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 木暮は昂騰する意識を何とか落ち着かせようとしていた。  あの化物みたいな少女を追いかけるためにもぐっていった先は戦場で、しかし少女の姿は無い。  とかく、何とか戦場の様子を見ようと伺ったところ、丁度いい所に的があった。  ゴールがあったからシュートした、そんな単純な感覚である。  けれども、彼は非常に昂騰していた。  訳は彼自身よく解らない。  けれど彼の中でそれは芽生え始めているのだろう。 「うしし――」  悪戯っぽく少年は笑って。  横合いからの衝撃で吹き飛ばされた。  木暮の意識はここで途切れる。  その頃、ハスタ、シール、朱里の戦場を回るようにルビカンテと悟プリニーは戦闘を続けていた。  正確には悟とプリニーがせわしなく逃げ回り、ルビカンテはそれを追っていた。  単純にルビカンテがファイアを連打し、その衝撃で悟たちを追い詰めていると言ったところだ。 「しつこい男は……嫌われるぞ!」  息を切らせながら無駄口を叩く悟。  相当切羽詰っているはずなのだがそれでも自然と言葉が出るのは彼ゆえか。  対するルビカンテは大分余裕があるのか、笑いながらそれを返す。 「私も男の尻は追いかけたくないものだな!」 「だったら退けよ!」  即答で返しながら、しかしルビカンテの「断る!」という宣言を聞くまでもなく、悟は逃走する。  これまで、飛行し、木々を利用しながら逃げ回っている。  ……のだが向こうはあろうことかその木々を全部ぶち抜いてコチラに進軍している。  これではどうしようもない。  疲労も馬鹿に出来なくなってきた。  ジリ貧……という事もないだろうが、しかし向こうに限界の様子は見えなかった。  ならば、と業を煮やした悟が隣で必死に追いすがってくるプリニーに声をかける。 「なぁ! 何とかならないのか!」 「む、無理言わないで欲しいッス!」  とはいえそのプリニーも相当無理をしていた。  彼はそこまで足が速いわけではない。  直線であればダッシュできるがここは森、非常に入り組んでいて足場も悪い。  飛行可能な悟と比べるとどうしようもなく移動しにくい。  そんな中でプリニーは悟についてきているのだ。 「だ、だったらここを何とかしたら何かおごってやる。  頼む、力を貸してくれ」  悟はそれを知りながら、頼み込む。   殆ど思わず出たような言葉だ。  しかしそれがプリニーには響いたようで、 「マ、マジッスか? だったらオレがんばるッスよ?」  ああ、とプリニーの問いに悟が肯定。  するとプリニーは振り返り、飛び上がる。  浮遊の時間は一瞬、木々の合間から、プリニーはルビカンテに狙いをつける。  そしてそのまま、ひたすら連打。  どこから飛び出してくるのやら、プリニー特有の連射攻撃がルビカンテに襲い掛かる。 「ぬ、ぉぉおおおお!」  今までオプションとしか思っていなかった気ぐるみが突然動いたかと思えばコレだ。  思わずルビカンテは驚愕する。  全てが直撃……とはいかないまでも大分足止めされてしまう。  その間に悟は大きく上へ飛び上がる。 「あぁばよ!」  そんな叫び声を残して、どこかへ消えていった。 「あっ! 逃げる気ッスかー!?」  思わずプリニーがそちらに叫ぶ。  その瞬間、思い切り隙が生まれた。 「ぬぅん!」  ルビカンテはすぐさまファイアでプリニーに狙いを運命、放つ。  完全に無防備だったプリニーは回避すら出来ずそれを諸に浴び、黒焦げになって地面に激突する。  ピクピクと痙攣するそれは、生きているようにも死んでいるようにも見えた。 その頃、ハスタ、ソウル、朱里の戦場。  結局、やってみれば二対一から抜け出すのは簡単だった。  ソウルの方へ踵をむけ、踊りかかる。  武器はないが、何とか翼で猛攻に耐えつつ、そこへハスタが襲い掛かってきて、何とか奥へ抜けることに成功した。  後は戦闘を始めた両者に牽制のように翼を放ちつつ、距離をとればよかった。  面倒な話だが、複雑ではなかった。  意識の話と肉体の話だ、その違いは当然のものか。  その状態は結局、少し遠くから男の声が聞こえてくるまで続いた。 