※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

第3部


 翔北高校の体育館。ドアもカーテンも閉められている。中には翔北高の不良たち10人がいる。
 それともう1人。サングラスを掛けた小学生の女の子。須藤とデートをしていた萩原舞だ。
舞は手足を縛られ、猿ぐつわをされている。

蜜井「須藤のヤローおせえな…」
 舞を誘拐し、須藤をおびき出す計画を立てた張本人。翔北高の番長格の蜜井が苛立っている。
糊男「俺らはバイクだったけど、須藤は走って来ると思うから…。もうちょいかかりそうっすね…」

 翔北高の不良たちが体育館で須藤を待ち始めてから、30分ほどが経過した。彼らは皆黙ったまま
タバコを吸ったりしていたのだが、そのうち1人が口を開いた。
_龍_「この子…かわいいっすね…」
蜜井「お前ロリかよ…」
_龍_「すいません、ぶっちゃけロリなんすよ…」
蜜井「うわーひくわー」
_龍_「ちょっといたずらしちゃっていいっすかね…? ハァハァ…」
蜜井「フン ……好きにしろ」
_龍_「やった!ありがとうございます! ヘッヘッヘw それじゃあ、お嬢ちゃんちょっと触らせてもらうよ~w」
_舞_「んんんっ!んんんん!!(いやあっ!来ないで!!)」
_龍_「あ~、その嫌がってる顔たまんね~。じゃあ、まずはいきなりおっぱい触っちゃお~w」
_舞_「んんんっ!(いやあっ!(茉太くん助けて…))」

  ドンガラガッシャーン!!

 舞の胸が龍に触られる寸前、閉ざされていた体育館のドアが、大きな音を立てて勢いよく開いた。
そこには、怒りに震え、まさに仁王のような風貌で立っている須藤の姿があった。
_舞_「んーんんん!(茉太くん!)」
須藤「舞ちゃん!」
 須藤は、縛られて胸を触られそうになっている舞の姿を目にとめると「…この、腐れ外道が!」と
一言つぶやき、龍に向かって一直線にダッシュした。
須藤「うおおおおお!!」ドドドド
 須藤は猛突進しながらも「(このままタックルすると舞ちゃんにぶつかっちゃうかも…)」と冷静に
判断し、龍の手前で急ストップした。一方、龍はと言うと、須藤の急ストップが逆にフェイントになり、
迫力にも圧倒され全く身動きが取れずにいた。
_龍_「ぁ…ぅ……」
 その隙を突き、須藤は龍を舞から遠ざけるように、龍の顔の側面に右フックを放った。
須藤「ぬん!!」バコーン
_龍_「ぐはっ!」
 龍は全く防御ができなかったため、須藤の重いパンチによって大きくふっとばされた。そして、周りの
ザコたちはその姿を見て、完全にビビってしまった。
雑魚一「あわわわ……」
_須藤_「ふん!!」バコーン
雑魚二「あわわわ……」
_須藤_「どりゃ!!」バコーン
雑魚三「あわわわ……」
_須藤_「おりゃ!!」バコーン
 須藤は、ビビって動けずにいたザコ3人を瞬く間に倒した。

鉄夫「…俺が相手だ」
 翔北高校で最強の鉄夫が、須藤の前に出てきた。鉄夫は細身ではあるが筋肉はしっかり付いていて、
とても引き締まった体つきをしている。身長は須藤より少し高いぐらいだが、手足が長いため、打撃の
射程距離はかなり広い。なお且つ、ボクシングの経験者なのでフットワークが軽やかで、相手との距離の
取り方も上手い。

鉄夫「シッ!」
 鉄夫が絶妙な間合いから鋭いジャブを放った。それを須藤がギリギリのところでかわした。
須藤「(こいつ、できるな…)」
 鉄夫の攻撃がさらに続く。フットワークの出入りとフェイントを織り交ぜながら、ジャブを2発3発と
放っていく。スピードはどんどん増していく…。
鉄夫「シッ!シッ! シッ!」ビシッ
須藤「うっ…」
 鉄夫が放ったジャブの1発が須藤の右頬を捕らえた。重いパンチではなかったのでダメージはあまり
無かったが、その鋭いパンチは須藤の右頬を少しだけ赤く腫れ上がらせた。
須藤「(でかいくせにスピードがありやがる…)」

