(02)482 『リーダーはつるつるいっぱい』



あたしがジムに通うのは訳があって、周りの人は体力作りとか
単純なダイエットとかを想像しとって、実際聞かれることも
あるんやけど、ほんまは違うんやけどとりあえずYESと答える
ことにしとる。

本当の理由は、太らない為や。
ん? それがダイエットってか? いやいやいや違うんやって
ほうやのうてな、まあ聞いてよ。あたしの話を。ちゃんと聞いて?

精神感応ってさあ、体が大きい人ほど感応できんのよね。
電波みたいなもん拾ってんの。アンテナよ。
アンテナはでけー方が感度ええの知っとるやろ?
知らんて? まあまあまあとにかくそうなんやって。
んでさ、あたしは見た通り背が低いし153センチしか無いからさあ。
感度悪いと思うやろ? ところがところが! これが結構
いいセンいっててさあ、得意なんだよ。特異なんやけど。
得意なんが、特異らしいのね。


あ? 意味わからん?
あーほやさけ、異常なんやって。
チビいのが高レベルの精神感応できんのがオカシイってさ。
ほいで色々調べられたけど、結局詳しいことはお手上げやーて
なんじゃそら。
でも全然なんもわからんかった訳やのうて、一個だけ教えて
もらえたんが、これよ。
「今以上太るな」

……今で相当ギリギリらしいわ、あたしの体。
太ってちょいとでも体が大きくなってもたら、最高レベルまで
感応できてもうて、これまで自滅してった人ら……仲間みたいに
なってまうんやって。

人の心がどんどん自分の心を喰って……一人、二人、三人……
感応してしまった複数の誰かの気持ちが、自分の内側でせめぎ
合って……表に出んのは


「ワン!」
「うおっ!」

何や王子、怒ったか?
あ、あんたみたいなワンちゃんには感応せんよ。大丈夫よ。
ごめんごめん、愚痴って悪かった。仕事するってちゃんと。
……この一杯飲み終わったら。

「あー、コーヒー美味えなー」

自分の店で自分で淹れた、味には自信たっぷりのコーヒーを
一人でゆっくり味わえるなんて、贅沢やよねえ。
午後は皆が来るから、どうしても賑やかになってまうし。
午前中の、大切なひと時。

……たまには誰かに淹れて欲しいような気もせんでもないがの。





















最終更新:2012年12月17日 11:42