「ハスタ! 敵に逃げられた! 私も離脱する!」  声の主は恐らくハスタと呼ばれた男と共にいた敵だろう。  悟が相手をしていたはずだが、なるほど逃げたか。  とはいえ目的地はわかっているから急げば出会えないことはないだろう。  少し気になることはあるが、今はここを離脱するべき。  朱里はそう考えると、すぐさま敵方へ背を向けた。  それを誰かが気づくことは、終ぞなかった。  後に残るはハスタとソウル。  両者の優劣は歴然としていた。  朱里の横合いがあったときはまだ少しやりようがあったが、今現在は完全に優位をハスタに持っていかれてしまっていた。  渾身の大技もことごとく回避、もしくは当たっても直ぐに立ち上がられ、無駄になる。  そして、コレならばいっそ……と考えたソウルは、大鎌を構える。  しかしその時には、ハスタの姿は無かった。  集中力が途切れてしまっていたらしい。  殺人鬼がどこへ消えたかは解らない。  先ほどの声に従ったか、それともソウルに止めを刺すために消えたか。  どちらであろうと、油断してはいけなかった。  だが、 「……あは♪」  少女は油断した。  勝ち誇ったような、よく見れば少しの安堵が見れる表情。  それは場数を踏んでいないが故の慢心か、  本来なら、相手は間違いなく格上であったはずなのに、  ソウルは見誤っていた。  ハスタが殺さずに入られないわけがない。  殺人鬼は息をするよりも多く人を殺す、そういうものだ。  ――上空、木の上からハスタが現れる。 「あーああー」  情けないような声でもって、思い切りよくハスタは箒を振り下ろす。 「なっ!」  気がついた時にはもう遅い。  その一撃は脳天を大きく揺さぶり、致命傷を呼ぶ。  身動きの取れなくなったソウルは、もはやネギをしょった鴨にしか、見えなかった。 「お前、馬鹿を見るなら馬鹿にしたほうがいいぞ。  なんてノン」  ハスタは思い切り箒を溜めて、構える。  それは本来ならば槍を得物とするハスタがもっとも得意とする、突きの構えだった。 においに誘われてそこへやってきてみると、先ほどまでそこは戦場だったらしい。  あたしの周りには死体と、まだ死体になっていない生きた人間、そしてよくわからない気ぐるみが墜ちている。  どれにも対して興味はないが、見覚えのある顔が一つ。  名前は知らないが、現代に暮らしているであろううそつきの少年だ。  後は銃で撃たれたらしい女の子と、その近くで気絶する切り傷だらけの女の子。  それと少し遠くで仰向けに倒れる打撲の後が酷い子。  どれもが戦場で敗北したんだね。  正直興味はないけど。  ……特に助けるつもりはないので無視をする。   というか、様子を見に来るだけのつもりだったのでこのまま帰ろうと私は戦場に背を向けた。  ……その時だった。  見に覚えのある気配が一つ。  誰もが放つ、覚えやすいそれはつまり、殺気だ。  振り返ってその主を確認する。  打撲痕だらけの少女だった。  恐らく一度は意識を失っていたと思うんだけど、無理をして立ち上がって。  新たな客人であるあたしを見据えている。  主を取って代わられても、まだ主の真似事を続けようとするか。 「は……あは、あはははははははは! 生きてるじゃないの! 生きてるじゃないの!」  狂ったように笑い出す少女は、自身の得物であると思われる鎌を構えて、あたしを挑発する。 「殺せるじゃない! 丁度いいわ、刈り取ってあげる!」 「六銭文は必要かな? キミのそれじゃああたしはころせないよ」 「ふ、っざけんじゃないわよ! 私は、私は!」 「わっからないなぁ、無駄骨は、嫌いなんだけど」  少女はさらに激昂して、私はさらに呆れさせられる。  そして、返す言葉を少女が口にしたのが、合図だった。 「暴走乱劇!!!」  あたりの風圧が乱れるのを感じた。  風を操るのかと、少し身構える。  少しの間が空いて、躍り出たのは舞踏会の演劇か。  風が踊り、舞い、そして歌う。  そのどれもがどれもを作り上げ、一つは全てを成し、全ては一つを成す。  暴走し、乱れてなお、それは踊り狂う。  狂って狂って、回るそのさまは、ある雛人形を思い出す。  けれども、甘い。  