雑魚四「さすが鉄夫さん!そのまま殺っちゃってください!」

 鉄夫はさらに攻勢を掛けた。今までの前後左右の動きに、今度はボディーへのパンチも混ぜることに
よって、上下の動きが加わった。
鉄夫「シッ!シッ!シッ!」ガッガッ
須藤「フン!フン!フン!」
 しかしこの攻撃は、須藤がガードを固めてなんとか防御することに成功した。

 ここまで防戦一方の須藤だったが、決定打はまだ1発ももらっていなかった。そして須藤は守りに徹し
ながら冷静に観察・分析することによって、鉄夫の動きのくせやフェイントを徐々に見抜きつつあった。

鉄夫「シッ!シッ! シッ!」鉄夫が3発のコンビネーションパンチを放った。
 そのコンビネーションの最後の右ストレートが大振りになった隙を、須藤は見逃さなかった。
須藤は、鉄夫の右ストレートを上段受けでガードし、素早くカウンターで上段突きを放った。

須藤「フン!ぬりゃ!」ズビシイッ

 一瞬あたりが静まり返った。

 須藤の放った上段突きに、鉄夫は全く反応できなかった。
 が、しかし、ボクサーの本能からか、鉄夫は無意識に左手のガードを上げていた。偶然にもちょうど
そこへ須藤の上段突きが入り、鉄夫が顔面への被弾を辛くも防いだ形となった。
鉄夫「うっ…」
 須藤の突きは顔面への直撃は防がれたものの、その威力は非常に高く、ガードした鉄夫の左手をしびれ
させ、赤く腫れ上がらせた。
 この一発で周りの空気も一変し、形勢は完全に逆転したと言っても過言ではなかった。
 ところが…

蜜井「おい、調子にのるなよ須藤」

 不意に蜜井に名前を呼ばれ、須藤が振り向いた。
須藤「舞ちゃん!」
 須藤が目にしたのは、蜜井に髪を引っ張っられる舞の姿だった。舞の目には涙が浮かんでいる。

_舞_「ん…んん…(痛いでしゅ…髪は勘弁してほしいでしゅ…)」
蜜井「こっちには人質がいるんだぜ…」不敵な微笑を浮かべながら舞の髪を引っ張り続ける蜜井。

須藤「ぐっ…」蜜井の一言で動きがとれなくなった須藤。
 舞を人質に取られ動きが取れなくなった須藤を、翔北高の不良たちが取り囲んでいった。
そして、ジワジワと距離を詰めていく…。

蜜井「てめーの負けだ須藤」

須藤「ヒキョー者が…」
鉄夫「………」
須藤「(このボクシング野郎だけでもやっかいなのに、この人数、しかも舞ちゃんが…くそっ……)」

蜜井「死ねやあ!!!」
 蜜井の声をきっかけに翔北高の不良たちが、須藤に一斉に襲いかかろうとしたそのときだった。

  「はいやーーーーーー」ブオオオオ

「なんだ!?」
 奇声が聞こえた上方を皆が一斉に見た。そこにいたのは…
須藤「菅谷!?」
菅谷「アーーアアーーーー」ブオン
ドガガッ
須藤「ぐお!?」
菅谷「しまった失敗…」
須藤「早く降りろ!!重い!」
 こっそり体育館に忍び込んだ菅谷が、体育館の2階のギャラリーから、ターザンのようにロープを
使って飛びかかったのだった。もちろん敵を蹴散らすために飛んだのだが、誤って須藤に激突して
しまったのだ…。

  「ハッハッハ 何やってんだバカモノ!!せっかくの登場シーンを!」

須藤「おめーら!」

熊井「正義の味方参上!」
 先ほど菅谷が飛び立った場所には、熊井、夏焼、徳永、清水の4人がロープを持って立っていた。

  「「「「はいやあああ」」」」ブオオオオン
 熊井たち4人が菅谷と同じようにロープを使って、翔北高の不良たちに飛びかかった。
「おおお!?」
  ドガガッ
「ぐわっ!!」
 熊井らは須藤を取り囲んでいた数人と、舞の近くにいた敵を蹴散らすことに成功した。そして、 
嗣永「さ、舞ちゃんこっちこっち」
 熊井たちが敵を蹴散らすと同時に嗣永が素早く飛び出し、縛られていた舞の縄をほどき、2人で
安全な場所へ移動した。

