線を出す能力のこと。放射線が影響を与えるので、放射性物質との接触が問題になる。
  • 半減期が短いということは放射能が強いということでもある(もちろん半減期だけで決まるのではない)。故に、まずはヨウ素が警戒されている。
  • 放射線には、大体、強力だけど透過しないやつ(α、β)と、透過するけど弱いやつ(γ)がある。(ほかにもあるが常識的には遠くまで飛んでかないハズ)シーベルトの計算時に換算計数でα=20倍やβ=5倍にはしてあるが、これは透過しやすさまで考慮した目安みたいなもので、そもそもはエネルギー量の桁が違う。
  • 外部被曝=体外からの放射線は「強力なの」は体表面で止まる。体表面の皮膚や筋肉とかは少々被曝しても全然平気。後者は透過するが、よほど浴びない限り影響は小さい。
  • 内部被曝=体内からの放射線は「強力なの」が体内で影響を与える可能性がある。体内には放射線に弱い部位が存在する。どこが弱いのかは後述。
  • CTやらレントゲンやらは「強力なの」は使わないので線量だけで考えていい。そういう意味で、外部被曝の比較対象ではあっても、内部内部のリスクを説明する対象としてはやや不適切なような希ガス。

なぜ子供は控えろというのか


  • どんな人か、どんな臓器かでリスクが大きく異なるため。
  • 放射線の影響をうけやすいのは細胞が分裂するとき。よって、細胞分裂が活発な乳幼児は大人よりも注意すべき。
  • 特に、胎児は全身が細胞分裂真っ盛りなので気をつけてほしい。さすがにこの人達にとってはリスクが高い。
    • とはいえ、母体が摂取した放射性物質が胎児にどのように影響するかは実験するわけにいかないのでよくわからんのです。
  • 逆に高齢者が気にする必要は全くありません。
  • 子供については、成長による細胞分裂が活発なのと、リスクあるヨウ素131等の元素の摂取が活発なのと、子孫に対する影響という3重の意味で放射線の影響は受けたくない。

どんな臓器が影響をうけやすいのか


  • 細胞分裂がほかの部分より活発な部分は放射線の影響をうけやすい。強烈な放射線を浴びた場合の急性の影響はここにくる。
  • なぜか。荒っぽくいうと、普通はDNAは二重になっているのでひとつくらい壊れてももう一方の情報で補修される(自然にもしょっちゅう壊れては修復されている)のだが、細胞が分裂するときはDNAの二重らせんが分離している(開裂)ので、そのタイミングのときだけは自己修復ができないため。
  • 脊髄や小腸などは赤血球を作ったり絨毛を作ったりしているので細胞分裂が盛ん。故に弱点。
  • 放射性物質で検出量が比較的多いヨウ素は甲状腺に集まりやすい。このため長期的にみて甲状腺がんもリスクが高くなる(チェルノブイリの経験から)。ヨウ素剤を飲むのは、ヨウ素が新たに摂取されにくく減らすためで、その他の部位には効果はない。
    • チェルノブイリのデータでは甲状腺癌以外に顕著な影響なしと言ってるが、旧ソ連だしなぁ...
  • 生殖細胞も細胞分裂をしやすいので影響を受けたくない。

水処理で除去できるのか


  • 放射性ヨウ素だろうと普通のヨウ素だろうと科学的特性は同じ(微妙に質量が違うくらい)。
  • ヨウ素は水に溶ける分もあるので通常の浄水処理ですべて除去できるというわけにはいかない。通常処理で3割程度?文献不足。
  • 活性炭処理がとりあえずの対策といえる。高度浄水処理もその文脈で有効。ただ、ヨウ素、セシウムとも水に溶けにくい物質ではないので、ビシバシ除去できるというわけにはいかないと思う。十分な接触時間をとるべき。
  • セシウムはフィルターで除去できるという話のソースは教えてほしいです。カリウムやナトリウムと同族だから挙動が似ているハズで、物理的特性だけでは少し納得しにくい。
  • 活性炭入り浄水器は原理的には有効。ただ、モノによっては一瞬接触するだけなんで、効果はほとんどないかも。
  • 煮沸は全く無意味。
  • 放射性物質は時間が経過するだけで自己分解して減少するので、原発からの供給さえ止まれば長期化するリスクは小さいと見ています。

妊婦、授乳中のママ、幼児はしばらく注意かと


  • いちばん有効なのはタバコをやめることです。マジで。この手のリスクは相乗効果で効いてくるので、ほかのリスク要因を削減する方がよっぽど有効。
  • 胎児はさすがにリスクが無視できるとまでは言い切れないので、妊娠している人、特に妊娠初期は気をつけてあげたい。とはいえ、確実に影響が出るという水準ではないです。
  • 基準付近の数字(ヨウ素で300とか)がでてる場合は念のため飲用を控える。出てなくても、でてるところと水系が同じ場合は同様の処置をとる。
  • あとは、この水準なら、気にする程のことはないです。
  • つーか、この記事、東京都水道局の水で沸かしたコーヒー飲みながら書いてるし(笑)。



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最終更新:2011年03月26日 23:55
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