あたしが抜き身の霧雨を抜く。  たったそれだけで、全部終わった。  風は絶たれ、割れた海のように、辺りへ散って消えていく。  少女は呆けたように、息を漏らす。 「なん……で?」 「限界なんだよ、あたしがどうしようにも、キミは限界。  もう無理だね」  いいながら、少女の次より早くあたしは接近する。  一瞬、あたしとこの子の視線が合う。  そこに在るのは一抹の恐怖、人間らしい、いい感情だ。 「あ……ぁ…………」 「今まで、たくさんの人間を殺してきたのでしょう?  だったら知るべきなんだ、その恐怖を」  辺りには誰もいない。  これは狂気だ、人間が得体の知れない何かに感じる狂気。  殆どが妖怪であるあたし自身、それに当てられているのだろう。  だから、自制は効くけど、今はしない。  この少女はもう動くことすら出来ないだろう。  介抱しても助からない、恐らく臓器がいくつかやられている。  それでも動くのは驚きだが、今の暴走で破滅は決定的。  だったらもう、終わらせてしまったほうがいいじゃないか。  そう考えて、少女の首へ剣を振り下ろす。 「――人間を知れ!」  まぁ、いいわけだけど。 ――悟は無言で飛行していた。  戦闘を行ったことによる疲れと、今後に感じる多少の不安。  けれどもそれは、誰にも表することはなかった。  表せる人が、いなかった。 【場所・時間帯】F3 上空 朝 【名前・出展者】謳方悟@魔王武器職人専門学校 【状態】疲労中 【装備】剣 【所持品】剣・フランスパン・基本支給品一式 【思考】 基本:殺し合いとか今ンとこはその他だその他 1:早く見つけないと…… 2:なんかヤバそうだなぁ 3:さて、どうするかなぁ  ――朱里は森の中を駆けていた。  手元にはもう、何もない。  不安は少ししかない、けれどそれがどうしても、引っかかってしまっていた。  朱里には今、何もない。 【場所・時間帯】F3 森 朝 【名前・出展者】唄方朱里@魔王武器職人専門学校 【状態】健康 【装備】黒いボールペン 【所持品】黒いボールペン・基本支給品一式 【思考】 基本:殺し合いとか今ンとこはその他だその他 1:何とか探そう。 2:これからどうしよう……  ――ハスタとルビカンテは移動していた。  向かう先は特に決めていない、がこのまま行けば川の方にでるだろう。  そこからどこを目指すか、彼らはそれを語り合おうとはしない。  二人とも、両者が戦う際のシミュレーションを行っていたのだ。 【場所・時間帯】F2 荒野 朝 【名前・出展者】ハスタ・エクステルミ@テイルズシリーズ 【状態】正常 【装備】霧雨製の箒@東方project 【所持品】不明支給品×1 基本一式 【思考】 基本:皆殺しだりゅん♪ 1、とりあえずは一緒にころす。間違って殺す。 2、移動するんだー 3、(脳内バトル中) 【名前・出展者】ルビカンテ@ファイナルファンタジーシリーズ 【状態】魔力消費小~大 【装備】なし 【所持品】不明支給品×2 基本一式 【思考】 基本:強者と戦い、優勝する。 1、まずはハスタとの共同戦線。 2、さて、どこへ行こうか。 3、(脳内バトル中) ※魔力消費の量は次の書き手さんに任せます。 【霧雨製の箒@東方project】 霧雨魔理沙が飛行に使う箒、 とはいえ本人はイメージ的な理由で使ってるので素人では飛べない。 ただし普通のものと比べると非常に頑丈でカビゴンが載っても壊れない。  ――春夏は、血を能力で流し取りながら、ゆっくりと移動していた。  能力を使って、若干のけだるさを覚える。  何か制限でも掛かっているのかと、当てのない移動を続けていた。  手の中には、血をふき取ったばかりの首輪が収まっていた。 【場所・時間帯】D3 森の中 朝 【名前・出展者】秋冬春夏@東方二次幻想 【状態】疲労小~中 【装備】霧雨の剣@東方project 【所持品】銀製の箱 首輪(ソウルのもの) 基本支給品一式 【思考】 基本・まずは様子見、とりあえずは殺さない。 1、まずはルーミアを探そう 2、-ドライバーってどこにあるのかな。 3、飛んだりすると危ないからよしておこう。 ※特に行き先は決めてませんが他人とは接触を絶つ方向です。  ――  ここは既に何もない戦場。  意識あるもの、命あるものは絶えている。  誰もいない名もなき墓標。 「……なに、これ」  そこに、ライラック・エルは足を踏み込んでいた。 &color(red){【ソウル=クレイシア@三つ巴の世界 死亡】} &color(red){【プリニー@魔界戦記ディスガイア 生死不明】} &color(red){【シーナ=クレイル@三つ巴の世界 死亡】}  ※プリニーが復活するか、そのままかはこの後の書き手さんに任せます。 【場所・時間帯】E3・朝・森の中 【名前・出展者】ライラック・エル@星屑の幻想 【状態】正常 【装備】ソーディアン・シャルティエ@テイルズオブデスティニー 【所持品】基本支給品一式、不明支給品×1~2 【思考】 基本:殺し合いはしたくない・コバルトさんを探す 1:なに……これ。 2:木に登ったらコバルトさん見つかるかな…… ※ライラックが木暮に気がつくかは次の書き手さんにお任せします。 【名前・出展者】ソーディアン・シャルティエ@テイルズオブデスティニー 【思考】 1:……あれ? 坊ちゃんは? 2:この子誰? ※ロワ内では誰でもソーディアンの声を聞くことが出来ます ※また、威力は落ちるものの晶術の使用も可能です 【名前・出展者】レミリィ=ライフィルア@三つ巴の世界 【状態】全身に切り傷。気絶。 【装備】杖 【所持品】杖、基本支給品一式 【思考】基本 とりあえず生き延びよー。     1.…………。 【名前・出展者】木暮夕弥@イナズマイレブン 【状態】吹っ飛ばされた 気絶中 【装備】ワルサーP5@現実 【所持品】基本支給品一式、予備の弾薬@現実、奇跡の指輪@ムシキング~ザックの冒険編~、立向居のデイパック(支給品未確認) 【思考】 基本:優勝して「ありえなかった未来」を現実にする 1:……………… 2:「女性」が望む通り疑心暗鬼をばらまく 3:場合によってはヒロトも殺害する ※吹っ飛ばされた木暮の容態は次の書き手さんにお任せします。 前の話 |030|[[新しい目的地]]| 次の話 |032|[[温泉と三人]]|
 木暮は昂騰する意識を何とか落ち着かせようとしていた。  あの化物みたいな少女を追いかけるためにもぐっていった先は戦場で、しかし少女の姿は無い。  とかく、何とか戦場の様子を見ようと伺ったところ、丁度いい所に的があった。  ゴールがあったからシュートした、そんな単純な感覚である。  けれども、彼は非常に昂騰していた。  訳は彼自身よく解らない。  けれど彼の中でそれは芽生え始めているのだろう。 「うしし――」  悪戯っぽく少年は笑って。  横合いからの衝撃で吹き飛ばされた。  木暮の意識はここで途切れる。  その頃、ハスタ、シーナ、朱里の戦場を回るようにルビカンテと悟プリニーは戦闘を続けていた。  正確には悟とプリニーがせわしなく逃げ回り、ルビカンテはそれを追っていた。  単純にルビカンテがファイアを連打し、その衝撃で悟たちを追い詰めていると言ったところだ。 「しつこい男は……嫌われるぞ!」  息を切らせながら無駄口を叩く悟。  相当切羽詰っているはずなのだがそれでも自然と言葉が出るのは彼ゆえか。  対するルビカンテは大分余裕があるのか、笑いながらそれを返す。 「私も男の尻は追いかけたくないものだな!」 「だったら退けよ!」  即答で返しながら、しかしルビカンテの「断る!」という宣言を聞くまでもなく、悟は逃走する。  これまで、飛行し、木々を利用しながら逃げ回っている。  ……のだが向こうはあろうことかその木々を全部ぶち抜いてコチラに進軍している。  これではどうしようもない。  疲労も馬鹿に出来なくなってきた。  ジリ貧……という事もないだろうが、しかし向こうに限界の様子は見えなかった。  ならば、と業を煮やした悟が隣で必死に追いすがってくるプリニーに声をかける。 「なぁ! 何とかならないのか!」 「む、無理言わないで欲しいッス!」  とはいえそのプリニーも相当無理をしていた。  彼はそこまで足が速いわけではない。  直線であればダッシュできるがここは森、非常に入り組んでいて足場も悪い。  飛行可能な悟と比べるとどうしようもなく移動しにくい。  