糊男「あ、あいつらは…!」

  「ベ……ベリーズ高坊!!」

蜜井「ベリーズ高坊…? なんだ糊男、このフザケた連中は!!」
糊男「ベリーズ高校の7人組だ。こいつらを甘くみすぎない方がいい蜜っちゃん…。
    熊井友理也!!須藤茉太!!夏焼雅!!……ほか」

徳永「誰がほかだコラァ!!!」ドゴッ
菅谷「それはやめい!!」ガゴッ
清水「情報屋をバカにするなぁ!」ボコッ
糊男「ぐお!!」
 “ほか”扱いされた3人が、糊男に激しくツッコんだ。

徳永「徳永千奈助!!」クワ
菅谷「菅谷梨沙男!!」クワッ
清水「清水佐紀彦!!」クワワッ

嗣永「嗣永桃太郎!!」クワワワッ と、離れた場所からつぶやく嗣永。

夏焼「…あの伝説のベリ高3バカトリオとはこいつらのことだ…」

  「「「……………」」」

清水「ああ!?」
菅谷「何だとコラァ夏焼!!」
熊井「ハッハッハw」
徳永「笑うな熊井!馬鹿王はおめーだろ!!」
熊井「ああ!?誰が馬鹿王だと!?この天才に!」
ワイワイ

蜜井「ガキ共が…ナメてんな…!!」

グルルゥゥゥゥゥ
菅谷「腹減ってきたから早く終わらせようぜ…」と、菅谷が急に真面目な顔をして言った。
徳永「(真面目な顔して“腹減ってきたから”てw)」
清水「(お昼いっぱい食べてたのに…)」
夏焼「(腹減るの早すぎるだろ…)」
熊井「(俺も腹減ってきたな…)」

菅谷「いくぞォ!!」
ダッ

菅谷「ぜあ!!」ボム
糊男「ぐっ、このブタ…!!」
 先陣を切って、菅谷が糊男に殴りかかった。菅谷のパンチは糊男の頬を捕らえたが、糊男が首を
ひねって衝撃を逃がしたため、クリーンヒットには至らなかった。そしてすぐさま糊男が反撃する。
糊男「この彫田糊男をナメんじゃねーぞ!!」ガッ
菅谷「おう!?」
 糊男のパンチが菅谷に直撃した。糊男は、打撃の技術自体は未熟だったが、筋力とウェイトは
ある程度あったので、打たれ強い菅谷にもそれなりのダメージを与えることができた。
菅谷「なんだ…本当はけっこーつえーんじゃん。ただカッコつけてるだけかと思った。イテテ」
糊男「ああ!?」
菅谷「(よし、須藤さんに習ったアレを試してみよう)」

◇◆◇◆◇

 先日、俺が須藤さんと組手練習をしていたとき…

「アマイな菅谷」
「ぬ…くそ。なぜだ…」
「いいか菅谷。フェイントってのはな、演技力が必要なんだ」

 須藤さんが「お前の攻撃は単調すぎる」と言って、俺にフェイントを教えてくれたんだ。

「ほっ」
「ぬっ!!」バッ
「実は中段突き」
「………!!」
 上段のガードをしようと思って腕を上げた俺の、ガラ空きになった鳩尾に、須藤さんの拳が
当てられていた。
「これは実戦でもかなり使えるテクニックだ。踏み出して即上段にいくぞっと見せかけて実は
  中段なんだ」
「なるほど…」
「この場合、本当に上段にいくぞと思わせるリアリティが要求される。ほっ」バッ
「!!」ピクッ
「一瞬でも上段と思わせたら勝ちだ。当たる」
「はっ!!」
 またも俺は同じフェイントにひっかかってしまった。
「なるほど…。これがフェイント…!!おそるべし…」
「あと構えやスタンスで騙したりとか、目線でフェイントとかもできるぞ」
「なるほど…」
「お前もやってみな!!」

 そのあと、須藤さんは俺のフェイントの練習に付き合ってくれたんだ。
「ホ!!」クワ
「ワザとらしい」
「フン」
「ダメダメ」
「―――」
「―――」
 ――
 ―

◇◆◇◆◇

菅谷「(まずは上段フェイント)ほっ!」
糊男「はっ!」ビクッ
菅谷「(からの中段!)はいやあ!!」ビシ
糊男「ぐっ!!ゥゥゥゥゥ…」
 菅谷の上段フェイントからの中段突きが見事に成功した。中段突きは糊男の鳩尾に見事に決まり、
糊男は悶絶。戦闘不能に陥り、菅谷の勝利となった。

