頂上決戦 アナザーストーリー1 ~世にも奇妙な物語編~


深夜の病室。
久住に重傷を負わされ、昏睡状態の夏焼を熊井が見つめていた。

道重から今夜がヤマだろう、と聞かされた。
助かる可能性は低い、と。


…静寂と安らぎの闇の中に僕はいた。こんなに心が安らぐのはいつ以来だろうか・・・
…かすかに遠くから声が聞こえてくる・・・

「夏焼、戻ってこい。みんな待ってるぜ」
(また熊井くんかw・・・どうしてキミは、屋上にも・・・こんな処にまでやってくるかなw)

「前にも言ったろ、夏焼。そんなに簡単に自分の人生をすてるんじゃねえ」
(熊井くん、もういいんだ・・・もう僕は・・・)

「いいや、ダメだ。とっとと戻らねえとそっちへ行って首根っこ掴んででも引きずり出すぜ」
(いくら熊井くんでもそれは自然の摂理に反するんじゃないかなww)

「自然の摂理なんざ知ったこっちゃねえ。何なら俺が死に神でも閻魔大王でもぶっ飛ばしてやるぜ。
俺を誰だと思ってるんだ、夏焼?・・・俺の名を呼んでみろ!」
「熊井・・友理也・・・」

「そうだ。おまえのダチだ」
真っ暗闇の中、目の前に熊井友理也が立っていた。
「夏焼、あっちだ。振り返らずに行け!」
熊井が指さす方向に小さな灯りが見えた。
「絶対に振り返るんじゃねえぞ!俺はちと行ってくらあ」
指をボキボキと鳴らしながら熊井が不敵に笑った。
いつか、と同じように。


頂上決戦 アナザーストーリー2


「く、熊井くん!」
振り返ろうとした夏焼が蹴飛ばされた。
いつだったか、遠い昔に受けた事のあるような本気の蹴りだった。
問答無用で光の中まで吹き飛ばされた。


―――…「夏焼くん!夏焼くん!」
誰かが僕の手を握って泣いている・・・。
聞き覚えのある懐かしくて優しい声・・・。

ぼんやりと輪郭が見えてくる・・・。
泣いているのは・・・
「・・・つ・ぐ・な・・が・・?」
「夏焼くん!!!」
ギュッと抱きしめられた。
嗣永の涙が僕の頬を伝っていくのがわかる・・・涙ってあったかいんだ・・・。

嗣永はまだ動けない僕の頬にそっと手を当てて、口づけをした。
「ぼくやっとわかったんだ!ぼくは夏焼くんが・・・雅くんが好きだ!」
唇を離した嗣永が僕の目を真っ直ぐに見ながら言う。

「バカ・・・熊井くんに怒られるよ、嗣永」
あの男のように、その頭を撫でようとしたがまだ手は動かなかった。
なぜだか顔が熱い。きっと赤面するってこういう事なんだろうなと思った。

「くまい・・・くん?・・・熊井くんって・・・誰?」


頂上決戦 アナザーストーリー3


僕が奇跡的に助かった、と聞いて続々と来客があった。

みんな僕が生きている事を涙ながらに喜んでくれた。
それほど僕は絶望視されていたらしい。
皆が皆「奇跡が起こった」と口を揃えた。

だけど。

誰一人として、熊井くんの事を知っている人間はいなかったんだ・・・。

僕自身もひょっとしたら・・・全部夢を見ていたんじゃないか・・・。
ふと、そんな風に考えてしまう程、熊井くんの事はみんなの記憶から綺麗に消えていた。

そんな頃。
包帯を取り替えに来た看護士さんが僕の背中を見て悲鳴をあげた。
――どうしてかはすぐにわかったよ、熊井くんww
ああ、良かった。熊井くんが僕の身体に残ってるんだ。

「大きい足跡でしょ?人間のモノとは思えないくらいにww」
そう答えた僕の頬を、どうしようもないくらいに涙が伝っていった。


保全代わりの小ネタなので続く・・・かどうかはわからないw

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最終更新:2012年02月11日 00:08