そんな中でプリニーは悟についてきているのだ。 「だ、だったらここを何とかしたら何かおごってやる。  頼む、力を貸してくれ」  悟はそれを知りながら、頼み込む。   殆ど思わず出たような言葉だ。  しかしそれがプリニーには響いたようで、 「マ、マジッスか? だったらオレがんばるッスよ?」  ああ、とプリニーの問いに悟が肯定。  するとプリニーは振り返り、飛び上がる。  浮遊の時間は一瞬、木々の合間から、プリニーはルビカンテに狙いをつける。  そしてそのまま、ひたすら連打。  どこから飛び出してくるのやら、プリニー特有の連射攻撃がルビカンテに襲い掛かる。 「ぬ、ぉぉおおおお!」  今までオプションとしか思っていなかった気ぐるみが突然動いたかと思えばコレだ。  思わずルビカンテは驚愕する。  全てが直撃……とはいかないまでも大分足止めされてしまう。  その間に悟は大きく上へ飛び上がる。 「あぁばよ!」  そんな叫び声を残して、どこかへ消えていった。 「あっ! 逃げる気ッスかー!?」  思わずプリニーがそちらに叫ぶ。  その瞬間、思い切り隙が生まれた。 「ぬぅん!」  ルビカンテはすぐさまファイアでプリニーに狙いを運命、放つ。  完全に無防備だったプリニーは回避すら出来ずそれを諸に浴び、黒焦げになって地面に激突する。  ピクピクと痙攣するそれは、生きているようにも死んでいるようにも見えた。 その頃、ハスタ、ソウル、朱里の戦場。  結局、やってみれば二対一から抜け出すのは簡単だった。  ソウルの方へ踵をむけ、踊りかかる。  武器はないが、何とか翼で猛攻に耐えつつ、そこへハスタが襲い掛かってきて、何とか奥へ抜けることに成功した。  後は戦闘を始めた両者に牽制のように翼を放ちつつ、距離をとればよかった。  面倒な話だが、複雑ではなかった。  意識の話と肉体の話だ、その違いは当然のものか。  その状態は結局、少し遠くから男の声が聞こえてくるまで続いた。 「ハスタ! 敵に逃げられた! 私も離脱する!」  声の主は恐らくハスタと呼ばれた男と共にいた敵だろう。  悟が相手をしていたはずだが、なるほど逃げたか。  とはいえ目的地はわかっているから急げば出会えないことはないだろう。  少し気になることはあるが、今はここを離脱するべき。  朱里はそう考えると、すぐさま敵方へ背を向けた。  それを誰かが気づくことは、終ぞなかった。  後に残るはハスタとソウル。  両者の優劣は歴然としていた。  朱里の横合いがあったときはまだ少しやりようがあったが、今現在は完全に優位をハスタに持っていかれてしまっていた。  渾身の大技もことごとく回避、もしくは当たっても直ぐに立ち上がられ、無駄になる。  そして、コレならばいっそ……と考えたソウルは、大鎌を構える。  しかしその時には、ハスタの姿は無かった。  集中力が途切れてしまっていたらしい。  殺人鬼がどこへ消えたかは解らない。  先ほどの声に従ったか、それともソウルに止めを刺すために消えたか。  どちらであろうと、油断してはいけなかった。  だが、 「……あは♪」  少女は油断した。  勝ち誇ったような、よく見れば少しの安堵が見れる表情。  それは場数を踏んでいないが故の慢心か、  本来なら、相手は間違いなく格上であったはずなのに、  ソウルは見誤っていた。  ハスタが殺さずに入られないわけがない。  殺人鬼は息をするよりも多く人を殺す、そういうものだ。  ――上空、木の上からハスタが現れる。 「あーああー」  情けないような声でもって、思い切りよくハスタは箒を振り下ろす。 「なっ!」  気がついた時にはもう遅い。  その一撃は脳天を大きく揺さぶり、致命傷を呼ぶ。  身動きの取れなくなったソウルは、もはやネギをしょった鴨にしか、見えなかった。 「お前、馬鹿を見るなら馬鹿にしたほうがいいぞ。  なんてノン」  ハスタは思い切り箒を溜めて、構える。  それは本来ならば槍を得物とするハスタがもっとも得意とする、突きの構えだった。 においに誘われてそこへやってきてみると、先ほどまでそこは戦場だったらしい。  あたしの周りには死体と、まだ死体になっていない生きた人間、そしてよくわからない気ぐるみが墜ちている。  