_龍_「ふん!」ビシッ
徳永「ぷあ!!」
 龍がいきなり放ったパンチが徳永にクリーンヒットした。徳永は龍のパンチを完全に見切っていたの
だが、相手のパンチ力を計るかのように、わざと殴らせたのだった。
徳永「………へっへっ。全然効かねーな。相当なダメージが残ってるなお前。須藤にやられたのか?」
_龍_「!!」
 龍は、自分のパンチがまともにヒットしたにも関わらず、全く効いてない様子の徳永を見て愕然とした。
そしてそれと同時に「こいつにはとても勝てない…」と、思い知らされた。
徳永「そんなんでオレに勝とうなんてアマすぎんだよ!!」ゴッ
 徳永の華麗な高速ハイキックが龍の側頭部に決まった。その威力は龍を気絶させるには充分すぎた。
龍は徳永のハイキックをくらった体勢のまま、バタン!と大きな音を立てて床に倒れこんだ。徳永の勝利と
なった。

蜜井「ベ、ベリ高なんざおめーらやれ!!オラ行け!」
雑魚六「え…!?」
 菅谷vs糊男、徳永vs龍の戦いの様子を見ていた蜜井がビビりながら命令を出した。そこへ…

夏焼「おい逃げんなよ主犯」

蜜井「あ…? に、逃げてねーし!!」
夏焼「相手がいねーんだわ。あんた相手してくれよ」
清水「弱いもんは弱いもんどーし仲良くやろーぜ」
雑魚六「!!」
 夏焼と蜜井、清水と雑魚六が戦うことになった。

夏焼「来な」
蜜井「小僧…死にてーらしいな…」と言いつつ、実はガクブルな蜜井。

ガパッ!!

 夏焼が不意に放ったノーモーションのパンチが蜜井の顎にヒットした。激しく脳を揺らされた蜜井は、
もう立っていることができなかった。
ドサッ!!
夏焼「おい…まだだぞう。立てよ」
蜜井「あ…庵才先生…、バスケが…したいです……」ガクッ
夏焼「一発で気失いやがった…」
 蜜井は喧嘩が弱かった。

清水「えい!やあ!」ポコポコ
雑魚六「イテテ、イテテテ、ウワーン!!」
 雑魚六が泣きながら逃げ出したので、清水の勝利となった。

 嗣永は舞とともに、離れた場所からみんなの喧嘩の様子を見守っていた。
嗣永「清水くん頑張れー!」ワーワー
 応援に夢中になっていた嗣永は、雑魚一と雑魚二が近づいてきたことに気づくことができなかった。
雑魚二「おい!ちっこいの!その子を返してもらおうか」
嗣永「うわっ、いつのまに…。く、来るなー!こっち来るなー!」ブンブン
 落ちていたモップを拾って振り回し、舞ちゃんを守ろうとする嗣永。しかしあっさりモップを奪われ、
ピンチに陥ってしまう。
嗣永「あ……」
雑魚一「チビが調子にのってんじゃねえ!」ブンッ 雑魚一が奪ったモップを嗣永に振り下ろした。
嗣永「ひいっ…」

  ビシイッ 

  「(俺の)嗣永になにしてんだコラ…」

 雑魚一のモップによる打撃は、嗣永に振り下ろされる直前で、とても大きな手によって阻止された。
その大きな手の男の名は…

嗣永「熊井くんっ!」

 熊井はそのままモップを奪い取り、間髪をいれずにサイドキックを雑魚一の鳩尾に入れた。
熊井「だらっ!」ブオッ
雑魚一「ぐおぁぁぁ」
 熊井のサイドキックをまともにくらった雑魚一は、大きく吹っ飛ばされ、もう立ち上がることは
できなかった。
 そして熊井は「俺はこんなもんは使わん」と言って、奪ったモップを折って投げ捨てた。

雑魚二「くっそぅ!とりゃあ!」フォッ
熊井「ふん!」ガシィ
 雑魚二の前蹴りと熊井の喉輪が、ほぼ同時に繰り出された。
雑魚二「う、うう…」
 熊井の手は雑魚二の喉にヒットし、雑魚二の足は熊井の体に届いていなかった。それほどまでに
2人のリーチの差は大きかった。
雑魚二「ぐ、げ、げほぉ…」ジタバタ
 熊井はそのまま片手だけで雑魚二の首を締め上げ、とどめに体を引きつけてから投げ飛ばした。
熊井「よっ」ブン
雑魚二「ぐはぁっ」
 雑魚二は全く受身を取れず、後頭部を強打し気絶した。

