(24)636 『絶対解ける問題 X=A+JL』



 >目標A、獣化
 >目標B、念動エネルギーで加速
 >近接戦闘モード

李純、大熊猫型の半獣に変身した女の方。
凄ましいパワーだがその動きは私から見ればスローモーションだ
攻撃パターンも力任せの単調そのもの・・・獣化時は獣の本能が優っている
のだろうからそれは仕方のないことだろう
身体を薙ごうとする爪の一撃一撃を私は余裕で回避していく

対して小柄な女、銭淋の方は念動力を身体の制御と加速に利用して
トリッキーな動きと驚異的な攻撃スピードを見せる。
李純の攻撃の合間を縫って繰り出される打撃は、確実に私の身体を捉えてくるが
その一撃一撃は弱々しく、私のナノスキン装甲にダメージを与えるには至らない


 >超震動ブレード、起動

私の手刀に纏った超震動が、大熊猫の巨大な爪を粉々に崩壊させながら斬り飛ばす
そして、繰り出した回し蹴りが獣の側頭部を捉える。

「グオォォォオオオオー!」
「純!」

悲痛な叫びを上げ、地面に倒れる獣

 >目標Bから、高熱源反応

驚異的なスピードで懐に飛び込んでくる銭淋
予測の範囲の攻撃・・・銭淋のもう一つの能力、緑炎

「終わりダ!」

私の身体を掴み、掌からパイロキネシスを発動させる
一瞬にして、緑色の炎が私の身体を包み込む


 >ナノスキン装甲、燃焼

「やったカ・・・恐ろしい奴ダッタ」

燃え上がる私の身体・・・だがまだ終わりではない

 >冷却システム、急速起動
 >ダメージは表層のみ、軽微
 >ナノスキン、順次再生

「何ッ!」
「コイツ、死んでナイぞ・・・再生シテル!」

獣から人の姿に戻った李純は倒れたままだ
先程の蹴りで能力の発動野にダメージを与えた
もう戦闘力はないと見てよいだろう
鎮火しかけた身体で繰り出した突きは、銭淋の頬を掠めた
再び懐に入られた。なんと迷いのない勇敢な戦士だ

 >システムに問題発生。敵対者の肯定
 >思考修正
 >目標Bから、再び高熱源反応


「ナラバ、炭になるマデ焼き尽くすノミ!」
「ヨセ淋!お前の身体ガ保たないゾ!」

再び、私の懐でパイロキネシスを発動させる銭淋
抱き付いて私の身体に密着し、能力を発動させ続ける

 >目標Bから念動エネルギー検出

念動力で私の動きを封じている?
異なる能力の同時発動・・・スペック以上の力だ
表層の燃焼は止められそうにない
内部機構だけでも冷却し続けなければ

「離サナイ!お前を倒すマデハ!」

銭淋の身体も緑の炎に包まれ、肉の焦げる臭気がし始める


「淋!ヤメロー!」
「純、オマエハ死なせない。それが刃千吏の使命ダ」

なぜだ?なぜ自分の身を犠牲にしてまで私を倒そうとする?
刃千吏?そこに何の意味がある?何の意味が?
なぜスペック以上の力を出しているんだ?
なぜ微笑んでいるんだ?なぜだ?なぜだ?

 >システムに問題発生。
 >思考修正、ミッションの遂行を優先。
 >ミッション「李純、銭淋の捕獲」

そうだ、このミッションは捕獲任務だ。死んで貰っては困る

 >リミッター解除
 >A-MAX、発動
 >System「A」最大パワー


A-MAXの限界活動時間は10秒。10秒あれば十分だ。
最大パワーで念動力の拘束を押し返し、銭淋の両腕を引き?がす

「なっ!」

急激に向上した私のパワーに驚愕する銭淋の鳩尾に拳の一撃

「うぐっ」

 >目標、沈黙
 >A-MAX、ダウン
 >体内温度、危険域まで上昇
 >急速冷却の必要アリ

マズい、A-MAXによる内部温度上昇を計算に入れていなかった
急がねば・・・
近くにあった工事中の水道管を破壊し、私と銭淋にシャワーを浴びせる
私の冷却も兼ね、一石二鳥というやつだ。何とか、火は収まった


李純が口を開けてこちらを見ている

「オ前、淋を助けてくれたノカ?」

助けた?・・・私は銭淋を助けたのか?

 >思考修正
 >ミッションを最優先

ああ、ミッションが優先だ

「ありが・・・」

何か言おうとした李純の首筋に手刀を叩き込む

 >回収班に通信
 >李純、銭淋を無力化。拘束願う

私が人を助けた?・・・私の存在意義と合致していない

 >存在意義:ダークネスの離反者、抵抗組織の処罰、殲滅

助けた、助けた、助ける、助ける、たすける、タスケル・・・


 >システムに異常発生

「i914を止められるのはお前しか居ない・・・やってくれるな、アヤ」
「お父さん、愛ちゃんはお友達だよ?」
「愛ちゃんはね、少しおかしくなってしまったの。アヤが愛ちゃんとみんなを助けるのよ」
「お母

 >システム回復

なんだ今のは・・・まさか私の

 >ミッション終了、思考停止
 >帰還モード




















最終更新:2012年12月02日 09:02