どれにも対して興味はないが、見覚えのある顔が一つ。  名前は知らないが、現代に暮らしているであろううそつきの少年だ。  後は銃で撃たれたらしい女の子と、その近くで気絶する切り傷だらけの女の子。  それと少し遠くで仰向けに倒れる打撲の後が酷い子。  どれもが戦場で敗北したんだね。  正直興味はないけど。  ……特に助けるつもりはないので無視をする。   というか、様子を見に来るだけのつもりだったのでこのまま帰ろうと私は戦場に背を向けた。  ……その時だった。  見に覚えのある気配が一つ。  誰もが放つ、覚えやすいそれはつまり、殺気だ。  振り返ってその主を確認する。  打撲痕だらけの少女だった。  恐らく一度は意識を失っていたと思うんだけど、無理をして立ち上がって。  新たな客人であるあたしを見据えている。  主を取って代わられても、まだ主の真似事を続けようとするか。 「は……あは、あはははははははは! 生きてるじゃないの! 生きてるじゃないの!」  狂ったように笑い出す少女は、自身の得物であると思われる鎌を構えて、あたしを挑発する。 「殺せるじゃない! 丁度いいわ、刈り取ってあげる!」 「六銭文は必要かな? キミのそれじゃああたしはころせないよ」 「ふ、っざけんじゃないわよ! 私は、私は!」 「わっからないなぁ、無駄骨は、嫌いなんだけど」  少女はさらに激昂して、私はさらに呆れさせられる。  そして、返す言葉を少女が口にしたのが、合図だった。 「暴走乱劇!!!」  あたりの風圧が乱れるのを感じた。  風を操るのかと、少し身構える。  少しの間が空いて、躍り出たのは舞踏会の演劇か。  風が踊り、舞い、そして歌う。  そのどれもがどれもを作り上げ、一つは全てを成し、全ては一つを成す。  暴走し、乱れてなお、それは踊り狂う。  狂って狂って、回るそのさまは、ある雛人形を思い出す。  けれども、甘い。  あたしが抜き身の霧雨を抜く。  たったそれだけで、全部終わった。  風は絶たれ、割れた海のように、辺りへ散って消えていく。  少女は呆けたように、息を漏らす。 「なん……で?」 「限界なんだよ、あたしがどうしようにも、キミは限界。  もう無理だね」  いいながら、少女の次より早くあたしは接近する。  一瞬、あたしとこの子の視線が合う。  そこに在るのは一抹の恐怖、人間らしい、いい感情だ。 「あ……ぁ…………」 「今まで、たくさんの人間を殺してきたのでしょう?  だったら知るべきなんだ、その恐怖を」  辺りには誰もいない。  これは狂気だ、人間が得体の知れない何かに感じる狂気。  殆どが妖怪であるあたし自身、それに当てられているのだろう。  だから、自制は効くけど、今はしない。  この少女はもう動くことすら出来ないだろう。  介抱しても助からない、恐らく臓器がいくつかやられている。  それでも動くのは驚きだが、今の暴走で破滅は決定的。  だったらもう、終わらせてしまったほうがいいじゃないか。  そう考えて、少女の首へ剣を振り下ろす。 「――人間を知れ!」  まぁ、いいわけだけど。 ――悟は無言で飛行していた。  戦闘を行ったことによる疲れと、今後に感じる多少の不安。  けれどもそれは、誰にも表することはなかった。  表せる人が、いなかった。 【場所・時間帯】F3 上空 朝 【名前・出展者】謳方悟@魔王武器職人専門学校 【状態】疲労中 【装備】剣 【所持品】剣・フランスパン・基本支給品一式 【思考】 基本:殺し合いとか今ンとこはその他だその他 1:早く見つけないと…… 2:なんかヤバそうだなぁ 3:さて、どうするかなぁ  ――朱里は森の中を駆けていた。  手元にはもう、何もない。  不安は少ししかない、けれどそれがどうしても、引っかかってしまっていた。  朱里には今、何もない。 【場所・時間帯】F3 森 朝 【名前・出展者】唄方朱里@魔王武器職人専門学校 【状態】健康 【装備】黒いボールペン 【所持品】黒いボールペン・基本支給品一式 【思考】 基本:殺し合いとか今ンとこはその他だその他 1:何とか探そう。 2:これからどうしよう……  ――ハスタとルビカンテは移動していた。  