熊井「嗣永、大丈夫だったか?」
嗣永「うん!(熊井くんはやっぱり強くてかっこいいな…)」ポワワワ
 戦いの最中、一時だけ、2人のいた場所だけは幸せな空気に包まれた。。。

熊井「さて…、そこのおめーら!!」

「!!!」ビビクッ
 少し離れた場所から様子を伺っていた、雑魚三、雑魚四、雑魚五の3人が、熊井に呼びつけられた。
熊井「めんどくせーからまとめてかかってこいよ」熊井が氷のような目で言った。
 熊井に睨まれた3人は、その目に怯えながらも引き寄せられるように熊井に向かっていった。

雑魚三「う、うわあああああああ」ブンブン
熊井「はっ!」バシイッ
 雑魚三は涙目でブンブンパンチをしながら突っ込んでいった。その勢いはよかったのだが、熊井に
対して全くの無力だった。熊井は長い足を存分に使って上段回し蹴りを放ち、雑魚三をぶっ飛ばした。
熊井「今のはデートを邪魔された須藤の分だ」

雑魚四「とりゃああああああ」ブワッ
熊井「そしてこれは…」
 熊井は、雑魚四の飛び蹴りを素早く横にかわすと同時に、右腕を上げラリアットの体勢に入った。
熊井「危ない目に遭わされた舞ちゃんの分!」ガシイッ
 熊井のラリアットは、雑魚四の首元へカウンターで入り、雑魚四は床へ激しく叩きつけられた。

熊井「それから…えーっと……」
 熊井はキョロキョロと周りを見渡した。床にころがっている折れたモップが目に入った。
熊井「折られたモップの分だ!!」ザッ 素早く一歩踏み込む熊井。
雑魚五「モップはてめえが…」
バコーン
 熊井の右ストレートが雑魚五の顔面に直撃した。強烈な一撃をくらった雑魚五は鼻血を出しながら、
大の字になって倒れた。
 熊井の周りには、倒された5人の男たちの体が、連なるように横たわっていた。たった2分の出来事
だった。

鉄夫「……」
須藤「……」
鉄夫「第2ラウンドだ」
須藤「来い」

 やはり単純なスピードでは鉄夫の方が上だった。
 先ほどの“第1ラウンド”の最後に須藤の渾身の上段突きを左手に受け、その脅威を知った鉄夫は、
より慎重に戦うべく、戦法をアウトボクシングへさらにシフトさせた。勿論それは、自分のスピードと
リーチを活かし、打たれずに打つためだった。

鉄夫「シッ!シッ!」ピシッビシッ
須藤「ホッ!ハッ!」

 鉄夫の戦法は、相手と自分の戦力を冷静に分析した上で導き出された、最善の策だった。
大きなダメージを与えるパンチは無かったが、ジワジワと須藤にダメージが蓄積されていった。
逆に、たまに繰り出される須藤の攻撃は、鉄夫にしっかり防御されていた。

 須藤以外のベリーズ高校の面々は、既に戦いを終えていた。菅谷、徳永、夏焼、清水がタイマンで
勝ち、熊井が5人のザコを倒した。ベリ高vs翔北高の勝敗は既に決していたが、みんなで離れた場所
から須藤の戦いを見守っていた。
菅谷「須藤さんがタイマンであんなに手こずるなんて、あいつもかなり強いんだな…」
徳永「おーい須藤! 手貸してやろうか?w」

須藤「うるせえ!黙って見てろ!! うおっ」 シュッシュッ
 須藤が少しだけ目を離した隙を、鉄夫は見逃さずジャブを放っていく。それを須藤が紙一重でかわす。
気を抜くことが許されない戦いが続いている。

夏焼「フー 君たちなんにもわかってないんだな」

  「「え?」」

夏焼「よく見ろよ。須藤はさっきから蹴りも使ってないし、掴みにも行ってないだろ」
菅谷「あ…」
徳永「言われてみれば…」

清水「須藤くんは、あいつが翔北の他の奴らとは違って、卑怯な手は使わないことをわかってるんだ」
熊井「あいつ明らかにボクサーだろ。さっきからパンチしか使ってねーし。しかもタイマンだからな。
   須藤はそういうときは、自分も突きしか使わねーんだよ」

