小さい体をした人間が、さささっとかけていった。
そいつは頭から盛大に転ぶ。
起きあがって、涙目になったそいつの顔は、かわいらしい女の子に見える。
それだけじゃない。緑色の髪の毛は、サラサラで肩まで伸びている。
そう、そいつは女の子に見える。
そいつが、男……そして、15才と知ったら、みんなどういう顔をするんだろうか。

「しらなかった……ひとって、あんなに簡単に、他の人、殺しちゃうんだ……」

彼は、動揺していた。
目の前で動いていた人間が、突然血を吹き出して、倒れていく様をみたから。

「僕は……死にたくない! 死んだら、帰れなくなる…みんなと、あえなくなる…」

彼は、今はどこにいるかわからない仲間を想った。
いまのところ、参加者のなかに彼の仲間はいないようだ。
正直、彼は安堵した。しかし、心細くもあった。

背中に背負ったバックの中に入っていたのは、洗濯ばさみ、ゴミ袋。
洗濯ばさみが使えるとは思わないし、ごみぶくろもたいしたやくにはたたないはず。

彼はとりあえず、目の前に見えるけっこう大きな建物から調べてみることにした。

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そのころ――。
「……」

白い髪の毛を持った少年は、決意の表情を浮かべ、活火山の方向へ歩いていた。
彼は、美しい表情を浮かべた女性の顔を思い浮かべていた。
青い美しい髪が、顔が、そして、その薄気味悪い表情が思い出される。
彼女は、ただ、こういっていただけ。

――願いを叶えてみたくない?

*  *

少年は驚いた。さっきまで、広場にいたはずなのに。
いつの間にか目の前には知らない女性がいて、自分はその女性の前に立っている。
「願いを叶えてみたくない?」
「……え?」
唐突にそういわれたものだから、返事ができない。

「あなた、家を出たんでしょう?」
「どうしてそんなこと知ってるんですか!? 見ず知らずですよね」
ストーカー……? とも思ったが、彼女がストーカーだったらもっと陰湿に……
「何を考えているのかしら?」
笑顔の裏には怒りが隠れている。彼はすかさず謝罪をした。

「あなた……ふつうの生活がしたいのよね」
少年はためらいもなく、答える。
「……そうだよ。僕は院長の息子とかいう重圧やら、うめぼしのご飯はもう、いやなんだ」
「院長の息子で、なんで梅干しのご飯かはわからないけど……まあいいわ。
 あなた、ふつうの生活ができるわよ。ふつうの生活」
少年は、できっこないと思ったが、とにかく、話を聞く気にはなった。

「願いを、かなえてみたくない?」

*  *


彼は思う。

「……僕は、悪魔のささやきに、のったのかもしれない」

しかし彼はこう願うのだ。

「……でも、今までの生活は、いやだったんだ……僕は、僕は――ふつうの生活がしたいんだ」

彼は歩く。活火山に向かって。
活火山には全裸の美女がいる。
銀色のきれいな瞳で、彼は、活火山の方向を臨んだ。

このとき、彼は、すでに破滅していたのかもしれない。


【場所・時間帯】B2・闘技場前・水色エリア・朝

【名前・出展者】御富ともみ@ぶっとび戦隊ブットンジャー
【状態】正常、顔にかすり傷、神経的な疲労
【装備】洗濯ばさみ
【所持品】ゴミ袋、洗濯ばさみ
【思考】
大前提:死ぬわけにはいかない
 1.いっしょにいてくれるひとをさがす

【場所・時間帯】D3・活火山へ向かう道・朝

【名前・出展者】白雪夢宇@ぶっとび戦隊ブットンジャー
【状態】正常
【装備】出刃包丁
【所持品】出刃包丁、ロープ
【思考】
大前提:さて、殺すとしよう
  基本:ともみに手は出さない
  1.活火山へ向かう

*  *


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最終更新:2011年04月10日 18:44