向かう先は特に決めていない、がこのまま行けば川の方にでるだろう。  そこからどこを目指すか、彼らはそれを語り合おうとはしない。  二人とも、両者が戦う際のシミュレーションを行っていたのだ。 【場所・時間帯】F2 荒野 朝 【名前・出展者】ハスタ・エクステルミ@テイルズシリーズ 【状態】正常 【装備】霧雨製の箒@東方project 【所持品】不明支給品×1 基本一式 【思考】 基本:皆殺しだりゅん♪ 1、とりあえずは一緒にころす。間違って殺す。 2、移動するんだー 3、(脳内バトル中) 【名前・出展者】ルビカンテ@ファイナルファンタジーシリーズ 【状態】魔力消費小~大 【装備】なし 【所持品】不明支給品×2 基本一式 【思考】 基本:強者と戦い、優勝する。 1、まずはハスタとの共同戦線。 2、さて、どこへ行こうか。 3、(脳内バトル中) ※魔力消費の量は次の書き手さんに任せます。 【霧雨製の箒@東方project】 霧雨魔理沙が飛行に使う箒、 とはいえ本人はイメージ的な理由で使ってるので素人では飛べない。 ただし普通のものと比べると非常に頑丈でカビゴンが載っても壊れない。  ――春夏は、血を能力で流し取りながら、ゆっくりと移動していた。  能力を使って、若干のけだるさを覚える。  何か制限でも掛かっているのかと、当てのない移動を続けていた。  手の中には、血をふき取ったばかりの首輪が収まっていた。 【場所・時間帯】D3 森の中 朝 【名前・出展者】秋冬春夏@東方二次幻想 【状態】疲労小~中 【装備】霧雨の剣@東方project 【所持品】銀製の箱 首輪(ソウルのもの) 基本支給品一式 【思考】 基本・まずは様子見、とりあえずは殺さない。 1、まずはルーミアを探そう 2、-ドライバーってどこにあるのかな。 3、飛んだりすると危ないからよしておこう。 ※特に行き先は決めてませんが他人とは接触を絶つ方向です。  ――  ここは既に何もない戦場。  意識あるもの、命あるものは絶えている。  誰もいない名もなき墓標。 「……なに、これ」  そこに、ライラック・エルは足を踏み込んでいた。 &color(red){【ソウル=クレイシア@三つ巴の世界 死亡】} &color(red){【プリニー@魔界戦記ディスガイア 生死不明】} &color(red){【シーナ=クレイル@三つ巴の世界 死亡】}  ※プリニーが復活するか、そのままかはこの後の書き手さんに任せます。 【場所・時間帯】E3・朝・森の中 【名前・出展者】ライラック・エル@星屑の幻想 【状態】正常 【装備】ソーディアン・シャルティエ@テイルズオブデスティニー 【所持品】基本支給品一式、不明支給品×1~2 【思考】 基本:殺し合いはしたくない・コバルトさんを探す 1:なに……これ。 2:木に登ったらコバルトさん見つかるかな…… ※ライラックが木暮に気がつくかは次の書き手さんにお任せします。 【名前・出展者】ソーディアン・シャルティエ@テイルズオブデスティニー 【思考】 1:……あれ? 坊ちゃんは? 2:この子誰? ※ロワ内では誰でもソーディアンの声を聞くことが出来ます ※また、威力は落ちるものの晶術の使用も可能です 【名前・出展者】レミリィ=ライフィルア@三つ巴の世界 【状態】全身に切り傷。気絶。 【装備】杖 【所持品】杖、基本支給品一式 【思考】基本 とりあえず生き延びよー。     1.…………。 【名前・出展者】木暮夕弥@イナズマイレブン 【状態】吹っ飛ばされた 気絶中 【装備】ワルサーP5@現実 【所持品】基本支給品一式、予備の弾薬@現実、奇跡の指輪@ムシキング~ザックの冒険編~、立向居のデイパック(支給品未確認) 【思考】 基本:優勝して「ありえなかった未来」を現実にする 1:……………… 2:「女性」が望む通り疑心暗鬼をばらまく 3:場合によってはヒロトも殺害する ※吹っ飛ばされた木暮の容態は次の書き手さんにお任せします。 前の話 |030|[[新しい目的地]]| 次の話 |032|[[温泉と三人]]|

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