夏焼「それが須藤茉太って男なんだよ」

須藤「(よし…)」
 須藤は、膝を少し落とし内股気味にして“三戦”の構えを取った。そして「コォォォ…コッ!!」と息を
吐いた。

菅谷「“息吹”だ…」

 三戦の構えから、須藤はそのまま右腕を引いた。そして引ききったところで、ピタリと動きを止めた。

ダダッ
 足を止めた須藤を見てチャンスと思った鉄夫が、素早く間合いを詰める。
鉄夫「シッ!!」ビシイッ 鉄夫の渾身の右ストレートが須藤の顔面に放たれた。

菅谷「須藤さん!!」

 かなりの威力があると思われるパンチを、須藤は左頬にまともにくらってしまった。
 しかしそのとき、須藤の目はまばたき一つしていなかった。そしてパンチをくらうと同時に、
須藤は右手で上段突きを放っていたのであった。

須藤「オワーオワーオ!!!!」ズバッ
鉄夫「ぐぶぁっ!」
 ドンガラガッシャーン
 鉄夫が派手な音を立てて床に倒れた。須藤の上段突きが、人体の急所である“人中”に決まったのだ。
それは勝負が決したことを意味する一発だった。

須藤「ハンパなボクシングには負けねーよ。俺に勝ちたかったら、不良どもと喧嘩なんかやってないで
   ジムに戻るんだな」

菅谷「須藤さんカッケー!!」


 須藤が鉄夫を倒し、戦いは終わった。翔北高の不良たちは全員、逃げ出したか、動けなくなったか、
未だ気を失ったままだった。
 須藤が舞の近くに歩み寄り、話しかける。
須藤「ごめんね舞ちゃん…。俺のせいでこんなことに…」申し訳なさそうに俯く須藤。
_舞_「ううん、茉太くんが助けてくれるって信じてました。ありがとう」と言いながら須藤の手を握る舞。

 そこへ不意に須藤の後ろから、徳永がひそひそ声で話しかけた。
徳永「須藤、今告白しちゃえよ」
須藤「な、おま、なにを…」
徳永「今絶対チャンスだって」
須藤「だからって、こんなとこで…」
徳永「あれ?ひょっとしてビビってんの?」
須藤「あ?俺がビビるわけねーだろが」
徳永「じゃあいけよ」
須藤「ぐっ…(くそっ…もうどうにでもなれ…)あの、ま、舞ちゃん…」
_舞_「ん?なんでしゅか?」
須藤「お、俺…舞ちゃんのことが…す」

ダッダッダ
「こらーおまえらー舞をはなせー!!」
 須藤が舞に告白しかけたとき、突然肌の浅黒い少年が走って突っ込んできた。
「舞に近寄るなー!!」ポカポカ
 少年は須藤と舞の間に割って入り、ちっちゃな拳で須藤をポカポカと殴る。が、当然須藤には全く
効いていない。

_舞_「ちしゃと!? やめて!違うの!この人は助けてくれたの!!」
千聖「え?そうなの? あ、ごめんなさいw ハハハw」
須藤「こいつ誰?」
_舞_「彼氏のちしゃとでしゅ」
須藤「か、彼氏……(ガガーン 大ショック)」
千聖「舞の彼氏の千聖です。舞を助けてくれてありがとうございました。舞、じゃあそろそろ暗く
   なるから帰ろうか」
_舞_「うん。茉太くん!助けてくれて本当にありがとう!あと、遊園地しゅごく楽しかったでしゅ!
   またねー!!」
須藤「あ、うん…ばいばーい……」
 舞と千聖が手を振りながら去って行った。須藤も呆然としながら力無く手を振った…。


  「「「「「「プッw クククッw ハーッハッハッハハハヒーハーハハハwww ハ…」」」」」」

須藤「う、うっ、うっ……」
 須藤の背中が泣いている。
徳永「須藤…、マジで本気だったんだな……」
須藤「グスッ ああ…本気だったよ…。でも…でもいいんだよ!…俺は…舞ちゃんが幸せでいてくれれば、
   それだけで… グスッ もう帰るぞ!!」

嗣永「須藤くんかっこいい…」
熊井「ぬ…」

 肩を落とし、1人でトボトボと歩き出す須藤。後ろから夏焼が近づいてきて、須藤の肩を抱いた。
夏焼「須藤、元気出せよ」
須藤「あ? そ、そんなにへこんで、ねーよ……」
夏焼「…そうだ!今度女の子紹介してあげるよw すごく若い子ww」
須藤「大きなお世話だw」


おしまい